2021-01-01から1年間の記事一覧

土屋健『地球生命 水際の興亡史』

「水際世界」の古生物を解説した本で、両生類、偽鰐類、水棲哺乳類を取り扱っている。 「古生物学の黒い本」と称された一連のシリーズ(土屋健『古第三紀・新第三紀・第四紀の生物』 - logical cypher scape2など)の後継シリーズの第一弾。こちらの表紙もお…

KDPペーパーバック版表紙作成の顛末

先週、なんとか刊行にこぎつけた『物語の外の虚構へ』ですが、 早速、裏表紙を差し替えることになってしまいました。 12月26日22時半以降(場合によってはもっと早く、あるいはもっと遅く、そのあたりはAmazon次第です)、差し替え後の版で買えるようになり…

藤野可織『おはなしして子ちゃん』

SFじゃない小説(文学とか)も読もうと思って手に取ったのが、しかし藤野可織という……結局、SFに近い何かを読んでしまう奴 芥川賞作家だし主に四大文芸誌で活動している作家なので、実際、SFではなく文学の作家ではあるのだが、年刊SF傑作選に何度か入ってい…

メタファーについて論文2つ

石田知子「「遺伝情報」はメタファーか」 www.jstage.jst.go.jp第18回日本科学哲学会石本賞は、石田知子さんの「「遺伝情報」はメタファーか」が受賞されました。素晴らしい。— Masashi Kasaki (@kasa12345) 2021年11月27日 このツイートを見て存在を知り、…

石黒達昌『診察室』

石黒達昌の電子書籍版短編集 『日本SFの臨界点 石黒達昌 冬至草/雪女』(伴名練編) - logical cypher scape2を読んだ勢いで手に取った。 どういう経緯で成立した企画なのかはよく分からないのだが、石黒については電子書籍オリジナル短編集というのがいく…

D・サタヴァ他『カラー図解 アメリカ版 新・大学生物学の教科書 第3巻 生化学・分子生物学』

アメリカの生物学教科書『LIFE』を分冊して翻訳しているシリーズ。以前から気になっていたが、たまたま本屋で新版が出ているのを見かけて手に取った。 なお、何故いきなり3巻なのかというと、自分が今興味があり、学び直したいと思っていたのが生化学だった…

北村紗衣『批評の教室』

サブタイトルは「チョウのように読み、ハチのように書く」(もちろんモハメド・アリの言葉が元ネタ)。批評を書くための方法を分かりやすく解説している。 ここでいう批評はかなり広い意味で使われていて、何らかの作品について分析して説得的に論じた文章、…

『日本SFの臨界点 石黒達昌 冬至草/雪女』(伴名練編)

伴名練による作家別アンソロジーシリーズ第3弾*1 石黒作品は、過去にやはりアンソロジーで「冬至草」と「雪女」を読んでいて、面白かったので気になっている作家ではあった。 「冬至草」と「雪女」はわりと似ていて、どちらも架空の研究をノンフィクション風…

『日経サイエンス2021年10月号』

日経サイエンス2021年10月号 [雑誌]日経サイエンスAmazon SCOPE ヒト受精卵ゲノム編集の行方 どういう時ならやっていいか、ということで、それ以外に治療の手段が絶対にないという時に限り解禁しようという動きが出てきているらしい。 ADVANCES 思考による文…

鳴沢真也『連星から見た宇宙』

サブタイトルは「超新星からブラックホール、重力波まで」 元々連星に特に興味があったわけではなかったのだが、サブタイトルにある通り、ブラックホールや重力波天文学あるいは系外惑星などの最近話題のトピックについて扱っており、連星をキーワードとした…

スティーブ・ブルサッテ『恐竜の世界史』

恐竜の黎明期から絶滅まで、恐竜がいかに進化し生きてきたのかを描いた恐竜入門。 1984年生まれの筆者自身や筆者の研究仲間による最新の研究成果を交えながら、恐竜の歴史をトータルに見せてくれる。 プロローグ 恐竜化石の大発見時代 1 恐竜、興る 2 恐竜、…

『Newton』2021年8月号・9月号・10月号

『Newton2021年8月号』 Newton 2021年8月号作者:科学雑誌NewtonニュートンプレスAmazon Super Vision ダンスする光と影 ブラックホール連星のシミュレーションCG 降着円盤が歪んでる奴 元になった動画はこれ→ GMS: NASA Visualization Probes the Doubly War…

月村了衛『機龍警察白骨街道』

機龍警察シリーズ長編第6弾 ミャンマーに赴くことになった部付警部3人、そして京都を舞台に城木は親戚たちと対峙する。 特捜部解体に動き出した〈敵〉『機龍警察 白骨街道』読了(昨日の夜遅くに読み終わった。おかげで寝不足気味)よくこんな話が書けるな………

ラヴィ・ディドハー『完璧な夏の日』

様々な特殊能力を持った超人(ユーバーメンシュ)が存在する20世紀を描くSF おおむね第二次世界大戦前後のヨーロッパが舞台だが、ベトナム戦争やアフガン侵攻、911なども出てくる。なお、原題はThe Violent Centuryであり、こちらのタイトルの方が内容には沿っ…

ゴールデンカムイ

最終章開始記念ということで、最新話(285話)まで全話無料公開されていたのでまとめて読んだ。 アニメで見ていた部分は飛ばすことにしたけれど、アニメでやってたのが原作で何話か分からなかったので、70話くらい(江渡貝くんと夕張炭鉱あたり)から読んだ。な…

フィルカルVol.6No.1

フィルカル Vol. 6, No. 1―分析哲学と文化をつなぐ―作者:長門 裕介,神戸 和佳子,稲岡 大志,長田 怜,谷田 雄毅,清水 雄也,小林 佑太,松林 要樹,吉川 孝,玉田 龍太朗,和泉 悠,矢田部 俊介,筒井 一穂,池田 喬,中西 淳貴,源河 亨,谷川 嘉浩,難波 優輝,桜川 ひか…

神経美学と自由エネルギー原理?

