フィクション論

『ユリイカ2023年11月臨時増刊号 総特集=J・R・R・トールキン』

もうひとつのフィクション性――「妖精物語について」における〈現実〉の位相 / 勝田悠紀 ファンタジーの魅惑――J・R・R・トールキン『妖精物語について』におけるフィクション理論 / 岡田進之介 物語を受け継ぐ方法――「再創造」という創作・読解行為からみ…

想像のobjectと想像のvividness

導入 最近になって、2月にこんなワークショップがあったことを知った。 https://fiction-4.jimdosite.com/ ワークショップ「フィクションの中へ没入の美学」 2024年2月10日 関西学院大学 高橋幸平(同志社女子大学):フィクションの哲学における没入 松永伸…

小池隆太のマンガ・アニメに関わる物語論関係の論考を読んでのよしなしごと

『マンガ研究13講』『マンガ探求13講』や『アニメ研究入門』『アニメ研究入門(応用編)』という本があり、未読ではあるのだが、いつか読みたいと思っていて目次だけは確認している。 その際、気になった論考がいくつかあるのだが、いずれの本の中にも小池隆…

倉根啓「ゲームプレイはいかにして物語になるのか」

ビデオゲームにおいて提示される虚構的内容のうち、全てがそのゲームの物語を構成しているわけではないが、その関係はどうなっているのか、という内容の論文 マリオの命は3つあるのか問題 あるいは、RPGをやっていて、戦闘中に死んだとしても必ずしもそのゲ…

Kathleen Stock "Fictive Utterance and Imagining"

フィクションの哲学の論文 フィクションを想像概念によって定義する、というのがこの分野のオーソドックスな見解だが、反論も多い。 反対派としては、マトラバースやフレンドがいる。 一方、最近の賛成派としては、このストックが挙げられることが多い この…

Stacie Friend "Fiction as a Genre"

メイクビリーブを批判する1人として有名なフレンドの、(おそらく)有名な論文 フィクションの定義を巡る話で、タイトルにある通り、フィクションをジャンルの1つと捉え、メイクビリーブや想像のために作られたもの、という標準的な定義を退ける。 ここでフ…

Paul Dawson "Ten Theses against Fictionality"

muse.jhu.edu フィクショナリティの修辞的アプローチについて 以前、下記の記事を読んだ際にこの考えに興味を持ったのでちょっと調べてみよう第二弾euskeoiwa.com 第一弾として読んだHenrik Skov Nielsen, James Phelan and Richard Warsh "Ten Theses about…

Henrik Skov Nielsen, James Phelan and Richard Warsh "Ten Theses about Fictitonality"

muse.jhu.edu フィクショナリティの修辞的アプローチについて 以前、下記の記事を読んだ際にこの考えに興味を持ったのでちょっと調べてみよう第一弾euskeoiwa.com どうも、文学研究ないしナラトロジーの分野で、近年、「フィクショナリティ」「修辞的アプロ…

ガルラジ合同本『___・ラジオ・デイズ』に「質感から考える メディアなきフィクションとしてのガルラジ」書きました

こちらに「質感から考える メディアなきフィクションとしてのガルラジ」を書いています。ガのリアルタイム性と質感旅行は、我々とガ世界の間にあるもの(=メディア)がないような経験(リアルでないのにリアルな経験)をさせてくれるのだ、という話です https://…

マンガにおける「分離された虚構世界」と「視覚的修辞」

まえがき 分離された虚構的世界と視覚的修辞 - logical cypher scape2 の続き、というか、最後に触れたイノサンの例についてもう少し膨らませて書く。 マンガは、絵を使って、とあるフィクション世界を描く形式である。 なので、絵の内容は、その世界の出来…

分離された虚構的世界と視覚的修辞

『フィクションは重なり合う』のAmazonページに、実はレビューが書かれているのを最近知って、ちょっとそれに対する応答をしつつ、ちょっと気になっていることをメモしておきたい。 2.2.分離された虚構世界の > 例えば、TVアニメ『四月は君の嘘』の22話(最…

平松和久「キャラクターはどこにいるのか――メディア間比較を通じて」(『サブカル・ポップマガジンまぐまPB11』)

以前、松下哲也「ビアズリーの挿絵はマンガの形式に影響をおよぼしたのか?」(『ユリイカ2019年3月臨時増刊号』) - logical cypher scape2で読んだ平松論文で、平松の4空間論というのが気になったので、こちらも読んでみた。 タイトルにある通り、キャラク…

Shaun Nichols ”Imagining and Believing: The Promise of a Single Code"

philpapers.orgJournal of Aesthetics and Art Criticism 掲載で、中身もフィクションの美学に関わる内容だが、筆者の専門は心の哲学のようだ。 スティーブン・スティッチと共同研究しており、この論文自体は単著だが、スティッチとの共同研究に基づいている…

Deena Skolnick and Paul Bloom ”The Intuitive Cosmology of Fictional Worlds"

"The Architecture of the Imagination: New Essays on Pretence, Possibility, and Fiction"の第5章 https://pdfs.semanticscholar.org/8a0a/bb1d0e73c11017ae923a844aa0a43c67ac62.pdf 筆者のポール・ブルームはイェール大の心理学者 複数のフィクション…

Craig Derksen & Darren Hudson Hick "On Canon"

https://contempaesthetics.org/newvolume/pages/article.php?articleID=832 James Harold "The Value of Fictional Worlds (or Why 'The Lord of the Rings' is Worth Reading)" - logical cypher scape2でカノンという言葉が出てきたが、ここでいうカノン…

