『ラブ、デス&ロボット』シーズン3

NetflixオリジナルのSF短編アニメオムニバス。
2019年にスタートしたシリーズ。
『ラブ、デス&ロボット』 - logical cypher scape2
最近、シーズン3が公開された。なお、シーズン2は、昨年2021年に公開されていたようだが、全然気付いていなかったので、今後見るかもしれない。
事前に見かけていた評判に違わず、「彼女の声」が圧倒的であったが、個人的には「最悪な航海」や「地下に眠りし者」といったモンスター系(?)が面白かった。
「死者の声」もよかったと思う

下記を書くにあたり、各作品のクレジットは「ラブ、デス&ロボット」シーズン3もひと口サイズのSF物語をお届け!─全9話のエピソードガイドを参照した。

ロボット・トリオ:出口戦略

監督:パトリック・オズボーン
脚本:ジョン・スコルジー
スタジオ:Blow Studio

シーズン1にもあった「ロボット・トリオ」の続編
3体のロボットが、絶滅した人類の様々なコミュニティ跡を巡る(武装コミューン、富豪の水上プラント、さらに大富豪の地球脱出用ロケット発射場)
で、イーロン・マスク&ネコオチ

最悪な航海

監督:デヴィッド・フィンチャー
脚本:アンドリュー・ケヴィン・ウォーカー(原作はニール・アッシャーによる短編小説)
スタジオ:ブラー・スタジオ
捕鯨的(鯨ではなくなんか架空の生き物)なことをしている帆船が、巨大なカニの化け物に襲われる(この海域はもともと危険らしい)
船底に閉じ込め、くじ引きで生け贄となる船員を送り込む。が、このカニは人語を解し(というか食った人間の記憶とかを引き継げるっぽい)、人の大勢いる島へ向かえと要求してくる。
この船員は、他の船員たちと相談し、いや他の船員たちとの騙しあいをしながら、カニから生き延びる術を模索する。
フォトリアルな3DCGで、カニとの死闘、船員同士の駆け引きがスリリングに描かれる。
ゴア描写もあり、主人公である船員が他の船員を平気で殺していく展開なのだが、見終わった後はわりと悪くない。というか、主人公実はいい奴だったのではないか、と。
吹き替えの川島得愛さんが、いい具合に悪役声(?)なのもよい*1

死者の声

監督:エミリー・ディーン
脚本:フィリップ・ゲラット(原作はマイクル・スワンウィックによる短編小説)
スタジオ:ポリゴン・ピクチュアズ
元のタイトルはThe Very Pulse of the Machine とあり、こちらの方が内容的には正しいのだが、「死者の声」というタイトルもまあなしではない。
木星の衛星イオで探査車を走らせていた2人の宇宙飛行士だったが、火山活動に巻き込まれ、ローバーが故障。1人は死んでしまう。生き残った主人公は、着陸船まで歩きはじめる。
自分の酸素ボンベが壊れてしまったので、死んだ方の宇宙服とつないで、遺体を引っ張りながら歩いて行く。が、このために、行程はどんどん遅れ、主人公はモルヒネアンフェタミンを投与しながら歩みを進める。これにより幻覚が始まり、死んだ相棒の声が聞こえ始めるのだが……実はそれは、死んだ宇宙飛行士の脳を介して、衛星イオそのものが彼女へと話しかけていた!(イオが自分はマシーンだと名乗っている)
幻覚によりイオの風景が変化したり、あるいは、宇宙服のバイザーを通して電磁場を可視化することで見えるイオの風景だったり、CGアニメの視覚的な面白さが展開される。
見終わったら、制作がポリゴン・ピクチュアズで驚いた

小さな黙示録

監督:ロバート・ビシ、アンディ・ライオン
脚本:ロバート・ビシ、アンディ・ライオン(原作はジェフ・フォウラー、ティム・ミラーによる短編小説)
スタジオ:BUCK
ミニチュアコマ撮り(?)アニメ(上述のねとふり.comによると、ティルトシフトレンズを使った実写とCGアニメーションの組み合わせということなので、実風景をミニチュア風に撮影した奴なのかも。ホワイトハウスとかエッフェル塔とかサン・ピエトロ大聖堂とかが出てくるし)
原題は、Night of the Mini Deadであり、ゾンビものである(邦題だとそれがよく分からなくなるのでは?)
墓場からゾンビが蘇り、世界中のあちこちへと猛烈な勢いで増えていく。ミニチュアな映像なので、画面も引きで構成されており、人とかゾンビとかも群れとしてしか見えない。基本的にセリフもほぼなし((ミニチュアなので)なんか早送り風の甲高い声が入ってる。一部言葉として聞き取れるものもあるが、基本的には何言ってるのかよく分からん)。ゾンビの群れが出てきて、それを様々な手段で攻撃しつつ、やられてゾンビが増えて、というのを繰り返して、エスカレーションしていく。
なので、物語面では特に面白いところはなく、ミニチュアな映像の中、わーわー動いているのを見て楽しむものになっている
上記ねとふり.comによるクレジット表記を見ると、原作小説があって「え?」となる。ググってもよく分からなかったが、ティム・ミラーは『ラブ、デス&ロボット』のプロデューサーなので、本作のための書き下ろしか何かなのかな。

