美学

John Kulvicki "Modeling the Meanings of Pictures"(2章まで)

カルヴィッキによる画像の意味についての本 言語哲学を応用し、言語的表現と比較しながら論じられる。 具体的には、カプランの「内容」と「キャラクター」の区別を画像にも適用するというもの。 第1章で、本書全体の概要を説明している。 その中で本書をミー…

清塚邦彦「K・L・ウォルトンの描写の理論:R・ウォルハイムとの論争を手がかりに」

K・L・ウォルトンの描写の理論:R・ウォルハイムとの論争を手がかりに とりあえず、読んだよというメモ すごく勉強になる。 ウォルトンは,論文「ごっこ遊びと諸芸術」(1997年)1の中で,自らの描写理論の展開を,分析美学の進展と関連付けて解説している…

源河亨『悲しい曲の何が悲しいのか』

サブタイトルは「音楽美学と心の哲学」で、心の哲学、とりわけ知覚の哲学や情動の哲学を用いて、美学の理論構築を行っている本である。 さらにいえば、認知科学の知見も取り入れながらの、美学の自然化プロジェクトの一環として書かれている。 1~5章は、…

Nick Zangwill "Formal natural beauty"

以前、動物の美学について、Glenn Persons "The Aesthetic Value of Animals" - logical cypher scape2を読んだが、それに引き続いて動物の美学関連論文 上述のパーソンズ論文でも紹介されていた、ザングウィルの形式主義について ザングウィルは、そもそも…

メタファーについて論文2つ

石田知子「「遺伝情報」はメタファーか」 www.jstage.jst.go.jp第18回日本科学哲学会石本賞は、石田知子さんの「「遺伝情報」はメタファーか」が受賞されました。素晴らしい。— Masashi Kasaki (@kasa12345) 2021年11月27日 このツイートを見て存在を知り、…

神経美学と自由エネルギー原理?

神経美学の本と自由エネルギー原理の本を読んだわけだが、そうするとその2つはどう繋がるかも気になってくるよな— シノハラユウキ (@sakstyle) 2021年7月10日 専門家と素人とで、作品の見方が違う(作品全体を満遍なく見るかそうでないか)話は、なんか説明で…

石津智大『神経美学―美と芸術の脳科学』

タイトル通り、神経美学についての入門書 筆者は、ゼキのところで共同研究していたこともある研究者 もちろん、人文系の美学とは異なるところも色々あるが、しかし、人文系の美学とも接続可能な議論も色々なされていると思う。 後半で出てくる2つの美という…

青田麻未『環境を批評する』

筆者の博士論文を元にした環境美学についての本 英米系環境美学をサーベイし、環境を批評するという観点から「鑑賞対象の選択」と「美的判断の規範性」という2つのテーマで整理している。 元々環境美学のいう環境は、自然環境を意味していたが、その後の発…

Kathleen Stock "Fictive Utterance and Imagining"

フィクションの哲学の論文 フィクションを想像概念によって定義する、というのがこの分野のオーソドックスな見解だが、反論も多い。 反対派としては、マトラバースやフレンドがいる。 一方、最近の賛成派としては、このストックが挙げられることが多い この…

Stacie Friend "Fiction as a Genre"

メイクビリーブを批判する1人として有名なフレンドの、(おそらく)有名な論文 フィクションの定義を巡る話で、タイトルにある通り、フィクションをジャンルの1つと捉え、メイクビリーブや想像のために作られたもの、という標準的な定義を退ける。 ここでフ…

Glenn Persons "The Aesthetic Value of Animals"

動物の美学について論じた論文 動物を美的に鑑賞するのは不道徳なのかという問題に対して、機能美を鑑賞するのであれば不道徳ではないと論じる。 以前、青田麻未「動物の美的価値 : 擬人化と人間中心主義の関係から」を読んだ時に、主に紹介されていたもの …

Dominic M. Lopes "Drawing Lessons"

画像の認知的価値と美的価値の関係について ロペスの画像・絵画の価値に関する論集の第4章にあたる論文 同じ本の第2章は以前読んだ D.Lopes "The 'Air' of Pictures" - logical cypher scape2 Sight and Sensibility: Evaluating Pictures (English Edition…

フィルカルvol.5 no.2

表紙のカラーリングが好き 読む前は描写の哲学特集が一番の目当てではあったけれど、他のとこが結構面白かった 悪い言語哲学入門とかファース論文とかフィルカル Vol. 5, No. 2―分析哲学と文化をつなぐ―作者:山田圭一,池田喬,佐藤暁,松永伸司,銭清弘,難波優…

D.Lopes "The 'Air' of Pictures"

絵画の表現について 分析美学では、表現というのは、作品が何らかの感情を表現していることを指し、特に音楽における表現が論じられている。 絵画については触れられることが少ない この論文は、ロペスの絵画(画像)論についての本の第2章である。 「この曲…

Derek D. Turner "Paleoaesthetics and the Practice of Paleontology(美的古生物学と古生物学の実践)"

古生物学の科学哲学の本で、その美的側面を強調している。 タイトルのPaleoaestheticsは、直訳するなら「古美学」になるだろうが、ここでPaleo-としているのは古生物学Paleontologyとかけているからであり、また、古生物学の美学、というよりは、古生物学の…

リチャード・ウォルハイム『芸術とその対象』(松尾大・訳)

