思想

『不過視なものの世界』

『コンテンツの思想』でも『文学環境評論集』でもなく『不過視なものの世界』 今までずっと読み損ねていた東浩紀の対談集で、斎藤環、山形浩生、村上隆、法月綸太郎、山根信二、阿部和重との対談がそれぞれ収められている。 『存在論的、郵便的』『郵便的不…

永井均『これがニーチェだ』

とりあえずこの本で記されているニーチェは、あくまでも永井によるニーチェ解釈であることが何度か指摘されている。別にこれは当たり前のことで、世にある解説本というのは全てそういうものなのである。逆に、例えばこの本であればそこにあるのは、ニーチェ…

生活世界(思考の整理も兼ねて)

この前、研究計画案*1に必要なサインをもらいに、某先生の研究室へお邪魔した。 ほとんどうまく喋れなかったのだけど、今こんなことを考えてるということをちらっと言ったら、フッサールの生活世界論について調べてみるとよい、と言われた。 僕自身は、そこ…

RATIO02

ノウアム・チョムスキー(冨田恭彦訳)*1「単純な真理・難しい問題―テロと正義と自衛に関するいくつかの考え」 いつも通りのチョムスキーである(ってそれほどチョムスキーの意見に触れたことがあるわけではないけれど)。 欧米諸国(特に合衆国)が如何にダ…

『RATIO02』

大学の先生にいただいた。感謝。でも、まだほとんど読めていないんだけど。 既読記事 岡田温司「「帝国」と「ヨーロッパ」をめぐって―カッチャーリとその思想」 カッチャーリというイタリアの思想家の話。全く知らない人なので、単に読み流した感じ。 「多島…

テッサ・モーリス=鈴木『辺境から眺める』

近代化、とは如何なる出来事なのか。 そこでは「近代国家化」と「国民国家化」という、似て非なる2つが同時並行的に進行する。 片方は「シティズンシップ」を形成し、片方は「ナショナル」や「エスニック」を形成する。 アイヌやウイルタ、ニヴフという北方…

脱構築から遠く離れて(クリップとメモ)

エントリタイトルに深い意味はない。 最近自分のサイトにupした文章↓と問題意識が通じていそうなエントリをクリップ。 文系ヘタレがサバイブする(?)ために 2006.11.19 今年の4月頃に、同じ大学の友達に向けてアジった(笑)時のレジュメとプレゼンファイ…

環境知能シンポジウム2006

環境知能シンポジウム2006 記録映像 http://www.brl.ntt.co.jp/cs/ai/ja/archive.html 9月22日に行われたシンポの映像が公開されたので、見ました 司会:外村佳伸(NTTコミュニケーション科学基礎研究所) パネリスト:東浩紀(哲学者・批評家) 石黒浩(…

集団の取り扱い

環境知能シンポには、色々なトピックが溢れていて、色々な話をしたいんだけど(ロボットの話とか、人間らしさの話とか) ちょっと今思いついたことをちらほらと。 つまり、今まで人間は、あるいは近代社会は、真に集団というものを自らの体系の中に組み込む…

まっしゅるーむの世界2005/ギートステイトハンドブック

まっしゅるーむの世界2005 NTTコミュニケーションの研究所がやっているプロジェクト。環境知能を「まっしゅるーむ」と名付けている。 環境知能、というのは、部屋の電脳化。ロボット開発における方向性の一つ。普通、ロボットというと、例えばヒューマノ…

ギートステイトハンドブック他メモ

ギートステイトハンドブックの通販が始まったので、買った。 色々と面白そうなアイデアはちらちらあるけど、まだ断片的なのでなんとも。 ちょっと気になったことをいくつか。 「技術と欲望の相互作用」(東、桜坂、新城鼎談より) 欲望がないと技術は進まな…

安冨歩『複雑さを生きる』

複雑系の科学を駆使して、人間社会を分析する。 ルーマンの社会システム理論が中核に据えられているのだが、それが非常に分かりやすく述べられている。 第一章では、ベイトソンによる情報の定義「情報とはちがいを生むちがいのことである」から始まって、ポ…

他者と触れあうことが出来るのは

もしかして色ってさ人それぞれ見た感じが違うんじゃないの? このスレのなかでも、はてブコメントでも、クオリア問題だよね、と言われているけど問題そのものは、別にクオリアを持ち出す必要はない。 新釈 うああ哲学事典 下 この中の「モデル41 中島義道…

総検索社会と外延化するアイデンティティ

なんだ、このものものしいタイトルは。 マイミクのせりなさんのmixi日記にて、「防犯で小学生に携帯電話を持たせるか否か」という話をしていた。 この日記のスタンスは、それに対して肯定でも否定でもなくて、むしろ「それって大した問題じゃないよね」とい…

