小説

アンドレイ・サプコフスキ『ウィッチャーⅡ 屈辱の刻』川野靖子・訳

アンドレイ・サプコフスキ『ウィッチャーⅠ エルフの血脈』川野靖子・訳 - logical cypher scape2に引き続き2巻 ドラマのシーズン3まで見ていて、ちょうどシーズン3の終わりと原作2巻の終わりが同じあたり。 また、ドラマの続きを見てから原作を見ようか…

アンドレイ・サプコフスキ『ウィッチャーⅠ エルフの血脈』川野靖子・訳

ゲーム化・ドラマ化もされている、ポーランド発の人気長編ファンタジーの1作目 前日譚にあたる短編集は、この前読んだところ アンドレイ・サプコフスキ『ウィッチャー短編集1 最後の願い』『ウィッチャー短編集2 運命の剣』(川野靖子・訳) - logical cy…

スティーヴン・ミルハウザー『高校のカフカ、一九五九』(柴田元幸・訳)

ミルハウザーの最新短編集 短編集の原著タイトルはDisruptionsで、邦訳版では本書『高校のカフカ、一九五九』と『幽霊屋敷物語』(近刊)とに分冊される。 We Othersは、新作と旧作混ざった短編集だったが、邦訳版では新作のみ Voices in the Night は『ホー…

R・F・クァン『バベル オックスフォード翻訳家革命秘史』(古沢嘉通・訳)

1830年代のイギリス、オクスフォード大学の王立翻訳研究所に入学した、人種の異なる4人の学生たちの物語 すごい……すごかった。 すごく面白かった。 ネビュラ賞長編部門・ローカス賞ファンタジー長編部門受賞作であり、 『SFが読みたい! 2026年版』ベストSF…

クリストファー・プリースト『不死の島へ』(古沢嘉通・訳)

1981年に書かれた長編The Affirmationの邦訳 最初に書かれた「夢幻諸島」ものであり、29歳の青年のアイデンティティの揺らぎが、イギリスと夢幻諸島という2つの世界に跨がって描かれる。 プリーストの長篇としてはおそらく6作目で、初期の終わりか中期の始…

クリストファー・プリースト『逆転世界』(安田均・訳)

プリーストの第三長編(1974/邦訳1983)。プリースト初期の長編SFとして有名な作品で以前から気になっていたが、最近、創元SF文庫で復刊したのを機に読むことにした。 ネットでレビューを眺めていると、おおむね絶賛されているが、時々ものすごくdisられてい…

阿部和重『Ultimate Edition』

2022年に刊行された短編集(2025年文庫化)。短編集としては約10年ぶりだとか。 その、約10年前、2013年に刊行された阿部和重『Deluxe Edition』 - logical cypher scape2を2023年に読んだりしたので、そのあたりの時間感がむちゃくちゃだが。っていうか、Del…

藤野可織『青木きららのちょっとした冒険』

フェミニズムに出会ったミルハウザーみたいな短編集 藤野作品は以前からミルハウザーっぽいなあと思っていたけれど、本作もアイデアは結構ミルハウザーっぽいところがある それからもう一つ藤野作品の特徴としては、フェミニズム、女性の生きにくさを扱って…

クラスナホルカイ・ラースロー『北は山、南は湖、西は道、東は川』(早稲田みか・訳)

2025年ノーベル文学賞受賞作家による、京都を舞台にした小説 日本に滞在したことがあり、そのときの経験を元にした作品とのこと。 2003年発表、2006年邦訳。 クラスナホルカイ*1の小説でおそらく唯一の邦訳作品なのだが、品切れで入手困難となっているらしい…

アンドレイ・サプコフスキ『ウィッチャー短編集1 最後の願い』『ウィッチャー短編集2 運命の剣』(川野靖子・訳)

年末年始は、ウィッチャー短編集をずっと読んでいた。 ウィッチャーは、ビデオゲームやドラマとして人気のファンタジー作品のシリーズで、遅ればせながら自分も去年の終わり頃からドラマを見始めた。 『ウィッチャー』シーズン1 - プリズムの煌めきの向こう…

酉島伝法『奏で手のヌフレツン』

凹面世界に暮らす人々を2世代に渡って描く物語 そもそもタイトルの意味が、一見しただけではわからないと思うが、ヌフレツンは人名である。奏で手は、この世界における職業の一つ。 酉島作品というと、漢字を用いた独特の造語による世界観が特徴的だが、本…

長谷敏司『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』

「コンテンポラリー・ダンス」と「ロボット・AI」と「介護」を題材にして、身体性から立ち上がる人間性とは何かというテーマを描く長編小説 以前から気にはなっていたが、文庫化を機にようやく読めた。 ダンサーである主人公がバイク事故で左足を切断すると…

藤井太洋『まるで渡り鳥のように』

11本の作品からなる第二短編集 まず、初出が海外の媒体という作品が多いことに驚く 11本中、日本の媒体が初出となっている作品は5本、他は中国が4本、韓国が1本、アメリカが1本となっている。 日本語で執筆したものを、それぞれ中国語、韓国語、英語に翻訳さ…

東山彰良『流』

1970年代の台北を舞台に、殺された祖父は何故、誰によって殺されたのかという謎を縦軸に、主人公の友情・恋や進路といったエピソードが展開する青春小説 本作の存在は都甲幸治ほか『世界の8大文学賞』 - logical cypher scape2で知った。 2015年上半期の直木…

川上弘美『大きな鳥にさらわれないよう』

衰退した未来の人類を描いた連作短編集のような長編のような小説 川上弘美は、国内文学文脈でもSF文脈でも気になっていった作家だったのだけど、なかなか読んでこなかった(雑誌やアンソロジーに収録されていた短編をちらほら読んだことはあるが) 本作が、…

