生物学

中屋敷均『遺伝子とは何か』

遺伝学の歴史から遺伝子概念の変遷を追っていく本 以前から積んでいた本で読むタイミングがなかなかなかったのだが、応用哲学会2024年大会 - logical cypher scape2で「無知を産む装置としてのパラダイム——遺伝暗号解読競争からの教訓——(石田知子)」を読ん…

デイヴィッド・クォメン『生命の〈系統樹〉はからみあう』(的場知之・訳)

カール・ウーズを主人公に据えて、アーキアの発見と3ドメイン説および遺伝の水平伝播説について、科学者たちの人間模様のドラマも織り交ぜた科学史なしいドキュメンタリーの本 サブタイトルは「ゲノムに刻まれた全く新しい進化史」で、原題はThe Tangled Tre…

日経サイエンス・Newton2022年7月号

日経サイエンス 日経サイエンス2022年7月号 [雑誌]日経サイエンスAmazon SCOPE ITで目の不自由な人をナビゲート 靴が振動してナビゲートする。横浜で実験。 ADVANCES 細菌のエピジェネティクス エピジェネティクスというのは、真核生物のものであって、細菌…

D・サタヴァ他『カラー図解 アメリカ版 新・大学生物学の教科書 第3巻 生化学・分子生物学』

アメリカの生物学教科書『LIFE』を分冊して翻訳しているシリーズ。以前から気になっていたが、たまたま本屋で新版が出ているのを見かけて手に取った。 なお、何故いきなり3巻なのかというと、自分が今興味があり、学び直したいと思っていたのが生化学だった…

田口善弘『生命はデジタルでできている』

バイオインフォマティクスの観点から、ゲノム、RNA、タンパク、代謝について、今進められている研究、まだ何が分かっていないのかなどについて解説されている本 また、タイトルに「デジタル」とあるが、ゲノムを中心とした生命機構をデジタル処理装置と見な…

ジョナサン・ロソス『生命の歴史は繰り返すのか?』(的場知之・訳)

サブタイトルにある通り「進化の偶然と必然のナゾに実験で挑む」本 進化は、何百年何千年あるいはそれよりさらに長いスパンかけて起きるものであり、人間には直接観察できない、とダーウィン以来思われてきたわけだが、実際にはもっと短いスパンでも進化は起…

チャールズ・コケル『生命進化の物理法則』

生き物の(広義の)デザインに物理的にどのような制約条件があるのか、ということを、生態から個体、細胞、 遺伝、代謝、元素と、上の階層から下の階層へと進む形で見ていく本。 筆者はアストロバイオロジーの研究者であり、この本も3分の2程度はアストロバイ…

藤崎慎吾『我々は生命を創れるのか』

サブタイトルは「合成生物学が生みだしつつあるもの」とあり確かに合成生物学の話ではあるが、生命の起源研究の中に合成生物学を位置づけている感じ 藤崎が、この分野の研究者に取材した連載記事が元になっている。 面白そうだなと思ったから読み始めたわけ…

マルチレベル淘汰(メモ)

昨日、ちょうどこういうことをメモったタイミングで、今日、下記のようなツイートを目にした 記事中に、コラムとして集団選択の話が書かれている E.O.ウィルソンとデイヴィッド・スローン・ウィルソンによる「複数レベル選択理論」 群選択の話は、エリオット…

『別冊日経サイエンス 進化と絶滅 生命はいかに誕生し多様化したか』

進化と絶滅 生命はいかに誕生し多様化したか (別冊日経サイエンス235)日本経済新聞出版社Amazonwww.nikkei-science.comこの表紙は、京都造形芸術大学の学生たちの作った作品から。アボリジニーアートから着想を得た作品らしい 別冊日経サイエンスは、過去の…

倉谷滋『進化する形 進化発生学入門』

あ、これ、サブタイトル「入門」だったんだ。入門ではない、おそらく。 新書とは思えない密度で内容が詰まっている本である。 筆者自らあとがきで倉谷滋『形態学 形づくりにみる動物進化のシナリオ』 - logical cypher scape2の続編だと述べている。 この本…

須田桃子『合成生物学の衝撃』

『日経サイエンス』の合成生物学記事 - logical cypher scape2に引き続き、合成生物学の勉強 毎日新聞科学環境部の記者である筆者が、ノースカロライナ州立大学に留学し*1、取材したルポ 合成生物学の研究史・研究内容について書かれているが、生物兵器開発…

『日経サイエンス』の合成生物学記事

『日経サイエンス』のバックナンバーを検索して、過去の合成生物学関連の記事をいくつか読んだ 生命の起源やアストロバイオロジー関連の本を読んでいると、時々「合成生物学」の話題が出てくることがあり、どっかのタイミングで読んでおこうと思っていたが、…

ピーター・D・ウォード『生命と非生命のあいだ』

サブタイトルは「NASAの地球外生命研究」とあり、宇宙生物学の本である。また、原題は「Life As We Do Not Know It」とあり、私たちが知らない生命、つまり現在の地球にいる生命とは違った形の生命としては、どのようなものがありうるか、ということを書いて…

『日経サイエンス2018年9月号』

日経サイエンス2018年9月号(特集:恐竜大進化/究極の未解決問題)日本経済新聞出版Amazon NEWS SCAN 窒素源としての堆積岩 窒素源としての堆積岩〜日経サイエンス2018年9月号より - 日経サイエンス 微生物の起源に新たな光 合成生物学の話っぽい 従来、細…

