小説

藤野可織『いやしい鳥』

デビュー作「いやしい鳥」を含む3篇を収録した作品集 鳥、恐竜、胡蝶蘭がそれぞれ登場し、少し奇妙な世界を展開する。 藤野作品は以前から雑誌やアンソロジーで少しずつ読んでいたが、最近ふと、もう少しちゃんと読もうかと思い立ち、藤野可織『おはなしして…

文学読もうかという気持ち

最近なんだか文学読もうという気持ちが強くなって、実際色々読み始めているところだけど、これまで何を読んできたかなというのと、これから何を読みたいかなというのを整理してみようかなという記事 それで、このブログを始めてから今までの読んだ小説を数え…

『戦後短篇小説再発見4 漂流する家族』

今年に入ってから急に日本文学を読むブームが自分の中にきているが、それで色々調べていたら見つけたのが、この『戦後短篇小説再発見』シリーズ。 講談社文芸文庫・編(井口時男、川村湊、清水良典、富岡幸一郎が編集委員)で、2001年から2004年にかけて全18…

安岡章太郎『質屋の女房』

安岡章太郎については、以前『群像2016年10月号(創刊70周年記念号)』その1 - logical cypher scape2を読んだ時に面白く感じたので、気になっていた(安岡だけでなく、この『群像』を読んで第三の新人に属する作家が全体的に気になりはじめた)。 去年の12…

リリー・ブルックス=ダルトン『世界の終わりの天文台』(佐田千織訳)

突如人類が滅亡し、最後の生き残りとなってしまった老天文学者と、木星から地球へと帰還するクルーたちが、それぞれに孤独を受け入れ愛に気付くまでの物語。 日本語訳は2018年に刊行されており、その際、冬木さんや牧さんの書評を読んで存在は知っていたのだ…

古井由吉『木犀の日 古井由吉自薦短編集』

1960年代の作品から始まり、主には1980年代(おおよそ古井の40代頃)に書かれた作品を収録した短編集 古井由吉については、最近古井由吉『杳子・妻隠』 - logical cypher scape2を読んだ。つまらなかったわけではないが、格別面白かったわけでもなく、古井作…

磯崎憲一郎『鳥獣戯画/我が人生最悪の時』

長編「鳥獣戯画」、短編「我が人生最悪の時」、乗代雄介による解説、年譜を収録した文庫 (なお、磯崎のサキの字は、本当は立サキ) 磯崎作品は何故かよく分からないが好きでよく読んでいるが、長編を読むのは7年ぶりだった。まあそんなことは気にせずに読ん…

小川哲『地図と拳』

満洲の架空の町のおよそ半世紀の期間を群像劇として描いた長編小説 中国東北部の田舎町に過ぎなかった李家鎮が、仙桃城という都市へと成長し、満洲国の終焉とあわせて消え去っていく。 一つの街が生まれ消え去っていくまでの物語で、建築や都市計画を巡る物…

サラ・ピンスカー『いずれすべては海の中に』(市田泉・訳)

滅法面白く装丁もかっこいい短編集 各SF雑誌で掲載された短編を収録しており、筆者初の単行本である(ただし、邦訳された本としては2冊目。長編『新しい時代への歌』が先に邦訳された)。 まず、内容ではなく装丁の話からする。ジャケ買いに近い感じだったの…

春暮康一『法治の獣』

地球外生命SFの中編3篇を収録した作品集。 3篇中2篇がなんとバッドエンドなのだが、それも含めていずれも面白い作品 地球人類が太陽系外に有人探査できるようになった未来で、3作品とも同一の世界を舞台としている(作者により「系外進出」シリーズと称され…

冲方丁『マルドゥック・アノニマス7』

3巻以降年に1回のペースで刊行されている同シリーズ。自分も大体毎年6月頃に読んでるっぽい。 冲方丁『マルドゥック・アノニマス1』 - logical cypher scape2 冲方丁『マルドゥック・アノニマス2』 - logical cypher scape2 冲方丁『マルドゥック・アノニ…

ジョナサン・ストラーン編『創られた心 AIロボットSF傑作選』

最近、テーマ別の書き下ろしSFアンソロジーの翻訳が東京創元社から度々出ているが、今回はタイトル通り、「創られた心」をテーマにしたもの。 基本的にはAI・ロボットだが、脳インプラントものやサイボーグものっぽいものもある また、英米の作家以外に、バ…

上田早夕里『獣たちの海』

オーシャン・クロニクルシリーズの書き下ろし短編集 温暖化で海面上昇した未来世界を舞台にしたオーシャン・クロニクルシリーズ 本作は、海上民からの視点で描かれた短編が4作収録されている。獣たちの海 (ハヤカワ文庫JA)作者:上田 早夕里早川書房Amazon 迷…

高山羽根子・酉島伝法・倉田タカシ『旅書簡集 ゆきあってしあさって』

高山、酉島、倉田の3人が旅先からそれぞれ2人に手紙を出しているという形式で進む、リレー書簡小説。 架空旅行記と書簡小説とリレー小説の面白さがかけあわされている。 奇妙奇天烈な土地を旅しながら、それがユーモラスさを生んでいて、読んでいて時々笑っ…

プリーモ・レーヴィ『天使の蝶』(関口英子訳)

1966年に刊行されたSF短編集、日本語訳は2008年。 レーヴィというと、アウシュビッツ体験について書いた作家でアガンベンが論じていたということしか知らなくて、このような作品を書いていることは全く知らなかったのだが、下記のモッタキさんのツイートで存…

