SF

ブライアン・オールディス『地球の長い午後』(伊藤典夫・訳)

はるか未来、地球は植物が支配する世界となっており、人類は文明を失い、森の片隅でひっそりと暮らす存在になっていた。自グループから追放されてしまったグレンは、他の地域の見知らぬ動植物や人々を見て回ることになる。 今まで読んだオールディス作品は、…

『日本SFの臨界点 中井紀夫 山の上の交響楽』(伴名練編)

『SFマガジン2024年12月号』 - logical cypher scape2で言及されていたので。 このシリーズは、以前、『日本SFの臨界点 石黒達昌 冬至草/雪女』(伴名練編) - logical cypher scape2を読んだことがある。 あと、新城カズマを積んでる。積んでるっていうか…

春暮康一「滅亡に至る病」

文庫版『オーラリメイカー(完全版)』の書き下ろし 「オーラリメイカー」と「虹色の蛇」も加筆されているようなので、それらを読んだうえでまとめて記事にした方がいいかなとも思うのだけど、とりあえず先にこれだけ読んでしまったので。 春暮康一『オーラ…

春暮康一『一億年のテレスコープ』

長大なVLBI(超長基線電波干渉計)計画が、異星文明との接触につながり、さらにこの宇宙における知的種族の運命についての物語となっていく。 春暮康一『オーラリメイカー』 - logical cypher scape2や春暮康一『法治の獣』 - logical cypher scape2の作者に…

『SFマガジン2024年12月号』

ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』(鼓直・訳) - logical cypher scape2に続いて、今度はラテンアメリカSFSFマガジン 2024年 12 月号 [雑誌]早川書房Amazon ラテンアメリカSF特集 監修=鯨井久志 「ぺラルゴニア――〈空想人類学ジャーナル〉への…

『Kaguya Planet vol.2 パレスチナ』

ガッサーン・カナファーニー『ハイファに戻って/太陽の男たち』(黒田寿郎・奴田原睦明・訳) - logical cypher scape2に続いて、今度はパレスチナSF kaguya-books.square.site Kaguya Planet パレスチナ特集「語りと報道の偏りに抗して」全文公開、『Kaguy…

『デューン砂漠の惑星PART2』

結局、映画館に行きそびれてしまい、ようやく見た 『DUNE/デューン 砂の惑星』 - logical cypher scape2見てから1年以上たっててちょっとびっくりした。 レビューを見るとわりと賛否両論あるが、実際なんともいえないところがある。 普通に見てて面白くは…

オールタイムベストSF

SF

【10/15〆切】2025オールタイム・ベストSFアンケート実施中!|Hayakawa Books & Magazines(β) ハヤカワがこんなことをやっていると偶々知って、やってみることにした。 ◆項目 以下の6項目を対象とする。 1、国内長篇ベスト5 2、国内短篇ベスト5 3、…

グレッグ・ベア『鏖戦/凍月』

中編小説2編を収録したもの 内容的に何か関連しているのかなと思ったら、それぞれ完全に独立した内容だった。 「鏖戦」は1982年の作品で、酒井昭伸訳 「凍月」は1990年の作品で、小野田和子訳。こちらは中編といっても長めの作品(あるいは短めの長編)で、…

アルカジイ&ボリス・ストルガツキー『ストーカー』

ゾーンから人類以外のテクノロジーの産物をかすめ取ってくるストーカーたちと、ゾーンの周囲で暮らす人々の物語 かなり前から気になっていってずっと積んでいたのだが、フレッド・シャーメン『宇宙開発の思想史』(ないとうふみこ訳) - logical cypher scap…

フレッド・シャーメン『宇宙開発の思想史』(ないとうふみこ訳)

サブタイトルは、「ロシア宇宙主義からイーロン・マスクまで」 原著タイトルは”Space Forces: A Critical History of Life in Outer Space” 筆者のシャーメンは、建築と都市デザインを専門としている 7つの章に分かれていて、第1章がツィオルコフスキー、…

ジョナサン・ストラーン編『シリコンバレーのドローン海賊 人新世SF傑作選』

毎度お馴染みジョナサン・ストラーン編アンソロジーって書くつもりだったんだけど、調べてみたら、邦訳されているのも実際に読んだのものまだ2冊目っぽくて、お馴染みという程冊数なかった。 以前はジョナサン・ストラーン編『創られた心 AIロボットSF傑作選…

日本SF作家クラブ編『地球へのSF』

日本SF作家クラブによるアンソロジー第4弾 第1弾から第3弾は読んでない。なんかテーマ設定とかにそこまでピンとくるものがなくて……。 今回も地球SFという、ちょっととりとめもない感じのないテーマではあるのだけど、面子が気になったので手に取ってみたら、…

ラヴィ・ティドハー『ロボットの夢の都市』

人類が太陽系全体に植民し、ロボット兵器を投入した世界大戦が何度か起きた後の時代、アラビア半島の都市ネオムを舞台に、慎ましやかに生活する人々のもとに、かつての兵器ロボットが現れる。 ティドハーについては、以前ラヴィ・ディドハー『完璧な夏の日』…

津久井五月「われらアルカディアにありき」「ラスト・サパー・アンド・ファースト・サマー」「川田さんの遺書」

SNSで相互フォローの方が、津久井作品についてポストしていて存在を知った短篇 kaguyaはともかく、fanboxやnoteはさすがに分からん 3作ともそれぞれ結構違う雰囲気の話 われらアルカディアにありき 「牛の王」と設定を共有しているらしい作品。なお、「牛の…

ラリイ・ニーヴン『無常の月 ザ・ベスト・オブ・ラリイ・ニーヴン』(小隅黎・伊藤典夫訳)