高井研編著『生命の起源はどこまでわかったか――深海と宇宙から迫る』

高井研の著作だと思っていたのだけど、正確に言うとちょっと違う。 もともと、JAMSTEC広報誌150号記念で企画された特別連載3回分を、単行本化したもの。 JAMSTECの各研究者等に取材して、ライターの鈴木志乃によって執筆されたもの 高井さんとしても、最近…

武村政春『生物はウイルスが進化させた 巨大ウイルスが語る新たな生命像 』

2003年の発表を皮切りに次々と発見されている巨大ウイルス それらの紹介を通してのウイルス学入門と、さらに筆者が支持している、しかしまだマイナーな仮説が展開される。 巨大ウイルスというのは、細菌ほどの大きさがあり、なんと光学顕微鏡でその姿を確認…

『日経サイエンス2018年7月号』『Newton2018年7月号』

日経サイエンス 日経サイエンス2018年7月号日本経済新聞出版Amazon目次 特集:混合栄養生物ミクソトロフ 海を支配するミクロの植物怪獣 A. ミトラ 海を支配するミクロの植物怪獣 - 日経サイエンス 植物のように自力で栄養を確保できるのが独立栄養生物、動物…

『Newton2017年7月号』

Newton(ニュートン) 2017年 07 月号 [雑誌]ニュートン・プレスAmazon 宇宙人を探し出せ 「宇宙人を科学する」という特集シリーズの第1回記事らしい 協力は鳴沢さん 「ブレイクスルー・リッスン」計画 まず最初に、2015年に始まった「ブレイクスルー・リッス…

ニック・レーン『生命、エネルギー、進化』

生命の起源とはどのようなものだったか、真核生物はどのように誕生したのか(何故20億年も真核生物は生まれなかったのか)、という大きく分けて2つの問いを、エネルギー代謝という観点から説き明かしていく本。 あらゆる生物にとって共通の要素とは何か。 DN…

森元良太・田中泉吏『生物学の哲学入門』

哲学的観点から、主に進化論・進化の総合説を主軸に生物学史を追っていくような形の教科書 普通に生物学の勉強になった。 これ、もちろん明らかに「生物学の哲学」の本だと思うし、読んでいて結構「哲学者っぽい書き方だな」と感じるところはあるんだけれど…

近藤滋『波紋と螺旋とフィボナッチ』

キリンやシマウマ、熱帯魚の皮膚模様、植物の葉のつき方など、動物の形態にかかわることを、チューリングの反応拡散波の原理など、数理的に解明していく。 もともと月刊『細胞工学』の連載コラム「こんどうしげるの生命科学の明日はどっちだ?!」の記事をもと…

『現代思想2015年9月号』『Newton2015年10月号』『日経サイエンス2015年10月号』

『現代思想』 特集:絶滅 とりあえず長沼さんと三中さんが何書いてるかなーと眺める。この2人、ページの上下に線が入っていて、コラム扱いというか、別枠扱いされている感じがする。 長沼さん 長沼さんは、ビッグファイブについて簡単に説明したのち、化石人…

倉谷滋『形態学 形づくりにみる動物進化のシナリオ』

形態学から進化発生生物学(エヴォデヴォ)へ至る流れを、動物の起源は何かという問いから辿る本 文豪ゲーテの形態学から始まって21世紀のエヴォデヴォまで、全ての動物に共通の型/遺伝子/祖先は何かという探究 とても面白かったけど、難しかった エヴォデ…

更科功『化石の分子生物学』

古代DNAの研究についての本 研究手法や研究史を中心にしつつ、様々なトピックに触れていくスタイルのため、あまり系統だってはいないが、それなりに読みやすいと思う。 まだ、それなりに新しい分野(まあ30年くらい)であり、この本であげられている事例につ…

宮田隆『分子からみた生物進化』

分子進化学の入門 もともと『分子進化学への招待』というタイトルで出ていた本の改訂版 分子進化学とはその名の通り、DNA、RNA、タンパク質といった分子を用いた進化学 この分野では、木村資生の中立説があまりにも有名 この分野の本をほとんど読んでなかっ…

キャロル・キサク・ヨーン『自然を名づける』

生物学の分類学の歴史をまとめた読み物的な本であり、また科学的世界観と日常的世界観の齟齬について問題提起する本でもある。 筆者は、分類学の背後に「環世界センス」を見て取り、これが科学的世界観と日常的世界観の対立を引き起こしていると考える。「環…

太田邦史『エピゲノムと生命』

何年か前に言葉を知って以来、見かけるようになった「エピジェネティクス」 なんだか難しそうだし、何読めばいいかよくわからないしで、今まであまり知らなかったのだが、たまたま入門書と銘打たれたこの本を見かけたので読んでみた。 エピジェネティクスと…

高井研『生命はなぜ生まれたのか――地球生物の起源の謎に迫る』

この前、しんかい6500のニコ生を見て高井さんが面白かったので、読んでみたw (前から読もうと思っていた本ではあったけど) そこかしこにネタを挟んでくる軽い文体で進むのだが、内容はかなり濃い 非常に面白い本だった 生命の起源についての自説を紹…

長沼毅・藤崎慎吾『辺境生物探訪記』

NASAが砒素でDNAな感じのニュースがあったときに、Twitter上でどなたかが薦めていた本。 生物学者の長沼毅とSF作家・サイエンスライター藤崎慎吾の対談。 対談といっても、その場所がユニークで各章ごとに色んな「極限環境」を訪れている(予算の都合で全て…