2022年振り返り

ここ3年で一番本を読めた年かも。
記事数と読んだ本の冊数は別だが、参考に記事数を比較すると、
2022年は88記事(+この記事で89)
2021年は33記事、2020年は70記事、2019年は126記事だった。
2020年からこっち、本読んだりブログ書いたりが以前より減っているのだけど、回復してきた感じ。
なお、2019年の126は例年と比較しても多い方で、平均すると1年で100本弱の記事を書いている。
2021年が極端に少ないのは、『物語の外の虚構へ』を制作していたから、という事情もある。


今年は、特に後半のスパートもあって小説をたくさん読んだ気がする。
逆に自然科学系の本が減った。小説以外は人文・社会科学系中心で、歴史系や美術関係が増えた。
今年は実は洋書を何冊か読み始めたのだが、途中で止まってしまっている。
カルヴィッキの本にDthatが出てきたので、『言語哲学最重要論文集』に収録されていている「Dthat」を再読しようと思って、9月頃に図書館に行ったら、なんか久しぶりに色々借りてきてしまって、それをきっかけに、小説をガツガツ読み始めることになった。結局「Dthat」の再読はしていないんだけど……。
今年はそこから、英語読むのをやめて小説読むのに読書時間を振り直したことで、読んだ冊数が一気に増えた。

小説

今年読んだ小説から、特に面白かったものを挙げてみる
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新刊としては、ピンスカー短編集と小川哲新作長編。特に、ピンスカ-はよかった。
『地図と拳』は山田風太郎賞受賞、日本SF大賞最終候補作、直木賞候補作と世間的にも今年話題の本だった。
そのほか、9月から12月にかけての「文学読むぞ期間(?)」からは、『高丘親王航海記』と戦後短篇アンソロジーの都市篇、そしてバルガル=リョサを挙げておく。
また、加えて建築文学アンソロジー藤野可織のデビュー作含む短編集も挙げておきたい。


今年は小説をたくさん読んだ。時系列順に羅列すると以下の通り。
今年もSFは読んだけれど、それ以上にSF以外をたくさん読んだ、特に9月以降
その経緯は既に書いた通り。文学読もうかという気持ち - logical cypher scape2
今年はTVアニメをめっきり見なくなっており、その反動で(?)小説を読んでいるような気もする。一定量のフィクションを摂取する必要があるのではないか。