本橋哲也『ポストコロニアリズム』

1学期の授業のテキストだった本。 フランツ・ファノン、エドワード・サイード、ガヤトリ・スピヴァクを取り上げた、ポストコロニアリズムの入門書。 言葉 ポストコロニアリズムは、文学(認識)と政治(実践)を切り結ぼうとする試み、ではないか。 詳しく…

『生と権力の哲学』檜垣立哉

後期フーコーの「生政治学」についての概説と、ドゥルーズ、アガンベン、ネグリによるそれの応用についての解説。 まさに、解説書、入門書的な一冊だと思う。 政治哲学というと、どうしてもローティ、ノージックという感じで、あとは加えてロールズとか。ハ…

視点・視線

上のエントリでは「芸術とは驚き(新奇性)を生産すること」と言われていた。 ところで、去年、感性についての授業をとっていたことがあるのだが、その授業の大雑把な自分の理解は、感性とは「気付く能力」である、ということ。何に気付くのか、新しいもの、…

「ネットワーク社会の文化と創造─開かれたコミュニケーションのために」

ICCのリニューアルオープン記念のシンポジウム 斎藤環、宮台真司、藤幡正樹、浅田彰。 ネットで中継されていたのを見た。 ICCは一度実際に行ってみたいところだが、実際に行かなくても見れるというのは実に便利w さっきから、レビューを書いていて2回も消…

偶然性と倫理?

偶然性に耐えること、は本当に倫理的なのか ということを、以前ふと考えた。 偶然性に耐えられず、何かに依存してしまうこと、と比べれば、よっぽど倫理的なのは確かなのだが 偶然性は偶然性で、人を傷付ける可能性をあるのではないか。 自分が自分であるこ…

InterCommunicationVol.56(購入後)

貨幣・法人・バザール(岩井克人・安冨歩・鈴木健・東浩紀) 貨幣論とか経済学とかよく分からないので、「へぇそうなんだ」と楽しみました。 でも、難しい、よくわからないことが多い……。 岩井「貨幣論」 本人による「貨幣論」要約! まず、「価値形態論」と…

記憶・共有

少し前の先輩とのメッセ 『心の起源』という本をパラパラと再読 「InterCommunication」No.56の「貨幣・法人・バザール」「コミュニケーションの連鎖としての組織と社会」を読んで 心が生まれることにとって記憶が重要 記憶の誕生→時空・論理などが生まれる…

『エドワード・サイードOUT OF PLACE』完成記念上映会+大江健三郎講演会〜マリアム・サイードを迎えて〜

タイトル長いなぁ。 うちの親がちょうど東京に来ていたので、おごってもらった。 サイードの住んでいたところを辿りながら、サイードの思想とパレスチナ/イスラエルの現況を伝えるドキュメンタリー サイード家って金持ちだったんだなぁという印象からスター…

『限界の思考』

宮台真司と北田暁大の対談本 基本的に、宮台は同じことをずっと繰り返し言っていて、それに対して北田が色々な方向から質問をする、という体裁 『サイファ』の方が読んでいて「限界」って感じたりしたんですが。 宮台は、ヘタレ右翼、ヘタレ左翼、ホンモノ右…

『マシンの園』

読もうと思ったのは、訳者が佐倉統だったからなんですが 作者はクラウス・エメッカというデンマーク人なんですが、訳者あとがきで、デンマークというとセイレン・キェルケゴールやニールス・ボーアなど哲学が好きな人が多いんじゃないか、と書いてあって、そ…

『リバタリアニズム読本』森村進編著

現代人必読の書、とまではいかないけれど、読んでほしいし読んで損はない本。 一応、ここで自分の立ち位置を明確にしておくと、リベラル左派ということになると思う。自分は決してリバタリアンではなく、むしろリバタリアンとはしばし対立することになるリベ…

『こころの情報学』西垣通

こういう学問を、一体なんて呼べばいいのか分からないのだけど、まあこういう学問の入門書としてはすごくよくまとまっている本。 新しい発見は少なかったけれど、今まで読んだり考えたりしてきたことを整理するのに役に立った。 これだけの内容を、特にジャ…

『偶然性・アイロニー・連帯』

リチャード・ローティが語る、リベラル・ユートピアについての本 東浩紀が、「大きな物語の凋落(リオタール)」とはどういうことか知りたければ、これを読めって言ってた本でもあるはず 本書は三部構成となっており、それぞれ「偶然性」「アイロニズムと理論…

ised倫理研第5回

今回の倫理研は、isedとしては珍しく結論めいたものが出てきました この一応の「結論」に対しては、今後賛否両論が巻き起こるだろうし、巻き起こってもらわないと困る。今後深く吟味されることと思われるので、ここではあまり触れない 今回の議論で意義深い…