James Harold "The Value of Fictional Worlds (or Why 'The Lord of the Rings' is Worth Reading)"

ジェームズ・ハロルド「虚構世界の価値(なぜ『指輪物語』を読むのか)」 https://contempaesthetics.org/newvolume/pages/article.php?articleID=584 この論文は、以前高田さんの記事で読んで存在を知った。 at-akada.hatenablog.com で、存在を知ってから…

Rune Klevjer, "Virtuality and Depiction in Video Game Representation"

これはウォルトン使ってる分析美学ぽいやつ。絵画と彫刻のちがい、ただのインタラクティブ映像とモデルによる表象(バーチャル/シミュレーション)のちがい、VRとARのちがいなどに関心ある人向け / Rune Klevjer, "Virtuality and Depiction in Video Game …

Rafe McGregor "The Problem of Cinematic Imagination"

カリーとスクルートンの、映画鑑賞における想像の考え方を比較している ロペスとウォルトンも出てくるが 特別面白い話をしているわけではないのだが、まあ整理としては読みやすい というか、英語が読みやすい英語だった気がする https://contempaesthetics.o…

石田尚子「フィクションの鑑賞行為における認知の問題」

teapot.lib.ocha.ac.jp いま気づいたんですが、石田尚子さんの博論全文がお茶の水女子大学のリポジトリに上がってますね。「フィクションの鑑賞行為における認知の問題」 https://t.co/iEXKkxporm— MORI Norihide / 森 功次 (@conchucame) 2020年1月27日 森…

橋本陽介『ノーベル文学賞を読む』

ノーベル文学賞というと、日本では「村上春樹が受賞するかどうか」ばかり注目され、あまりにも受賞作が読まれていない、という現状を嘆く筆者による、ノーベル文学賞受賞作家・作品ガイド 下記の目次にある通り、13名のノーベル文学賞受賞作家が取り上げられ…

マーク・スタインバーグ『なぜ日本は〈メディアミックスをする国〉なのか』(中川譲訳、大塚英志監修)

日本におけるメディアミックスについての歴史研究の本。 全6章のうち、前半の3章は『鉄腕アトム』におけるキャラクター玩具の展開に、メディアミックスの起源を、後半の3章では、角川の社史を追う形で、角川が成立させたメディアミックスという手法の展開…

橋本陽介『物語論 基礎と応用』

タイトル通り、物語論入門 理論編と分析編とに分かれており、後半の分析篇では実際の作品が数多く紹介されている。 理論編では、プロップ、バルトからの流れをおさえつつ、ジュネットの『物語のディスクール』を中心に説明されている。 この本のポイントとし…

『フィルカルVol.2No.2』

宣伝:シノハラユウキ「メディアを跨ぐヴィヴィッドな想像」 松本大輝「その歌は緑の髪をしている―ボーカロイドとメイクビリーブ―」 新野安「『忠臣蔵』と『神無月の巫女』―理解され得ない欲求、のジレンマ―」 川瀬和也「大森靖子と推論主義」 「デヴィッド…

清塚邦彦『フィクションの哲学 改訂版』

新章が追加されたということで、取り急ぎそこの部分だけ読んだ。フィクションの哲学 〔改訂版〕作者:邦彦, 清塚発売日: 2017/06/24メディア: 単行本 第七章 フィクションの意義と意味 この章のタイトル、目次だけ見てた時、どういうことかわかってなかったん…

ケンダル・ウォルトン『フィクションとは何か』(田村均訳)

サブタイトルは「ごっこ遊びと芸術」 Kendall L. Walton "Mimesis as Make-Believe :On the Foundations of the Representational Arts" - logical cypher scapeの邦訳であり、1年程前に出ていたのだが、ようやく手に取ることができた。 が、まあなにぶん長…

イェスパー・ユール『ハーフリアル』(松永伸司訳)

サブタイトルは、虚実のあいだのビデオゲーム ビデオゲーム研究の博論を元にした本で、ルールとフィクションという両面からビデオゲームについて論ずる。ルールは現実に属するので、「半分現実(ハーフリアル)」というタイトル。ハーフリアル ―虚実のあいだ…

『フィルカルVol.2No.1』

「自由論入門 第3回」(高崎 将平) ●特集シリーズ:アイドル 論文「アイドルとハロプロ」(青田 麻未) 論考「2.5次元アイドル論」(小倉 健太郎) 論文「フィクションの中の哲学」(高田 敦史) 論考「たった一人の私に、あなたは気づいてくれますか?」(…

ウォルトンにおける想像のobjectについて

ケンダル・ウォルトン『フィクションとは何か』田村均訳について、 以前、高田さんが ウォルトンにおける想像の対象 - うつし世はゆめ / 夜のゆめもゆめ という記事を書き、田村氏が、「表象体の対象(an object of a represenation)」と「想像活動のオブジ…

『フィクションは重なり合う』kindle版リリース!

フィクションは重なり合う: 分析美学からアニメ評論へ作者: シノハラユウキ出版社/メーカー: logical cypher books発売日: 2016/05/02メディア: Kindle版この商品を含むブログ (6件) を見るKindle ダイレクト・パブリッシングサービスを利用して、販売を開始…

『フィルカルvol.1no.2』

要真理子「モダニズムの地平−ブルームズベリーのエクリチュール−」 松永伸司「キャラクタは重なり合う」 稲岡大志「堀江由衣をめぐる試論−音声・キャラクター・同一性−」 滝沢正之・佐藤暁「佐藤暁「声優と表現の存在論」をめぐる往復書簡」 長門祐介「連載…