1960年代~70年代にかけて書かれたニーヴンの短篇傑作選 『20世紀SF〈3〉1960年代・砂の檻』 - logical cypher scape2を読んで気になった作家の1人 また、ブルース・スターリング『スキズマトリックス』(小川隆・訳) - logical cypher scape2の解説で、60…

ブルース・スターリング『スキズマトリックス』(小川隆・訳)

ブルース・スターリング『蝉の女王』(小川隆・訳) - logical cypher scape2に引き続き、〈機械主義者/工作者〉シリーズ 同シリーズ、唯一の長編 『蝉の女王』はそこそこ面白かったが、スターリングの長編というとギブスンとの共作だがウィリアム・ギブスン…

ブルース・スターリング『蝉の女王』(小川隆・訳)

スターリングの未来史〈機械主義者/工作者〉シリーズの短編集。 (なお、本来の「蝉」の字体は、上の点3つが口2つになっている奴なのだけど、環境依存文字らしいのでここでは「蝉」と記す) 大体23世紀頃の太陽系が舞台になっている。 人類は宇宙に適用す…

ジェフリー・フォード『最後の三角形 ジェフリー・フォード短篇傑作選』(谷垣暁美・訳)

アメリカの幻想小説家ジェフリー・フォードの、日本オリジナル短編集 このフォードという作家のことを全然知らなかったのだが、2000年代に長編三部作が国書刊行会から訳出されている。 本作は、同じく日本オリジナル短編集『言葉人形』に続く日本では2作目…

『星、はるか遠く 宇宙探査SF傑作選』(中村融編)

編者が中村融編『宇宙生命SF傑作選 黒い破壊者』 - logical cypher scape2を編んだ際にページ数の関係で見送った「表面張力」を核にする形で組まれたアンソロジー 「故郷への長い道」「タズー惑星の地下鉄」「地獄の口」「異星の十字架」「表面張力」が面白…

キム・チョヨプ『この世界からは出ていくけれど』

韓国のSF作家キム・チョヨプによる短編集 キム作品の邦訳としては『わたしたちが光の速さで進めないなら』『地球の果ての温室で』に続く3冊目となる。1、2冊目も存在は知っていたのだが、書評等読んでもあまりピンと来ていなかった。3冊目は書評等を読ん…

キム・スタンリー・ロビンスン『未来省』

パリ議定書に基づき、気候変動に国際的に対処するために発足した組織、通称「未来省」の活動を中心に、気候変動に見舞われる2020年代後半以降の世界を描く。 火星三部作のキム・スタンリー・ロビンスンの新刊ということで、面白そうだなと思って読むことにし…

『SFマガジン2023年12月号』

SFマガジン読むの久しぶりな感じ(しかし見返してみると、以前からさほど頻繁には読んでいないな)。 グレッグ・イーガンの新作中編が掲載されているということで、読まねば、と。SFマガジン 2023年 12 月号 [雑誌]早川書房Amazon グレッグ・イーガン「堅実…

『20世紀SF〈3〉1960年代・砂の檻』

河出文庫から出ている、10年ごとに区切ったSFアンソロジー。 以前、『20世紀SF<4>1970年代接続された女』 - logical cypher scape2を読んだことがある。 なんでそんな部分部分だけ読んでいるのかというと、古典をちゃんと読んでいく真面目さが自…

アンディ・ウィアー『プロジェクト・ヘイル・メアリー』

人類存亡の危機に立ち向かうべく、別の惑星系へ旅立つことになった1人の科学教師の物語。 アンディ・ウィアー『火星の人』 - logical cypher scape2やアンディ・ウィアー『アルテミス』 - logical cypher scape2に続くウィアーの第三長編。 アストロバイオロ…

『蒸気駆動の男 朝鮮王朝スチームパンク年代記』(吉良佳奈江・訳)

この前、ギリシアSF(『ギリシャSF傑作選 ノヴァ・ヘラス』 - logical cypher scape2)を読んだので今度は韓国SFを読んでみることにした。 最近、中国SFに次いで韓国SFも翻訳が進んでいる様子があるが、全然読んだことがなかったので、いい機会かと思い。ま…

『DUNE/デューン 砂の惑星』

ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による同名SF小説の映画化作品。 ヴィルヌーヴ監督作品というと、『メッセージ』 - logical cypher scape2、[ 『ブレードランナー2049』 - logical cypher scape2]を見たことがあるが、映像化困難とされるSF作品請け負い監督のよう…

『日経サイエンス2023年10月号』

オウム以上フクロウ未満? 生成AIの“思考力” G. マッサー 大規模言語モデルとは何か 出村政彬 脳とAI 溶ける境界 大規模言語モデルが開く脳の理解 平 理一郎/丸山隆一 タンパク質を語る言語 出村政彬 「理解」はどう変わるか 瀧雅人氏に聞く エンケラドゥ…

倉田タカシ『あなたは月面に倒れている』

筆者の初のSF短編集。2010年代各所で発表された作品8編*1と書き下ろし1編を収録している。 あとがきで作者自身が述べているが、前半と後半とで作品の雰囲気というか作風がずいぶんと違っている。前半の5編は設定やプロットがちゃんとあるが、後半4編は、奇…

『ギリシャSF傑作選 ノヴァ・ヘラス』

ギリシャで書かれた短編SFアンソロジー もはや完全に翻訳SFの一角をなした竹書房文庫から。 タイトルには傑作選とあるが、元の本として『α2525』という、未来のアテネを想像するという企画による短編アンソロジーがある。これにさらに英語圏で発表されていた…