フィルカルvol.5 no.2


表紙のカラーリングが好き
読む前は描写の哲学特集が一番の目当てではあったけれど、他のとこが結構面白かった
悪い言語哲学入門とかファース論文とか

対談「哲学対話:言葉による言葉の吟味としての」 (山田圭一、池田喬、佐藤暁)
特集1:描写の哲学
「描写の哲学を描写する」(松永伸司)
「イメージを切り貼りするとなにがどうなるのか インターネットのミーム文化における画像使用を中心に」(銭清弘)
「キャラクタの画像のわるさはなぜ語りがたいか 画像のふたつの意味と行為の解釈」(難波優輝)
「視覚的修辞 エル・グレコからアボガド6まで」(村山正碩)

特集2:アメリ哲学史をリブートする
序文 (朱喜哲 )
アメリ哲学史の何がリブートされつつあるのか」(加藤隆文)
「古典的プラグマティズム再考 共訳書紹介を兼ねて」(大厩諒)
「子どもの道徳性はどこからくるのか 19世紀米国における超自然主義有機体論を再考する」(岸本智典)
デイヴィドソンからローエル兄弟へ あるいはアメリ哲学史とハーヴァードの切っても切れない関係について」(入江哲朗)

シリーズ:哲学のニーズ 「哲学者への市場ニーズ」を再考する
「「フィルカル・サーベイ」事業の立ち上げに寄せて」(朱喜哲)
「基礎研究への貢献という哲学の使い道」(仲宗根勝仁)
「哲学は役に立たなくても」(濵本鴻志)
「古代型の哲学者」(中川裕志)

シリーズ:ポピュラー哲学の現在
対談「哲学と自己啓発の対話」第四回 (玉田龍太朗/企画:稲岡大志)

哲学への入門
悪い言語哲学入門 第1回 (和泉悠)

特別連載
ウソツキの論理学(連載版)哲学的論理学入門 第2回「ハーモニー」(矢田部俊介)

翻訳
倫理的絶対主義と理想的観察者 (ロデリック・ファース、岡本慎平訳)

解説
「ロデリック・ファースの生涯とその影響 「倫理的絶対主義と理想的観察者」解説」 (岡本慎平)

報告
「環境美学のフィールドワーク ヘルシンキ滞在を通じて」(青田麻未)

コラムとレビュー
「バーナード・レジンスター『生の肯定 ニーチェによるニヒリズムの克服』(法政大学出版局、2020 年)書評」(中山弘太郎)
酒井健太朗『アリストテレスの知識論』(九州大学出版会、2020 年)書評」(杉本英太)
「教養の意義を語ることの意義について 戸田山和久『教養の書』に寄せて」(八重樫徹)
「ダグラス・クタッチ『現代哲学のキーコンセプト 因果性』(岩波書店、2019 年)書評」(飯塚舜)
「美学相談室 第2 回 分析美学は批評に使えるのか?」(難波優輝)

対談「哲学対話:言葉による言葉の吟味としての」 (山田圭一、池田喬、佐藤暁)

「哲学対話」について
ざっくばらんな対談なので、内容をまとめるのは難しいが、読みやすく面白かった

特集1:描写の哲学

以前行われた描写の哲学研究会をもとにした特集

「描写の哲学を描写する」(松永伸司)

描写の哲学の概観
めちゃ勉強になる
シアーって名前は見かけていたけどどういう人か分かってなかったので、重要人物と知れてよかった
自然生成性という概念の提唱や再認能力からの説明を行い、シアーの示した論点の多くはロペスに引き継がれている、と。


また、今回の特集は「画像の使用」に着目しているものが多いのが特色と述べている。
個人的にはそこまで関心があるわけではないのだが、今後重要になっていくトピックかもしれない

「イメージを切り貼りするとなにがどうなるのか インターネットのミーム文化における画像使用を中心に」(銭清弘)

