マンガ

ゴールデンカムイ(完結)

雑誌連載の最終話まで読み終わったので軽く感想 なお、自分は、前回と今回の無料公開時に読んでるだけなので、大雑把な話しかできません ここでは、『ゴールデンカムイ』で何が描かれていなかったのか、ということについて思いついたことを書こうと思う。 た…

ゴールデンカムイ

最終章開始記念ということで、最新話(285話)まで全話無料公開されていたのでまとめて読んだ。 アニメで見ていた部分は飛ばすことにしたけれど、アニメでやってたのが原作で何話か分からなかったので、70話くらい(江渡貝くんと夕張炭鉱あたり)から読んだ。な…

岩下朋世『キャラがリアルになるとき』

筆者が『ユリイカ』などに書いてきたキャラクター論を集めた論集。2011年〜2016年の間に書かれたもの(と書き下ろし一編)が収録されている。 第1部がマンガ、第2部が仮面ライダー、テニミュ、ラッパーなどを題材にしたもの、となっている。 Ⅰ マンガのなか…

マンガにおける「分離された虚構世界」と「視覚的修辞」

まえがき 分離された虚構的世界と視覚的修辞 - logical cypher scape2 の続き、というか、最後に触れたイノサンの例についてもう少し膨らませて書く。 マンガは、絵を使って、とあるフィクション世界を描く形式である。 なので、絵の内容は、その世界の出来…

平松和久「キャラクターはどこにいるのか――メディア間比較を通じて」(『サブカル・ポップマガジンまぐまPB11』)

以前、松下哲也「ビアズリーの挿絵はマンガの形式に影響をおよぼしたのか?」(『ユリイカ2019年3月臨時増刊号』) - logical cypher scape2で読んだ平松論文で、平松の4空間論というのが気になったので、こちらも読んでみた。 タイトルにある通り、キャラク…

ひらりん・大塚英志『まんがでわかるまんがの歴史』

タイトル通り、まんがでわかるまんがの歴史 いわゆる学習マンガ形式で書かれた日本マンガ史のテキスト あくまで日本史で、海外のまんがについての歴史は触れられていない(海外への言及がないわけではないが) 冒頭において、「日本のまんが史というと、最初…

鈴木雅雄+中田健太郎編『マンガ視覚文化論 見る、聞く、語る』

鈴木雅雄編著『マンガを「見る」という体験』 - logical cypher scapeの続編 前著が、シュールリアリスムとマンガとの比較という観点があったのに対して、こちらはよりマンガ中心である。 タイトルが示す通り、視覚文化論とのかかわりから論じられるものが多…

野村亮馬『インコンニウスの城砦』

最近話題になっているこちらの作品 全然存在にすら気付いていなくて、最近野村亮馬 “インコンニウスの城砦” - three million cheers.で知って慌てて購入 燃素管、移動城砦、巨像(ゴーレム)などの魔法テクノロジーが進歩し、二大勢力の長きにわたる戦争が続…

『モンテ・クリスト伯爵』

モンテ・クリスト伯爵 (ジェッツコミックス)作者: 森山絵凪,アレクサンドル・デュマ出版社/メーカー: 白泉社発売日: 2015/11/27メディア: コミックこの商品を含むブログ (2件) を見るまあ、古典というものを読まずに生きてきたので、名前と何となくどういう…

『アートオブコミックス:哲学的アプローチ』序文(文フリ東京ボツネタ)

5月1日に東京流通センターで行われる文学フリマ東京にて、 シノハラユウキ『フィクションは重なり合う――分析美学からアニメ評論へ』を発行します。 詳細は→5/1文学フリマ東京にて『フィクションは重なり合う』発行 - logical cypher scape *1 『フィクション…

アポストロス・ドクシアディス、クリストス・パパデミトリウ『ロジ・コミックス』

サブタイトルは「ラッセルとめぐる論理哲学入門」 バートランド・ラッセルの半生を描くグラフィックノベル 著者の名前として、記事タイトルには、アポストロス・ドクシアディスとクリストス・パパデミトリウの名前を挙げたが、作画として、アレコス・パパダ…

最近読んだマンガ論の本まとめ

9月は、自分の中でマンガ論月間と銘打って、マンガ論の本をいくつか読んでいた 結果的に、10月までかかったけど なんで、マンガ論月間やろうかと思ったかというと、きっかけは高田敦史「分離された内容」と伊藤剛「マンガのおばけ」 - Togetter これがも…

佐々木果『まんが史の基礎問題――ホガース、テプフェールから手塚治虫へ』

そのタイトルどおり、まんが史の本。いわゆるコマ割りマンガの起源として、ホガースとテプフェールを取り上げ、その両者の差異を見ていく。 内在的な特徴だけでなく、印刷技術や「単行本書き下ろし」といった外在的な面についても注目している キャラクター…

岩下朋世『少女マンガの表現機構――ひらかれたマンガ表現史と「手塚治虫」 』

これまであまり論じられてこなかった手塚治虫*1の少女マンガを題材に、何故論じられなかったという点でマンガ言説史を論じると共に、どのように論じるかという点で「キャラ」から「キャラクター」がどのように描かれるかということを論じる。 後者については…

三輪健太朗『マンガと映画』

マンガと映画についての美学的メディア比較論であり、これまでの議論・言説を丁寧に再検討しながら、「映画的」であるとはどういうことなのかを論じ、それが「近代」を前提しにした視覚文化であることを示していく本。「映画的」っていうのが単に技法的な話…

