『Newton2024年12月号』

音楽の脳科学

監修 伊藤浩介 執筆 西村尚子
音楽の脳科学は、言語中枢があるように音楽中枢があるのではないかという探求から始まった
→がしかし、見つからなかった。
言語中枢は、失語症の研究から発見された。失音楽症はあるが、患者によって損傷を受けている部位は様々だった。失音楽症になった作曲家としては、ラヴェルが有名らしい。失語症も伴っていた。一方、失語症になったが失音楽症にはならなかった作曲家もいる。
それから、絶対音感相対音感共感覚についても書かれている。
絶対音感だけは、脳部位が特定されている。言語習得と同様、臨界期がある。
一方、相対音感は、特定の脳部位によるものではなく、習得の臨界期もない。そして、楽器演奏等にとって重要なのは、絶対音感より相対音感だという。
共感覚については、音と色の結びつきについて、どの音がどの色と結びつきやすいかという傾向はあって、また、共感覚者ではない人にも、その傾向が共有されているらしい。


なお、この監修の人、新刊が10月に出ており、下の記事によると音階と基底膜の話が面白いらしい。
『脳と音楽』 伊藤 浩介 (著) いや、脳の話より、二章、内耳の基底膜の物理的特性がもとになって、三章、音から音階へ、四章 ドレミファソラシド、各種音律が成立する部分が圧倒的に面白い。タイトル不適切、だ|原 正樹

不死のサイエンス

監修 早野元詞 執筆 小野寺佑紀
基本的には、老化とその抑制の話
エピゲノムがどうのとか。
他の動物で、老化速度が遅い種とか、逆に若返りが起きる種(クラゲかなんかだった気がする)とかが紹介されていたり。
老化をおさえる方法として、食事とか睡眠とか運動とか、常識的な話が並んでいるなと思ったら、若い個体の血液をいれる、というヤベーのが不意に混ざってきていて笑ってしまった。が、マウスの実験で確かめられているらしい。
意識のアップロードについても少し触れられていた。
最後にあったQ&Aが興味深かった。
人が死ななくなると住む場所がなくなるのでは?
→確かに生物には居住可能な空間の限界があるが、人類は既に技術革新でこの限界を突破している。今後も技術革新を続ければ、不死になって増え続けることができる
そんなに生きてどうするの?(死なないのは苦痛では?)
→老化や病気などの問題を克服した上での不死を目指す。時間に余裕があった方が人間はよいことができる。退屈が問題になるかもしれないが、記憶を部分的に消去すれば新鮮な体験ができる。
単に不老不死を目指すだけでなく、幸福に生きることを目指す。幸福には人間関係が重要だということが分かっている。
自分は、死への恐怖があるので、不死や長命化には興味があるが、それはそれとしてこのQ&Aはポジティブシンキングすぎるよな、とも思った。
不死になって人口も増やすよ、退屈な場合は記憶を消せばいいよ、はなかなか。

無数の宇宙が生まれつづける驚異の 「マルチバース宇宙論」宇宙はいくつあるのか?

監修 野村泰紀 執筆 尾崎太一
人間原理ワインバーグマルチバース、インフレーション理論、ブレーンワールド理論、量子論
なお、ブレーンワールド理論は、マルチバースも可能というだけで、マルチバースを生み出す理論ではない。ブレーンワールド理論によってビッグバンを説明する、エキピロティック宇宙論というのがある。これは、インフレーション説とは対立する説
最後に監修者へのインタビューがある。
量子的マルチバース理論を発表している。これは、インフレーションのよるマルチバース量子論的なマルチバースが実質同じものだとする理論。重ね合わせによって他の宇宙が存在しているとかなんとか。
監修の野村さん、最近新書たくさん出してて、ポスト村山斉感ある気がする。

変貌する地球

監修 小黒剛成 執筆 中作明彦
衛星リモートセンシングについて
接触らないで測定等することをリモートセンシングといい、衛星を用いる場合、衛星リモートセンシング
可視光線以外の波長を用いて測定し、それに色をつけることをフォールスカラーという
衛星側がマイクロ波を出して、その反射光を測定するのが、合成開口レーター(SAR)
海底地形図とか
2機の衛星を用いて重力測定する衛星もある。重力の強い場所の上空を1機目の衛星が通過すると、その重力によって加速し、後続の衛星との距離が離れる。後続の衛星も同じ場所を通過すると、また元の距離に戻る、という測定方法。でもって、重力の時間的変化を測定する。短期間で変化するのは、水量だろう、ということで、地下水の水量変化が分かる、というもの。よくこんなの思いつくな。