文芸評論

『ユリイカ 2023年7月臨時増刊号 総特集=大江健三郎』

実物を見ると600ページ超の分厚さにびびる。 大江健三郎について最近ちょっと読んでいるとはいえ、全然明るくないので、ごくごく一部の論考だけちらっと読んだユリイカ 2023年7月臨時増刊号 総特集◎大江健三郎 ―1935-2023―作者:工藤庸子,尾崎真理子,市川沙央…

木原善彦『実験する小説たち』

アメリカ文学研究者で翻訳者である筆者が、主に20世紀後半以降に書かれた実験小説を色々紹介してくれる本。 今、海外文学読むぞ期間を個人的に展開中だけれど、それのガイドになればなあと思って。それ以前から気になっていた本ではあるけれど。 どういう手…

『文学+』03号

「凡庸の会」*1が発行している文芸批評と文学研究の雑誌『文学+』の第3号 以前、創刊号を少し読んだことがある。 『文学+01』 - logical cypher scape2 第3号の宣伝が回ってきたとき、大正文学史というのが見えて、最近立て続けに大正史を読んでいた(筒井…

『文学+01』

文学+ 1号 発売中A5サイズ/240ページ定価:1200円(送料・振り込み手数料別)現在は通信販売のみ。お取り扱い頂ける書店様随時募集しております。 pic.twitter.com/thQXxSlzl7— 文学+ (@bungakuplus) 2018年10月5日 2018年11月頃に読んで、そのまま読みさ…

『新潮2018年7月号』

新潮 2018年 07 月号出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2018/06/07メディア: 雑誌この商品を含むブログ (1件) を見る佐々木敦の「これは小説ではない」において、キャロル『批評について』が言及されていると聞いたので、読んでみた。 『批評について』未読だ…

『フィクションは重なり合う』kindle版リリース!

フィクションは重なり合う: 分析美学からアニメ評論へ作者: シノハラユウキ出版社/メーカー: logical cypher books発売日: 2016/05/02メディア: Kindle版この商品を含むブログ (6件) を見るKindle ダイレクト・パブリッシングサービスを利用して、販売を開始…

さやわか『文学の読み方』

さやわか流メディア論的近代日本文学史の本。 『小説神髄』『あひゞき』から始まって『Re:ゼロから始める異世界生活』まで 日本近代文学は、 「文学とは、人の心を描くものである」 「文学とは、現実をありのまま描くものである」 というのが錯覚であること…

第19回文学フリマ感想

『アニバタvol.10』(特集:洲崎西) 事前に全くノーチェックだったけれど、特集タイトルを見て即買いしてしまったw しかもこれは当日に読み終わって、当日に感想をpostしてるw 「茶番の転回とビジネスの展開」洲崎西史における転換点として、リスナーの投…

限界研編『ポストヒューマニティーズ――伊藤計劃以後のSF』

店頭に並ぶのは25日からの予定ですが、見本が届きました! というわけで今日は宣伝記事 こちらの本に、瀬名秀明「希望」論を書かせていただきましたので、是非皆さん読んでみて、よければお買い上げお願いしますw 概要 現代日本SFをめぐる評論集 タイト…

藤田直哉『虚構内存在』

サブタイトルは、「筒井康隆と〈新しい《生》の次元〉」であり、筒井康隆論である。 第1章から第7章まで、筒井康隆の仕事をおよそ時系列順に追いながら、その中にある「虚構内存在」の思想を読み込んでいく。 最後につけられた第A章で、筒井康隆から離れ…

『SFマガジン2012年5月号』

渡邊利道「独身者たちの宴」 日本SF評論賞優秀賞受賞作にして、上田早夕里『華竜の宮』論 まず、他の上田作品をざっと見渡して「変化はするが成長はしない」「他者性」といったことを共通点と挙げ、次いで構成を整理した上で、内容の分析へと入っていく。 青…

東浩紀『サイバースペースは何故そう呼ばれるか+』

「サイバースペースは何故そう呼ばれるか」を河出文庫版で再読。 それから、収録されている論考「精神分析の世紀、情報機械の世紀」「想像界と動物的通路」「スーパーフラットで思弁する」を読んだ。「精神分析の〜」は再読、残り2つは初めて読んだ。対話の…

村上裕一『ゴーストの条件』

ゼロアカ道場優勝者である村上裕一によるデビュー作。 これで長きにわたったゼロアカ道場企画も本当に終結したと言える。 キャラクターというものが現代オタク文化の中で拡散している様をゴーストという概念で捉え直し、そのリアリティを批評している本。 三…

限界小説研究会編『サブカルチャー戦争』

大分間を空けながら読んでしまったので、詳しいコメントなどはなしで。 面白かったのは 飯田一史「村上龍はなぜ「カンブリア宮殿」に至ったのか」と 蔓葉信博「至道流星と情報戦」 どちらも小説と経済の話だが、前者は村上龍の経歴を追って村上龍が何を目指…

『早稲田文学増刊U30』

まだ小説は読んでないけど、評論は読んだ。 福嶋亮大「現代中国文化に見るネットワーク効果」 まあ大体タイトルどおりの感じの話 伊藤亜紗「「露出」する登場人物たち」 非常に面白かった。「カギ括弧論」もそうだけど、伊藤さんって派手さはないけど面白い…