「イメージを切り貼りするとなにがどうなるのか」|投稿論文あとがき|参照ミーム一覧 - obakeweb
紙面では画像の引用ができないため、論文中で扱われた具体例は上記の記事で紹介されている。
画像には、(公式な・意味論的な)primaryな内容と(非公式な・語用論的な)secondaryな内容があるとして、インターネットミームを例に、どのようなS内容があり、それはどのように解釈され、どのような役割があるかを論じている
ホプキンスの分離の議論を不十分と考えたアベルが、グライスを援用して「画像の含み」という議論をしているらしい

「キャラクタの画像のわるさはなぜ語りがたいか 画像のふたつの意味と行為の解釈」(難波優輝)

銭論文に引き続き、画像の使用について
こちらは、画像提示行為というものを提唱し、その行為を解釈するためにどのようなファクターがあるのかを論じている

「視覚的修辞 エル・グレコからアボガド6まで」(村山正碩)

この特集の中で、個人的な関心ともっとも近いのがこれ
ホプキンスからブラウンによって論じられた分離の議論を踏まえたパンティナキの議論がまずおさえられている
パンティナキは、分離によって生じる逸脱的性質を、無視するか描写内容とみなすかの二者択一ではなく様式的変形によって行われる表出として捉えるという形で鑑賞に組み込む
村山は、この議論をさらに視覚的修辞という形で一般化する
すでに、発表時の資料をブログで読ませてもらっていたりしたが、パンティナキの議論の部分など、論文になってないと分からないところで、他にも用語などやはりプレゼン資料より論文の方が分かりやすいので、論文化ほんと有難い

特集2:アメリ哲学史をリブートする

アメリ哲学史に関する本が最近続けざまに出ており、それのブックガイドを兼ねた特集
以前からこれらの本はちょっと気になっていたが、ますます気になってきた

アメリ哲学史の何がリブートされつつあるのか」(加藤隆文)

分析哲学史のリブートとドイツ観念論のリブートがあり、その両者をつなぐのがプラグマティズムだと
前者としてミサック『プラグマティズムの歩き方』、後者としてククリック『アメリ哲学史』を挙げる
前者では、論理実証主義による分析哲学プラグマティズムに取って代わったという従来の歴史観に変わり、論理実証主義プラグマティズムの密接な関連が論じられ、後者では、プラグマティズムは観念論の一形態であることが論じられているという

「古典的プラグマティズム再考 共訳書紹介を兼ねて」(大厩諒)

筆者が翻訳に関わった『ウィトゲンシュタインウィリアム・ジェイムズ』と『アメリ哲学史』(ククリック)の二冊が(分量的には主に後者)が紹介される。
前者では、従来、ウィトゲンシュタインプラグマティズムやジェイムズについて批判的でそれほど関心を持っていなかったとされていたのに対して、実はジェイムズの影響がとても大きかったことを論じていると
後者は、古典的プラグマティズムを、観念論から実在論への転換期、そしてアメリカの大学制度の転換期にあった思想として論じている、と

デイヴィドソンからローエル兄弟へ あるいはアメリ哲学史とハーヴァードの切っても切れない関係について」(入江哲朗)

タイトルは筆者の関心の変化
つまり、卒論をデイヴィドソンで書き、著作でパーシヴァル・ローエルを論じたのは何故か、ということを、ハーヴァード大学の歴史から捉える
デイヴィドソンは、パーシヴァルの弟であるローレンス・ローエル学長時代に教養重視へと転換されたハーヴァード型教育を受けていた、と

シリーズ:哲学のニーズ 「哲学者への市場ニーズ」を再考する

「「フィルカル・サーベイ」事業の立ち上げに寄せて」(朱喜哲)
「基礎研究への貢献という哲学の使い道」(仲宗根勝仁)
「哲学は役に立たなくても」(濵本鴻志)
「古代型の哲学者」(中川裕志)
『フィルカル』刊行元のミュー社が立ち上げたサーベイ事業について
実際にサーベイヤーとして働いた若手研究者2名の体験談と、学際的な研究プロジェクトのPIをしているAI研究者からの哲学者へ求めるものについての文章