ミハル・アイヴァス『もうひとつの街』(阿部賢一・訳)

主人公が古本屋で手にした本をきっかけに、プラハの街の裏に隠されたもうひとつの街の存在を知っていくという長編小説 著者のアイヴィスはチェコの作家で、本作は、1993年に初版がでた著者の長編第一作。2005年の改訂版を底本に2013年に日本語訳され、2024年…

グレッグ・イーガン『祈りの海』(一部・再読)

グレッグ・イーガン『しあわせの理由』(一部・再読) - logical cypher scape2に続き、イーガンの短編をいくつか再読祈りの海作者:グレッグ イーガン早川書房Amazon キューティ 4歳で亡くなる、人工的な愛玩用赤ちゃん(人間の姿をしているが知能は著しく制…

スティーヴン・ミルハウザー『ナイフ投げ師』(柴田元幸・訳)

ミルハウザーの短編集。2008年に白水社から出ていたもの(12年にUブックス)が東京創元社から文庫化されたもの。 これまでもミルハウザーは結構読んだけど、かといって網羅的に読んできたわけでもないので、この本も「そういえば読んでいなかったな、文庫化…

グレッグ・イーガン『しあわせの理由』(一部・再読)

イーガンの最初のころ、読んだやつ、もう内容も忘れてるし、いつか再読したいなあと思っていて、 そのいつかが来た気がしたので、読んだ。 全部じゃなくて、なんとなくピックアップしたものだけ読み返してみた。 どこがどう、とは言えないけど、まあやっぱも…

ヴァージニア・ウルフ『灯台へ』(鴻巣友季子・訳)

とある家族とそこの客人たちが夏の別荘で過ごす1日を、意識の流れという手法によって描いた、ウルフの5作目の長編小説。 舞台となっている別荘は、ウルフ自身が子ども時代に夏に訪れていた別荘が、本作の主人公の1人でもあるラムジー夫人は、ウルフの母親が…

アレステア・レナルズ『銀河北極』(一部・再読)

以前読んだ時のは以下。 アレステア・レナルズ『銀河北極』 - logical cypher scape2 銀河北極 (ハヤカワ文庫 SF レ 4-4 レヴェレーション・スペース 2)作者:アレステア・レナルズ早川書房Amazon 「銀河北極」 主人公は、貨物船の船長で、船の修理に立ち寄っ…

キム・チョヨプ『派遣者たち』

異星からの菌類「氾濫体」によって地上は人類が住める場所ではなくなり、人類は地下都市での生活を余儀なくされている。主人公のテリンは、地上への探索任務を担う「派遣者」になるための試験を受けるが、自分の頭の中に生じた謎の声に悩まされる、というSF…

アレステア・レナルズ「スパイリーと漂流塊の女王」「スリープオーバー」「トロイカ」

レナルズ作品について、邦訳された奴、大体全部よんだのではないか、と思って調べてみたら、まだ読んでない奴がポロポロあったので読んでみた。 スパイリーと漂流塊の女王 『不死身の戦艦 銀河連邦SF傑作選』収録 フォーマルハウト星系で資源を巡り2つの勢力…

上田早夕里『リリエンタールの末裔』

2011年のSF短編集。え、もう15年近く前なの…… 表題作は読んでいたのだけど、その後、読むの止まってそのまま忘れてしまっていたんだよな。いや、完全に忘れたわけではなくて、ああそういえばと意識はしていたけれど。 4篇収録。最後の一つは書き下ろし やっ…

アレステア・レナルズ『反転領域』(中原尚哉・訳)

フィヨルドを北上する帆船は、「大建造物」を探そうとする探検隊を乗せている。主人公である船医は、探検隊と契約して乗船しているものの、この探検にあまり気乗りしない。果たして「大建造物」が彼らの前に姿を現わすが、しかし……という長編冒険小説 アレス…

上田早夕里『上海灯蛾』

1934年から1945年の上海租界を舞台にしたノワール小説 阿片密売の利益をめぐる上海の裏社会での駆け引きに、ファム・ファタルの暗躍と、日本陸軍特務機関で働く日露ハーフ青年の執念が絡まり合い、血で血を洗う復讐譚と自由を求める男の物語が繰り広げられて…

井上雅彦編『進化論 異形コレクション』

「進化論」をお題とした書き下ろしホラーアンソロジー。『異形コレクション』シリーズとしては36巻にあたる。刊行年は2006年だが、「魚舟・獣舟」や「貂の女伯爵、万年城を攻略す」の初出媒体で以前から気になっていた。 『異形コレクション』は、90年代後半…

『SFマガジン2022年8月号』

3年ほど前のSFマガジン。刊行当時、気になりつつもスルーしていた。 最近TLで、本誌収録の春暮康一「モータル・ゲーム」への言及を複数見かけたので、読んでみることにした。 SFマガジン 2022年 8月号早川書房Amazon 「魔法の水」小川哲 これ小川哲『地図と…

オルガ・トカルチュク『逃亡派』(小椋彩・訳)

旅、移動、解剖学をめぐり116の断章で構成された小説 白水社エクス・リブリス 筆者はポーランド人作家で、2018年にノーベル文学賞を受賞している。その際の受賞理由は「博学的な情熱によって、生き方としての越境を象徴する物語の想像力に対して」とある。博…

呉明益『眠りの航路』(倉本知明・訳)

睡眠障害に悩まされる「ぼく」の物語と、大戦末期に日本へ渡り神奈川で戦闘機製造の少年工となった父・三郎の物語とが交互に進んでいく 白水社エクス・リブリス ざっくりいって、戦争と記憶をテーマにした作品だといえる。 三郎パートの多くが日本を舞台とし…