思想

木澤佐登志『闇の精神史』

「ロシア宇宙主義」「アフロフューチャリズム」「サイバースペース論」という三部構成で、近代や資本主義を脱しようとしたユートピア思想を概観していく。 SFマガジンでの連載をまとめたもの。 木澤佐登志の著作は以前から多少気になってはいたものの、自分…

攻殻機動隊 M.M.A. - Messed Mesh Ambitions_ISSUE #01 特集_東洋的|The East

攻殻機動隊のグローバルサイトなるものが立ち上がり、その中で士郎正宗へのインタビューがあるのが話題となっているが、他にも論考記事が掲載されている。 普段、こういう記事へのリアクションはブクマでしているし、これらの記事についてもブクマでもよかっ…

山口輝臣・福家崇洋編『思想史講義【戦前昭和篇】』

山口輝臣・福家崇洋編『思想史講義【大正篇】』 - logical cypher scape2に引き続き、今度は戦前昭和篇 もともと日本思想史とか全然だったので、大正篇も知らないことが多くて勉強になったところではあるが、とはいえ、大正篇は、自分の従来持っていた日本史…

桑野隆『20世紀ロシア思想史 宗教・革命・言語』

20世紀のロシアにおける哲学や思想に一体どんなものがあるのか、概略をつかむのにちょうどよい入門書ないしハンドブック かなり広範に扱っているが、ページ数は手頃な長さにおさまっている。その点、個々の思想について説明が少なくなってしまっているところ…

山口輝臣・福家崇洋編『思想史講義【大正篇】』

ちくま新書の歴史講義シリーズから、新たに『思想史講義』シリーズが始まり、その第1回配本にあたる。シリーズ全体としては、明治1、明治2、大正、戦前昭和の4篇を予定しているとのこと。 最近、筒井清忠編『大正史講義』 - logical cypher scape2筒井清…

鈴木健『なめらかな社会とその敵』

鈴木健がいよいよPICSYについて単著を出したということで、結構楽しみにしていたのだけど 実際読む段になってみて、なんだかあまりはまれなかった。 元々、鈴木健については06年のisedで知ってたんだけど、それから7年たって自分の方がこういうものへの興…

北野圭介『映像論序説――デジタル/アナログを越えて』

映像を巡る言説を、アナログとデジタルの区別について吟味する形でまとめたもの。 冒頭で、方法論として概念分析と系譜学的考証というのを挙げている通り、映像という言葉がどのように使われてきたのかというのを追いかけている。 アナログ映像とデジタル映…

田中久美子『記号と再帰』

サブタイトルに「記号論の形式・プログラムの必然」とある通り、記号論とプログラム言語について書かれた本である。 だが、自分には、記号論とプログラム言語の両方の知識が足りないために、かなり不十分な理解で終了してしまった。 ただ、読んでいてずっと…

『RATIO』01〜04

図書館行ったら、RATIOあったし! 3巻と4巻を借りる。 図書館には4巻までしかないが、今のところ6巻まで出ている。鬼界先生の論考は5巻、安藤馨は6巻のようだ。 今まで本屋では、戸田山・伊勢田連載以外わりとスルーしていたのだけど、よくよく眺めて…

稲葉振一郎『社会学入門』

あとがきによると、稲葉振一郎の勤める社会学部1年生向けの授業を元にしたとのことで、元々一般教養科目としての性質があったようで、「社会学」入門であると同時に一般教養である。 一般教養であるって、よくわからない言い方になってしまったw 全部で1…

池田信夫『ハイエク知識社会の自由主義』

ハイエクについて何かいい入門書はないかなあ、と思っていた今日この頃、ふと本屋で見つけた一冊。 ハイエクも池田信夫も、名前は知っているけど、どういう人かいまいちよく知らなかったので読んでみた。 僕がハイエクの名前を知ったのは、東浩紀が紀伊国屋…

カール・シュミット『政治的ロマン主義』

19世紀ドイツの、ロマン主義を痛烈に批判している本。 決断主義とかの話はしていなかった。 『日本浪曼派批判序説』を書いた橋川文三による翻訳。 19世紀ドイツのアダム・ミュラーとフリードリヒ・シュレーゲルという二人のロマン主義者が、主に批判の対…

アガンベン『アウシュビッツの残りのもの』

人間とは、言葉を話すことが出来る生きものである。 しかし、言葉を話すことと生きものであることは、いかにして両立しているのだろうか。 「人間」は、二つの位相に分けられるのである。 つまり、生物としての「ヒト」の部分と、他の生物とは区別される、人…

「公共性とエリート主義」@新宿紀伊国屋サザンシアター

なんか、筑波批評メンバー総出(6人)で行ってきたw 会場に着くなり、「会場限定、東先生と北田先生のダブルサイン入り思想地図!」が売られていた。 客席には、思想地図関係の有名な人たちが結構いた感じ。 司会者が時間通りに始まらないことを詫びる。ま…

集合体のアイデンティファイについて

twitterで真面目な話をつぶやくと、klovくんがたんぶらってくれて便利*1 そこで、まとめてくれた話というのが、2006年頃にこのブログで書いていたことと非常によく関わっているので、まとめてリンクをはっておく。 まずは、今日呟いたことのまとめはこち…

