小説

石黒達昌『診察室』

石黒達昌の電子書籍版短編集 『日本SFの臨界点 石黒達昌 冬至草/雪女』(伴名練編) - logical cypher scape2を読んだ勢いで手に取った。 どういう経緯で成立した企画なのかはよく分からないのだが、石黒については電子書籍オリジナル短編集というのがいく…

月村了衛『機龍警察白骨街道』

機龍警察シリーズ長編第6弾 ミャンマーに赴くことになった部付警部3人、そして京都を舞台に城木は親戚たちと対峙する。 特捜部解体に動き出した〈敵〉『機龍警察 白骨街道』読了(昨日の夜遅くに読み終わった。おかげで寝不足気味)よくこんな話が書けるな………

ラヴィ・ディドハー『完璧な夏の日』

様々な特殊能力を持った超人(ユーバーメンシュ)が存在する20世紀を描くSF おおむね第二次世界大戦前後のヨーロッパが舞台だが、ベトナム戦争やアフガン侵攻、911なども出てくる。なお、原題はThe Violent Centuryであり、こちらのタイトルの方が内容には沿っ…

『パワードスーツSF傑作選 この地獄の片隅に』(ジョン・ジョゼフ・アダムズ編、中原尚哉訳)

パワードスーツをテーマにした書き下ろしSFアンソロジー やはり宇宙や戦場を舞台にした作品が多いが、開拓時代のオーストラリアやスペイン内戦を舞台にした歴史改変系SFがあったり、ラブロマンスサスペンスものがあったりと、多様性があってちょっと驚く。 …

『SFマガジン』2021年6月号

異常論文特集 SF短編集とかに時々入ってる論文風とかレポート風の作品が好きなので、この特集は当然買いだった そういう感じの作品としては、柞刈湯葉の裏アカシックと、柴田勝家の宗教性原虫がそれっぽさ(?)があって面白かったが、一方、最後に並ぶ3編が小…

冲方丁『マルドゥック・アノニマス6』

ウフコックがアノニマスからウフコック・ペンティーノへと帰る道を歩み出す 4巻から続いた、2つの時間に分かれて進む展開が、ここにきてようやく合流 再会と再出発としての別れを同時に描くために、ここまでこんな展開をしてきたのか、と思った冲方丁『マル…

高山羽根子『首里の馬』

芥川賞受賞作首里の馬作者:高山羽根子発売日: 2020/07/27メディア: Kindle版 沖縄・港川が舞台 未名子は、子どもの頃からとある私設資料館の整理を手伝っている。各地でフィールドワークをしていた在野研究者の順(より)さんが、沖縄で集めた様々な記録 一方…

オキシタケヒコ『筐底のエルピス7 継続の繋ぎ手』

とりあえず読み終わったのでその記録筺底のエルピス7 -継続の繋ぎ手- (ガガガ文庫)作者:オキシタケヒコ発売日: 2021/02/18メディア: Kindle版 今まで頼りになる味方だった人物が、それも3人まとめて敵になってしまった、さあどうする、という回だった

橋本輝幸編『2010年代海外SF傑作選』

橋本輝幸編『2000年代海外SF傑作選』 - logical cypher scape2に引き続き、2010年代傑作選 個人的な好みでは、2000年代のより2010年代の方が好きな作品が多かった。 前半にポジティブな作品、半ばにダークな話が続き、後半は奇妙な話ないし不思議な動物の話…

天冥の標9・10

というわけで読み終わりました 最後はシリーズの集大成なわけだけども、各巻ごとに異なる顔を見せてきた本シリーズは最終巻でもやはりそうで、これまでになくスペオペ 無数の地球外知的生命体種族が現れ、意味不明なスケールの宇宙艦隊戦をやり始める ポッと…

天冥の標(7・8)

巻ごとに異なることを色々やってるこのシリーズ 7巻は、十五少年漂流記、ただし子どもの数は5万人、みたいなっ 奴だった で、少しずつ、これが一巻のメニーメニーシープにつながっていくんだろうなというのは分かってくるんだけど、実際に繋がった時には、う…

天冥の標(1〜4)

ついに読み始めてしまった…… これ読み始めたら、しばらく他のもの手につかなくなるなと思って、読まずにいたのだけど 無料だったkindleを読み始めたのが運の尽きw とりあえず途中経過 こんなにも性と羊をめぐる話だったとは あと、こんなに各巻ごとに時代も…

スタスニスワフ・レム『完全な真空』

架空の本についての書評 対象となるのは、小説が多いが、最後の4編は学術書 原著が1971年、1989年に刊行された邦訳が今年文庫化された。 SF的な作品もあれば、文学パロディなものもある。 今でも面白いなあ、というものもあれば、もうさすがに古いかなという…

伴名練編『日本SFの臨界点[恋愛編]死んだ恋人からの手紙』

タイトル通り、恋愛SF(一部、恋愛ではなく家族愛ものだが)を集めたアンソロジー 何故か歴史改変ものが2作ある。 恋愛SFというと時間SFと相性がよいという勝手なイメージがあるが、その点直球の時間SFはなく、しかし、歴史改変ものも広義の時間SFと捉えればそ…

津久井五月『コルヌトピア』

植物と都市、そして庭園のSF 人と居場所を巡る物語、かもしれない 「コルヌトピア」と、文庫化に伴い、その後日譚(15年後を描いた)「蒼転移」が書き下ろしで収録されている。 ビルディングが植物で覆われた未来都市、というのは絵的にはありがちだが、新宿と…

