2020-01-01から1年間の記事一覧

2020年ふりかえり

今年は、私的にも世間的にも激動の年だったが、その影響を受けて、本のタイトル数自体は少なめ。 ただ、下記の通り、シリーズ一気読みが2つと、英語論文をわりと読んでいることもあって、読書量そのものは意外と減ってないのかもしれない。 ブログを書く時間…

橋本輝幸編『2000年代海外SF傑作選』

2000年代というとわりと最近のような気もするが、もう10〜20年前のことであり、自分もまだほとんどSFを読んでいなかった頃だったりする 「暗黒整数」は言うに及ばず「ジーマ・ブルー」「地火」が面白かった2000年代海外SF傑作選 (ハヤカワ文庫SF)作者:エレン…

Stacie Friend "Fiction as a Genre"

メイクビリーブを批判する1人として有名なフレンドの、(おそらく)有名な論文 フィクションの定義を巡る話で、タイトルにある通り、フィクションをジャンルの1つと捉え、メイクビリーブや想像のために作られたもの、という標準的な定義を退ける。 ここでフ…

フランソワ・ダゴニェ『具象空間の認識論』(金森修訳)(中断中)

地質学や岩石学などを題材としてエピステモロジーの本びおれん@薔薇の講堂 on Twitter: "この辺(イメージ美学による科学認識)はフランソワ・ダゴニェが『具象空間の認識論』や『イメージの哲学』でやってるのでオススメ。" 以前、描写の哲学で科学哲学と美…

Glenn Parsons "The Aesthetic Value of Animals"

動物の美学について論じた論文 動物を美的に鑑賞するのは不道徳なのかという問題に対して、機能美を鑑賞するのであれば不道徳ではないと論じる。 以前、青田麻未「動物の美的価値 : 擬人化と人間中心主義の関係から」を読んだ時に、主に紹介されていたもの …

土屋健『化石の探偵術』

サブタイトルは、「読んで体験する古生物研究室の世界」とあり、古生物学研究の方法論についての入門書 化石を掘るための道具や地図の読み方・書き方から始まり、どのようなところを掘ればいいか、地層からどのようなことが分かるか、掘り出したあとの化石を…

トッド・E・ファインバーグ,ジョン・M・マラット『意識の神秘を暴く 脳と心の生命史』(鈴木大地 訳)

サールの「生物学的自然主義」を引き継ぎ「神経生物学的自然主義」を掲げる筆者らによる神経生物学的な意識研究の本 前著『意識の進化的起源』のダイジェスト的な本らしく、前著の方を未だ読めていなかったので、とりあえずこっちを手に取ってみた。 基本的…

Marco Tamborini "Technoscientific approach to deep time"

古生物学(歴史科学)の科学哲学論文 古生物学において、いかに被説明項たる現象がテクノロジーによって生産され、処理され、提示されているか。 テクノロジーと不可分であることを示す。 Derek D. Turner "Paleoaesthetics and the Practice of Paleontology(…

Dominic M. Lopes "Drawing Lessons"

画像の認知的価値と美的価値の関係について ロペスの画像・絵画の価値に関する論集の第4章にあたる論文 同じ本の第2章は以前読んだ D.Lopes "The 'Air' of Pictures" - logical cypher scape2 Sight and Sensibility: Evaluating Pictures (English Edition…

”All Yesterdays: Unique and Speculative Views of Dinosaurs and Other Prehistoric Animals”

筆者は、 Darren Naish、John Conway、 C.M. Kosemen 以前読んだDerek D. Turner "Paleoaesthetics and the Practice of Paleontology(美的古生物学と古生物学の実践)" - logical cypher scape2の参考文献に出てきていた本だったので、手に取った。 All Yest…

天冥の標9・10

というわけで読み終わりました 最後はシリーズの集大成なわけだけども、各巻ごとに異なる顔を見せてきた本シリーズは最終巻でもやはりそうで、これまでになくスペオペ 無数の地球外知的生命体種族が現れ、意味不明なスケールの宇宙艦隊戦をやり始める ポッと…

天冥の標(7・8)

巻ごとに異なることを色々やってるこのシリーズ 7巻は、十五少年漂流記、ただし子どもの数は5万人、みたいなっ 奴だった で、少しずつ、これが一巻のメニーメニーシープにつながっていくんだろうなというのは分かってくるんだけど、実際に繋がった時には、う…

天冥の標(5・6)

一巻のあとがきで、やれることを全部やる的なことが書かれていたが、5巻でようやく何となくその意味が分かってきた 5巻は、小惑星の農家の話で、これまた1〜4巻とは少し雰囲気が異なる。 こうやって、1つの物語の中でしかし、様々なネタ・アイデアを展開し…

『ナショナルジオグラフィック2020年10月号』

恐竜特集を読んだナショナル ジオグラフィック日本版 2020年10月号 [雑誌]日経ナショナル ジオグラフィック社Amazon スピノサウルスから始まり、最近のトピックを次々と紹介している CTスキャンで、恐竜が種類ごとに異なる脳の冷却システムを持つことが分か…

天冥の標(1〜4)

ついに読み始めてしまった…… これ読み始めたら、しばらく他のもの手につかなくなるなと思って、読まずにいたのだけど 無料だったkindleを読み始めたのが運の尽きw とりあえず途中経過 こんなにも性と羊をめぐる話だったとは あと、こんなに各巻ごとに時代も…

