長沼毅・藤崎慎吾『辺境生物探訪記』

NASAが砒素でDNAな感じのニュースがあったときに、Twitter上でどなたかが薦めていた本。
生物学者の長沼毅とSF作家・サイエンスライター藤崎慎吾の対談。
対談といっても、その場所がユニークで各章ごとに色んな「極限環境」を訪れている(予算の都合で全て国内ですw)。
というか、この長沼さんという人、世界各地の色んな極限環境に生きまくっている。極地とか深海とか砂漠とか。
すごい大雑把にいうと、そういうところに行って、なんか生き物いないかなーって探している人ですねw


本の内容をまとめるのめんどいので、各章ごとに印象に残ったものなどを羅列。

プロローグ

いきなり、広島の酒蔵行っている
まあ菌だし

第1幕

テーマは南極、なので、国立極地研究所で対談
南極の越冬隊は隊長の性格でカラーが違う。例えば、酒がOKかどうかとか。イタリアの基地には三つ星シェフが3人もいて、毎食食いまくり。だけど、寒くて熱量使うから太らない!
ハロモナスという塩分を好む菌は、どこにでもいる
ハロモナスは従属栄養になったり独立栄養になったりする

第2幕

深海が舞台なので、新江ノ島水族館で対談
チムニーを見つけて「チムニーだ」って17回叫んだ人がいる。
深海は基本的には生物が少ないのだけど、時々すごい群れがいる。何でかは分かってない。群れは、長沼さんのテーマの一つ
深海の謎のもうひとつ。カニカニはえさを置くとすごい早さで集まってくる。どうして集まってくるのか(匂いなのか音なのか)よくわかってない。
しんかい6500で奥尻沖を潜ったとき、勘で最初予定していたルートとは違うところ行って発見できた話
チューブワームと共生菌
アーキアンパークとかバクテリアパークとか(熱水噴出口の近くに、アーキア(古細菌)の巣があるんじゃないか探す計画)
最小のゲノムサイズはどこらへんか。1メガベースペアくらい?

第3幕

大分県伽藍岳
熱水噴出口の陸上バージョンが火山→藤崎「じゃあここを調査したりしないんですか」→長沼「火山掘るのは怖いw」
極限環境生物というと極端なところに生きているのを探してきたけど、生息範囲が広い奴こそが極限環境生物じゃないか
塚原温泉に移動して温泉名人交えて鼎談。温泉のサイエンス?

第4幕

鳥取砂丘。砂漠の話。
砂漠(デザート)っていうのは要するに不毛の土地のこと。植物生えてないのはみんな砂漠。だから、南極も砂漠。
乾燥に強い奴をスクリーニングするのは難しいので、塩に強い奴をスクリーニングすると、そういう奴は大体どこでも強い。
深海に耐乾燥能力が高い奴がいる。長沼「おまえらその能力いらんだろ」
砂漠は水蒸気がないので空が高い、天井がない感じ。

第5幕

瑞浪超深地層研究所。
研究のために掘られたトンネルとラボ。非常に珍しい施設。
世界的に深い穴を掘っているのはロシアとドイツ。人が入らない穴であればロシアが1万メートル掘ってる。ただ、科学的研究はあんまりしてない。
穴を掘ることでどういう影響が出るのかモニタリングしている
地下生物はやばい。重量だけで地上の生物を遙かに上回る量がいる。
あと、スピードがやたら遅い(100年に1回分裂する奴とかいる)。サンプルもたくさんとれない(穴掘るの金かかる)。なので、一人の研究者の人生の中で研究するのが困難。研究のやり方を根本的に変えないとよくわからない。
ウラン鉱を作る奴とかもいる。
マントルに生物いるか探してみたい
地下には、我々の系統とは違う生物がいるかもしれない。ある意味で、宇宙を探すよりも地下を探した方が「エイリアン」を発見できるかもしれない
地震にも微生物が関係してるかも

第6幕

宇宙、放射線環境下で生物は生きられるか。
対談場所は高エネ研
地球は何重ものバリアで放射線から守られている。宇宙は放射線飛びまくりなので、その中でも生きられる環境はどういうところか探さないといけない。地球は100kmの大気に覆われているけれど、直径5メートルの岩があればその中心は大気100kmと同じようにシールドされていることになる
パンスペルミアの方舟」宇宙から生物の起源を運んできた隕石・彗星のこと
水とDNAがあると放射線浴びたときにやばい。逆に言うと、水とDNAを抜くと放射線をガンガン浴びせても生きていられたりする

エピローグ

国立天文台VLBI観測所にて、惑星科学の専門家にしてラーメン王でもある佐々木教授と鼎談
月、火星、エウロパときて、ガニメデの話でガニメデには磁場があると聞いて俄然食いつく長沼さん
水星と金星は熱すぎムリ
タイタンにはメタンの海。油をイメージすればいい。油だけだと、生化学反応が起きないから生物はできないけど、そこに水滴がちょっとでもあれば水滴生命ができるかもしれない。回りが油だと水は膜がなくても丸くなる。それがそのまま生命になるかも。地球(水の海)だと油で膜を作って回りの水と分けてやらないと生物にならないけど。
エンケラドゥスには、氷を吹き上げる火山(?)がある。
水の量と生命。水はあればいいというわけではなく、多すぎると逆に生命は生まれない。
火星起源説の話とか。
で、最後が一番面白かった。というか、長沼さん超すごいw
生命って結局なんなのか、という究極の問いにたいして、エントロピー増大の徒花、と。
エントロピー増大にローカルに抵抗することによって、余計にエントロピー増大の速度を増しているのが生命。
一番進化している生物は珪藻かも。珪藻はケイ素使っている。
我々はなんで炭素使っているのか。地球で一番多いのは酸素とケイ素。
宇宙の元素は水素からスタートして鉄になって終わるらしい。水素だけ、鉄だけでは生命は生まれない。で、その間に位置しているのが、炭素とケイ素。宇宙の元素組成がだんだん変わっていったら、炭素ベースからケイ素ベースの生命へと変わっていくんじゃないか。
あと、生命の根本は酸化還元。今は水素が圧倒的に多いけど、次第に酸素が増えていけば、生命のパワーはアップしていく。
佐々木「地質学の立場からだと、植物は環境の破壊者」
地球は温暖化した方がいい?→でかいタイムスケールで見たら、温暖化したほうがいい。今あるライフスタイルが崩壊するから急激な変化はやばい。だから二酸化炭素の量をコントロールできた方がいいけど、氷期に向かっているのでむしろ温暖化させた方がいい。温暖化で文明は滅びないけど、氷期は間違いなく滅びる。
「生命とは破壊だ!」


辺境生物探訪記 生命の本質を求めて (光文社新書)

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