鈴木雅雄編著『マンガを「見る」という体験』

サブタイトルは、「フレーム、キャラクター、モダン・アート」 去年の6月から12月にかけて開催された三回連続のWS「マンガ的視覚体験をめぐって――フレーム、フィギュール、シュルレアリスム――」をもとにした論集。 参考:伊藤剛・鈴木雅雄「マンガ的時間、シ…

ティエリ・グルンステン『線が顔になるとき』

フランスのマンガ、バンドデシネを中心に、顔がどのように描かれてきたかを見ていく本 肖像画やカリカチュアといった、マンガではない絵画や、アメリカのコミックス、日本の「マンガ」など、バンドデシネ以外のマンガについても触れられている。 なお、翻訳…

野村亮馬『キヌ六』

SF好きなら読むべし! アフタヌーン四季賞出身の野村亮馬の最新作、全2巻で、先日2巻が発売されたところ ツクバで人工的に造られた火星人類の少女キヌは、ヌードルスタンドで働くサイボーグの少女六を連れ、英国軍の改造兵士に追われながら、火星を目指す …

『アイドルマスター2 The world is all one !!』

最終巻である5巻が最近でたばかりのアイマスコミカライズ作品 アイマスのコミカライズを今まで全然読んだことなかったのだけれど、この作品はとても評判がいいので試しに読んでみたら、実際にとても面白かった。アイドルマスター2 The world is all one!! 1…

ブノワ・ペータース、フランソワ・スクイテン『闇の国々4』

シリーズ最終巻 正確に言うと、フランスで現在までに出版されている作品についての翻訳が一区切りついた巻。正編全てと、主な番外編についての翻訳が終了したという意味での最終巻。 3巻も面白かったけど、4巻も面白かった。 特に3巻の「見えない国境」と…

ブノワ・ペータース、フランソワ・スクイテン『闇の国々3』

ブノワ・ペータース、フランソワ・スクイテン『闇の国々』 - logical cypher scape ブノワ・ペータース、フランソワ・スクイテン『闇の国々2』 - logical cypher scape 1,2巻より面白かった、気がする。 1,2巻と比べて凝った仕掛けや形式がなく、オー…

ブノワ・ペータース、フランソワ・スクイテン『闇の国々2』

ブノワ・ペータース、フランソワ・スクイテン『闇の国々』 - logical cypher scapeの続刊 2は本当はローマ数字だけど 2巻は8割くらいカラーだった サマリスの壁 サマリスへ派遣されることになった主人公。今までサマリスに向かった者たちは戻ってきておら…

ブノワ・ペータース、フランソワ・スクイテン『闇の国々』

正確にはBDであってマンガではないけど、ブログ内の記事を分類するタグなのでマンガとつけておく。 BDは初体験、というわけでは実はなくて、『3秒』を読んだことはある。あともう一つくらい読んだことあるはずなのだが、メモってなくて覚えていない……。…

京都国際マンガミュージアム

行ってきたので、印象に残ったことをいくつか まず、館内を回っていて一番印象に残ったのは、老若男女人種問わず、館内のそこら中でみんなマンガを読んでいるということ。外に広がる芝生に面したテラスでも、思い思いにみんなマンガを広げている。その風景が…

ティエリ・グルンステン『マンガのシステム コマはなぜ物語になるのか』

フランスのマンガ研究書。サブタイトルにあるとおり、コマについての話で、物語論や記号論なども踏まえつつ、マンガの原理を明らかにしようとする本。 マンガ批評、ではなく、マンガ研究であり、基礎的な概念を明らかにして名前を付けていくというような作業…

スコット・マクラウド『マンガ学』

原題はUNDERSTANDING COMICS マンガ論とか読むと間違いなく言及されている一冊で、いつか読みたいと思っていたのが読めた。 これ間違いなくスゴ本。 マンガ論それほど読んでいないので断言できないけれど、これだけ広範にわたって総合的にマンガを論じている…

今井哲也『ぼくらのよあけ』

上では、今月最終巻がでた『忘却のクレイドル』を紹介したので、今度は今月第一巻のでた『ぼくらのよあけ』を。 まず、この表紙がいい。でもってカバーそでが実写だし!w 目次をマンガのコマの中に組み込んでいるのもかっこいい。 と、いきなり内容以外のと…

藤野もやむ『忘却のクレイドル』

藤野もやむのセカイ系キターという感じで読み始めた『忘却のクレイドル』の最終巻が発売されたので、ブログで紹介することにした。 とはいえ、このマンガは結構難しい。 僕は、藤野もやむは今まで『ナイトメア・チルドレン』と『はこぶね白書』を読んでいて、ナ…

大塚英志『アトムの命題』

大塚読むの久しぶり 大塚なのでやっぱり政治的に読むように言ってくるのだけど、漫画史研究としてちゃんと読める。ちゃんとって何だw いや、でも大塚的な皮肉とかはほとんどなかったかもな。 っていうか、宮本大人や伊藤剛の研究との連続性もすごくあるし。…

泉信行『漫画をめくる冒険』下巻

これまた、非常に面白く、また色々と示唆に富む本。 とりわけ、下巻の序で言われている「詠む」という概念の提起は素晴らしいと思った。これは自分のフィクション論にも適用していくことができそうだ。 非常に細かい、技術的な話を論じているようにも思える…