芸術作品とは一体どのようなものなのかというテーマを取り上げながら、美学の様々な論点を論じていく。 原著は1968年刊行だが、1980年の第二版より6つの補足論文が追加されている。 本論文は、65の節からなるが章わけなどはされていない。ただ、目次代わりに…

『フィルカルvol.5 no.1』

全部は読んでなくて、一部読んだので、読んだとこだけメモフィルカル Vol. 5, No. 1―分析哲学と文化をつなぐ―作者:柳川太希,鈴木亘,青田麻未,Jean Lin,佐藤暁,吉川孝,小野さやか,玉田龍太朗,稲岡大志,矢田部俊介,大畑浩志,谷川嘉浩,一方井祐子,酒井麻依子,朱…

ガルラジ合同本『___・ラジオ・デイズ』に「質感から考える メディアなきフィクションとしてのガルラジ」書きました

こちらに「質感から考える メディアなきフィクションとしてのガルラジ」を書いています。ガのリアルタイム性と質感旅行は、我々とガ世界の間にあるもの(=メディア)がないような経験(リアルでないのにリアルな経験)をさせてくれるのだ、という話です https://…

マンガにおける「分離された虚構世界」と「視覚的修辞」

まえがき 分離された虚構的世界と視覚的修辞 - logical cypher scape2 の続き、というか、最後に触れたイノサンの例についてもう少し膨らませて書く。 マンガは、絵を使って、とあるフィクション世界を描く形式である。 なので、絵の内容は、その世界の出来…

ミゲル・シカール『プレイ・マターズ 遊び心の哲学』(松永伸司・訳)

タイトルにある通り、遊び・遊び心についての本である。 ジャンルとしてはゲームスタディーズにあたり、本書もビデオゲームの例が多くあるが、筆者によれば、本書はあくまでも「遊び」についての本であって、ゲームについての本ではない。ゲームは、遊びの一…

最近読んでた美学関係のことについて

たまたま目についたもので自分が読めそうなものを読んでいる、というところがあって、全然体系だった勉強になっておらず、正直、勉強としてはあんまりうまくいってないところもあるのだけど、自分がどういう方向をやりたいと思っていて、それでどういう論文…

分離された虚構的世界と視覚的修辞

『フィクションは重なり合う』のAmazonページに、実はレビューが書かれているのを最近知って、ちょっとそれに対する応答をしつつ、ちょっと気になっていることをメモしておきたい。 2.2.分離された虚構世界の > 例えば、TVアニメ『四月は君の嘘』の22話(最…

Shaun Nichols ”Imagining and Believing: The Promise of a Single Code"

philpapers.orgJournal of Aesthetics and Art Criticism 掲載で、中身もフィクションの美学に関わる内容だが、筆者の専門は心の哲学のようだ。 スティーブン・スティッチと共同研究しており、この論文自体は単著だが、スティッチとの共同研究に基づいている…

Deena Skolnick and Paul Bloom ”The Intuitive Cosmology of Fictional Worlds"

"The Architecture of the Imagination: New Essays on Pretence, Possibility, and Fiction"の第5章 https://pdfs.semanticscholar.org/8a0a/bb1d0e73c11017ae923a844aa0a43c67ac62.pdf 筆者のポール・ブルームはイェール大の心理学者 複数のフィクション…

Craig Derksen & Darren Hudson Hick "On Canon"

https://contempaesthetics.org/newvolume/pages/article.php?articleID=832 James Harold "The Value of Fictional Worlds (or Why 'The Lord of the Rings' is Worth Reading)" - logical cypher scape2でカノンという言葉が出てきたが、ここでいうカノン…

James Harold "The Value of Fictional Worlds (or Why 'The Lord of the Rings' is Worth Reading)"

ジェームズ・ハロルド「虚構世界の価値(なぜ『指輪物語』を読むのか)」 https://contempaesthetics.org/newvolume/pages/article.php?articleID=584 この論文は、以前高田さんの記事で読んで存在を知った。 at-akada.hatenablog.com で、存在を知ってから…

Rune Klevjer, "Virtuality and Depiction in Video Game Representation"

これはウォルトン使ってる分析美学ぽいやつ。絵画と彫刻のちがい、ただのインタラクティブ映像とモデルによる表象(バーチャル/シミュレーション)のちがい、VRとARのちがいなどに関心ある人向け / Rune Klevjer, "Virtuality and Depiction in Video Game …

Elisa Caldarola "Pictorial Representation and Abstract Pictures"

分析美学から考える抽象絵画、というような感じの博論 分析美学が抽象絵画をどのように扱っているのか、というのは前から気になっていて、以前Michael Newall ”Abstraction” - logical cypher scape2を読んだ これは博論で全部読むには長すぎるので、3章だけ…

Rafe McGregor "The Problem of Cinematic Imagination"

カリーとスクルートンの、映画鑑賞における想像の考え方を比較している ロペスとウォルトンも出てくるが 特別面白い話をしているわけではないのだが、まあ整理としては読みやすい というか、英語が読みやすい英語だった気がする https://contempaesthetics.o…

R.Hopkins ”Depiction"

映画の哲学の教科書の中にある、描写についての章(第6章) The Routledge Companion to Philosophy and Film (Routledge Philosophy Companions) Moving and still depictions What is depiction? Seeing film as pictures What do we see in film? The uni…