小説
フェミニズムに出会ったミルハウザーみたいな短編集 藤野作品は以前からミルハウザーっぽいなあと思っていたけれど、本作もアイデアは結構ミルハウザーっぽいところがある それからもう一つ藤野作品の特徴としては、フェミニズム、女性の生きにくさを扱って…
2025年ノーベル文学賞受賞作家による、京都を舞台にした小説 日本に滞在したことがあり、そのときの経験を元にした作品とのこと。 2003年発表、2006年邦訳。 クラスナホルカイ*1の小説でおそらく唯一の邦訳作品なのだが、品切れで入手困難となっているらしい…
年末年始は、ウィッチャー短編集をずっと読んでいた。 ウィッチャーは、ビデオゲームやドラマとして人気のファンタジー作品のシリーズで、遅ればせながら自分も去年の終わり頃からドラマを見始めた。 『ウィッチャー』シーズン1 - プリズムの煌めきの向こう…
凹面世界に暮らす人々を2世代に渡って描く物語 そもそもタイトルの意味が、一見しただけではわからないと思うが、ヌフレツンは人名である。奏で手は、この世界における職業の一つ。 酉島作品というと、漢字を用いた独特の造語による世界観が特徴的だが、本…
「コンテンポラリー・ダンス」と「ロボット・AI」と「介護」を題材にして、身体性から立ち上がる人間性とは何かというテーマを描く長編小説 以前から気にはなっていたが、文庫化を機にようやく読めた。 ダンサーである主人公がバイク事故で左足を切断すると…
11本の作品からなる第二短編集 まず、初出が海外の媒体という作品が多いことに驚く 11本中、日本の媒体が初出となっている作品は5本、他は中国が4本、韓国が1本、アメリカが1本となっている。 日本語で執筆したものを、それぞれ中国語、韓国語、英語に翻訳さ…
1970年代の台北を舞台に、殺された祖父は何故、誰によって殺されたのかという謎を縦軸に、主人公の友情・恋や進路といったエピソードが展開する青春小説 本作の存在は都甲幸治ほか『世界の8大文学賞』 - logical cypher scape2で知った。 2015年上半期の直木…
衰退した未来の人類を描いた連作短編集のような長編のような小説 川上弘美は、国内文学文脈でもSF文脈でも気になっていった作家だったのだけど、なかなか読んでこなかった(雑誌やアンソロジーに収録されていた短編をちらほら読んだことはあるが) 本作が、…
主人公が古本屋で手にした本をきっかけに、プラハの街の裏に隠されたもうひとつの街の存在を知っていくという長編小説 著者のアイヴィスはチェコの作家で、本作は、1993年に初版がでた著者の長編第一作。2005年の改訂版を底本に2013年に日本語訳され、2024年…
グレッグ・イーガン『しあわせの理由』(一部・再読) - logical cypher scape2に続き、イーガンの短編をいくつか再読祈りの海作者:グレッグ イーガン早川書房Amazon キューティ 4歳で亡くなる、人工的な愛玩用赤ちゃん(人間の姿をしているが知能は著しく制…
ミルハウザーの短編集。2008年に白水社から出ていたもの(12年にUブックス)が東京創元社から文庫化されたもの。 これまでもミルハウザーは結構読んだけど、かといって網羅的に読んできたわけでもないので、この本も「そういえば読んでいなかったな、文庫化…
イーガンの最初のころ、読んだやつ、もう内容も忘れてるし、いつか再読したいなあと思っていて、 そのいつかが来た気がしたので、読んだ。 全部じゃなくて、なんとなくピックアップしたものだけ読み返してみた。 どこがどう、とは言えないけど、まあやっぱも…
とある家族とそこの客人たちが夏の別荘で過ごす1日を、意識の流れという手法によって描いた、ウルフの5作目の長編小説。 舞台となっている別荘は、ウルフ自身が子ども時代に夏に訪れていた別荘が、本作の主人公の1人でもあるラムジー夫人は、ウルフの母親が…
以前読んだ時のは以下。 アレステア・レナルズ『銀河北極』 - logical cypher scape2 銀河北極 (ハヤカワ文庫 SF レ 4-4 レヴェレーション・スペース 2)作者:アレステア・レナルズ早川書房Amazon 「銀河北極」 主人公は、貨物船の船長で、船の修理に立ち寄っ…
異星からの菌類「氾濫体」によって地上は人類が住める場所ではなくなり、人類は地下都市での生活を余儀なくされている。主人公のテリンは、地上への探索任務を担う「派遣者」になるための試験を受けるが、自分の頭の中に生じた謎の声に悩まされる、というSF…
