アンドレイ・サプコフスキ『ウィッチャーⅠ エルフの血脈』川野靖子・訳 - logical cypher scape2に引き続き2巻
ドラマのシーズン3まで見ていて、ちょうどシーズン3の終わりと原作2巻の終わりが同じあたり。
また、ドラマの続きを見てから原作を見ようかな、と思っているが、どうしようかな。
1巻の感想では「ドラマと全然違うやんけ!」と書いたけれど、2巻はそうでもなかった
ただ、映像化作品の原作を読むって普段あんまりしないのだけど、ドラマ見てから原作を読むとどうしても違う箇所を探す読書をしてしまう(逆に原作先読んでると、その違いを探すドラマ鑑賞になるのだろう)。
で、思ったのが、一般的には、小説の映像化って、内容が省略されることの方が多いのかなと思うのだが、『ウィッチャー』の場合、映像化にあたって付け加えられているエピソード、設定、登場人物がすごく多い、という印象
むろん、原作にいてドラマにはいない登場人物とかエピソードとかもあるのだが、映像化にあたって増えた要素の方が圧倒的に多いと思う。
原作、意外と叙述の濃度が薄くて、数ページ地の文なしで台詞だけ続く、とかもちょくちょくある。
以下については、原作とドラマが同じ点
- イェネファーがシリをアレツザへと連れて行く。
- その途中、ドワーフの銀行に金を工面してもらう。
- シリは市場を見物させてもらって、ワイバーンをバジリスクだと偽っている見世物小屋とトラブルを起こし、さらに逃げ出す。
- シリとイェネファーがゲラルトと再会
- イェネファーとゲラルトはともに魔法使いのパーティに参加
- パーティ翌日、会議の日の早朝に、レダニアのディクストラが、ニルフガード側についた魔法使いたちを拘束
- しかし、ティサイアがその拘束を解いてしまい、戦闘開始
- スコイア=テルも参戦してアレツザへと潜入してきて乱戦状態
- ヴィルゲフォルツにボコられるゲラルト
- ゲラルトは木の精の森で治療。それを見舞うダンディリオン
- フランチェスカはニルフガードと手を組んでエルフの国を手に入れるが、スコイア=テルを諦める
- シリは、カモメの塔の門(ポータル)から砂漠に飛ばされ、砂漠でユニコーンに助けられる。火の力で魔法を使う。ファルカの幻影を見る。
- 砂漠脱出後のシリは、盗賊団みたいなのに助けられる。
以上についても、細部はいろいろ違ったりはする。そもそも登場人物が違ったりするし。
ただ、シリの動きにかんしては、結構原作に忠実に映像化されていたんだな、という感じがする。バジリスク云々のあたりとか、砂漠うろうろするあたりとか
シリの未来視能力、小説では太字になってる。未来視がどこで発動しているかとかはドラマと違ったような気がする。
砂漠うろうろのあたりだと、クリームの空き缶の場所に戻ってきてしまうくだりとか、わりとそのまんまだった。
もっとも細かいところは当然違うところもあり、小説だと、シリが魔法の力で水脈探そうとしたり光源作ったりしていた(ただしすぐバテてしまって、1回しかできなかった)。水については短剣についた夜露でしのいでいた。
魔法使いのパーティ、雰囲気は結構同じ。ただ、アレツザの建物の設定はわりと違いそう。登場人物の設定が色々違うので、交わされる会話などは違いがあるが、ゲラルトとディクストラ、ゲラルトとヴィルゲフォルツの会話あたりは、おおむね同じような感じだった感じ
原作にあってドラマにないのは、基本、国王まわりのあれこれ
ドラマだと、レダニア以外の国王はわりと空気だが(フォルテスト王は短編集由来のエピソードをシーズン1にやっているので何となく印象があるものの、シーズン2以降は、画面の中にいるな程度だし)、原作だとなんかいろいろやっていて、ニルフガードとの戦争の状況も結構詳しく書かれている。
ドラマの方だと、戦争の推移とかはあんまりよくわからない、というところはある。
ドラマにあって原作にないもの~
- ティサイアの設定
ティサイアがアレツザの校長やってて、魔法使いたちの中で偉い方というのは同じ
あ、ティサイアがかなり高齢というのは、原作でないとわからないところか。
ただ、イェネファーがアレツザの生徒だった頃の話が原作には全然ないせいで、ティアイサとイェネファーの師弟関係の描写も原作に全然ない。
それから、ティサイアとヴィルゲフォルツの恋愛関係も原作にはない
原作のティサイアは、ただやたらと机の上とかに置いてあるものを整理整頓するのが好きな人、というキャラ付けをされている。
フィリパとディクストラによるクーデターののち、ティサイアは魔法使いたちの拘束を解き、それが裏目に出てしまい、最終的にティサイアは自殺する、という流れは原作とドラマで同じなわけだが、こうした行為にでたティサイアをどう捉えるか、という点で原作とドラマは大いに異なってしまう。
