2022-01-01から1年間の記事一覧

2022年振り返り

ここ3年で一番本を読めた年かも。 記事数と読んだ本の冊数は別だが、参考に記事数を比較すると、 2022年は88記事(+この記事で89) 2021年は33記事、2020年は70記事、2019年は126記事だった。 2020年からこっち、本読んだりブログ書いたりが以前より減って…

John Kulvicki "Modeling the Meanings of Pictures"(2章まで)

カルヴィッキによる画像の意味についての本 言語哲学を応用し、言語的表現と比較しながら論じられる。 具体的には、カプランの「内容」と「キャラクター」の区別を画像にも適用するというもの。 第1章で、本書全体の概要を説明している。 その中で本書をミー…

ウィリアム・フォークナー『アブサロム、アブサロム!』(藤平育子・訳)

フォークナーのヨクナパトーファ・サーガを構成する長編作品の一つ。 ミシシッピ州ヨクナパトーファ郡ジェファソンに突如現れて、大地主となったトマス・サトペンの盛衰を、関係者たちの回想の語りが描き出す。 原作は1936年刊行。 訳者解説によれば、フォー…

久永実木彦「わたしたちの怪獣」(『紙魚の手帖vol. 6 AUGUST 2022』)

先日、日本SF大賞候補作が下記の通り発表された。 樋口恭介(編)『異常論文』(早川書房) 荒巻義雄『SFする思考 荒巻義雄評論集成』(小鳥遊書房) 小田雅久仁『残月記』(双葉社) 小川哲『地図と拳』(集英社) 久永実木彦「わたしたちの怪獣」(東京創…

マリオ・バルガス=リョサ『世界終末戦争』(旦敬介訳)

ノーベル賞作家が、19世紀ブラジルで実際に起きたカヌードスの乱という出来事を描いた長編歴史小説。 海外文学読んでくぞ期間第一弾として。 橋本陽介『ノーベル文学賞を読む』 - logical cypher scape2を読んで知って以来、気になっていた。 タイトルがSFっ…

『Newton2023年1月号』

Newton 2023年1月号作者:科学雑誌Newton株式会社ニュートンプレスAmazon 史上初の「惑星防衛」実験に成功(協力 吉川真 執筆 小熊みどり) DARTの話 スマホと脳の最新科学(監修 髙橋英彦 執筆 西村尚子・尾崎太一) 立ち読みなのでざっと見出し眺めてっただ…

『日経サイエンス2023年1月号』

日経サイエンス2023年1月号 [雑誌]日経サイエンスAmazon ボイジャー最後の挑戦 未踏の星間空間を行く T. フォルジャー ボイジャー1号、2号について、そのあらましを振り返る記事 惑星直列していてスイングバイの好機だったから、という理由だったのか。 175…

最近読んだ文学

以前、文学読もうかという気持ち - logical cypher scape2という記事を書いたが、 2ヶ月ほど経ち、日本戦後文学について、自分の中で一段落ついてきたので、これに該当する奴をリンクしておく。 なお、上記の記事を書いたよりも前のものも含む。 日本文学(…

澁澤龍彦『高丘親王航海記』

澁澤龍彦の遺作にして代表作(唯一の長編らしい)。 高丘親王が天竺を目指す道中を描く作品だが、怪奇・幻想的な風景が、エキゾチックかつユーモラスな文体で綴られている。 元々、特に読もうと思っていたわけではなかったのだが、図書館で島尾敏雄作品を借…

島尾敏雄「離脱」色川武大「路上」古井由吉「白暗淵」(『群像2016年10月号』再読)

島尾敏雄「離脱」 『群像2016年10月号(創刊70周年記念号)』その1 - logical cypher scape2で以前読んだことがあるのだが、この記事を見直してみると 島尾敏雄「離脱」(1960年4月号) 夫婦の話 ずっと勝手してた夫が妻からいろいろ と非常にそっけな…

島尾敏雄『その夏の今は・夢の中での日常』

筆者の、特攻隊経験をもとにして書かれた系列の作品と、夢系列の作品とを収録した短編集 島尾敏雄については[『戦後短篇小説再発見 6 変貌する都市』 - logical cypher scape2」を読んだら「蜃気楼」が面白かったので、続いて島尾敏雄『夢屑』 - logical cyph…

ブルース・ククリック『アメリカ哲学史』(大厩諒・入江哲朗・岩下弘史・岸本智典訳)

サブタイトルに「一七二〇年から二〇〇〇年まで」とあり、18世紀からの宗教哲学、19世紀からのプラグマティズム、20世紀からの分析哲学の三部構成で書かれた本。 元々、フィルカルvol.5 no.2 - logical cypher scape2でアメリカ哲学史特集が組まれたりと、ア…

『宇宙開発未来カレンダー 2022-2030's』

『宇宙開発未来カレンダー 2022-2030's』という本をパラパラと眺めている。 カレンダーというタイトルだが、どちらかといえばロケット・宇宙機カタログという感じの本で、今後打ち上げが予定されているロケットや探査機・人工衛星と、現在運用中の探査機・人…

桑野隆『20世紀ロシア思想史 宗教・革命・言語』

20世紀のロシアにおける哲学や思想に一体どんなものがあるのか、概略をつかむのにちょうどよい入門書ないしハンドブック かなり広範に扱っているが、ページ数は手頃な長さにおさまっている。その点、個々の思想について説明が少なくなってしまっているところ…

ウィリアム・ギブスン、ブルース・スターリング『ディファレンス・エンジン』(黒丸尚・訳)

