特集:生命の起源
生命の陸上起源説 M. J. ヴァン・クラネンドンク/D. W. ディーマー/T. ジョキッチ
生命の陸上起源説 - 日経サイエンス
生命の起源は、海(熱水噴出孔)ではなくて地上(温泉)ではないかという説
一応、遡ると、ダーウィンが似たようなことを言っているらしいのだけど、最近、この説と海説とで争われているみたい。
自分は海部宣男、星元紀、丸山茂徳編著『宇宙生命論』 - logical cypher scape2で知った。こっちの本では、熱水噴出孔説を退けて、温泉説を推していた*1。
海の中は、水が多すぎてどうなの、というのが言われていて
温泉だと、乾湿サイクルが繰り返されて、そのサイクルの中で高分子が反応して有機物の構造体ができていって、みたいなシナリオらしい
ウーズが提唱した「プロゲノート」という共通祖先概念があって、この温泉の乾湿サイクルの中で形成されるプロトセルという構造がプロゲノートになるのでは、みたいな話らしい
なお、熱水噴出孔説が正しければ、エンケラドゥスやエウロパに生命がいる可能性が高くなるが、逆に、温泉説が正しければ、エンケラドゥスやエウロパに生命がいる可能性は低くて、むしろ、過去の火星の方がいた可能性が高くなる。
この記事だけだと、いまいち、温泉説にピンとこなかったなあ
ニック・レーン『生命、エネルギー、進化』 - logical cypher scape2でかなり詳しく熱水噴出孔説の説明を読んでいるから。
そういえば、どっちかの記事で熱水噴出孔説について、ラッセルによる説が紹介されていて、「ニック・レーンの本で読んだ奴だ!」となった
地下にいた始原生命体 中島林彦 協力:鈴木庸平/鈴木志野
地下に生息する細菌の話。これがすごかった。
岐阜県の瑞浪超深地層研究所というところから始まる。花崗岩を掘削して細菌を採取している。
地下にいる細菌についてはなかなか研究が進んでいなかったが、近年になって、メタゲノム解析という手法での研究がなされるようになった。バンフィールドによるメタゲノム解析によって、CPR細菌という細菌が、なんと35門発見されている。動物界の中の門が同じくらいらしいので、とにかくとんでもない数
ちなみに、生物というのは大きく分けて、細菌(バクテリア)、古細菌(アーキア)、真核生物の3つのドメインに分かれている。古細菌というと、細菌よりも古いのかと思われそうだが、今は、系統樹上は細菌の方が古い位置にいて、その後、古細菌と真核生物に分岐したと考えられている(見た目だけだと細菌と古細菌の方が、真核生物より近縁のように見えるが、実は、古細菌と真核生物の方が、細菌よりも近縁だということが分かっている)。
で、細菌の中に、さらによくわからないCPR細菌というグループがあって、それが地下には(種類も数も)たくさんいる、と。地上の生態系だとCPR細菌は少数派なのだが、地下だと多数派らしい。
で、遺伝子を調べてみると、普通の生命ならみんなもってるATP合成するための遺伝子とかなんとか、とにかく様々な、生命維持のためには必須だと思われる遺伝子を持っていない、とか。
その上、CPR細菌はすべて、いまだ培養に成功していない。
なので、こいつらかなり謎なのだが、地球最古の生命にもっとも近いのってもしかしたらこいつらなのでは、とも考えられている、とか。
なお、CPR細菌について、バンフィールドよりも先に、長沼さんが発見しているらしい。CPR細菌の一種で、今はパークバクテリアと呼ばれている細菌を、東農鉱山で発見していたらしいが、当時はまだメタゲノム解析もなくて、なんなのか分からずじまいだったっぽい。
今回、バンフィールドの研究にあたっては、長沼さんがその細菌を発見した鉱山はすでにしまっていたけれど、同じ鉱山にある瑞浪超深地層研究所からもサンプル提供を受けていたとか。
記事の後半では、アメリカのザ・シダーズという場所での研究について
今ググったら、JAMSTECの記事があった→http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/quest/20170721_2/index.html
この記事の写真1と写真6と同じ写真が、日経サイエンスの記事でも使われていた。
蛇紋岩化反応の話とかも日経サイエンスの方でもしていて、蛇紋岩化の話は、地球史の話読むと必ず載っているような話で、地球初期の環境と関係してくるので、その環境で生きるCPR細菌って、と。
生命起源の地上説については、重爆撃期をどう生き延びたのか、という問題があるらしいけど、地下なら問題ないし、という話も。
暗い太陽のパラドックスに新説
暗い太陽のパラドックスに新説〜日経サイエンス2018年3月号より - 日経サイエンス
田近さんのところの研究
ググったら、プレスリリースあった→https://apps.adm.s.u-tokyo.ac.jp/WEB_info/p/p/5678/DzkJqqQe/
*1:なお、この本で複数の著者で書かれた教科書で、章や節によって執筆者が違って、執筆者が違うと書いていることも違うw