野村亮馬『インコンニウスの城砦』

最近話題になっているこちらの作品
全然存在にすら気付いていなくて、最近野村亮馬 “インコンニウスの城砦” - three million cheers.で知って慌てて購入
燃素管、移動城砦、巨像(ゴーレム)などの魔法テクノロジーが進歩し、二大勢力の長きにわたる戦争が続く世界で、
スパイとなった少年が、敵国の工場へ労働者として潜入するところから物語は始まる。
作り込まれた世界観と苦みの強い物語による濃厚な短編


作者の野村亮馬は『ベントラーベントラー』や『キヌ六』など『アフタヌーン』で連載されていたSFマンガで知られる作家だが、こちらは自費出版作品となっている。
2009年頃に、最近の四季賞はSFが熱いとばかりに、今井哲也市川春子太田モアレ庄司創野村亮馬を紹介する記事書いたことがあるのだが*1、太田はSFではなく格闘技マンガとか書いているので除くとして、今井、市川、庄司はそれなりにブレイクしたと思うのだけど、野村もあともう少しブレイクしてほしいんだよ
『インコンニウスの城砦』読んでくれー


ベントラーベントラー』から『キヌ六』、『インコンニウスの城砦』へと進むにつれて、元々四季賞受賞作や『ベントラーベントラー』はかなりコミカルだったのに対して、『インコンニウス』はもうコミカル要素はなくて、かなりハードになっている。
とはいえ、『ベントラーベントラー』にそういうのがなかったかといえばそういうわけでもない。
そう考えてみると、距離によって人と人とが隔絶してしまう話というのが3編に共通しているかもしれない。『ベントラーベントラー』は時間的距離、『キヌ六』は空間的距離、そして『インコンニウスの城砦』は心理的距離とでも言えばいいだろうか。
決して元に戻ることのできないほどに距離があいてしまったあとに、なお残るものは何なのか、と。
参照:野村亮馬『キヌ六』 - logical cypher scape


三作品通じて好きなのは、ガジェットなりクリーチャーなりのデザインで、継ぎ目のない塊が、異質なテクノロジーを感じさせる。