『物語の外の虚構へ』リリース!

(追記2022年5月6日)カラーになった「フィルカル・リーディングズ」にて、村山さんが『物語の外の虚構へ』を紹介してくれています!https://t.co/l8UOssR01U pic.twitter.com/0LfFPW6Yxn— シノハラユウキ『物語の外の虚構へ』 (@sakstyle) 2022年5月2日 哲…

秋田麻早子『絵を見る技術 名画の構造を読み解く』

自由に見るのでもなく、知識を当てはめるのでもなく、何に注目し、何を探して見ていくかという、絵画を見る方法を教えてくれる本。この手の本としては以前、布施英利『構図がわかれば絵画がわかる』 - logical cypher scape2を読んだことがあるものの、あま…

大江健三郎『芽むしり仔撃ち』

大江健三郎が1958年、23歳の時に書いた、初の長編作品。 戦争末期、僻村に一時的に閉じ込められた少年たちによるスモールパラダイスの形成と崩壊を描く。 プロットがめちゃくちゃしっかりしているというか明快 以前、読んでいたので再読ということになるが、…

海外文学読むぞまとめ

2022年12月〜2023年3月 事の発端(?)は、文学読もうかという気持ち - logical cypher scape2を参照 これが2022年の9月頃で、12月頃から「海外文学読むぞ期間」と称して海外文学を読み始めた。 (9~11月は日本文学篇で、まとめは最近読んだ文学 - logical …

フリオ・コルタサル『奪われた家/天国の扉 動物寓話集』(寺尾隆吉・訳)

コルタサルのアルゼンチン時代に書かれた8篇からなる第一短編集。 海外文学読むぞ期間の一環として、フリオ・コルタサル『悪魔の涎・追い求める男他八篇』(木村榮一・訳) - logical cypher scape2に続いてコルタサル。 のちにパリに移住する作家だが、それ…

ニコルソン・ベイカー『中二階』(岸本佐知子・訳)

1980年代後半の20代半ばの会社員が、自らの生活のディテールをひたすら綴っている小説。 木原善彦『実験する小説たち』 - logical cypher scape2で紹介されており、海外文学読むぞ期間の一環として手に取った。 ウラジーミル・ナボコフ『青白い炎』(富士川…

ウラジーミル・ナボコフ『青白い炎』(富士川義之・訳)

老詩人の遺作となった詩「青白い炎」に、元隣人がつけた大量の注釈が、とある王国から革命の末亡命してきた元国王の物語になっているという作品。 著者のナボコフというのは『ロリータ』のナボコフである。というか、自分はナボコフについて『ロリータ』の作…

デイヴィッド・マークソン『ウィトゲンシュタインの愛人』(木原善彦・訳)

地上でただ1人の人間となってしまった主人公が、狂気すれすれの中でタイプした手記 今、狂気すれすれ、と書いたがそれはあまり適切な言い方ではないかもしれない。 その筆致自体は軽妙で、狂人のようでは全くない。 誰もいなくなった世界を孤独にさまよいな…

瀬名秀明『ポロック生命体』

AIをテーマに4篇収録した短編集 積ん読しているさいちゅうにいつの間にか文庫化されていた。 今まさに現実世界で話題になり続けている技術であるだけに、あっという間に古びてしまいかねないテーマではある。 ディープラーニング系のAIなどの発展が、人間の…

アリステア・マクラウド『彼方なる歌に耳を澄ませよ』(中野恵津子・訳)

カナダ東部を舞台としたファミリーサーガ 物語の舞台は1990年代後半で、主人公は、18世紀にスコットランドのハイランド地方からカナダのケープ・ブレトン島へ移民してきた男の子孫であり、自らの半生と一族について物語っていく。 カナダというのは何となく…

フリオ・コルタサル『悪魔の涎・追い求める男他八篇』(木村榮一・訳)

タイトルにあるとおり、10篇を収録した短編集 日本オリジナル短編集っぽくて、『動物寓話譚』『遊戯の終わり』『秘密の武器』『すべての火は火』といった短編集から、いくつかずつ採って編まれたもののようである。なお、これらの短編集もそれぞれ翻訳されて…

伊坂幸太郎編『小説の惑星 ノーザンブルーベリー篇』

伊坂幸太郎が、自分の好きな小説でドリームチームを組んだという短編アンソロジー 自分は先に伊坂幸太郎編『小説の惑星 オーシャンラズベリー篇』 - logical cypher scape2を読んだが、どちらから先に読めばよいとかいうことはないので、このちょっと不思議…

伊坂幸太郎編『小説の惑星 オーシャンラズベリー篇』

伊坂幸太郎が、自分の好きな小説でドリームチームを組んだという短編アンソロジー 自分は伊坂幸太郎をほとんど読んだことがない(『死神の精度』と阿部和重との共著である『キャプテンサンダーボルト』くらい)が、収録されている作家を見て気になったので読…

『思想2023年1月号(ウィトゲンシュタイン――『哲学探究』への道)』

ウィトゲンシュタインについて、全然読んでいるわけではないけれど、雑誌で特集とかあるとつい気になって手にとってしまう。 鬼界訳『哲学探究』は、半分くらいまで読んだところで止まっている……(この『思想』を読みながら、少しだけ『探求』も読み進めたが…

ミハイル・A・ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』(水野忠夫・訳)

ソ連時代のモスクワを舞台に、悪魔たちが大暴れする話 今現在、個人的に海外文学読むぞ期間を実施中で、この期間に入ってから度々「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」に言及しているけれども、その収録作品の中でも人気の高い作品らしいので、手を取った。 …

