『日経サイエンス2023年11月号』『Newton2023年11月号』

日経サイエンス

“食べられる”ドローンで救命

翼部分がビスケットとなっているドローン。遭難者救助を想定。

セントラルドグマ」を体感

今年の8月に東京タワーで、セントラルドグマをテーマにしたサイエンスアート展が開かれていたらしい(会期が3日間しかない)。なお、主催はファイザー日本法人で、創立70周年記念だとか

地球の水の起源

隕石由来だというのが主流の説だが、地球形成時に取り込まれた水が結構あったのではというシミュレーション。複数のソースがあったのだろう、という話

見えない形を触って把握

カメラによる視覚情報ではなく触覚センサーのみでのロボットアーム

絵画を体感する

芸術心理学の研究ではないかと思うが、絵画鑑賞の際に、身体感覚が生じたかというアンケート調査を実施した研究。ここでいう身体感覚が何なのかよく分からなかったが、絵画鑑賞で感動することと身体感覚が生じることに相関があるみたいな話だった。
島皮質において、芸術作品の美的知覚と内受容感覚が関連しているのではないか、とか。

大アンダマン語族 消えゆく言語が秘める世界観  A. アッビ

インド・ベンガル湾にあるアンダマン諸島の滅亡に瀕する言語について
場所的には、インド亜大陸よりもインドシナ半島により近い感じだが、国としてはインドに属しているらしい。
アンダマン諸島小アンダマン島などからなる島々で、地図を見たとき、ファンタジー作品に出てきそうな地図だなと思って、気になって読んでみた。
ヒンドゥー語を話すようになっていて、大アンダマン語族を話す人々はほぼいない。
筆者は、数名の話者と交流を持っていたが、彼らも他に話す相手がいなくなってしまったのでもう忘れてしまった、という状況から、筆者が働きかけて、思い出してもらって聞き取り調査をしてきた。記事の最後で、この記事に出てきた筆者の協力者が近年相次いで亡くなっていて、もはや話者が3人しか残っていないとされている(大アンダマン語族という通り、複数の言語があったが、この3人は同じ語の話者)。
数千年前にアフリカから渡ってきた人々がそのままこの島々で孤立していたことにより、ほかのどの語族にも属さない独自の言語となっていったとされる。
また、アンダマン諸島の中でも地域ごとに少しずつ言語が異なり、隣り合った島同士では言葉が通じるが、北端と南端の島では言葉が通じない、というのが、植民地だった時代にヨーロッパ人が記録している。
身体性が語彙や文法に強く反映している言葉で、例えば「血液」も、どこからでた血なのかで語が違っていたり(指先の血なのか内出血なのか)、「明日」も、「私が明日行く」と「明日、あなたのところに行きます」だと、「私の明日」と「あなたの明日」という別の単語があったり、動詞の変化形とかでも「私の内側から」みたいなのがついたりなんだりとか、あるらしい。
筆者は、インドの複数の言語を研究してきた言語学者だが、文法を修得するのにかなりかかったらしい。
筆者の研究協力者で、数少ない話者たちとの交流のエピソードをまじえて語られている(先祖は鳥だったんだとか、伝説とかを教えてもらったり)。

Newton

NASAと東北大,「火星ヘリ」の翼を共同開発

東北大には「火星大気風洞」なる研究施設があるのか

航空機の未来
  • 超音速

超音速旅客機というと、コンコルドとその失敗が有名だけど、近年の技術の進歩で、コンコルドの欠点であった燃費の悪さとソニックブームによる騒音が解消されそうなので、また開発がされているらしい。ブーム・スーパーソニック*1の「オーバーチュア」というのが紹介されている。

  • 翼胴一体型
  • SAF

CO2対策のための燃料。CO2排出量は変わらないけど、化石燃料由来じゃなくて木材由来なので(植物が固定したばかりのCO2なので)実質排出ゼロみたいな理屈らしい

  • コリドー

空飛ぶクルマのための道路のことを「コリドー」と呼ぶらしい。物理的な構造はない。

ネックはモーターが重いこと。解決策は2つあって、1つはガスタービンとのハイブリッド。もう一つは、超伝導モーター。超伝導だと軽量化できるらしい 

  • 水素

完全なゼロエミッションのための水素。水素を直接燃やすか燃料電池の二択。燃料電池は重いのがネック

マッハ5以上で飛ばす場合、大気圏外のサブオービタル機、つまりいわゆるスペースプレーンとなる

激変する地球

過去と現在の衛星写真を比較した企画
以下、印象に残ったものを羅列。

  • アタカマ砂漠のリチウム開発
  • エジプト・ダマヌールの農地開発
  • ジャカルタの水位上昇(海岸線はあまり変化がないが植生の変化が色でわかる)
  • 上海の都市拡大(上海なんて昔から大都市な気がするが、ここ20年だか10年だかの拡大がとんでもない)
  • パキスタンインダス川洪水
  • 南極の氷床減少

*1:すげえ名前だ