伴名練編『日本SFの臨界点[怪奇編]ちまみれ家族』

1961年の作品から2016年の作品まで、ギャグ的な作品も含めて、広い意味でSFホラー作品を集めたアンソロジー 上に1961年からとは書いたものの、収録作の大半は90年代及び2000年代の作品である。この時期の作品が多い理由は、編集後記に書かれている。 上に「…

『SFマガジン2020年8月号』

特集・日本SF第七世代 ここでは、北野勇作、野尻抱介を第4世代、冲方丁、小川一水、上田早夕里、伊藤計劃、円城塔を第5世代、宮内悠介、酉島伝法、小川哲を第6世代とした上で、それ以降を第7世代としている。 まあ、世代分けにどれくらいの意味があるかはと…

スティーブン・ミルハウザー『私たち異者は』

日常の中に紛れ込んだ奇妙なものを描くミルハウザーの短編集 原著は2011年 標題作をはじめ「私たち」という一人称複数形を使う語りによる作品が多く(7作中5作)印象的だった 帯にも引用されている訳者あとがきに「ミルハウザーといえば「驚異」がトレードマー…

冲方丁『マルドゥック・アノニマス5』

バロットが過去と和解し、ハンターが過去を隠されていたことに気付くまでの話冲方丁『マルドゥック・アノニマス1』 - logical cypher scape2 冲方丁『マルドゥック・アノニマス2』 - logical cypher scape2 冲方丁『マルドゥック・アノニマス3』 - logica…

奥泉光『雪の階』

二・二六事件の迫る昭和の東京を舞台に、伯爵の娘笹宮惟佐子が親友の死の謎に迫るミステリ 今回はSF要素はないものの、やはりジャンル横断的な作品となっている。 読後にググって出てきた鴻巣友季子のレビューが簡にして要を得ている allreviews.jp ストーリ…

陳楸帆『荒潮』

「80后(80年代生まれ)」の中国SF作家陳楸帆(スタンリー・チェン)の第一長編。 中国のとある島における、島民と出稼ぎ移民との対立を背景にしたサイバーパンク風作品。 陳の作品は、ケン・リュウ編『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』 - logical c…

テッド・チャン『息吹』

控えめに言って最高 というか、テッド・チャン作品はテッド・チャンにしか出せない世界観になっている。 例えば、確かにSFではあるのだが、必ずしも現代の科学の延長にはない世界を舞台にしていることなど息吹作者:テッド・チャン出版社/メーカー: 早川書房…

アーカイブ騎士団『会計SF小説集』

会計SF、一体なんだそれはという感じだけれど、会計SFなんだなあ 過去にアーカイブ騎士団『流通小説集』 - logical cypher scape2で流通小説なる新ジャンルを開拓したアーカイブ騎士団の面目躍如といったところか会計SF小説集 アーカイブ騎士団作者:アーカイ…

群像2020年1月号

群像 2020年 01 月号 [雑誌]作者:出版社/メーカー: 講談社発売日: 2019/12/07メディア: 雑誌 〈新連載小説〉ゴッホの犬と耳とひまわり 長野まゆみ 〈新年短篇特集〉 見るな 瀬戸内寂聴 焚書類聚 皆川博子 タンパク 高樹のぶ子 カズイスチカ 高橋源一郎 星を…

宙を数える 書き下ろし宇宙SFアンソロジー

創元SF短編賞出身者による宇宙SF競作 時間SFアンソロジーである『時を歩く』とセットの企画なのだが、とりあえず宇宙が面白そうだったのでこちらをまず手に取った。 が、めちゃくちゃ面白い どの作品も当たりで、かなり満足度が高い。レベルの高い短編集だと…

郝景芳『郝景芳短篇集』(及川茜訳)

中国のSF作家である郝景芳(ハオ・ジンファン)の短編集 もともと中国では2016年に『孤独深処(孤独の底で)』というタイトルで出版された短編集全11篇の中から7編が収録されている。 郝景芳は、ケン・リュウ編『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』 - …

ギョルゲ・ササルマン『方形の円』

架空の都市を描き出す36の掌編 コンセプト的にはカルヴィーノ『見えない都市』に近いが、もう少しSF寄りな感じ。また、『見えない都市』は、マルコ・ポーロがハーンに語っているという形式だが、こちらは統一された語り手は設定されておらず、淡々と都市につ…

渡辺零『Ordinay346』

この写真、右上だけ明らかにおかしいwあとでゆっくり読みます— シノハラユウキ (@sakstyle) August 11, 2019 (この写真に写っている中で他と比べて)「明らかにおかしい」奴読みました 高橋慶太郎作品をオマージュしたアイマス・シンデレラガールズ二次創…

大森望・日下三蔵編『おうむの夢と操り人形 年刊日本SF傑作選』

2018年に発表されたSF短編の中から、大森・日下の両名が選出した18編+第10回創元SF短編賞受賞作を収録したアンソロジー 元々、2008年に刊行された『虚構機関』から始まった本シリーズだが、今回、12冊目にして最終巻となる 『零號琴』のスピンオフである「「…

小川哲『嘘と正典』

『ユートロニカのこちら側』『ゲームの王国』といった長編を発表してきた筆者の初短編集 時間や歴史(世界史から家族の歴史までスケールは様々)を扱ったSF作品が主で、また「魔術師」や「嘘と正典」などはミステリ的な要素もある 紛うことなきSF作品揃いで…