文芸評論・文学

『ユリイカ2023年11月臨時増刊号 総特集=J・R・R・トールキン』

想像のobjectと想像のvividness - logical cypher scape2で「岡田スライドについては、また機を改めて触れるかもしれない。」と述べたが、そのスライドの中で岡田は、フィクションを鑑賞するにあたっては「「想像の産物に現実らしい一貫性を与える表現を達成…

小池隆太のマンガ・アニメに関わる物語論関係の論考を読んでのよしなしごと

『マンガ研究13講』『マンガ探求13講』や『アニメ研究入門』『アニメ研究入門(応用編)』という本があり、未読ではあるのだが、いつか読みたいと思っていて目次だけは確認している。 その際、気になった論考がいくつかあるのだが、いずれの本の中にも小池隆…

『ユリイカ 2023年7月臨時増刊号 総特集=大江健三郎』

実物を見ると600ページ超の分厚さにびびる。 大江健三郎について最近ちょっと読んでいるとはいえ、全然明るくないので、ごくごく一部の論考だけちらっと読んだユリイカ 2023年7月臨時増刊号 総特集◎大江健三郎 ―1935-2023―作者:工藤庸子,尾崎真理子,市川沙央…

『文藝 2022年夏季号』

久しぶりに図書館で文芸誌の棚を見ていたら(というか『文藝』の別の号を探していたのだけど)、表紙にある「フォークナー」「イーガン」「犬王」の文字が目に入ってきたので、思わず手に取ってしまった。文藝 2022年夏季号河出書房新社Amazon ◎特集2 フォー…

木原善彦『実験する小説たち』

アメリカ文学研究者で翻訳者である筆者が、主に20世紀後半以降に書かれた実験小説を色々紹介してくれる本。 今、海外文学読むぞ期間を個人的に展開中だけれど、それのガイドになればなあと思って。それ以前から気になっていた本ではあるけれど。 どういう手…

桑野隆『20世紀ロシア思想史 宗教・革命・言語』

20世紀のロシアにおける哲学や思想に一体どんなものがあるのか、概略をつかむのにちょうどよい入門書ないしハンドブック かなり広範に扱っているが、ページ数は手頃な長さにおさまっている。その点、個々の思想について説明が少なくなってしまっているところ…

『文学+』03号

「凡庸の会」*1が発行している文芸批評と文学研究の雑誌『文学+』の第3号 以前、創刊号を少し読んだことがある。 『文学+01』 - logical cypher scape2 第3号の宣伝が回ってきたとき、大正文学史というのが見えて、最近立て続けに大正史を読んでいた(筒井…

巽孝之『恐竜のアメリカ』

恐竜アメリカ文学史。 以前、恐竜文学研究として南谷奉良「洞窟のなかの幻想の怪物―初期恐竜・古生物文学の形式と諸特徴」東雅夫・下楠昌哉編『幻想と怪奇の英文学4』 - logical cypher scape2を紹介したが、他にも恐竜文学研究をしているっぽい本を見つけ…

南谷奉良「洞窟のなかの幻想の怪物―初期恐竜・古生物文学の形式と諸特徴」東雅夫・下楠昌哉編『幻想と怪奇の英文学4』

恐竜・古生物学文学研究の論文 同じ著者による恐竜・古生物文学研究の記事としては、以下もある。 最近、福井県立大学に恐竜学部ができるというニュースがあった時に、とある古生物学者の方が、ぼくの考えるさいきょうの恐竜学部的な感じでこんなツイートを…

『文学+01』

文学+ 1号 発売中A5サイズ/240ページ定価:1200円(送料・振り込み手数料別)現在は通信販売のみ。お取り扱い頂ける書店様随時募集しております。 pic.twitter.com/thQXxSlzl7— 文学+ (@bungakuplus) 2018年10月5日 2018年11月頃に読んで、そのまま読みさ…

橋本陽介『ノーベル文学賞を読む』

ノーベル文学賞というと、日本では「村上春樹が受賞するかどうか」ばかり注目され、あまりにも受賞作が読まれていない、という現状を嘆く筆者による、ノーベル文学賞受賞作家・作品ガイド 下記の目次にある通り、13名のノーベル文学賞受賞作家が取り上げられ…

『新潮2018年7月号』

新潮 2018年 07 月号出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2018/06/07メディア: 雑誌この商品を含むブログ (1件) を見る佐々木敦の「これは小説ではない」において、キャロル『批評について』が言及されていると聞いたので、読んでみた。 『批評について』未読だ…

橋本陽介『物語論 基礎と応用』

タイトル通り、物語論入門 理論編と分析編とに分かれており、後半の分析篇では実際の作品が数多く紹介されている。 理論編では、プロップ、バルトからの流れをおさえつつ、ジュネットの『物語のディスクール』を中心に説明されている。 この本のポイントとし…

『フィクションは重なり合う』kindle版リリース!