レナルズ作品について、邦訳された奴、大体全部よんだのではないか、と思って調べてみたら、まだ読んでない奴がポロポロあったので読んでみた。 スパイリーと漂流塊の女王 『不死身の戦艦 銀河連邦SF傑作選』収録 フォーマルハウト星系で資源を巡り2つの勢力…
2011年のSF短編集。え、もう15年近く前なの…… 表題作は読んでいたのだけど、その後、読むの止まってそのまま忘れてしまっていたんだよな。いや、完全に忘れたわけではなくて、ああそういえばと意識はしていたけれど。 4篇収録。最後の一つは書き下ろし やっ…
フィヨルドを北上する帆船は、「大建造物」を探そうとする探検隊を乗せている。主人公である船医は、探検隊と契約して乗船しているものの、この探検にあまり気乗りしない。果たして「大建造物」が彼らの前に姿を現わすが、しかし……という長編冒険小説 アレス…
1934年から1945年の上海租界を舞台にしたノワール小説 阿片密売の利益をめぐる上海の裏社会での駆け引きに、ファム・ファタルの暗躍と、日本陸軍特務機関で働く日露ハーフ青年の執念が絡まり合い、血で血を洗う復讐譚と自由を求める男の物語が繰り広げられて…
「進化論」をお題とした書き下ろしホラーアンソロジー。『異形コレクション』シリーズとしては36巻にあたる。刊行年は2006年だが、「魚舟・獣舟」や「貂の女伯爵、万年城を攻略す」の初出媒体で以前から気になっていた。 『異形コレクション』は、90年代後半…
3年ほど前のSFマガジン。刊行当時、気になりつつもスルーしていた。 最近TLで、本誌収録の春暮康一「モータル・ゲーム」への言及を複数見かけたので、読んでみることにした。 SFマガジン 2022年 8月号早川書房Amazon 「魔法の水」小川哲 これ小川哲『地図と…
旅、移動、解剖学をめぐり116の断章で構成された小説 白水社エクス・リブリス 筆者はポーランド人作家で、2018年にノーベル文学賞を受賞している。その際の受賞理由は「博学的な情熱によって、生き方としての越境を象徴する物語の想像力に対して」とある。博…
睡眠障害に悩まされる「ぼく」の物語と、大戦末期に日本へ渡り神奈川で戦闘機製造の少年工となった父・三郎の物語とが交互に進んでいく 白水社エクス・リブリス ざっくりいって、戦争と記憶をテーマにした作品だといえる。 三郎パートの多くが日本を舞台とし…
20世紀科学史・数学史における人物伝の形で、科学が人類の理解を越えてしまったのではないか、ということを描きだそうとうする中短編小説集 白水社エクス・リブリス 登場するのは、フリッツ・ハーバー(「プルシアン・ブルー」)、カール・シュヴァルツシル…
イラクの次はイラン、ということで、イラン革命によって翻弄された家族を描いた作品を読んだ。 白水社エクス・リブリス 本作は長編だが、ハサン・ブラーシム『死体展覧会』(藤井光・訳) - logical cypher scape2と同様、奇想というか非現実的な描かれ方を…
イラク人亡命作家による14篇からなる短編集 白水社エクス・リブリス イラクでの戦争や誘拐、自爆テロなどの暴力が主題となりつつも、それが、超現実的・SF的な設定やフレーバーとともに語られる。 版元紹介文では「幻想的に描き出す」と書かれている。海外文…
エヴェンキ族の90歳の女性である「私」が、自らの人生を振り返って語るという長編小説 白水社エクス・リブリスの一冊で、このレーベルはこれまでも何冊か読んでいたが、これからしばらくエクス・リブリスを何冊か読みたいと思っている。 本作は、原著が2005…
第15回創元SF短編賞受賞作 人工感情調合師の主人公は、憧れのカリスマによる新作から、彼の動機を探る。 ファッションとして人工感情をまとうというSFギミックから、機械知性であることというテーマへと着地する。SF短編としては色々なアイデアに読み応えが…
文字をめぐる12編の短編による連作短編集。 それぞれ独立した短編としても読めるが、互いに色々関連し合っている。 以前から気になっていたが、中島敦の「文字禍」を読んでから読もうと思っていて、この前実際読んだので、ようやく手にした。 『文豪ナンセン…
『筺底のエルピス』『ねじまき少女』再読 - logical cypher scape2で書いた通り、4年ぶりの新刊 次巻の9巻が最終巻になることが予告されており、その前段階、戦いの準備をするところで、ある意味、物語的には一番盛り上がるところとも言える。 筆者が、脇役…