原作もドラマも、ティサイアって魔法使いとしては優秀なのかもしれないけれど、こと政治にかんしてはてんでダメな人だな、というところは共通しているわけだけれど、そのダメ判断をしちゃう理由として、ヴィルゲフォルツとの関係があるかないかは結構変わってきてしまう
ドラマだと、ヴィルゲフォルツを信じたかったんだよねーということで、その判断は結果的にダメだったし、信じちゃダメな人を信じちゃったねっていう評価にはなるものの、人間的には理解しやすいし、そのあとのティサイアの半ば暴走気味の魔法乱発も、裏切られたことへの悔しさや絶望がない交ぜになったものだと思うと、理解はしやすい。
また、ティサイアの自殺についても、原作だと読者側にティサイアへの思い入れはあんまりないだろうし、該当シーンもかなりあっさりとしか書かれていない。
ドラマ版は、やはりティサイアとイェネファーの間に師弟としての絆があるため、ティサイアの自殺はそれなりにインパクトのあるシーンとしてある。
まあ、お前あのやらかしに対して、死んで終わりにするのはナシだろ、とは思ってしまうので、個人的にティサイアという人物への評価は、ドラマ版でも原作版でも低いのには変わりないのだけど、原作版のティサイアは描かれ方があっさりすぎるなあ、とは思う。
もっとも原作派からしたら、そんな人物をなぜそんな盛ったの、と思われるかもしれないが。
- ストレゴボルとイストレド
この2人、原作だと短編には登場するのだが、この本編シリーズには(少なくとも2巻までには)登場していない。
一方、ドラマ版ではこの2人、わりと重要人物である。
ドラマ版だと、ストレゴボルはなんか悪そうな奴というのでずっといるので、視聴者の目をヴィルゲフォルツから背けるのにうまく機能している。ストレゴボルが裏で操ってんだろう、と思わせて、実はヴィルゲフォルツでしたーっていう作劇がドラマ版では行われているのだけど、原作だと、そういうのが一切ない。ヴィルゲフォルツがティサイアの恋人っていう設定もないから、ヴィルゲフォルツは登場時からなんか怪しい人物であり、やっぱり悪役でしたーとなる。
イストレドは、ゲラルトたちとは異なる観点から、視聴者に対して情報提供してくれる役目を担ってくれている。
また、ゲラルト・イェネファー・イストレドの三角関係も度々描かれている。
原作ではむしろ、ゲラルト・イェネファー・トリスの三角関係が描かれていて、そこも違うところ。ドラマでも、トリスがゲラルトを慕っているのは示されているけれど、原作ほどはっきりは描かれていない。
- フリンギラとフランチェスカ
フリンギラって原作にはいないの??
ドラマのシーズン2での重要人物で、結構物語的にも面白さを担っていたのはフリンギラだと思っていたので、原作に全然いなくて驚いた。
それから、フランチェスカは、原作ではエルフの魔法使いとして、普通にアレツザの魔法使いパーティに出席している。結局ニルフガード側についているという点ではドラマと同じだけど、ドラマではエルフ難民を率いる指導者として泥臭く戦うところが描かれていたが、原作ではそういう描写なし
ドラマ版、この2人が、お互い色々な思惑がありながらも、一時的には友情を抱くようになり、しかしその立場の違いから決裂していく、というところを描いていてなかなか面白かったんだけども……
- スコイア=テル(リス団)
原作では、スコイア=テルというエルフのゲリラが人間たちに襲いかかっている、ということが様々な人たちの口から語られるのだけど、スコイア=テルのエルフが直接登場してくるシーンはなかった。
これ、スコイア=テルがどういう集団でどういう行動をしていて人々からどう思われているのか、ということについては、ドラマより原作の方がよっぽどわかりやすくて、スコイア=テルという集団に独特の存在感を与えることに成功している。
ドラマ版では、スコイア=テルの人たちって具体的な登場人物として登場してくるけれど、彼らが「スコイア=テル」という名前の集団であるというのなかなか把握できなかったし、フランチェスカたちとは別集団というのも最初はよくわからなかった。
その一方で、具体的な登場人物として登場しているので、フランチェスカとのいざこざや、カヒルへの接近などのドラマがあったのは面白かった。
- カヒル
この人は、原作とドラマとで役どころはおそらく大して変わりないと思うのだけど、原作では登場してくるのが結構遅い。
- リエンスとリディア
原作のリエンス、意外と直接登場してこないな、という感じ。名前が出てくるのはドラマ版よりも早く出てきた気がするが。
ドラマでは死んだけど、原作ではこのタイミングでまだ生きているな?