2022-01-13 青木淳編『建築文学傑作選』 - logical cypher scape2
2022-01-19 古井由吉『杳子・妻隠』 - logical cypher scape2
2022-01-21 大森望編『ベストSF2021』 - logical cypher scape2
2022-02-09 高山羽根子『暗闇にレンズ』 - logical cypher scape2
2022-02-18 プリーモ・レーヴィ『天使の蝶』(関口英子訳) - logical cypher scape2
2022-03-09 高山羽根子・酉島伝法・倉田タカシ『旅書簡集 ゆきあってしあさって』 - logical cypher scape2
2022-03-20 上田早夕里『獣たちの海』 - logical cypher scape2
2022-05-11 ジョナサン・ストラーン編『創られた心 AIロボットSF傑作選』 - logical cypher scape2
2022-06-11 冲方丁『マルドゥック・アノニマス7』 - logical cypher scape2
2022-07-04 春暮康一『法治の獣』 - logical cypher scape2
2022-07-11 サラ・ピンスカー『いずれすべては海の中に』(市田泉・訳) - logical cypher scape2
2022-08-16 小川哲『地図と拳』 - logical cypher scape2
2022-08-29 磯崎憲一郎『鳥獣戯画/我が人生最悪の時』 - logical cypher scape2
2022-09-13 古井由吉『木犀の日 古井由吉自薦短編集』 - logical cypher scape2
2022-09-17 リリー・ブルックス=ダルトン『世界の終わりの天文台』(佐田千織訳) - logical cypher scape2
2022-09-20 安岡章太郎『質屋の女房』 - logical cypher scape2
2022-09-22 『戦後短篇小説再発見4 漂流する家族』 - logical cypher scape2
2022-09-28 藤野可織『いやしい鳥』 - logical cypher scape2
2022-10-01 小島信夫『アメリカン・スクール』 - logical cypher scape2
2022-10-11 春暮康一『オーラリメイカー』 - logical cypher scape2
2022-10-14 藤野可織『来世の記憶』 - logical cypher scape2
2022-10-20 『戦後短篇小説再発見 6 変貌する都市』 - logical cypher scape2
2022-10-21 庄野潤三『プールサイド小景・静物』 - logical cypher scape2
2022-10-26 『戦後短篇小説再発見10 表現の冒険』 - logical cypher scape2
2022-10-29 『kaze no tanbun 移動図書館の子供たち 』 - logical cypher scape2
2022-10-29 『SFマガジン2022年2月号』 - logical cypher scape2
2022-11-03 伴名練「二〇〇〇一周目のジャンヌ」 - logical cypher scape2
2022-11-05 島尾敏雄『夢屑』 - logical cypher scape2
2022-11-05 『戦後短篇小説再発見18 夢と幻想の世界』 - logical cypher scape2
2022-11-06 ウィリアム・ギブスン、ブルース・スターリング『ディファレンス・エンジン』(黒丸尚・訳) - logical cypher scape2
2022-11-25 島尾敏雄『その夏の今は・夢の中での日常』 - logical cypher scape2
2022-11-28 澁澤龍彦『高丘親王航海記』 - logical cypher scape2]
2022-11-28 島尾敏雄「離脱」色川武大「路上」古井由吉「白暗淵」(『群像2016年10月号』再読) - logical cypher scape2
2022-12-09 マリオ・バルガス=リョサ『世界終末戦争』(旦敬介訳) - logical cypher scape2
2022-12-13 久永実木彦「わたしたちの怪獣」(『紙魚の手帖vol. 6 AUGUST 2022』) - logical cypher scape2
2022-12-23 ウィリアム・フォークナー『アブサロム、アブサロム!』(藤平育子・訳) - logical cypher scape2

美術

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今年は、3年ぶりに美術館に行くことができたし、13年ぶりの川村記念美術館再訪も果たすことができた。
美術関係の本もやはり3年ぶりくらいに読んだし、『ユリイカ』もじっくり読むのは久しぶりだった気がする。
まあそんな中で何と言っても「カラーフィールド」展がよかった
それ以外の美術関係の記事は以下の通り。

2022-03-20 圀府寺司『ユダヤ人と近代美術』 - logical cypher scape2
2022-06-21 『ユリイカ2022年6月号(特集=ゲルハルト・リヒター)』 - logical cypher scape2
2022-06-26 ゲルハルト・リヒター展 - logical cypher scape2
2022-06-28 Transformation越境から生まれるアート展ほか - logical cypher scape2
2022-09-10 クレメント・グリーンバーグ「モダニズムの絵画」「ポスト・絵画的抽象」 - logical cypher scape2
2022-09-23 五十殿利治『日本のアヴァンギャルド芸術――〈マヴォ〉とその時代』 - logical cypher scape2

歴史関係

ちくま新書から出ている○○史講義シリーズをつまみ食いしながら、少しずつ日本近代史を勉強しているようなここ数年。今年は、大正史を読んで「大正時代面白っ」となっていた。
ブログに特に感想などは書いていないが、シベリア出兵を描いた漫画『乾と巽』を読んだりもしている。
2022-06-24 筒井清忠編『大正史講義』 - logical cypher scape2
2022-06-30 筒井清忠編『大正史講義』【文化篇】 - logical cypher scape2
2022-09-24 大正史メモ? - logical cypher scape2

哲学・思想史

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そういえば今年は、哲学の本をあまり読んでいなくて、むしろ哲学・思想史の本を読んでいた
もっとも、『現代思想』の大森特集とウィトゲンシュタイン特集は、必ずしも哲学史というわけでもないし哲学史として読んだわけでもないけど、今改めて今年を振り返るにあたって、便宜上このカテゴリ扱いすることにした。
ロシア思想史が読めてよかった。

