おおむね系外惑星やアストロバイオロジーについて。いくつか宇宙開発に係るものもある(宇宙倫理なども含む)。
宇宙特集といっても、宇宙論とかブラックホールとかそういった話題はなし
☆インタビュー?
2017年系外惑星への旅――太陽系から遠く離れて / 井田茂☆インタビュー?
パンスペルミアが導く生命の起源と流転 / 松井孝典☆未知との遭遇を求めて
宇宙生命、宇宙にでる地球人、地球にくる宇宙人のリアリティ / 長沼毅
「第二の地球探し」とアストロバイオロジー――宇宙における新世界の開拓 / 田村元秀
百論は一探に如かず――生命探査は深海から深宇宙へ / 矢野創
太陽系に生命を探す――探査機の活躍から迫る生命を育む要素 / 関根康人
系外惑星に人類の未来を問う――ゴーギャンの問いに対する惑星科学的アプローチ / 佐々木貴教☆地球という星
地球の歴史46億年から知る惑星形成と環境変動 / 鎌田浩毅
第二の地球は本当に「ハビタブル」であろうか? / 山敷庸亮☆宇宙を開拓する
宇宙資源探査の現状と課題――世界はいま、天からの恵みに目を向けている / 寺薗淳也☆宇宙倫理/人類学
人類でなくなる朝にむかって――能動的な受動性が拓くおぞましくも美しい地平 / 大村敬一
宇宙の演者か、それとも観察者か / 磯部洋明
人類絶滅のリスクと宇宙進出――宇宙倫理学序説 / 呉羽真☆宇宙への想像力
人類は宇宙で自撮りする――二一世紀初頭の大衆的想像力による「宇宙」像 / 藤田直哉
2017年系外惑星への旅――太陽系から遠く離れて / 井田茂
インタビューということになっているが、インタビュアーはほぼ登場しないので、話し言葉で書かれている概説という感じ。
井田茂『系外惑星と太陽系』 - logical cypher scape2についての話が多い。
系外惑星の発見について→ほかの大発見と違って理論的に予測されていたわけではない、いつの間にか検出限界はこえていた、技術革新があったわけではなくやってる人間が増えたから見つかるのも増えた
タイムスケールについて。一般の人は「気が遠くなるような時間」というが、天文学者や地球物理学者は、銀河系の気持ちや地球の気持ちになっているので、そうは思わない
パンスペルミアが導く生命の起源と流転 / 松井孝典
もともと、生命の起源についてはパンスペルミア説の方が先にあったという話
あと、もともと生命の起源の研究する人は生物学の主流ではない人だったということも。
研究者として、もっと若かったら、ウイルスの研究をするとか
パンスペルミアを実証できるかもしれないことをやっている。「スリランカの赤い雨」とか「意図的パンスペルミア」も構想
思想は宇宙を目指せるか / 稲葉振一郎+三浦俊彦
いろいろな話題をしているけれど、宇宙開発は植民よりも芸術分野ですすむかも、という話をしていたり、環境美学の話から、宇宙美学と宇宙倫理学の境界みたいな話をしていたりしたのが印象に残っている
宇宙生命、宇宙にでる地球人、地球にくる宇宙人のリアリティ / 長沼毅
これまでの生命探査やマーズワン計画、SETIの話などの最近の話題をとりまとめており、いろいろなことが書かれているが、気になったのは以下の話
冥王星やケレスについて、内部熱源として放射性同位元素の可能性と、放射線で生きる生命の可能性
アメリカで成立した2015年宇宙法(宇宙条約は宇宙空間が国家は領有できないとするものだが、それは民間には及ばないという抜け穴をつくような法律
月協定(民間も含めて月の所有権を禁止しているが、アメリカなどは批准していない)
マーズワンの法的問題(オランダないしアメリカが監督責任をもつことになる?)
百論は一探に如かず――生命探査は深海から深宇宙へ / 矢野創
太陽系における生命探査について
ハビタブルゾーンに縛られない概念としてのオーシャンワールド
木星以遠の探査はアメリカの独擅場だが、2030年にESAによるガニメデ探査、ジュース計画
太陽系に生命を探す――探査機の活躍から迫る生命を育む要素 / 関根康人
カッシーニやキュリオシティの探査について
これは、単発的には知っていたけれど、あまりちゃんとよくわかってなかったことが勉強になった。
バイキングのとき、有機物を撒いて生命探査をしていたとか
カッシーニの探査では、酸化剤が何かわかった
オポチュニティの探査で、火星環境の歴史が復元されるようになり、キュリオシティの探査によりマンガンの酸化物がみつかり、かつて高い濃度の酸素大気があるとみられるようになったとか。何故大量の酸素があったのかまだ不明だが、筆者の仮説として、水蒸気が分解されて水素だけが宇宙に散逸して酸素だけ残ったのではないか、と
宇宙資源探査の現状と課題――世界はいま、天からの恵みに目を向けている / 寺薗淳也
タイトル通り、宇宙資源探査の話
アメリカの民間宇宙企業というと、スペースXとかブルーオリジンとかくらいしか知らなかったけど、プラネタリーリソーシズ社やディープ・スペース・インダストリーズ社といった、宇宙資源探査を目指しているものがあるらしい
前者は、小惑星探査のための宇宙望遠鏡「アーキッド」に向けての試験機打ち上げに成功、後者は、サンプルリターン探査衛星「プロスペクター1」の打ち上げを2020年に予定しているとかなんとか
さらに、ルクセンブルクについても触れられている
ロケット打ち上げ能力は有していないが、潤沢な投資資金、活発な投資集団が存在し、投融資を通じて宇宙開発を支援していく動き
また、日本、アラブ首長国連邦、中国についても触れられている。
最後に、宇宙資源は一体だれのものなのか、ということが問題になるということを提起している。宇宙条約では、国家による天体の領有は禁止しているものの、民間や天体の資源の所有権については明示されていない
人類でなくなる朝にむかって――能動的な受動性が拓くおぞましくも美しい地平 / 大村敬一
宇宙人類学について
トマセロやベイトソンなどを参照にしながら、文化進化について解説したうえで、宇宙時代に向けての人類の進化としてのポストヒューマン/エンハンスメントを、ポジティブにとらえている論
宇宙の演者か、それとも観察者か / 磯部洋明
自身は物理学者だが、京大の宇宙研究ユニットにおいて、倫理学者や人類学者と共同研究をしたことを踏まえて書かれている。
22世紀には人文・社会科学の世紀になるのでは、とか書いてある。
ダイソンが、宇宙植民をメイフラワー号やモルモン教徒によるアメリカへの移民と比較して、コストを計算していたという話と、ケンブリッジやオックスフォードで人類絶滅のリスクを研究するセンターができているというのがおもしろかった
人類絶滅のリスクと宇宙進出――宇宙倫理学序説 / 呉羽真
倫理学の人が書いた文章は読みやすいなあと思ってしまうのは、バイアスだろうかw
多くの人が総括的な文章を書きがちなところ、論点を絞っているから、というのはあると思う。
有人による宇宙開発をする意義はあるのか、という問題領域における、「いずれくる人類絶滅の危機を回避し、人類を存続させるためには有人による宇宙開発を行うことが必要である」という主張に対して、その主張が正当化されないことを示す議論を行っている。
宇宙への進出が、人類社会に(大きな)多様化をもたらすことに対して、どちらかといえば希望を見出そうとする大野、磯部に対して、ネガティブな点を指摘する呉羽という感じはあるかもしれない