リディアは、ドラマ版ではリエンスへの指示役として登場したけれど、原作での登場シーンは常にヴィルゲフォルツと一緒で、リエンスとの絡みはなかったはず。
ドラマ版は、リエンスのバックが誰なのかについてミスリードさせるようになっていたので、リディアがヴィルゲフォルツの助手だということも途中まで隠されていたけれど、原作はそういうのがないので、という違い。
- 一枚岩とヴォレス・メイア、天体の合
これ、どちらかといえばドラマのシーズン2、小説の1巻相当の時期にあたる話だが
「天体の合」という設定自体は、この世界の根幹をなすもので、原作にも存在しているはずだが、今のところ説明されていない気がする。
一枚岩とヴォレス・メイアってもしかしてドラマオリジナルなの? ヴォレス・メイアはまあいいとして、一枚岩も??
サブタイトルが「屈辱の刻」だが、このワードはドラマでも言ってたなあ
第1節が、王の使者視点なのちょっと面白い。使者というか伝令。国王と国王の間のやりとりのために馬を走らせる人。
魔法使いがいれば事足りるので役割が減っていたが、最近になってまた召喚されるようになった→国王が魔法使いに不信を抱いていることの示唆とか、シリの行方や各国の情勢について、世間の人たちがどう認識しているのかとか、そういうことを描くために、ゲラルトやシリ、イェネファー視点じゃなくて、あえて、そういう端役視点の節を混ぜてるんだな、と。
このパートにも、ゲラルト、シリ、イェネファーは登場してはくる
ゴーストハントの噂が流れていたり(戦の前兆と見なされているらしい)
この世界、メートル法なんだ! とか
コドリンガー&フェン法律事務所!
あの情報屋の二人組、やっぱり法律事務所なんだ
しかもコドリンガーはウィッチャーであるらしい。フェンは、小人? 脚のない障害者? みたいな感じだった。
情報屋でもあるけど、法務的な何でも屋稼業をしているっぽい。偽の情報ばらまいたりもする。
原作だと、猫は死なずにすんだっぽい。
ゲラルトがヴィルゲフォルツにコテンパンにやられた後、木の精の森へやってくる(原作では、ティサイアがポータル開いてトリスが連れて行ったっぽい(明示されていないが))。
(ところで、ポータルといえば、シリがなんでアレツザのカモメの塔から砂漠に飛ばされてしまったかは、原作の方がちゃんと説明がある。カモメの塔には行き先がランダムなポータルがあるらしい(あ、そういえばドラマシーズン1でイェネファーがアレツザに来ることになったポータルってもしかしてそれ?!))
で、ダンディリオンがお見舞いにくるのだけど、ゲラルトがその後何が起こったのかをダンディリオンに尋ねて、ダンディリオンがそれに答える、という形で叙述されていくところがあった。
上述したように王の使者視点で描くパートがあったり、あるいは、会話文だけで描写していくパートがあったり、ここのように、ダンディリオンが語っているという体で三人称視点でいろいろな人物や場所のことを叙述するパートがあったり、いろいろな視点・語り方を混ぜているのは面白いと思う。
1巻に引き続き、作中世界の著作からのエピグラフも面白い
ダンディリオンの著作だったり、イスリンの予言だったり、なんかの事典だったり歴史書だったり、と。
で、ダンディリオンがゲラルトにいうには、ニルフガードが再び侵攻を始めるのだけど、北方王国の同盟が機能しなくて、テメレアとかケイドウィンとかは援軍送るのではなく、ニルフガードと休戦しちゃう。
そういう話を聞いてゲラルトは、なんて恥知らずなことが起きているんだと落胆するんだけども。そもそもゲラルトは、ヴィルゲフォルツから中立やめてどっちの立場にたつか旗色を鮮明にせよと言われていて(ディクストラからもいわれてたっけ)、ウィッチャーは中立だから、と突っぱねていたんだけど、しかしそれって、北方王国はニルフガードに対して毅然と戦うということを前提にしていたんだろうな、とも思う。
北方王国も魔法使いもぐだぐだじゃねーか、となってしまう。
ヴィルゲフォルツは行方をくらましているらしい。
あと、エメヒルが、シリと結婚しようとしているっぽいんだよな。娘設定じゃないのか? なお、ニルフガードに連行されたシリと称される少女がシリに似た別人なのは、ドラマも原作も同じ。
本物のシリは、砂漠が出たところで、一度、ニルフガードの懸賞金狙いの賊に捕まるが、その後、戦災孤児たちが集まった盗賊集団「ネズミ」に助けられ、彼らと行動を共にするようになる、というのも原作とドラマとで同じ。
ただ、原作の方が、このあたりの描写や説明は多かったし、細かな展開には違うところもあるが。
ニルフガードの騎士たちは、氏族ごとにかたまっていて互いに対立しているらしいとか
古のエルフ
イスリン→予言者
ララ・ドレン→人間と結婚した
ファルカ→反逆者
ここらへん、ドラマ見てたとき整理して把握できてなかった。エルフの名前、なぜか覚えられん。
原作だと、イスリンは確かまだエピグラフにしか出てきてないし、ララ・ドレンも1回言及があっただけ(ドラマ版も言及回数まだ少ない気がするけど)、ファルカは砂漠のシーンでしっかり出てきた、という感じ