言わずと知れたスチームパンクSFの古典 遙か昔に一度読んだことがあったのだが、全然内容を把握することができず、いつか読み直そうと思いながら幾星霜……。 ギブスン+スターリング『ディファレンス・エンジン』 - logical cypher scape2 最近、巽孝之『恐竜…

島尾敏雄『夢屑』

1970~1980年代、筆者が50代後半から60代前半の頃に書かれた短編集。 『戦後短篇小説再発見 6 変貌する都市』 - logical cypher scape2で読んだ「摩天楼」が面白かったので、手に取ることにした。 解説によると、島尾作品には、『死の棘』など妻との関係を書…

『戦後短篇小説再発見18 夢と幻想の世界』

夢や幻想をテーマに、1949年の日影丈吉「かむなぎうた」から、1996年室井光広「どしょまくれ」まで11篇を集めたアンソロジー。 このシリーズは、まず全10巻で刊行されたが、編集委員の中ではこれでは分量が足りないと考えており、第1期10巻が全て重版できた…

伴名練「二〇〇〇一周目のジャンヌ」

『ifの世界線 改変歴史SFアンソロジー』所収の短編 このアンソロジー自体、読みたいなと思っているのだが、他に読みたい本が結構たまっていて、色々比較しているうちに優先順位を少し下げてしまった一方、本作だけ、web上で期間限定で読めるうちに読んでいた…

『Newton2022年12月号』

Newton 2022年12月号作者:科学雑誌Newton株式会社ニュートンプレスAmazon マイクロバイオーム─人体に住む微生物 腸内細菌の話 特定の菌より多様性が大事 肥満とF/B比 なんちゃら科という細菌とうんちゃら科という細菌の比率が、健康体の人と肥満体の人とでは…

『kaze no tanbun 移動図書館の子供たち 』

西崎憲の編集によるムック本シリーズ「kaze no tanbun」 「特別ではない一日」「移動図書館の子供たち」「夕暮れの草の冠」の全3巻なのだが、収録されている作家のメンツを見比べて、3巻中2巻目という中途半端さながら「移動図書館の子供たち」を手に取って…

『SFマガジン2022年2月号』

先日、ハヤカワSFコンテストと創元SF短編賞 - logical cypher scape2という記事で「坂永雄一や酉島伝法など、年刊SF傑作選などを通じてわりと読んでいてもう少し読みたいなあと思っている作家もいる。」と書いたのだが、そういえば、最近のSFマガジンに坂永…

『戦後短篇小説再発見10 表現の冒険』

「家族」や「都市」などテーマ別で編まれた同アンソロジーだが、10巻は実験的な表現方法で書かれた作品を集めたものとなる。 『戦後短篇小説再発見4 漂流する家族』 - logical cypher scape2 『戦後短篇小説再発見 6 変貌する都市』 - logical cypher scape…

『日経サイエンス2022年11月号』

日経サイエンス2022年11月号 [雑誌]日経サイエンスAmazon 民間月探査は宇宙ビジネスを開くか R. ボイル www.nikkei-science.com2022年末から2023年にかけて、民間の月着陸機が相次いで行く予定になっている。 これは、NASAの商業月面輸送サービス(CLPS)に選…

庄野潤三『プールサイド小景・静物』

第三の新人の一人である庄野潤三により、1950年から1960年にかけて書かれた、デビュー作や芥川賞受賞作を含めた初期の作品7篇を集めた作品集。 『戦後短篇小説再発見4 漂流する家族』 - logical cypher scape2で読んだ「蟹」が面白かったのと、『群像2016…

『戦後短篇小説再発見 6  変貌する都市』

織田作之助「神経」(1946)から村上春樹「レキシントンの幽霊」(1996)まで、都市をテーマに12篇を収録したアンソロジー 『戦後短篇小説再発見4 漂流する家族』 - logical cypher scape2に引き続き、読んでみた。 同シリーズは全18巻だが、さすがに全部読む…

藤野可織『来世の記憶』

藤野可織の最新短編集。長さ的には、掌編・ショートショート的なものも結構入っている。 初出媒体は文芸誌を中心としつつ、結構色々な媒体が混ざっている。 初出で最も古いのは2009年の「れいぞうこ」だが、それを除くと、2014年~2019年の作品+書き下ろし1…

ハヤカワSFコンテストと創元SF短編賞

春暮康一『オーラリメイカー』 - logical cypher scape2が第7回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作だったのだが、「あれ、そういえば自分、今までハヤカワSFコンテスト受賞作ってそんなに読んでいないのでは?」「創元SF短編賞の方が読んでいる気がするなー」…

春暮康一『オーラリメイカー』

惑星系を改造するような宇宙生物が登場し、知性の役割を問い直す宇宙SF 第7回ハヤカワSFコンテスト優秀賞受賞作で、その後出た春暮康一『法治の獣』 - logical cypher scape2と世界観を共有している。 短編「虹色の蛇」も収録 『法治の獣』が面白かったので…

千々和泰明『戦後日本の安全保障』

サブタイトルは、「日米同盟、憲法9条からNSCまで」 防衛政策史研究者による本で、タイトル通り、戦後日本の安全保障政策の歴史を論じた本である。 小林義久『国連安保理とウクライナ侵攻』 - logical cypher scape2を調べていたら、関連する本として出てき…

小林義久『国連安保理とウクライナ侵攻』

珍しく時事ネタ。 タイトルにある通りで、ロシアのウクライナ侵攻を受けて改めて国連安保理とは何かについて書かれた本。 筆者は、共同通信で長年国連取材に当たっていた記者で、その経験を踏まえて、国連安保理の歴史について書かれている。 研究者ではなく…