小説

津原泰水『11eleven』

11編の短編を収録した作品集 筆者の、1999年から2010年までに発表された短編を集めている。 ちょっとホラーっぽいというか、幽霊や怪奇現象がでてくるわけではないが、ちょっと恐ろしい、ちょっと不気味、ちょっと不思議なところを描いている作品が多いとい…

津原泰水『ブラバン』

一連の津原泰水騒動の中、新潮社が宣伝していたのをきっかけで知り、手に取った 自分が今まで読んだ津原作品は、主にSF・幻想系の短編と『バレエ・メカニック』のみで、完全にそういうジャンルの人だと思っていて、実は今回の騒動まで、他のジャンルでも書い…

ピーター・ワッツ『巨星』

人類とは異なる知性、意識、自由意志などをテーマにしたワッツの短編集 ワッツは最近長篇が続けて邦訳が出てちょっと気になってたけど、読めていなかった 面白かった作品もありつつ、難しくてよくわからんかった作品もありつつ。 ウェブが初出という作品もそ…

大森望編『NOVA2019年春号』

大森望による、書き下ろしSFアンソロジーシリーズ。二度の中断を挟んでおり、第3期の第1弾にあたる。2019年春号とあるが、年2回ほどの刊行を目指しているとのこと。 今回、わりと2作1セットみたくなっているなあというラインナップになっている。小川・佐藤…

グレッグ・イーガン『ビット・プレイヤー』

イーガンの日本オリジナル短編集。収録作は6作品。 イーガン自体は長編がばりばり出てるから久しぶりな気はしないけど、短編集自体はわりと久しぶりなのか それにしてもイーガンは何故日本でこんなに人気なのか。自分も好きではあるけど、やっぱり難しいとこ…

ルーシャス・シェパード『竜のグリオールに絵を描いた男』

超巨大な竜グリオールを巡る短編4編を収録 巨大さという点では、おそらく他作品に登場する竜と比べて群を抜いており、全長が1キロメートル以上ある。 しかし、この竜は空を飛んだり、言葉を話したりはしない。実は、数千年前に魔法使いに殺され、大地に横た…

『SFマガジン2019年4月号』

特集「ベスト・オブ・ベスト2018」ということで、『SFが読みたい!』でベストSF2018に選ばれた作家の書き下ろし等が掲載SFマガジン 2019年 04 月号出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2019/02/25メディア: 雑誌この商品を含むブログを見る 飛浩隆「サーペント…

藤井太洋『公正的戦闘規範』

デビュー作を含む5編を収録したSF短編集 藤井作品をそれほど多く読んだわけではないのだが、現実に存在するテクノロジーの延長上にある未来を、ポジティブに・楽観的に描く、というのがおおむね作風と言っていいのではないかと思う。 いくつかの特徴があげ…

倉田タカシ『母になる、石の礫で』

不思議なタイトルだが、小惑星帯を舞台とした、ポストヒューマン宇宙SFである。 地球から逃げ出した12人の科学者が小惑星帯に作ったコロニー。そこで生み出された子どもたちが主人公だ。 宇宙で生まれ育った彼らの価値観、身体感覚、渇望、新たな世界への旅…

アンディ・ウィアー『アルテミス』

アンディ・ウィアー『火星の人』 - logical cypher scape2のウィアー、長編第二作 『火星の人』が火星サバイバル小説だったのに対して、『アルテミス』は月面都市犯罪小説になっており、主人公もアメリカ人白人男性宇宙飛行士から、月育ちアラビア人女性密輸…

大森望・日下三蔵編『プロジェクト:シャーロック  年刊日本SF傑作選』

2017年に発表された短編小説の中から選ばれた16編+創元SF短編賞受賞作をまとめたアンソロジー 11作目ということで、国内で編まれた年刊SF傑作選としては最多のシリーズとなったらしい。 筒井・眉村といった大御所から小川・松崎・伴名といった若手まで、SF…

残雪『黄泥街』

黄泥街という名の通りを舞台にした物語だが、その通りは瓦解寸前、糞尿にまみれ黒い雨が降り注ぎ蠅や蝙蝠が集り、住人たちの多くはほとんど狂人のようで、噛み合わない会話をまくしたてている。 一体何が起きているのだが、さっぱり分からない 個々の描写と…

高山羽根子「居た場所」他(『文藝2018年冬号』)

文芸 2018年 11 月号 [雑誌]出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2018/10/06メディア: 雑誌この商品を含むブログを見る 高山羽根子「居た場所」 芥川賞候補作となっており、選評での評価も高く、最近、立て続けに高山の短編を読んでわりと面白かったので読…

上田岳弘「ニムロッド」他(『文藝春秋2019年3月号』) 

上田岳弘は上田岳弘『太陽・惑星』 - logical cypher scape2と上田岳弘『私の恋人』 - logical cypher scape2を読んでいて、「ニムロッド」も『群像』に掲載された時点で読みたいなーと思ってたんだけど(いや、ほんとに)、今度でいいかーと思っているうち…

『小説すばる2018年10月号』

ちょっと前の号だけど、SF特集だったので気になっていた 年明けからしばらく、小説を読んでいくぞという気持ちになっているので、ようやく手に取った。 下記目次は、SF特集部分のみ 【2大SF新連載】 佐々木譲「抵抗都市」 ・連載スタート記念 佐々木譲インタ…

