小説

『小説すばる2018年10月号』

ちょっと前の号だけど、SF特集だったので気になっていた 年明けからしばらく、小説を読んでいくぞという気持ちになっているので、ようやく手に取った。 下記目次は、SF特集部分のみ 【2大SF新連載】 佐々木譲「抵抗都市」 ・連載スタート記念 佐々木譲インタ…

『Genesis 一万年の午後』

創元日本SFアンソロジー 創刊号と銘打たれているのでシリーズ化するらしい。創元の編集部によるアンソロ。タイトルのGenesisは、「創元」の英訳みたい。 創元SF短編賞受賞作家を多くそろえ、ジャンルもバリエーション豊かな感じになっている。 久永実木彦…

リンダ・ナガタ『接続戦闘分隊』

感情制御技術とドローンによる戦闘支援と民間軍事会社が跋扈する近未来の米陸軍で、ちょっと軍人っぽくない感じの軍人主人公の一人称ミリタリーSF どことなく、というか完全に『虐殺器官』を彷彿とさせる作品であるので手に取ってみることにした。 上にあ…

イアン・マクドナルド『旋舞の千年都市』

2027年のイスタンブールを舞台にした群像劇で、6人の登場人物の5日間を描く。原題は「The Dervish House」で、Dervishはイスラムの修道僧のこと。6人の主人公が住んでいるのが、元僧院であるためこのタイトルだが、宗教、特に神経科学テクノロジーとの関係も…

大森望・日下三蔵編『行き先は特異点 年刊日本SF傑作選』

2016年に発表された短編SFの中から、大森・日下が選出した20編 ずいぶん読むのが遅くなってしまったが、次『プロジェクト・シャーロック』を今年の夏までに読めば追いつく なお、このシリーズはこれで10作目とのこと。 ほぼすべて未読作品だった SFを雑誌と…

オキシタケヒコ『筺底のエルピス6 -四百億の昼と夜-』

これまでちりばめられてきた謎の真相が次々と明らかになる一方で、それに伴って物語のスケールが半端なく拡大していき、相変わらず「えーそこで終わるの?!」ってとこで次巻へ続く、ライトノベルSFシリーズ第6巻 伝奇アクションであり時間SFであることは当…

飛浩隆『零號琴』

なかなかとんでもなくも面白い作品だった。 惑星「美縟」において、500年ぶりに復活する楽器「美玉鐘」と楽曲「零號琴」にまつわる秘密を巡る物語 年末に読み終わっていたのだけど、ブログにまとめる時間がなく、ずるずるとこんなタイミングになってしまった…

モンスター小説集

アーカイブ騎士団の第10弾 これまでの感想 004『ロボット小説集』 第15回文フリ感想 - logical cypher scape2 005『ゾンビ小説集』 第17回感想 - logical cypher scape2 006『恋愛SF小説集』 第19回文学フリマ感想 - logical cypher scape2 007『ユートピ…

早瀬耕『グリフォンズ・ガーデン』

早瀬耕『プラネタリウムの外側』 - logical cypher scape2の前日譚にあたる作品 元々、1992年に刊行されたのだが、2018年に文庫化された 『プラネタリウムの外側』と同じく有機素子コンピュータが登場する。『プラネタリウムの外側』では、なんか出自はよく…

麦原遼「逆数宇宙」

収縮する宇宙の謎を突き止めるため宇宙に放たれた探査隊2人の物語 一応読み終わったのだけれど、途中で集中力が尽きて、わりとぼーっと読んでしまった。 非常にグレッグ・イーガン的な作品。逆数宇宙 第2回ゲンロンSF新人賞優秀賞受賞作作者: 麦原遼出版社/…

上田早夕里『破滅の王』

1940年代の上海を舞台に日本人科学者がとある細菌兵器を巡って奮闘する物語 サスペンス的な意味でとても面白い 上田作品は一部しか読んできていないが、『華竜の宮』や『深紅の碑文』などと通底するところからな、と思うのは、苦境に陥った世界の中でなお必…

小川哲『ゲームの王国』

カンボジアのポルポト政権時代と近未来を舞台に、2人の主人公が、政治・社会とゲームとの関係を巡って、対立し惹かれ合う物語 小川哲『ユートロニカのこちら側』 - logical cypher scape2に続く、小川哲の長篇2作目だが、個人的には、ユートロニカとはまただ…

スティーヴ・エリクソン『彷徨う日々』(越川芳明訳)

エリクソンのデビュー作 1970年代のロサンジェルスを舞台にしたローレンとミシェルの恋愛と、1900年代のパリを舞台にしたアドルフ・サールの映画製作の物語 エリクソンは、かなり前にスティーブ・エリクソン『黒い時計の旅』 - logical cypher scape2とエリ…

『SFマガジン2018年10月号』

また、見たい映像コンテンツが増えていくな、畜生 久しぶりにSFMで短編読んだSFマガジン 2018年 10 月号出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2018/08/25メディア: 雑誌この商品を含むブログ (3件) を見る リンダ・ナガタ「火星のオベリスク」 「第六ポンプ」的…

宇野朴人『ねじまき精霊戦記 天鏡のアルデラミン』14(終)

テレビアニメ化もされた*1、ファンタジー戦記ライトノベルシリーズが完結 めちゃくちゃ面白く、ヤバい作品だったと思う。 舞台となるカトヴァーナ帝国は、いまだ繁栄を維持しつつも、貴族による腐敗政治と隣国キオカ共和国の伸長により、衰退を辿っている。 …