木原善彦『実験する小説たち』

アメリカ文学研究者で翻訳者である筆者が、主に20世紀後半以降に書かれた実験小説を色々紹介してくれる本。 今、海外文学読むぞ期間を個人的に展開中だけれど、それのガイドになればなあと思って。それ以前から気になっていた本ではあるけれど。 どういう手…

『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』

東京宝塚劇場での宝塚星組公演を見てきた。 原作が並木陽『斜陽の国のルスダン』といい、何を隠そう、学生時代の先輩が書いた小説なのだ。 知り合いの書いた作品が宝塚で舞台化される、という得がたい経験をしてきたわけで、開幕の際の影ナレで原作者の名前…

『日経サイエンス2023年2月号』『Newton2023年2月号』

日経サイエンス2023年2月号 日経サイエンス2023年2月号 [雑誌]日経サイエンスAmazon SCOPE 不要なシナプスを”食べて”整理 グリア細胞がシナプスを食べることによって、記憶定着に一役買っているという話 また、精神病理との関係も ADVANCES 軟組織が化石にな…

津原泰水『ブラバン』(再読)

作者が2022年10月2日に亡くなったのを受けて、再読した。 受けて、というにはちょっと時間が経ちすぎた感じもするが。 追悼というのもなんか変な感じである。 再読したのは亡くなったことがきっかけだが、読んでいる最終は、この作者が最近亡くなったのだ…

『池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 短編コレクション1』

海外文学読むぞ期間実施中。いよいよ「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」へ突入 とりあえず短編アンソロジーから読む。 この「短編コレクション」は1と2があり、1は南北アメリカ、アジア、アフリカの作家、2はヨーロッパの作家から作品が採られている。 …

山口輝臣・福家崇洋編『思想史講義【戦前昭和篇】』

山口輝臣・福家崇洋編『思想史講義【大正篇】』 - logical cypher scape2に引き続き、今度は戦前昭和篇 もともと日本思想史とか全然だったので、大正篇も知らないことが多くて勉強になったところではあるが、とはいえ、大正篇は、自分の従来持っていた日本史…

藤野可織『ピエタとトランジ』

身近な人の死を引き寄せてしまう体質の名探偵トランジと、彼女の友人で何故かトランジと一緒にいても死なないピエタの友情ないしシスターフッドを描いた物語。 元々、短編(藤野可織『おはなしして子ちゃん』 - logical cypher scape2収録)として書かれた作品…

イタロ・カルヴィーノ『レ・コスミコミケ』(米川良夫・訳)

Qfwfq老人が、宇宙創成や恒星の誕生の頃、あるいは自分が恐龍だった時代や陸上生活を始めた頃の脊椎動物だった時代を語った物語を集めた連作短編集 「自分が恐龍だった」とか何やねんという話だが、実際Qfwfqが「わしは恐龍だった」云々と語っているのであり…

ウィリアム・フォークナー『エミリーに薔薇を』(高橋正雄・訳)

フォークナーの短編集 ウィリアム・フォークナー『アブサロム、アブサロム!』(藤平育子・訳) - logical cypher scape2は面白かったものの、文体が文体なだけに、フォークナーを続けて読む気はなかったのだが、他のフォークナー作品をぱらぱらっと見てみた…

2022年振り返り

ここ3年で一番本を読めた年かも。 記事数と読んだ本の冊数は別だが、参考に記事数を比較すると、 2022年は88記事(+この記事で89) 2021年は33記事、2020年は70記事、2019年は126記事だった。 2020年からこっち、本読んだりブログ書いたりが以前より減って…

John Kulvicki "Modeling the Meanings of Pictures"(2章まで)

カルヴィッキによる画像の意味についての本 言語哲学を応用し、言語的表現と比較しながら論じられる。 具体的には、カプランの「内容」と「キャラクター」の区別を画像にも適用するというもの。 第1章で、本書全体の概要を説明している。 その中で本書をミー…

ウィリアム・フォークナー『アブサロム、アブサロム!』(藤平育子・訳)

フォークナーのヨクナパトーファ・サーガを構成する長編作品の一つ。 ミシシッピ州ヨクナパトーファ郡ジェファソンに突如現れて、大地主となったトマス・サトペンの盛衰を、関係者たちの回想の語りが描き出す。 原作は1936年刊行。 訳者解説によれば、フォー…

久永実木彦「わたしたちの怪獣」(『紙魚の手帖vol. 6 AUGUST 2022』)

先日、日本SF大賞候補作が下記の通り発表された。 樋口恭介(編)『異常論文』(早川書房) 荒巻義雄『SFする思考 荒巻義雄評論集成』(小鳥遊書房) 小田雅久仁『残月記』(双葉社) 小川哲『地図と拳』(集英社) 久永実木彦「わたしたちの怪獣」(東京創…

マリオ・バルガス=リョサ『世界終末戦争』(旦敬介訳)

ノーベル賞作家が、19世紀ブラジルで実際に起きたカヌードスの乱という出来事を描いた長編歴史小説。 海外文学読んでくぞ期間第一弾として。 橋本陽介『ノーベル文学賞を読む』 - logical cypher scape2を読んで知って以来、気になっていた。 タイトルがSFっ…

『Newton2023年1月号』

Newton 2023年1月号作者:科学雑誌Newton株式会社ニュートンプレスAmazon 史上初の「惑星防衛」実験に成功(協力 吉川真 執筆 小熊みどり) DARTの話 スマホと脳の最新科学(監修 髙橋英彦 執筆 西村尚子・尾崎太一) 立ち読みなのでざっと見出し眺めてっただ…