2022-02-10 『現代思想2021年12月号(特集=大森荘蔵)』 - logical cypher scape2
2022-05-17 『現代思想2022年1月臨時増刊号 総特集=ウィトゲンシュタイン』 - logical cypher scape2
2022-09-10 山口輝臣・福家崇洋編『思想史講義【大正篇】』 - logical cypher scape2
2022-11-11 桑野隆『20世紀ロシア思想史 宗教・革命・言語』 - logical cypher scape2
2022-11-20 ブルース・ククリック『アメリカ哲学史』(大厩諒・入江哲朗・岩下弘史・岸本智典訳) - logical cypher scape2

社会科学

社会科学というか、社会科学の哲学としてグァラを読んだ。これは去年の下旬から今年の2月くらいまでオンライン読書会して読んでたりもしたので、なかなかじっくり読んだ本でもあり、今年一番ブクマ集めた記事でもある。
あとは安全保障本を2冊ほど
2022-03-10 sakstyle.hatenadiary.jp
2022-03-10 倉田剛「社会存在論の「統一理論」について」「いかにして社会種の実在性は擁護されうるのか」 - logical cypher scape2
2022-10-07 小林義久『国連安保理とウクライナ侵攻』 - logical cypher scape2
2022-10-09 千々和泰明『戦後日本の安全保障』 - logical cypher scape2

恐竜美学

恐竜美学とはなんぞやというと、フィクション論の次に自分の研究テーマにしようかなと思っている話なのだが、一体何なのか自分でもまだよく分かってはいない。
科学哲学と描写の哲学の応用分野として、恐竜の復元画について考えるとか、
あるいは、環境美学・動物美学の応用分野として、恐竜の美について考えるとか、
そういったことを漠然としたイメージとして持っているのだけど、そのために勉強しなきゃいけない分野が膨大すぎて積んでる……。
今年、これ絡みで洋書を何冊か買っているのだけど、途中で読むのが止まっていたり、読まずに積んでいたりしている。今年は夏頃までは、英語読みつつ、日本語の本読みつつだったのだけど、上述したとおり、9月頃に英語の本を読むのを一切やめたら、読める本の冊数が一気に伸びた。
なので、このテーマについての読書は現在中断中。何年かかけてゆっくりやります。

恐竜文学についての論文
自分は今のところ、恐竜の視覚的イメージの方に興味があるので、恐竜文学作品にはあまり手を出す予定はないが、恐竜文化論という枠組みで考えてみたいところはある。

復元画について

動物美学について

恐竜文学・恐竜文化論として

科学的表象にについて
いわゆる科学的表象と古生物の復元画って若干距離があるような気もするのだけど、まあしかし抑えないわけにはいかないなあと思って。
この論文はSTSなので、自分の関心とはちょっと違うのだけど、ちょっと違うのは分かった上で読んだ。
今後、科学哲学の科学的表象論を読んでおきたいとは思っている。

復元画について

自然科学

自然科学系で読みたいと思っている本はまだ全然あるんだけど、しかし、なんとなく今年は一段落ついたなというか、自然科学系の読書はお休みな年であった(『Newton』と『日経サイエンス』はちょくちょく読んでいたが)。
そんな中で、土谷クオリア本が良かった
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2022-01-19 紺野大地・池谷裕二『脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか 脳AI融合の最前線 』 - logical cypher scape2
2022-03-27 生体の科学 Vol.73 No.1 2022年 02月号 特集 意識 - logical cypher scape2
2022-04-03 成田憲保『地球は特別な惑星か』 - logical cypher scape2
2022-04-22 Origins, Worlds, and Life(未読) - logical cypher scape2
2022-11-16 『宇宙開発未来カレンダー 2022-2030's』 - logical cypher scape2


それでは皆様よいお年を
来年もよろしくお願いします。