フィクションは重なり合う: 分析美学からアニメ評論へ作者: シノハラユウキ出版社/メーカー: logical cypher books発売日: 2016/05/02メディア: Kindle版この商品を含むブログ (6件) を見るKindle ダイレクト・パブリッシングサービスを利用して、販売を開始…

さやわか『文学の読み方』

さやわか流メディア論的近代日本文学史の本。 『小説神髄』『あひゞき』から始まって『Re:ゼロから始める異世界生活』まで 日本近代文学は、 「文学とは、人の心を描くものである」 「文学とは、現実をありのまま描くものである」 というのが錯覚であること…

第19回文学フリマ感想

『アニバタvol.10』(特集:洲崎西) 事前に全くノーチェックだったけれど、特集タイトルを見て即買いしてしまったw しかもこれは当日に読み終わって、当日に感想をpostしてるw 「茶番の転回とビジネスの展開」洲崎西史における転換点として、リスナーの投…

限界研編『ポストヒューマニティーズ――伊藤計劃以後のSF』

店頭に並ぶのは25日からの予定ですが、見本が届きました! というわけで今日は宣伝記事 こちらの本に、瀬名秀明「希望」論を書かせていただきましたので、是非皆さん読んでみて、よければお買い上げお願いしますw 概要 現代日本SFをめぐる評論集 タイト…

藤田直哉『虚構内存在』

サブタイトルは、「筒井康隆と〈新しい《生》の次元〉」であり、筒井康隆論である。 第1章から第7章まで、筒井康隆の仕事をおよそ時系列順に追いながら、その中にある「虚構内存在」の思想を読み込んでいく。 最後につけられた第A章で、筒井康隆から離れ…

『SFマガジン2012年5月号』

渡邊利道「独身者たちの宴」 日本SF評論賞優秀賞受賞作にして、上田早夕里『華竜の宮』論 まず、他の上田作品をざっと見渡して「変化はするが成長はしない」「他者性」といったことを共通点と挙げ、次いで構成を整理した上で、内容の分析へと入っていく。 青…

東浩紀『サイバースペースは何故そう呼ばれるか+』

「サイバースペースは何故そう呼ばれるか」を河出文庫版で再読。 それから、収録されている論考「精神分析の世紀、情報機械の世紀」「想像界と動物的通路」「スーパーフラットで思弁する」を読んだ。「精神分析の〜」は再読、残り2つは初めて読んだ。対話の…

村上裕一『ゴーストの条件』

ゼロアカ道場優勝者である村上裕一によるデビュー作。 これで長きにわたったゼロアカ道場企画も本当に終結したと言える。 キャラクターというものが現代オタク文化の中で拡散している様をゴーストという概念で捉え直し、そのリアリティを批評している本。 三…

限界小説研究会編『サブカルチャー戦争』

大分間を空けながら読んでしまったので、詳しいコメントなどはなしで。 面白かったのは 飯田一史「村上龍はなぜ「カンブリア宮殿」に至ったのか」と 蔓葉信博「至道流星と情報戦」 どちらも小説と経済の話だが、前者は村上龍の経歴を追って村上龍が何を目指…

『認知物語論キーワード』西田谷洋他

認知言語学の知見をベースにした物語論の更新。 文学研究者はいまだにソシュールとか言いかねないので、そこらへん更新していこうというような意図もあるらしい。 冒頭の論考では、文学研究と科学研究(ここでは特に言語学)の違いが指摘され、その違いを認…

『早稲田文学増刊U30』

まだ小説は読んでないけど、評論は読んだ。 福嶋亮大「現代中国文化に見るネットワーク効果」 まあ大体タイトルどおりの感じの話 伊藤亜紗「「露出」する登場人物たち」 非常に面白かった。「カギ括弧論」もそうだけど、伊藤さんって派手さはないけど面白い…

あんまりちゃんと感想メモ書けてなかったけど、読んだ本の記録2(『フィクションの哲学』『現代の金融入門』『憂鬱と官能を教えた学校』『セカイ系とは何か』)

清塚邦彦『フィクションの哲学』 色々な意味で勉強になった。 何というか、文章の書き方レベルから。 想像って結局何なの、とか、西村清和から来るであろう反論をどうかわすの、とかが気になった。 あと、やはりウォルトンは面白そうだなあとか。 虚構記号と…

中島一夫『収容所文学論』

これが批評って奴なんだなーと思った。 いわゆる批評と呼ばれる、柄谷行人とかすが秀美とか読んだことないからなー。 かなり全般的に、マルクスの価値形態論に依拠していて、それを使って色々と読んでいくというのは、なんか面白いなあと思う。何でマルクス…

今月の文芸誌

群像8月号 戦後文学2009高橋源一郎×奥泉光 群像で戦後文学を読む企画をやるんだけどどう、みたいな感じの対談。 自分たちが戦後文学をどう読んできたかとか、今の文脈でも面白いものは面白いんじゃないかという話から、次第に企画会議へと変わっていく…

外部のなさとしてのセカイ系

『社会は存在しない』を読んでいて考えたことなどを書いていく。 『コードギアスR2』と『ダークナイト』 笠井は、「セカイ系と例外状態」の中で『コードギアス』を画期的な作品だとしたうえで、R2のラストについても論じている。例外状態において親殺し…

『社会は存在しない』限界小説研究会編

サブタイトルに「セカイ系文化論」とある通り、セカイ系評論集となっている。 「何を今更セカイ系なんて」と思う向きにも、ちょっと立ち止まってもらいたい。 これは、セカイ系と称されてきた作品について論じる、というわけではなく、セカイ系という概念が…

『国文学増刊 2009年6月号』『すばる6月号』『群像7月号』

国文学増刊 特集「小説はどこへ行くのか 2009」 病/鹿島田真希 豊穣の角/円城塔 [鼎談] 岡田利規、鴻巣友季子、福永信 「船は波を切って進む」 『アクロバット前夜』の話から始まる。段組をするのはデザイナーであって自分たちじゃないというところ…