小説
大江健三郎が1958年、23歳の時に書いた、初の長編作品。 戦争末期、僻村に一時的に閉じ込められた少年たちによるスモールパラダイスの形成と崩壊を描く。 プロットがめちゃくちゃしっかりしているというか明快 以前、読んでいたので再読ということになるが、…
2022年12月〜2023年3月 事の発端(?)は、文学読もうかという気持ち - logical cypher scape2を参照 これが2022年の9月頃で、12月頃から「海外文学読むぞ期間」と称して海外文学を読み始めた。 (9~11月は日本文学篇で、まとめは最近読んだ文学 - logical …
コルタサルのアルゼンチン時代に書かれた8篇からなる第一短編集。 海外文学読むぞ期間の一環として、フリオ・コルタサル『悪魔の涎・追い求める男他八篇』(木村榮一・訳) - logical cypher scape2に続いてコルタサル。 のちにパリに移住する作家だが、それ…
老詩人の遺作となった詩「青白い炎」に、元隣人がつけた大量の注釈が、とある王国から革命の末亡命してきた元国王の物語になっているという作品。 著者のナボコフというのは『ロリータ』のナボコフである。というか、自分はナボコフについて『ロリータ』の作…
地上でただ1人の人間となってしまった主人公が、狂気すれすれの中でタイプした手記 今、狂気すれすれ、と書いたがそれはあまり適切な言い方ではないかもしれない。 その筆致自体は軽妙で、狂人のようでは全くない。 誰もいなくなった世界を孤独にさまよいな…
AIをテーマに4篇収録した短編集 積ん読しているさいちゅうにいつの間にか文庫化されていた。 今まさに現実世界で話題になり続けている技術であるだけに、あっという間に古びてしまいかねないテーマではある。 ディープラーニング系のAIなどの発展が、人間の…
カナダ東部を舞台としたファミリーサーガ 物語の舞台は1990年代後半で、主人公は、18世紀にスコットランドのハイランド地方からカナダのケープ・ブレトン島へ移民してきた男の子孫であり、自らの半生と一族について物語っていく。 カナダというのは何となく…
タイトルにあるとおり、10篇を収録した短編集 日本オリジナル短編集っぽくて、『動物寓話譚』『遊戯の終わり』『秘密の武器』『すべての火は火』といった短編集から、いくつかずつ採って編まれたもののようである。なお、これらの短編集もそれぞれ翻訳されて…
伊坂幸太郎が、自分の好きな小説でドリームチームを組んだという短編アンソロジー 自分は先に伊坂幸太郎編『小説の惑星 オーシャンラズベリー篇』 - logical cypher scape2を読んだが、どちらから先に読めばよいとかいうことはないので、このちょっと不思議…
伊坂幸太郎が、自分の好きな小説でドリームチームを組んだという短編アンソロジー 自分は伊坂幸太郎をほとんど読んだことがない(『死神の精度』と阿部和重との共著である『キャプテンサンダーボルト』くらい)が、収録されている作家を見て気になったので読…
アメリカ文学研究者で翻訳者である筆者が、主に20世紀後半以降に書かれた実験小説を色々紹介してくれる本。 今、海外文学読むぞ期間を個人的に展開中だけれど、それのガイドになればなあと思って。それ以前から気になっていた本ではあるけれど。 どういう手…
作者が2022年10月2日に亡くなったのを受けて、再読した。 受けて、というにはちょっと時間が経ちすぎた感じもするが。 追悼というのもなんか変な感じである。 再読したのは亡くなったことがきっかけだが、読んでいる最終は、この作者が最近亡くなったのだ…
海外文学読むぞ期間実施中。いよいよ「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」へ突入 とりあえず短編アンソロジーから読む。 この「短編コレクション」は1と2があり、1は南北アメリカ、アジア、アフリカの作家、2はヨーロッパの作家から作品が採られている。 …
身近な人の死を引き寄せてしまう体質の名探偵トランジと、彼女の友人で何故かトランジと一緒にいても死なないピエタの友情ないしシスターフッドを描いた物語。 元々、短編(藤野可織『おはなしして子ちゃん』 - logical cypher scape2収録)として書かれた作品…
Qfwfq老人が、宇宙創成や恒星の誕生の頃、あるいは自分が恐龍だった時代や陸上生活を始めた頃の脊椎動物だった時代を語った物語を集めた連作短編集 「自分が恐龍だった」とか何やねんという話だが、実際Qfwfqが「わしは恐龍だった」云々と語っているのであり…
