小説

郝景芳『郝景芳短篇集』(及川茜訳)

中国のSF作家である郝景芳(ハオ・ジンファン)の短編集 もともと中国では2016年に『孤独深処(孤独の底で)』というタイトルで出版された短編集全11篇の中から7編が収録されている。 郝景芳は、ケン・リュウ編『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』 - …

ギョルゲ・ササルマン『方形の円』

架空の都市を描き出す36の掌編 コンセプト的にはカルヴィーノ『見えない都市』に近いが、もう少しSF寄りな感じ。また、『見えない都市』は、マルコ・ポーロがハーンに語っているという形式だが、こちらは統一された語り手は設定されておらず、淡々と都市につ…

渡辺零『Ordinay346』

この写真、右上だけ明らかにおかしいwあとでゆっくり読みます— シノハラユウキ (@sakstyle) August 11, 2019 (この写真に写っている中で他と比べて)「明らかにおかしい」奴読みました 高橋慶太郎作品をオマージュしたアイマス・シンデレラガールズ二次創…

阿部和重『オーガ(ニ)ズム』

神町トリロジー完結編! 『シンセミア』『ピストルズ』に続く、山形県神町を舞台にした三部作の最終章 さらに『ニッポニアニッポン』『グランド・フィナーレ』『ミステリアスセッティング』ともつながっている。 (なので以前は、神町サーガという呼び方をし…

劉慈欣『三体』

話題の中国SF、ファーストコンタクトものなのだけど、三部作の第一作目だけあって、まさに「俺たちの戦いはこれからだ」ってところで終わる。 前情報で、文革の話もあればVRゲームも出てくると聞いていて、さらには短編「円」も組み込まれているというので、…

シルヴァン・ヌーヴェル『巨神計画』『巨神覚醒』『巨神降臨』

6000年前に地球に残されていった巨大ロボットが発見されるところから始まる、巨神シリーズ三部作 2017年に第一作である『巨神計画』の邦訳が刊行された時点で気になっていた作品だったのだが、三部作揃って一気に読んだ方が面白そうだったので、待っていた。…

柴田勝家『ヒト夜の永い夢』

南方熊楠を主人公に、粘菌をコンピュータとして用いた自動人形=天皇機関少女Mを巡る騒動を描く、昭和伝奇SF 和歌山県田辺で研究生活を送る南方は、ある日、学会の主流派から外れてしまった者たちで結成された昭和考幽学会に参加することになる。 彼らは…

スティーブン・ミルハウザー『十三の物語』

タイトル通り、13篇の作品を集めた短編集 「オープニング漫画」「消滅芸」「ありえない建築」「異端の歴史」の4つのテーマに分かれている。 「ありえない建築」とか「異端の歴史」とかに入っている作品は、わりとSFっぽい作品。サイエンス寄りのSFではなくて…

津原泰三『ヒッキーヒッキーシェイク』

色々と話題になった本作。 ひきこもりたちが集まってCGキャラクターとかUMAの映像とかを作ることになる話で、エンタメ的にぐいぐいと読ませてくれる作品 ただ、これまで自分が読んだ津原作品と比較すると、好みの度合いとしては少し下がるかなあという感じだ…

宮内悠介『偶然の聖地』

世界にはバグがある。その中でも特大のバグであるイシュクト山を巡る物語。 エッセイと小説の中間のような作品を、という依頼で書き始めた連載をまとめたものだということだが、どう見てもSF小説 といって、エッセイ的な要素がないわけではなくて、それは膨…

ケン・リュウ『生まれ変わり』

ケン・リュウの第3弾日本オリジナル短編集 第1弾はケン・リュウ『紙の動物園』 - logical cypher scape2 で、これが第3弾ということは、第2弾を自分は読んでない ケン・リュウについて、これはこっちの勝手な思い込みかもしれないけど、最初の短編集が出た…

津原泰水『11eleven』

11編の短編を収録した作品集 筆者の、1999年から2010年までに発表された短編を集めている。 ちょっとホラーっぽいというか、幽霊や怪奇現象がでてくるわけではないが、ちょっと恐ろしい、ちょっと不気味、ちょっと不思議なところを描いている作品が多いとい…

『20世紀ラテンアメリカ短篇選』野谷文昭 編訳

タイトル通り、ラテンアメリカ文学の短編小説集 元々、あまりラテンアメリカ文学を読んでいなかった*1ので、これはちょうどいい入門になるかなと思って手に取った。 編者により、4つのテーマに分けられた章わけとなっている。 一つ一つが割と短いので、気楽…

津原泰水『ブラバン』

一連の津原泰水騒動の中、新潮社が宣伝していたのをきっかけで知り、手に取った 自分が今まで読んだ津原作品は、主にSF・幻想系の短編と『バレエ・メカニック』のみで、完全にそういうジャンルの人だと思っていて、実は今回の騒動まで、他のジャンルでも書い…

冲方丁『マルドゥック・アノニマス4』

ルーン・バロットとウフコックのバディが再起動するシリーズ第4弾 冲方丁『マルドゥック・アノニマス1』 - logical cypher scape2 冲方丁『マルドゥック・アノニマス2』 - logical cypher scape2 冲方丁『マルドゥック・アノニマス3』 - logical cypher s…

