石黒達昌『診察室』

石黒達昌電子書籍版短編集
『日本SFの臨界点 石黒達昌 冬至草/雪女』(伴名練編) - logical cypher scape2を読んだ勢いで手に取った。
どういう経緯で成立した企画なのかはよく分からないのだが、石黒については電子書籍オリジナル短編集というのがいくつか編まれている。つまり、紙媒体で出版されたものを後に電子化したもの、というわけではなく、電子書籍版しか存在していない短編集となる。
この『診察室』は、非SFの主に医療系の短編が集められている。
ほとんどが「死」をテーマとしていてる。

診察室

診察室

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ごっこ

主人公が医者で、癌になった義理の父親とどのように相対するかという話
主人公が、告知というのをあまりよく思っていないのが分かる

ハバナの夜

医療ミステリ
看護師が末期患者に麻薬をいつもより多く投与して死なせてしまい、自首してくる。
主人公の医者は、警察から要請されて協力する中で、彼女の動機を探り当てていく。

その話、本当なのか

医療系ではない作品
家に白蟻がゴキブリなどが次々と出てくるという話で、読みながら、正直「なんで俺、こんな小説を読んでいるんだろうか」という気持ちにはなってしまったが

叔父が脚の切断手術をすることになったのだが、脚の葬式をやらなければ手術に同意しないと言いだし、切断した脚を何故か家で保管する羽目になってしまった主人公
他の収録作と違って、どこかコミカルな感じの作品

真夜中の方へ

芥川賞候補作
院長が亡くなり閉院することになった、北海道の田舎の病院に、閉院までの処理をするために赴任してきた主人公の医者(院長の甥か何かなので)。
末期癌の入院患者数名と、看護師、薬剤師が一人ずつ。外来患者も少しずつ減らしていき、入院患者がいなくなったら(つまるところ全員が亡くなったら)閉院となる。
薬剤師の人は、そんな病院に公募でやってきた人で何故かニホンオオカミを探している。
閉院へと向かう病院の様子と、その薬剤師(とそれに巻き込まれる主人公の)ニホンオオカミ探しとがパラレルに描かれていく。