絶体絶命部隊

監督:ジェニファー・ユー・ネルソン
脚本:フィリップ・ゲラット(原作はジャスティン・コーツによる短編小説)
スタジオ:ティットマウス
アメコミ風の絵柄の作品。ある小隊が、山中で別の隊がミンチにされているところに出くわす。すわ、目の前には巨大なクマが。そのクマはただのクマではなく、CIAによって開発されたロボット兵器であった。
ひゃっはー、ひたすら撃って撃って撃ちまくれー、だめだー効かねー、うぎゃー、やられたーみたいなのを繰り返すコメディだった
エンドクレジットの曲がやけにいいなと思ったら、skrillexだった

監督:ティム・ミラー
脚本:ティム・ミラー(原作はブルース・スターリングによる短編小説)
スタジオ:ブラー・スタジオ
スターリングの短編が原作となっているということだけ事前に知っていたので、サイバーパンクな作品なのかなと思ったら、宇宙生物SFだった。
スターリングってほとんど読んだことがなくて知らなかったのだけど、『スキズマトリックス』も舞台は宇宙なんですね……。この「巣」も『スキズマトリックス』と同じ世界観を舞台にしているらしい?
原題はSwarmで群れという意味。
小惑星帯みたいなところに、社会性昆虫みたいな生物の巣があって、1人の科学者がその中に暮らすようにして研究しており、そこにもう1人別の科学者が訪れるところから始まる。
昆虫のような見た目をしているけれど、大きさは人間くらいあり、また、複数の種が共生しており、分業体制をとっている。
後から来た科学者の方は、この群れを人類のために利用しようとする
誰のために働いているかなどということを理解する知性を持ってないのだから、人類のために働かせても問題はないだろう、と。
しかし、実はこの群れにも知性があって、というか、知性を担うユニットは普段休眠状態になっていて、侵略種族が出てきた時だけ起動するようになっている。そして、共生している種は、実はかつての侵略種族であったことが明かされる。
で、その知性ユニットが、この科学者に選択を迫るシーンで終わるんだけど、この選択肢の意味がいまいちよく分からず、なんか突然終わった感が否めなかった。


メイソンとネズミ

監督:カルロス・スティーヴンス
脚本:ジョー・アバクロンビー(原作はニール・アッシャーによる短編小説)
スタジオ:Axis Studios
メイソンさんの倉庫にネズミが出てくるので駆除しようとしたら、なんとネズミが原始的な弓矢で武装していた
早速、駆除業者を呼ぶと、対ネズミ用レーザー兵器ユニットを売りつけられる。ところが、それもネズミに撃破されると、今度は最終兵器として、対ネズミ用ロボット兵器をすすめられる。
サソリ型をしたこのロボットは、情け容赦ない殺戮マシーンでネズミを次々と駆除していくのだが、その血も涙もない仕事っぷりにメイソンさんもどん引きしてしまい、また勇敢に抵抗し続けるネズミの姿に感銘を受け、最終的にはメイソンさんとネズミは仲直りする
というわけで一応ハッピーエンドなんだけど、そもそもロボット投入したのメイソンさんだし、そこで仲直りはできんやろ、とツッコミたくなった

地下に眠りしもの

監督:ジェローム・チェン
脚本:フィリップ・ゲラット(原作はアラン・バクスターによる短編小説)
スタジオ:ソニー・ピクチャーズ・イメージワークス
人質救出作戦遂行中の特殊部隊が、武装勢力の逃げ込んだ洞窟の中へと潜入する。先ほどまで生きていた人質や犯人たちの白骨死体が見つかる。一体どうしたらこうなってしまうのかという訝しがる彼らの前に、クモのような虫の群れが襲いかかってくる。何人かの兵士がその虫に食われてしまう中、なんとか逃げ切ると、そこはおそろしく巨大な地下空間が広がっていた。謎の地下建造物と不気味な声……。
奥へ奥へと進んでいくと、さきほどの虫たちのボスとおぼしき、巨大な化け物が拘束されている。不気味な目で我を解き放てーと心をコントロールしようとしてくる。最後に生き残った兵士は、果たして自らの両目をえぐり取ることでその化け物のコントロールから逃れたのだった……
というわけで、終始サスペンスフルで、ほぼ全滅で、最後に生き延びた人も目は失ってるし、正気が残っているかどうかも怪しい感じで、明るいところが一切ない作品だけれども、しかし、その点で完成度も高いと思った

彼女の声

監督:アルベルト・ミエルゴ
脚本:アルベルト・ミエルゴ
スタジオ:Pinkman.TV
明らかに他の8編とは雰囲気やジャンルが異なる作品
森の中を行軍する甲冑の騎兵隊が、とある湖畔で休息をとる。1人の兵士が湖の中に金が落ちているのを見つける。湖の中から全身に装飾品をまとった女が現れ、不気味な声を発すると、騎兵たちは狂ったように湖へと突進し溺れ死んでいく。先の兵士は、耳が聞こえなかったため、1人それを逃れる。
全編にわたって台詞はなく、女から逃げながらも金品を奪おうとする兵士と、その兵士を魅了しようとする(?)湖の女の攻防(?)が描かれる。
踊り、叫び、カメラのブレ、水の流れ、血しぶき、散らばる装飾品……が織りなす映像美と、民話・説話的な物語や世界観の組み合わせに圧倒される作品、だと思う。
甲冑姿はヨーロッパ風だが、女や兵士の顔の入れ墨など、どことなくアジア風・オリエンタルな要素があり、ファンタジー感を増している
湖を上空から撮ったカットが何回か挿入されるんだけど、あれがエスタブリッシング・ショットというのとはちょっと違うかもしれないけど、そういう役割を持ちつつ、しかし、あまり説明的でなく、絵のきれいさで惹きつけるものになってて、うまかった。

*1:しかし、キャゼルヌの人か!