神経美学の本と自由エネルギー原理の本を読んだわけだが、そうするとその2つはどう繋がるかも気になってくるよな— シノハラユウキ (@sakstyle) 2021年7月10日 専門家と素人とで、作品の見方が違う(作品全体を満遍なく見るかそうでないか)話は、なんか説明で…

乾敏郎・阪口豊『脳の大統一理論』

サブタイトルは「自由エネルギー原理とはなにか」 フリストンの自由エネルギー原理についての入門書 同じ作者による乾敏郎『感情とはそもそも何なのか』 - logical cypher scape2でも、自由エネルギー原理について解説しており、内容としては一部重複するが…

石津智大『神経美学―美と芸術の脳科学』

タイトル通り、神経美学についての入門書 筆者は、ゼキのところで共同研究していたこともある研究者 もちろん、人文系の美学とは異なるところも色々あるが、しかし、人文系の美学とも接続可能な議論も色々なされていると思う。 後半で出てくる2つの美という…

『認知科学第28巻第2号(2021)』解説特集「深層学習と認知科学」

TLで論文pdfのリンクが流れてきたので、特集の論文を3つとも読んでみた。 賀沢 秀人「深層学習は認知科学の対象となるか」 深層学習は認知科学の対象となるか 認知科学が対象にするのが、何らかの意味で知的に(ヒト的に)振る舞っているシステムだとした上…

日経サイエンス2021年8月号

日経サイエンス2021年8月号(特集:ヤポネシア/17年ゼミの生存戦略)日経サイエンスAmazon 海外ウォッチ 恐竜の骨のジグソーパズル 恐竜の骨がバラバラにいくつも発見された時、それが同一個体の骨なのかどうか、これまで確かめる術はなかった。が、骨の微細構…

生井英孝『空の帝国 アメリカの20世紀』

20世紀アメリカの航空史について書かれた本だが、空軍に関する政治史を中心に大衆文化論を混ぜたような一冊。 筆者は、もともと写真を中心とした視覚文化論が専門らしい。本書も、歴史書というよりは文化論の視点から書かれた読み物という雰囲気だが、その…

加藤聖文『満鉄全史』

満鉄こと南満州鉄道株式会社の設立から終焉まで、まさに全史の本 政治史の中で捉え、いかに満州を巡る日本の政策(国策)が一貫しないものであり、満州支配が混乱したものであったかを論じていく。 その時々の総裁など、人物に注目した記述ですすんでいくの…

青田麻未『環境を批評する』

筆者の博士論文を元にした環境美学についての本 英米系環境美学をサーベイし、環境を批評するという観点から「鑑賞対象の選択」と「美的判断の規範性」という2つのテーマで整理している。 元々環境美学のいう環境は、自然環境を意味していたが、その後の発…

『日経サイエンス2021年7月号』

実はどの記事もちゃんと読んでいない。 立ち読みでさらっと眺めただけ。でも、一応メモ日経サイエンス2021年7月号(特集:太陽系誕生の謎を探る/ヒトバイローム)日経サイエンスAmazon 惑星の種 コンドリュール J. オカラガン https://www.nikkei-science.com/2…

『パワードスーツSF傑作選 この地獄の片隅に』(ジョン・ジョゼフ・アダムズ編、中原尚哉訳)

パワードスーツをテーマにした書き下ろしSFアンソロジー やはり宇宙や戦場を舞台にした作品が多いが、開拓時代のオーストラリアやスペイン内戦を舞台にした歴史改変系SFがあったり、ラブロマンスサスペンスものがあったりと、多様性があってちょっと驚く。 …

『SFマガジン』2021年6月号

異常論文特集 SF短編集とかに時々入ってる論文風とかレポート風の作品が好きなので、この特集は当然買いだった そういう感じの作品としては、柞刈湯葉の裏アカシックと、柴田勝家の宗教性原虫がそれっぽさ(?)があって面白かったが、一方、最後に並ぶ3編が小…

冲方丁『マルドゥック・アノニマス6』

ウフコックがアノニマスからウフコック・ペンティーノへと帰る道を歩み出す 4巻から続いた、2つの時間に分かれて進む展開が、ここにきてようやく合流 再会と再出発としての別れを同時に描くために、ここまでこんな展開をしてきたのか、と思った冲方丁『マル…

高山羽根子『首里の馬』

芥川賞受賞作首里の馬作者:高山羽根子発売日: 2020/07/27メディア: Kindle版 沖縄・港川が舞台 未名子は、子どもの頃からとある私設資料館の整理を手伝っている。各地でフィールドワークをしていた在野研究者の順(より)さんが、沖縄で集めた様々な記録 一方…

オキシタケヒコ『筐底のエルピス7 継続の繋ぎ手』

とりあえず読み終わったのでその記録筺底のエルピス7 -継続の繋ぎ手- (ガガガ文庫)作者:オキシタケヒコ発売日: 2021/02/18メディア: Kindle版 今まで頼りになる味方だった人物が、それも3人まとめて敵になってしまった、さあどうする、という回だった