フィルカルvol.5 no.2

対談「哲学対話:言葉による言葉の吟味としての」 (山田圭一、池田喬、佐藤暁) 特集1:描写の哲学 「描写の哲学を描写する」(松永伸司) 「イメージを切り貼りするとなにがどうなるのか インターネットのミーム文化における画像使用を中心に」(銭清弘) 「キャラ…

岩下朋世『キャラがリアルになるとき』

筆者が『ユリイカ』などに書いてきたキャラクター論を集めた論集。2011年〜2016年の間に書かれたもの(と書き下ろし一編)が収録されている。 第1部がマンガ、第2部が仮面ライダー、テニミュ、ラッパーなどを題材にしたもの、となっている。 Ⅰ マンガのなか…

スタスニスワフ・レム『完全な真空』

架空の本についての書評 対象となるのは、小説が多いが、最後の4編は学術書 原著が1971年、1989年に刊行された邦訳が今年文庫化された。 SF的な作品もあれば、文学パロディなものもある。 今でも面白いなあ、というものもあれば、もうさすがに古いかなという…

伊藤邦武・山内志朗・中島隆博・納富信留編著『世界哲学史8』

今年1月から刊行の始まった「世界哲学史」シリーズ。いよいよ完結の第8巻(と思いきや、12月 に別巻が出るらしいが) 8巻は「現代 グローバル時代の知」伊藤邦武・山内志朗・中島隆博・納富信留編著『世界哲学史1』 - logical cypher scape2 伊藤邦武・山内志…

D.Lopes "The 'Air' of Pictures"

絵画の表現について 分析美学では、表現というのは、作品が何らかの感情を表現していることを指し、特に音楽における表現が論じられている。 絵画については触れられることが少ない この論文は、ロペスの絵画(画像)論についての本の第2章である。 「この曲…

伴名練編『日本SFの臨界点[恋愛編]死んだ恋人からの手紙』

タイトル通り、恋愛SF(一部、恋愛ではなく家族愛ものだが)を集めたアンソロジー 何故か歴史改変ものが2作ある。 恋愛SFというと時間SFと相性がよいという勝手なイメージがあるが、その点直球の時間SFはなく、しかし、歴史改変ものも広義の時間SFと捉えればそ…

田口善弘『生命はデジタルでできている』

バイオインフォマティクスの観点から、ゲノム、RNA、タンパク、代謝について、今進められている研究、まだ何が分かっていないのかなどについて解説されている本 また、タイトルに「デジタル」とあるが、ゲノムを中心とした生命機構をデジタル処理装置と見な…

津久井五月『コルヌトピア』

植物と都市、そして庭園のSF 人と居場所を巡る物語、かもしれない 「コルヌトピア」と、文庫化に伴い、その後日譚(15年後を描いた)「蒼転移」が書き下ろしで収録されている。 ビルディングが植物で覆われた未来都市、というのは絵的にはありがちだが、新宿と…

伴名練『なめらかな世界と、その敵』

寡作ながら年刊SF傑作選常連の伴名練、初の短編集 読もう読もうと思いつつ、すでに発行から1年くらい経ってた。 伴名練は、作風が幅広い感じもするのだが、こうやってまとめて読むと、傾向が見えてくるというか。世界の変化を引き起こす者と変化に振り落とさ…

伴名練編『日本SFの臨界点[怪奇編]ちまみれ家族』

1961年の作品から2016年の作品まで、ギャグ的な作品も含めて、広い意味でSFホラー作品を集めたアンソロジー 上に1961年からとは書いたものの、収録作の大半は90年代及び2000年代の作品である。この時期の作品が多い理由は、編集後記に書かれている。 上に「…

『SFマガジン2020年8月号』

特集・日本SF第七世代 ここでは、北野勇作、野尻抱介を第4世代、冲方丁、小川一水、上田早夕里、伊藤計劃、円城塔を第5世代、宮内悠介、酉島伝法、小川哲を第6世代とした上で、それ以降を第7世代としている。 まあ、世代分けにどれくらいの意味があるかはと…

伊藤邦武・山内志朗・中島隆博・納富信留編著『世界哲学史7』

7巻は「近代2 自由と歴史的発展」伊藤邦武・山内志朗・中島隆博・納富信留編著『世界哲学史1』 - logical cypher scape2 伊藤邦武・山内志朗・中島隆博・納富信留編著『世界哲学史2』 - logical cypher scape2 伊藤邦武・山内志朗・中島隆博・納富信留編著…

デイヴィッド・ライク『交雑する人類』(日向やよい訳)

サブタイトルは「古代DNAが解き明かす新サピエンス史」てまあり、遺伝学による人類史研究の本 筆者は一時期ペーポの研究所にいた人で(今は独立した研究室を持っている)、この本のタイトル的にも、ネアンデルタール人やデニソワ人と現生人類との交雑の話かな…

スティーブン・ミルハウザー『私たち異者は』

日常の中に紛れ込んだ奇妙なものを描くミルハウザーの短編集 原著は2011年 標題作をはじめ「私たち」という一人称複数形を使う語りによる作品が多く(7作中5作)印象的だった 帯にも引用されている訳者あとがきに「ミルハウザーといえば「驚異」がトレードマー…

河合信和『ヒトの進化七〇〇万年史』

ちくま新書のkindleセールで購入 そのタイトル通り、700万年のヒト(ホミニン)の進化史についての本だが、記述の主軸はむしろ発見・研究の方にある 誰がどこでどのように発見したのかという観点から進んでいく感じ そのため、若干構成の難しさがある。 章わけ…