クリストファー・プリースト『双生児』(古沢嘉通訳)

第二次世界大戦のイギリスを舞台に、数奇な運命をたどった一卵性双生児の物語を描く歴史改変物 原書は2002年、日本語訳は2007年に刊行。その後「ベストSF2007」の海外部門で1位。で、同じ年の国内編1位が『虐殺器官』だったということで、「あー、あの頃に出…

ケン・リュウ編『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』

その名の通り、現代中国SFの中短編を集めたアンソロジー この順番で読むことになったのは本当に偶々なのだけど、高行健『霊山』 - logical cypher scapeに続いて、中国小説を読んだことになる。 ケン・リュウが編者となり7人の作家の13作品を集め、英訳した…

高行健『霊山』

霊山を探して中国の長江流域をあてもなく旅し続ける男性作家の話 橋本陽介『ノーベル文学賞を読む』 - logical cypher scapeで取り上げられており、興味をもったので読んでみた。 当初想像していたのと少し違ったが、80年代中国南部の各地の様子が描かれた紀…

『群像2016年10月号(創刊70周年記念号)』その5

70周年記念で、過去に『群像』に掲載された短編の傑作選が掲載されている号。 2年くらいかけて、いよいよ読み終わり 電子版で買っておいてよかった。移動時間中とかに、「あ、そういえば」という感じで読める。紙だとちょっと分厚すぎですから。といっても…

早瀬耕『プラネタリウムの外側』

AIと現実・記憶・死などを扱ったSF小説 5本の短編から構成された連作短編集であるが、世界・登場人物・時系列はつながっていて、1本の長編小説としても読める。 扱われているテーマ的には、ベタなものなので、SFとしては読みやすい部類の作品だと思うが、と…

『ゲームSF傑作選 スタートボタンを押してください』

D.H.ウィルソン&J.J.アダムズ編 中原尚哉・古沢嘉通訳 タイトル通り、ゲームをテーマにした作品を扱った短編集で、意外と(?)ビターな後味の作品が多かったような印象 「1アップ」「キャラクター選択」がわりと好き 「救助よろ」「猫の王権」「リコイル…

冲方丁『マルドゥック・アノニマス3』

冲方丁『マルドゥック・アノニマス1』 - logical cypher scape 冲方丁『マルドゥック・アノニマス2』 - logical cypher scape シリーズ第3巻 スクランブルとヴェロシティは全3巻だったけど、アノニマスはまだ続くーマルドゥック・アノニマス3 (ハヤカワ…

『群像2016年10月号(創刊70周年記念号)』その4

70周年記念で、過去に『群像』に掲載された短編の傑作選が掲載されている号。 元々、一気に読むのは無理だなと思っていたので、時々時間があるときに読んでいるのだけど、1年ぶりくらいに再び手に取った。 『群像2016年10月号(創刊70周年記念号)』その1 …

古川日出男『ミライミライ』

戦後、沖縄がアメリカに占領されていたように、北海道がソ連に占領されていたら、というパラレルな歴史を歩んだ日本(日印連邦)を舞台に、「最新゛(サイジン)」というニップノップグループ(ニップノップとは、彼らが生み出したヒップホップのサブジャン…

クリストファー・プリースト『隣接界』

現代、大戦期、夢幻諸島といった様々な時代、場所を舞台に、少しずつ異なる男の運命を描く。 『隣接界』というタイトルの原題は、The adjacentで、訳者あとがきによれば「隣接するもの」というくらいの意味で、作中に「隣接界」というものが出てくるわけでは…

スティーヴン・ミルハウザー『マーティン・ドレスラーの夢』

19世紀末〜20世紀初頭にかけてのニューヨーク、大衆文化と都市の機械化が進む時代に、華々しく立身出世していく男の、巨大ホテル建築の夢と女性たちとの奇妙な関係を描く物語。 ミルハウザーの短編、中編を少しずつ読んできたので、このあたりでそろそろ長編…

ケン・リュウ『紙の動物園』

ケン・リュウについてようやく読めた。 すでに高い評価を得ているとおり、全般的に面白い短編集で、個人的にも面白かったものはあるのだが、一方で、表題作である「紙の動物園」や「もののあはれ」はあまりあわなかった(なお、分冊された文庫ではなく単行本…

ウィル・ワイルズ『時間のないホテル』

原著タイトルは"THE WAY INN” その名の通り、世界最大級のホテルチェーン「ウェイ・イン」を舞台にした物語 映画で見てみたい作品かもしれない、と読みながら思った。 いわゆるSFというよりは、どちらかといえば、世にも奇妙なテイストな感じから始まって、…

スティーブン・ミルハウザー『三つの小さな王国』

ミルハウザーの中編小説集(3本の作品を収録) 11月頃から1月頃にかけて、アニメ関係の本を読んでいたら、細馬宏通『ミッキーはなぜ口笛を吹くのか』 - logical cypher scapeで、本書収録の「J・フランクリン・ペインの小さな王国」がウィンザー・マッケイを…

宇野朴人『ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン』13

次巻が最終巻とのことで、最終巻を直前に控えて、箸休めというか準備というかしばしの休息というか、そういう巻 と思ったら、死んだと思ったあの人がまさかの再登場 まさか、こいつ、アンドリュー・フォーク的なポジションになるのではあるまいなと思ったら…