岩下朋世『キャラがリアルになるとき』

筆者が『ユリイカ』などに書いてきたキャラクター論を集めた論集。2011年〜2016年の間に書かれたもの(と書き下ろし一編)が収録されている。
第1部がマンガ、第2部が仮面ライダーテニミュ、ラッパーなどを題材にしたもの、となっている。


Ⅰ マンガのなかの「人間」たち

序論 キャラクターを享受すること

1 キャラクターと囲む食卓――グルメマンガの実用性とリアリティ

2 〈まなざし〉の行方――『雨無村役場産業課兼観光係』試論

3 「世界」の描き分け、キャラクターの対話――描画スタイルの併用について

4 “ぽっちゃりヒロイン”は伊達じゃない――『BUYUDEN』にみる『少年サンデー』スポーツマンガの系譜

5 動かずに立つキャラクター――「死に様」から読む『島耕作』入門 

6 岩明均の輪郭、線――パラサイトからマンガ的人間へ

Ⅱ 「リアル」に乗り出すキャラクターたち

7 誰が「変身」しているのか?――「特異点」としての『仮面ライダー電王

8 2次元と2・5次元の『テニスの王子様』――キャラクターの成長、キャラクターへの成長

9 「マンガの実写化」と「マンガから生まれた映画」――マンガ原作映画についての覚え書き

10 マンガと2・5次元――『弱虫ペダル』におけるキャラクター生成のメカニズム

11 「リアル」になる――キャラクターとしてのラッパー

12 キャラクターはどこにいる――『ヒプマイ』そして「解釈違い」

ブックガイド 「マンガ論の現在」のこれまでとこれから

あとがき

初出一覧

1 キャラクターと囲む食卓――グルメマンガの実用性とリアリティ

クッキングパパ』と『きのう何食べた?』を、レシピが作中でどのように提示されているかという観点から比較

2 〈まなざし〉の行方――『雨無村役場産業課兼観光係』試論

登場人物たちのまなざし(どちらを向いているか)がどのように描かれているか

3 「世界」の描き分け、キャラクターの対話――描画スタイルの併用について

描画スタイルの違い(ありていにいえば、リアルっぽい絵柄とデフォルメ調の絵柄など)が1つの作品の中で併用されることで、キャラクターが立ち上がることについて

4 “ぽっちゃりヒロイン”は伊達じゃない――『BUYUDEN』にみる『少年サンデー』スポーツマンガの系譜

『がんばれ元気』などサンデースポーツマンガにおける、主人公の憧れ・動機となる存在がどのように変遷していったか

5 動かずに立つキャラクター――「死に様」から読む『島耕作』入門

島耕作』の様々な登場人物の死に様

6 岩明均の輪郭、線――パラサイトからマンガ的人間へ

岩明の『寄生獣』連載を通じての描線の変遷を追う
多義的な線から明快な線へ
パラサイトから「マンガ的人間」へ

7 誰が「変身」しているのか?――「特異点」としての『仮面ライダー電王

キャラとしてのイマジン

8 2次元と2・5次元の『テニスの王子様』――キャラクターの成長、キャラクターへの成長

「キャラ」としての役者
ベンチワークの話は、テニミュの話でよく聞くけど、普通の舞台でもそういうのはあるのではという気がする。
一方、成長の話はこのジャンルないしテニミュ独特なのかなと思う。舞台で、続編が次々と作られていく、というのはあまりなさそうなので。


今の2.5次元業界がどうなってるのか全く知らないので何ともだが、多少、女性声優コンテンツ(?)かじってる身としては、キャストの成長とキャラクターの成長を重ね合わせるのは、たまたまそういうシチュエーションが生じることもあるだろうけど、ジャンルの特徴にはならないかなとも思う。
意図的に起こせるものではないし、キャストのキャリアに負担かける可能性もあるし、とかで、

9 「マンガの実写化」と「マンガから生まれた映画」――マンガ原作映画についての覚え書き

楳図かずお原作鶴田法男監督『おろち』について

10 マンガと2・5次元――『弱虫ペダル』におけるキャラクター生成のメカニズム

マンガと舞台について

11 「リアル」になる――キャラクターとしてのラッパー

自己紹介ソング=キャラソン的なラップ
ラッパーは「原作者」であると同時に「キャラクター」を演じる
ラッパーがリアルであるとは、キャラクターとして虚実の緊張を引き受けること

12 キャラクターはどこにいる――『ヒプマイ』そして「解釈違い」

いわゆる「公式が解釈違い」という現象に対して、DキャラクタとPキャラクタの違い(松永)を用いて説明する
曰く「Pキャラクタに見当外れののDキャラクタを演じさせている」時に解釈違いとなる、と。
また、いわゆる2.5次元と呼ばれるミュージカル・演劇について、演者は直接Dキャラクタに演じようとするのではなく、Pキャラクタを演じることを介してDキャラクタを表現しようとしている、と特徴づけている。
このあたり面白いなと思った

ブックガイド 「マンガ論の現在」のこれまでとこれから

2000年代、1970年代以前、1970年代以降、2010年代とわけて、マンガ論の歴史を概観するブックガイド
読むだけで勉強になる