中島一夫『収容所文学論』

これが批評って奴なんだなーと思った。 いわゆる批評と呼ばれる、柄谷行人とかすが秀美とか読んだことないからなー。 かなり全般的に、マルクスの価値形態論に依拠していて、それを使って色々と読んでいくというのは、なんか面白いなあと思う。何でマルクス…

今月の文芸誌

群像8月号 戦後文学2009高橋源一郎×奥泉光 群像で戦後文学を読む企画をやるんだけどどう、みたいな感じの対談。 自分たちが戦後文学をどう読んできたかとか、今の文脈でも面白いものは面白いんじゃないかという話から、次第に企画会議へと変わっていく…

外部のなさとしてのセカイ系

『社会は存在しない』を読んでいて考えたことなどを書いていく。 『コードギアスR2』と『ダークナイト』 笠井は、「セカイ系と例外状態」の中で『コードギアス』を画期的な作品だとしたうえで、R2のラストについても論じている。例外状態において親殺し…

『社会は存在しない』限界小説研究会編

サブタイトルに「セカイ系文化論」とある通り、セカイ系評論集となっている。 「何を今更セカイ系なんて」と思う向きにも、ちょっと立ち止まってもらいたい。 これは、セカイ系と称されてきた作品について論じる、というわけではなく、セカイ系という概念が…

『国文学増刊 2009年6月号』『すばる6月号』『群像7月号』

国文学増刊 特集「小説はどこへ行くのか 2009」 病/鹿島田真希 豊穣の角/円城塔 [鼎談] 岡田利規、鴻巣友季子、福永信 「船は波を切って進む」 『アクロバット前夜』の話から始まる。段組をするのはデザイナーであって自分たちじゃないというところ…

思想地図vol.3

安藤馨「アーキテクチュアと自由」(『思想地図vol.3』) 読んだ。面白い! 彼の立場や結論には必ずしも首肯しないが、議論のやり方や文体がとても 好み 分析哲学的(というか、メタ倫理学の方法論を汲んでるんだろうが )で、明晰な感じがする こういうのは読ん…

5月後半に読んだ本・雑誌

現代思想ダーウィン 「鳥のさえずり行動と四つの質問」岡ノ谷一夫他 「ArtHistoryとNaturalHistory」田中純 思ったほど面白くなかった 「「エボデボ革命」はどの程度革命的なのか」戸田山和久 勉強になった。発生から見る遺伝子。(環境とかによって変わる非…

第八回文学フリマ感想

空中キャンプ/伊藤聡『下北沢の獣たち』 ブログ空中キャンプの中の人である伊藤聡の短編小説集。 空中キャンプは以前から、時折書かれるエッセイやショートショートに数多くのブクマを集めており、いわばその文章の魅力というのは折り紙付きであった。そう…

今月の文芸誌

『文学界2月号』 青山真治・平出隆・平野啓一郎座談会 ソウルで開かれた東アジア文学フォーラムに参加した3人の座談会。 3人とも出身が北九州なので、北九州の話や韓国の話など。 フォーラムでは、莫言が書をすらすらと書いてかっこよかったけど、開催地が韓…

「動機」をめぐって

「文芸評論」と「哲学」のタグをつけてるが、「理論社会学」というタイトルの講義について。 ミステリ小説の言説空間についての授業だった。 取り上げられた作家は、エドガー・アラン・ポー、黒岩涙香、レーモン・ルーセル、松本清張らである。 が、ここでは…

宇野常寛『ゼロ年代の想像力』

まず全体的な感想としては、面白かったし、方向性としても納得というか共感した。 しかし、読みながら、色々と批判したくなってくるのは何故なんだろうか。 とりあえず、以下、この本のまとめと読みながら思った事を書いていくつもりだが、その中には「ここ…

斎藤環『文学の断層 セカイ・震災・キャラクター』

小説トリッパーでの連載をまとめて、加筆したもの。 トリッパーの連載もほぼ読んでいた。というか、自分がトリッパーを読んでいたのは、ほとんどこの斎藤環の連載を読むのが目的だった。トリッパーをチェックしていた時期と、これが連載されていた時期はちょ…

『新潮』『群像』『文學界』『すばる』8月号

楊逸が芥川賞をとったとか。 あ、あと、『論座』休刊とかが、今日の文壇・論壇関係ニュースか。 『新潮8月号』 間宮緑「実験動物」 ワセブンのを読もうと思っていて結局読んでないや。 面白いような、つまらないような。 「私」と「吸血博士」の共同生活っ…

文学とは何か(夏目・秋山往復書簡をうけて)

夏目陽さんと秋山真琴さんの間で、文学と小説を巡って往復書簡が始まった。 秋山真琴(id:sinden)さんへ 第一信(世界の果てのクロエの祈り) 夏目陽さんへ、第1信(雲上四季) この往復書簡は、無論この二人の対話ではあるが、「実際にはトラバの送りあい…

『現代文学理論』

筆者が3人いて、タグもいっぱいつけてタイトルが長くなるので、筆者名をタイトルでは省略した。筆者は土田知則、青柳悦子*1、伊藤直哉である。 いわゆる、批評理論についての概説書である。 「はじめに」と「おわりに」で、筆者ら自身が、単なる入門書には…