『InterCommunicationNo.65』

最終号。 横書きなので左綴じ。 山本貴光「コミュニケーションの思想――バベルの塔からバベルの図書館へ」 対談長沼毅・佐々木晶「宇宙生命の可能性と、人類と宇宙生命のコミュニケーションの(不)可能性をめぐって」 西川アサキ「なぜ、モップと語り合えな…

罪を償う/赦す

取り返しのつかない欠落を抱え込んだ者であっても、その欠落を抱えつつ、その後も生き続けなければならない。 欠落のあとの生活を可能にするための手続が、弔い・償い・赦しである。 このエントリは、id:SuzuTamakiによる以下の記述に対して、twitter上でSuz…

『コードギアス反逆のルルーシュ』

この時期にコードギアスの感想を書くと、今やっているさいちゅうのR2の感想かと思われそうだが、R2はまだ見ていない*1。 最初にこんなこと書くのも何だか逃げみたいだが、僕はアニメには詳しくない。詳しくないので、アニメとしてどうのこうのということ…

大澤真幸『不可能性の時代』

よいまとめ、と言ってしまうと身も蓋もないか。 「理想の時代」「虚構の時代」「第三者の審級」といった大澤語が、わりとよくわかる。 際立って新奇な、というか、「おおっ!」というようなことが書いてあるわけではないのだけれど、各時代の事象というもの…

戦後としてのゼロ年代

『民主と愛国』を読んでいて*1、そこに書かれている戦後日本の社会状況というものに対しては、別世界だという感覚しか持つことができないし、戦争体験というのもまあ想像不可能なものだ。 それにもかかわらず、そこで紹介される戦後思想の方には、惹かれるも…

小熊英二『民主と愛国』

いやあ、とにかく長かった。 しかし、難しいことは全然書いていなくて、読みやすい文章なので、非常にさらさらと読める。本が重たい*1ことを除けば、長さはあまり気にせずに読むことができると思う。 あと、何度も何度も同じことが繰り返し出てくるので*2、…

稲葉振一郎『「公共性」論』

ハーバーマス、アレント、アガンベンあたりを中心にした、人文系啓蒙の書。 まず第一には、とにかく色々なものが紹介されている、入門書として読むことができる。 あまりにも多岐にわたっているため、説明不足となっていたりする部分もないわけではないが、…

カイヨワ『遊びと人間』

ミミクリについて知りたくなったので読んでみた。 人類学的な実例が色々載っているので、面白い本ではあるけれど、今自分の欲しい情報が載っている感じがあまりしなかったので、かなり飛ばしながら読んだ。 とりあえず、カイヨワによる遊びの定義と分類など …

『未完のレーニン』白井聡

マルクス・レーニン主義というものは、それこそ世界史で習う程度の知識しかなく、思想としてどういうものであったのかということは全く知らなかった。 しかしこれが、なかなかどうして面白いものであった。 この本は、レーニンの著作の中から『何をなすべき…

三中信宏『系統樹思考の世界』

久しぶりに新書を買って読んだ気がする。 06年の本で、既にある程度話題の本になっていたっぽいが、なかなかいいタイミングで読むことができたなあと思った。 著者は、進化生物学を専門にしている*1ので、この本はまずは進化論の本といえる。 だが、いわゆ…

『現代思想07年12月号』「特集量子力学の最前線」

まあ、ぶっちゃけた話、分からない部分の方が遙かに多い。 読みながら、分かんねえなあと思いながら読んだわけだけど、そのわからなさ具合がまた何となく面白い。 宇宙論 宇宙ヤバイw 宇宙論はやっぱり面白いなあと思う。 五次元宇宙の話とか。量子スケール…

「サイバースペースは何故そう呼ばれるか」『情報環境論集』

LSDを買うかどうかは迷っていたのだけど、http://d.hatena.ne.jp/massunnk/20070825/p3をきっかけに購入。 滅茶苦茶面白い。 これは、結論が出なかったという点では「失敗作」なのかもしれないが、こんなに面白いとなると「失敗作」と呼ぶのはもったいない。…

ポリフォニーとか

このタイミングで、東浩紀とか読書とかのタグつけた日記書いたら、当然「キャラクターズ」についてだと思われそうだけど、残念ながら違う。まだ読んでいない。 『カラマーゾフの兄弟』を読んだので、『小説家が読むドストエフスキー』という本のカラマーゾフ…

最近のこと色々(SIGHTとか夏の100冊とか)

東浩紀と筒井康隆の対談(『群像7月号』) これ、あまり期待しないで読んだら、よかった。 ぎゅうっと濃縮されている感じがする。 他の文学史とも繋がってるんだよ、っていうのはよかったと思う。 しかし、結局文学について素養がないと全然分からない、困…

君たちは何故小説を書くのか/僕は何故評論を書くのか

今日は、図書館で『新潮』と『群像』(と『文學界』)を読んできた。 目当てはもちろんアレとアレなんだけど、まあそれの感想と最近思っているよしなしごとを絡めて書く。 『新潮』東・仲俣対談と佐々木敦の『1000の小説とバックベアード』論 『東京から考え…