この作品を読もうと思ったのはタイトルが恐竜だったから、では決してなくて、以下の矢野さんのツイートによる。
滝口悠生さんの「恐竜」(『文藝』2023・秋)、めちゃ良いですね。ここ最近の滝口作品のなかでもとても好き。保育園するからだだと思いました、というのはあまりにも自分に引き付けた感想ですが、でも思いました。ちょっと泣けました。(矢野)
https://twitter.com/languagelabroom/status/1681296008112910337
というわけで、保育園小説である。
2歳の娘であるももちゃんを保育園に連れて行くももちゃんパパの視点から物語は始まり、登園を渋るふいちゃんを見かけると、今度はふいちゃんパパの視点に切り替わり、最後はさらにふいちゃんの視点になる。
今までマスクをした顔しか見たことのなかった他の子の親のマスクを外した顔を見ることになった時の戸惑いの描写に「わかるー」ってなった。
暑くも寒くもない5月の気候のよさとか、子どもをこれ以上不機嫌にさせずにことを進めるにはどうするかとか
風邪やらなんやらの各種病気が流行るように、言葉遣いとか行動も広まっているのだろうとか
ふいちゃんが何故登園をしぶっているかというと、恐竜はいないよという父親の言葉に納得せず「恐竜はいる」と主張してのことである。どこか遠くにいて簡単には会いに行けないことを、いないと誤魔化しているに違いないとふいちゃんは考えながら、空を見ている。
が、遅番だった保育士さんが登園してくると、すっと立って登園していったというのもね。
滝口悠生って今までいくつか読んだことはあるんだけど、他に目当てがある雑誌を読んでいたら載っていたのでついでに読んだ、くらいのことが多くて、どんなだったかほとんど覚えていない。言ってしまえば、ピンと来てない作家だったんだけど、これは面白かった。
恐竜の方でいうと、ふいちゃんが名前をあげる恐竜に、イグアノドン、プテラノドン、ティラノサウルス、ブラキオサウルスがいた。ブラキオサウルスー!