ピーター・ワッツ『巨星』

人類とは異なる知性、意識、自由意志などをテーマにしたワッツの短編集 ワッツは最近長篇が続けて邦訳が出てちょっと気になってたけど、読めていなかった 面白かった作品もありつつ、難しくてよくわからんかった作品もありつつ。 ウェブが初出という作品もそ…

大森望編『NOVA2019年春号』

大森望による、書き下ろしSFアンソロジーシリーズ。二度の中断を挟んでおり、第3期の第1弾にあたる。2019年春号とあるが、年2回ほどの刊行を目指しているとのこと。 今回、わりと2作1セットみたくなっているなあというラインナップになっている。小川・佐藤…

グレッグ・イーガン『ビット・プレイヤー』

イーガンの日本オリジナル短編集。収録作は6作品。 イーガン自体は長編がばりばり出てるから久しぶりな気はしないけど、短編集自体はわりと久しぶりなのか それにしてもイーガンは何故日本でこんなに人気なのか。自分も好きではあるけど、やっぱり難しいとこ…

ルーシャス・シェパード『竜のグリオールに絵を描いた男』

超巨大な竜グリオールを巡る短編4編を収録 巨大さという点では、おそらく他作品に登場する竜と比べて群を抜いており、全長が1キロメートル以上ある。 しかし、この竜は空を飛んだり、言葉を話したりはしない。実は、数千年前に魔法使いに殺され、大地に横た…

『SFマガジン2019年4月号』

特集「ベスト・オブ・ベスト2018」ということで、『SFが読みたい!』でベストSF2018に選ばれた作家の書き下ろし等が掲載SFマガジン 2019年 04 月号出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/02/25メディア: 雑誌この商品を含むブログを見る 飛浩隆「サーペント…

藤井太洋『公正的戦闘規範』

デビュー作を含む5編を収録したSF短編集 藤井作品をそれほど多く読んだわけではないのだが、現実に存在するテクノロジーの延長上にある未来を、ポジティブに・楽観的に描く、というのがおおむね作風と言っていいのではないかと思う。 いくつかの特徴があげ…

倉田タカシ『母になる、石の礫で』

不思議なタイトルだが、小惑星帯を舞台とした、ポストヒューマン宇宙SFである。 地球から逃げ出した12人の科学者が小惑星帯に作ったコロニー。そこで生み出された子どもたちが主人公だ。 宇宙で生まれ育った彼らの価値観、身体感覚、渇望、新たな世界への旅…

アンディ・ウィアー『アルテミス』

アンディ・ウィアー『火星の人』 - logical cypher scape2のウィアー、長編第二作 『火星の人』が火星サバイバル小説だったのに対して、『アルテミス』は月面都市犯罪小説になっており、主人公もアメリカ人白人男性宇宙飛行士から、月育ちアラビア人女性密輸…

大森望・日下三蔵編『プロジェクト:シャーロック  年刊日本SF傑作選』

2017年に発表された短編小説の中から選ばれた16編+創元SF短編賞受賞作をまとめたアンソロジー 11作目ということで、国内で編まれた年刊SF傑作選としては最多のシリーズとなったらしい。 筒井・眉村といった大御所から小川・松崎・伴名といった若手まで、SF…

残雪『黄泥街』

黄泥街という名の通りを舞台にした物語だが、その通りは瓦解寸前、糞尿にまみれ黒い雨が降り注ぎ蠅や蝙蝠が集り、住人たちの多くはほとんど狂人のようで、噛み合わない会話をまくしたてている。 一体何が起きているのだが、さっぱり分からない 個々の描写と…

高山羽根子「居た場所」他(『文藝2018年冬号』)

文芸 2018年 11 月号 [雑誌]出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2018/10/06メディア: 雑誌この商品を含むブログを見る 高山羽根子「居た場所」 芥川賞候補作となっており、選評での評価も高く、最近、立て続けに高山の短編を読んでわりと面白かったので読…

上田岳弘「ニムロッド」他(『文藝春秋2019年3月号』) 

上田岳弘は上田岳弘『太陽・惑星』 - logical cypher scape2と上田岳弘『私の恋人』 - logical cypher scape2を読んでいて、「ニムロッド」も『群像』に掲載された時点で読みたいなーと思ってたんだけど(いや、ほんとに)、今度でいいかーと思っているうち…

『小説すばる2018年10月号』

ちょっと前の号だけど、SF特集だったので気になっていた 年明けからしばらく、小説を読んでいくぞという気持ちになっているので、ようやく手に取った。 下記目次は、SF特集部分のみ 【2大SF新連載】 佐々木譲「抵抗都市」 ・連載スタート記念 佐々木譲インタ…

藤崎慎吾『鯨の王』

幻の巨大クジラを追う海洋スリラーSF 藤崎慎吾作品を読もう読もうと思って幾星霜。いやほんといくらなんでも幾星霜すぎるだろ 単行本出たのが2007年、文庫化したのが2009年の作品。 アメリカ海軍の潜水艦で、乗組員が一人ずつ死んでいくという怪死事件が発生…

『Genesis 一万年の午後』

創元日本SFアンソロジー 創刊号と銘打たれているのでシリーズ化するらしい。創元の編集部によるアンソロ。タイトルのGenesisは、「創元」の英訳みたい。 創元SF短編賞受賞作家を多くそろえ、ジャンルもバリエーション豊かな感じになっている。 久永実木彦…