『Genesis 一万年の午後』

創元日本SFアンソロジー 創刊号と銘打たれているのでシリーズ化するらしい。創元の編集部によるアンソロ。タイトルのGenesisは、「創元」の英訳みたい。 創元SF短編賞受賞作家を多くそろえ、ジャンルもバリエーション豊かな感じになっている。 久永実木彦…

リンダ・ナガタ『接続戦闘分隊』

感情制御技術とドローンによる戦闘支援と民間軍事会社が跋扈する近未来の米陸軍で、ちょっと軍人っぽくない感じの軍人主人公の一人称ミリタリーSF どことなく、というか完全に『虐殺器官』を彷彿とさせる作品であるので手に取ってみることにした。 上にあ…

イアン・マクドナルド『旋舞の千年都市』

2027年のイスタンブールを舞台にした群像劇で、6人の登場人物の5日間を描く。原題は「The Dervish House」で、Dervishはイスラムの修道僧のこと。6人の主人公が住んでいるのが、元僧院であるためこのタイトルだが、宗教、特に神経科学テクノロジーとの関係も…

大森望・日下三蔵編『行き先は特異点 年刊日本SF傑作選』

2016年に発表された短編SFの中から、大森・日下が選出した20編 ずいぶん読むのが遅くなってしまったが、次『プロジェクト・シャーロック』を今年の夏までに読めば追いつく なお、このシリーズはこれで10作目とのこと。 ほぼすべて未読作品だった SFを雑誌と…

オキシタケヒコ『筺底のエルピス6 -四百億の昼と夜-』

これまでちりばめられてきた謎の真相が次々と明らかになる一方で、それに伴って物語のスケールが半端なく拡大していき、相変わらず「えーそこで終わるの?!」ってとこで次巻へ続く、ライトノベルSFシリーズ第6巻 伝奇アクションであり時間SFであることは当…

飛浩隆『零號琴』

なかなかとんでもなくも面白い作品だった。 惑星「美縟」において、500年ぶりに復活する楽器「美玉鐘」と楽曲「零號琴」にまつわる秘密を巡る物語 年末に読み終わっていたのだけど、ブログにまとめる時間がなく、ずるずるとこんなタイミングになってしまった…

モンスター小説集

アーカイブ騎士団の第10弾 これまでの感想 004『ロボット小説集』 第15回文フリ感想 - logical cypher scape2 005『ゾンビ小説集』 第17回感想 - logical cypher scape2 006『恋愛SF小説集』 第19回文学フリマ感想 - logical cypher scape2 007『ユートピ…

早瀬耕『グリフォンズ・ガーデン』

早瀬耕『プラネタリウムの外側』 - logical cypher scape2の前日譚にあたる作品 元々、1992年に刊行されたのだが、2018年に文庫化された 『プラネタリウムの外側』と同じく有機素子コンピュータが登場する。『プラネタリウムの外側』では、なんか出自はよく…

麦原遼「逆数宇宙」

収縮する宇宙の謎を突き止めるため宇宙に放たれた探査隊2人の物語 一応読み終わったのだけれど、途中で集中力が尽きて、わりとぼーっと読んでしまった。 非常にグレッグ・イーガン的な作品。逆数宇宙 第2回ゲンロンSF新人賞優秀賞受賞作作者: 麦原遼出版社/…

上田早夕里『破滅の王』

1940年代の上海を舞台に日本人科学者がとある細菌兵器を巡って奮闘する物語 サスペンス的な意味でとても面白い 上田作品は一部しか読んできていないが、『華竜の宮』や『深紅の碑文』などと通底するところからな、と思うのは、苦境に陥った世界の中でなお必…

小川哲『ゲームの王国』

カンボジアのポルポト政権時代と近未来を舞台に、2人の主人公が、政治・社会とゲームとの関係を巡って、対立し惹かれ合う物語 小川哲『ユートロニカのこちら側』 - logical cypher scape2に続く、小川哲の長篇2作目だが、個人的には、ユートロニカとはまただ…

スティーヴ・エリクソン『彷徨う日々』(越川芳明訳)

エリクソンのデビュー作 1970年代のロサンジェルスを舞台にしたローレンとミシェルの恋愛と、1900年代のパリを舞台にしたアドルフ・サールの映画製作の物語 エリクソンは、かなり前にスティーブ・エリクソン『黒い時計の旅』 - logical cypher scape2とエリ…

『SFマガジン2018年10月号』

また、見たい映像コンテンツが増えていくな、畜生 久しぶりにSFMで短編読んだSFマガジン 2018年 10 月号出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/08/25メディア: 雑誌この商品を含むブログ (3件) を見る リンダ・ナガタ「火星のオベリスク」 「第六ポンプ」的…

宇野朴人『ねじまき精霊戦記 天鏡のアルデラミン』14(終)

テレビアニメ化もされた*1、ファンタジー戦記ライトノベルシリーズが完結 めちゃくちゃ面白く、ヤバい作品だったと思う。 舞台となるカトヴァーナ帝国は、いまだ繁栄を維持しつつも、貴族による腐敗政治と隣国キオカ共和国の伸長により、衰退を辿っている。 …

クリストファー・プリースト『双生児』(古沢嘉通訳)

第二次世界大戦のイギリスを舞台に、数奇な運命をたどった一卵性双生児の物語を描く歴史改変物 原書は2002年、日本語訳は2007年に刊行。その後「ベストSF2007」の海外部門で1位。で、同じ年の国内編1位が『虐殺器官』だったということで、「あー、あの頃に出…