シリーズ:ポピュラー哲学の現在

対談「哲学と自己啓発の対話」第四回 (玉田龍太朗/企画:稲岡大志)
哲学対話について

哲学への入門 悪い言語哲学入門 第1回 (和泉悠)

悪口など、悪い言葉遣いを具体例に用いながらの言語哲学入門
「悪口とは人を傷づける言葉です」というのは「星とは空でピカピカ光っているもののことです」というくらいのものだ(大雑把な特徴としては間違ってはいないが全然定義にはなってない)という喩え話が、なんか刺さった
連載なのでこれからも楽しみ

特別連載 ウソツキの論理学(連載版)哲学的論理学入門 第2回「ハーモニー」(矢田部俊介)

論理や言語についての規範主義と心理主義という2つの立場がまず紹介される。
この2つはどちらも正しいように見えるが相反する立場である。
これに対して、システムというのは複数のレベルから構成されており、どのレベルから見るかで見方が変わることが論じられ、上の2つの立場も、どのレベルから見ているかの違いであり、その意味でどちらも正しい
サブタイトルにある「ハーモニー」はダメットに由来する概念で、システムの上下の関係が理想的でシステムが堅牢であること
ハーモニーについての詳しい説明は次回ということなので、若干タイトル詐欺ではという気もしないでもないが……
システムというのが複数のレベルで構成されていることの例として、インターネットのOSI参照モデルやマーの3つのレベルが紹介されていた

翻訳 倫理的絶対主義と理想的観察者 (ロデリック・ファース、岡本慎平訳)

倫理的言明を、理想的観察者を使って分析する
この分析は、絶対主義的で傾性的、客観的、関係的、経験的であるということと、理想的観察者に求められる6つの特徴について説明している


実は読んでてよく分からなかった部分も多いのだが、下記解説にある通り、理想的観察者という概念は美学でも関係があるので、その点で読んでて面白くもあった
理想的観察者概念、あまりに便利すぎでは、と思いながら読んでたかな

解説 「ロデリック・ファースの生涯とその影響 「倫理的絶対主義と理想的観察者」解説」 (岡本慎平)

この論文は1952年のもの
ファースは、ハーヴァード大学でC.I.ルイスに師事し、1953年からルイスの後継者として自身もハーヴァードの教員となっている。
同じルイスの学生にチザムがおり、2人ともロデリックだったために親しくなり、2人とも認識論を研究した
実はファースは認識論が専門だったのだが、有名なのは、今回訳出されたこの論文とのこと
当時のメタ倫理学へのカウンターであり、スミスやヒュームなどスコットランド道徳哲学を復権させたものとなった

報告 「環境美学のフィールドワーク ヘルシンキ滞在を通じて」(青田麻未)

タイトルにある通りヘルシンキ滞在記だが、自分自身が、居住者とまでは言えないまでも、単なる観光者ではなくなっていった様をレポートしている
その中で、新型コロナウイルス流行の影響で急遽帰国することになっていった経緯も述べられていたりする。

「教養の意義を語ることの意義について 戸田山和久『教養の書』に寄せて」(八重樫徹)

「ダグラス・クタッチ『現代哲学のキーコンセプト 因果性』(岩波書店、2019 年)書評」(飯塚舜)

この2つの書評読んだ
因果性の方、各理論のマッピングがあってそれがよいみたい
スティーヴン・マンフォード、ラニ・リル・アンユム『哲学がわかる 因果性』(塩野直之・谷川卓訳) - logical cypher scape2と補完的とのこと

「美学相談室 第2 回 分析美学は批評に使えるのか?」(難波優輝)

カテゴリ概念が分類に役立つのでは的な話