高山羽根子『暗闇にレンズ』

高山羽根子の芥川賞受賞後第一作で、映画・映像をテーマにした長編小説 ということで、以前から気になっていたが、大森望編『ベストSF2021』 - logical cypher scape2 の中で、大森望が、プリースト『隣接界』*1に喩えていたのが最終的なきっかけとなり手に…

大森望編『ベストSF2021』

2020年に発表された日本の短編SFの中から、大森望が選んだ11作 2008年から2019年まで創元から出ていた「年刊日本SF傑作選」の、版元が竹書房に、編者も大森・日下から大森単独に変わっての後継シリーズ第2弾*1 タイトルは『ベストSF2021』だが、収録されてい…

古井由吉『杳子・妻隠』

SFじゃない小説(文学とか)も読もうと思って手に取った本第3弾である。 古井由吉は全然読んだことがなくて、どこから読めばいいのかもとっかかりもなかったのだが、亡くなった時にいくつか紹介記事を読んで、とりあえず「杳子」から読めばいいのかなあと思…

青木淳編『建築文学傑作選』

建築家である青木淳による「建築文学」アンソロジー ここでいう「建築文学」というのは、編者が建築的だと考える文学のことであり、必ずしも建築物が出てくる文学という意味ではない。ただし、候補となる作品があまりにも多くなったので、「日本文学」と「建…

藤野可織『おはなしして子ちゃん』

SFじゃない小説(文学とか)も読もうと思って手に取ったのが、しかし藤野可織という……結局、SFに近い何かを読んでしまう奴 芥川賞作家だし主に四大文芸誌で活動している作家なので、実際、SFではなく文学の作家ではあるのだが、年刊SF傑作選に何度か入ってい…

石黒達昌『診察室』

石黒達昌の電子書籍版短編集 『日本SFの臨界点 石黒達昌 冬至草/雪女』(伴名練編) - logical cypher scape2を読んだ勢いで手に取った。 どういう経緯で成立した企画なのかはよく分からないのだが、石黒については電子書籍オリジナル短編集というのがいく…

『日本SFの臨界点 石黒達昌 冬至草/雪女』(伴名練編)

伴名練による作家別アンソロジーシリーズ第3弾*1 石黒作品は、過去にやはりアンソロジーで「冬至草」と「雪女」を読んでいて、面白かったので気になっている作家ではあった。 「冬至草」と「雪女」はわりと似ていて、どちらも架空の研究をノンフィクション風…

月村了衛『機龍警察白骨街道』

機龍警察シリーズ長編第6弾 ミャンマーに赴くことになった部付警部3人、そして京都を舞台に城木は親戚たちと対峙する。 特捜部解体に動き出した〈敵〉『機龍警察 白骨街道』読了(昨日の夜遅くに読み終わった。おかげで寝不足気味)よくこんな話が書けるな………

ラヴィ・ディドハー『完璧な夏の日』

様々な特殊能力を持った超人(ユーバーメンシュ)が存在する20世紀を描くSF おおむね第二次世界大戦前後のヨーロッパが舞台だが、ベトナム戦争やアフガン侵攻、911なども出てくる。なお、原題はThe Violent Centuryであり、こちらのタイトルの方が内容には沿っ…

『パワードスーツSF傑作選 この地獄の片隅に』(ジョン・ジョゼフ・アダムズ編、中原尚哉訳)

パワードスーツをテーマにした書き下ろしSFアンソロジー やはり宇宙や戦場を舞台にした作品が多いが、開拓時代のオーストラリアやスペイン内戦を舞台にした歴史改変系SFがあったり、ラブロマンスサスペンスものがあったりと、多様性があってちょっと驚く。 …

『SFマガジン』2021年6月号

異常論文特集 SF短編集とかに時々入ってる論文風とかレポート風の作品が好きなので、この特集は当然買いだった そういう感じの作品としては、柞刈湯葉の裏アカシックと、柴田勝家の宗教性原虫がそれっぽさ(?)があって面白かったが、一方、最後に並ぶ3編が小…

冲方丁『マルドゥック・アノニマス6』

ウフコックがアノニマスからウフコック・ペンティーノへと帰る道を歩み出す 4巻から続いた、2つの時間に分かれて進む展開が、ここにきてようやく合流 再会と再出発としての別れを同時に描くために、ここまでこんな展開をしてきたのか、と思った冲方丁『マル…

高山羽根子『首里の馬』

芥川賞受賞作首里の馬作者:高山羽根子発売日: 2020/07/27メディア: Kindle版 沖縄・港川が舞台 未名子は、子どもの頃からとある私設資料館の整理を手伝っている。各地でフィールドワークをしていた在野研究者の順(より)さんが、沖縄で集めた様々な記録 一方…

オキシタケヒコ『筐底のエルピス7 継続の繋ぎ手』

とりあえず読み終わったのでその記録筺底のエルピス7 -継続の繋ぎ手- (ガガガ文庫)作者:オキシタケヒコ発売日: 2021/02/18メディア: Kindle版 今まで頼りになる味方だった人物が、それも3人まとめて敵になってしまった、さあどうする、という回だった

橋本輝幸編『2010年代海外SF傑作選』

橋本輝幸編『2000年代海外SF傑作選』 - logical cypher scape2に引き続き、2010年代傑作選 個人的な好みでは、2000年代のより2010年代の方が好きな作品が多かった。 前半にポジティブな作品、半ばにダークな話が続き、後半は奇妙な話ないし不思議な動物の話…