フォークナーの短編集 ウィリアム・フォークナー『アブサロム、アブサロム!』(藤平育子・訳) - logical cypher scape2は面白かったものの、文体が文体なだけに、フォークナーを続けて読む気はなかったのだが、他のフォークナー作品をぱらぱらっと見てみた…
フォークナーのヨクナパトーファ・サーガを構成する長編作品の一つ。 ミシシッピ州ヨクナパトーファ郡ジェファソンに突如現れて、大地主となったトマス・サトペンの盛衰を、関係者たちの回想の語りが描き出す。 原作は1936年刊行。 訳者解説によれば、フォー…
先日、日本SF大賞候補作が下記の通り発表された。 樋口恭介(編)『異常論文』(早川書房) 荒巻義雄『SFする思考 荒巻義雄評論集成』(小鳥遊書房) 小田雅久仁『残月記』(双葉社) 小川哲『地図と拳』(集英社) 久永実木彦「わたしたちの怪獣」(東京創…
ノーベル賞作家が、19世紀ブラジルで実際に起きたカヌードスの乱という出来事を描いた長編歴史小説。 海外文学読んでくぞ期間第一弾として。 橋本陽介『ノーベル文学賞を読む』 - logical cypher scape2を読んで知って以来、気になっていた。 タイトルがSFっ…
以前、文学読もうかという気持ち - logical cypher scape2という記事を書いたが、 2ヶ月ほど経ち、日本戦後文学について、自分の中で一段落ついてきたので、これに該当する奴をリンクしておく。 なお、上記の記事を書いたよりも前のものも含む。 日本文学(…
澁澤龍彦の遺作にして代表作(唯一の長編らしい)。 高丘親王が天竺を目指す道中を描く作品だが、怪奇・幻想的な風景が、エキゾチックかつユーモラスな文体で綴られている。 元々、特に読もうと思っていたわけではなかったのだが、図書館で島尾敏雄作品を借…
島尾敏雄「離脱」 『群像2016年10月号(創刊70周年記念号)』その1 - logical cypher scape2で以前読んだことがあるのだが、この記事を見直してみると 島尾敏雄「離脱」(1960年4月号) 夫婦の話 ずっと勝手してた夫が妻からいろいろ と非常にそっけな…
筆者の、特攻隊経験をもとにして書かれた系列の作品と、夢系列の作品とを収録した短編集 島尾敏雄については[『戦後短篇小説再発見 6 変貌する都市』 - logical cypher scape2」を読んだら「蜃気楼」が面白かったので、続いて島尾敏雄『夢屑』 - logical cyph…
言わずと知れたスチームパンクSFの古典 遙か昔に一度読んだことがあったのだが、全然内容を把握することができず、いつか読み直そうと思いながら幾星霜……。 ギブスン+スターリング『ディファレンス・エンジン』 - logical cypher scape2 最近、巽孝之『恐竜…
1970~1980年代、筆者が50代後半から60代前半の頃に書かれた短編集。 『戦後短篇小説再発見 6 変貌する都市』 - logical cypher scape2で読んだ「摩天楼」が面白かったので、手に取ることにした。 解説によると、島尾作品には、『死の棘』など妻との関係を書…
夢や幻想をテーマに、1949年の日影丈吉「かむなぎうた」から、1996年室井光広「どしょまくれ」まで11篇を集めたアンソロジー。 このシリーズは、まず全10巻で刊行されたが、編集委員の中ではこれでは分量が足りないと考えており、第1期10巻が全て重版できた…
『ifの世界線 改変歴史SFアンソロジー』所収の短編 このアンソロジー自体、読みたいなと思っているのだが、他に読みたい本が結構たまっていて、色々比較しているうちに優先順位を少し下げてしまった一方、本作だけ、web上で期間限定で読めるうちに読んでいた…
西崎憲の編集によるムック本シリーズ「kaze no tanbun」 「特別ではない一日」「移動図書館の子供たち」「夕暮れの草の冠」の全3巻なのだが、収録されている作家のメンツを見比べて、3巻中2巻目という中途半端さながら「移動図書館の子供たち」を手に取って…
先日、ハヤカワSFコンテストと創元SF短編賞 - logical cypher scape2という記事で「坂永雄一や酉島伝法など、年刊SF傑作選などを通じてわりと読んでいてもう少し読みたいなあと思っている作家もいる。」と書いたのだが、そういえば、最近のSFマガジンに坂永…
「家族」や「都市」などテーマ別で編まれた同アンソロジーだが、10巻は実験的な表現方法で書かれた作品を集めたものとなる。 『戦後短篇小説再発見4 漂流する家族』 - logical cypher scape2 『戦後短篇小説再発見 6 変貌する都市』 - logical cypher scape…