読書

野家啓一編『哲学の歴史10 危機の時代の哲学―20世紀1』

引き続き、中公の『哲学の歴史』 いわゆる大陸系哲学あるいは現象学の潮流に位置する人たちで、また、戦後の人たちも一部含むが、概ね20世紀前半から戦間期に活躍していた人たちが中心となっている巻 知っているようで知らない人たちで、「へえそういうこと…

「カッシーラー」「ヴェーバー」他(須藤訓任編『哲学の歴史9 反哲学と世紀末―19-20世紀』)

中公の『哲学の歴史』!! 本についての話をする前に個人的な話をするが、これは、自分が学生だった頃に発刊されたシリーズで、なんかすごいの出たなあと思っていた。その後も近くの図書館で見かけたりして*1「いつか読むぞ!」「いつ読むんだ?」というのを…

柏木博『デザインの20世紀』

20世紀のデザイン史について、19世紀後半のアーツ・アンド・クラフツ運動から戦後の消費社会まで辿る本 元々、マシン・エイジやアメリカのインダストリアル・デザインについての何かを読みたいと思って探していて見つけた本だった。もとより、タイトルや目次…

矢代梓『年表で読む二十世紀思想史』

1883年~1995年までの、欧米の哲学・思想・文学・芸術を編年体で綴った本。 「世紀転換期・戦間期について読む(哲学思想篇)*1」の一環として手に取った本なのだが、タイトルと目次(あとはAmazonの該当ページとか)だけ見て図書館で予約した本なので、実際…

桜井哲夫『戦争の世紀 第一次世界大戦と精神の危機』

第一次世界大戦がヨーロッパの若い世代の作家などに与えた精神的影響についての本 本の惹句としては「20世紀精神史の試み」とある。 どういうのであれば思想史で、どういうのであれば精神史なのか、自分にはよく分からないが、まあそういうジャンルの本で、…

木田元『マッハとニーチェ―世紀転換期思想史』

タイトルは「マッハとニーチェ」だが、基本的にはマッハの思想とその影響について 『大航海』での連載をもとにした本。 「世紀転換期」という言葉知らなかったけど、使い勝手よさそう マッハについては、原子論をめぐってボルツマンと対立し、アインシュタイ…

リタ・タルマン『ヴァイマル共和国』(長谷川公昭・訳)

タイトルにある通りヴァイマル共和国についての本だが、林健太郎『ワイマル共和国』 - logical cypher scape2が政治史で1冊であったのに対して、同様の内容がこちらでは全6章のうち前半の3章くらいに圧縮されている。 後半では、政治思想、宗教、教育、学…

橋口稔『ブルームズベリー・グループ―ヴァネッサ、ヴァージニア姉妹とエリートたち』

ブルームズベリー・グループについては名前だけはなんとなく知っていたけれど、しかし、どういう人たちなのかよく知らなかったので。 20代の前半くらいに仲良くしていた友人グループで、30代過ぎてからみんなそれぞれの分野で有名になっていった、という感じ…

中屋敷均『遺伝子とは何か』

遺伝学の歴史から遺伝子概念の変遷を追っていく本 以前から積んでいた本で読むタイミングがなかなかなかったのだが、応用哲学会2024年大会 - logical cypher scape2で「無知を産む装置としてのパラダイム——遺伝暗号解読競争からの教訓——(石田知子)」を読ん…

河部壮一郎『デジタル時代の恐竜学』

CTスキャンやシミュレーションなどのデジタル技術を用いた古生物学研究について、筆者が実際に携わった研究をもとに紹介する本。 泉賢太郎『古生物学者と40億年』 - logical cypher scape2が、化石発掘だけが古生物学研究ではないということを論じる本であっ…

斉藤孝『スペイン戦争――ファシズムと人民戦線』

スペイン内戦の通史 最近、大戦間期の歴史の本をいくつか読んでいる。当初は「ベル・エポックから1920年代、パリ、ウィーン、ベルリンないしヴァイマル共和国、ニューヨーク、ロンドンあたりの、美術・芸術、大衆文化、社会主義、哲学・思想についての概観を…

リチャード・オヴァリー『夕闇の時代──大戦間期のイギリスの逆説』(加藤洋介・訳)

大戦間期のイギリスを覆っていた「悲観主義」についての本 第一次世界大戦の衝撃を受けて、次なる戦争への不安が共有されていた時代であり、西洋文明が終わりを迎えるのではないかという悲観主義に覆われていた、と。 歴史学、経済学、生物学(優生学)、心…

泉賢太郎『古生物学者と40億年』

古生物学の方法論について紹介した新書 古生物学関連の一般向け書籍は最近かなり増えてきている気がするが、方法論のみで1冊というのは珍しいかもしれない。 当初、内容紹介や目次から、あんまり内容が分からなくて、わりと恐る恐る手に取ったところはあるの…

小池隆太のマンガ・アニメに関わる物語論関係の論考を読んでのよしなしごと

『マンガ研究13講』『マンガ探求13講』や『アニメ研究入門』『アニメ研究入門(応用編)』という本があり、未読ではあるのだが、いつか読みたいと思っていて目次だけは確認している。 その際、気になった論考がいくつかあるのだが、いずれの本の中にも小池隆…

向井千秋監修・東京理科大学スペース・コロニー研究センター編著『スペース・コロニー 宇宙で暮らす方法』

スペース・コロニーを実現するために、現在、研究開発中の技術について紹介している本。 編著者にもあがっているが、東京理科大にスペース・コロニー研究センターなる組織があるようで、そのセンターでの研究成果についての本でもある。 元宇宙飛行士の向井…

常松洋『大衆消費社会の登場』

19世紀後半から1920年代頃までのアメリカにおける、大衆消費社会の成立について 1920年代頃に、現代まで続く形の社会や文化が成立したといわれるが、それがよく分かる(およそ100年たっていて、また転換期にあるのかな、という気もするが)。 企業活動の再編…

田之倉稔『ファシズムと文化』

イタリア戦間期の文化(文学・美術・音楽・映画・建築)をファシズムとの関係から見ていく本 イタリア戦間期の文化、断片的に何人か名前を聞いたことある程度だったので、概観するために読んだ。ネオレアリズモがファシスト政権時代に萌芽があったとか勉強に…

海野弘監修『華麗なる「バレエ・リュス」と舞台芸術の世界』

1909年から1929年にかけてパリで席巻したロシアのバレエ団「バレエ・リュス」について、舞台芸術のカラー図版を大量に交えて紹介する本。 バレエ・リュスについては、ピカソが舞台美術を描いていた、ということくらいは知っていたのが、逆に言うとそれ以上の…

海野弘『万国博覧会の二十世紀』

海野弘『アール・デコの時代』 - logical cypher scape2に引き続き、海野弘本。 20世紀に開催された万博のうち10の万博を紹介している。 それらは、第二次大戦後のブリュッセルと大阪を除くと、パリかアメリカで開催されたものとなる。 元々筆者は、アール・…

海野弘『アール・デコの時代』

1920年代のアール・デコと総称される芸術・文化・生活スタイルについて 最近、20世紀前半の文化史等についていくつか本を読んでいるが、このテーマの本を探していると、海野弘の本にあたることが多い。 ただし、アカデミックな研究者というわけではないので…

林健太郎『ワイマル共和国』

タイトル通り、ワイマル共和国14年の歴史についての本 1963年刊行の本だが、分かりやすくて読みやすい本であった。とりあえず、ワイマル共和国史について最初に読むにはよさそうな本であった。 というか、なんでパウル・フレーリヒ『ローザ・ルクセンブル…

パウル・フレーリヒ『ローザ・ルクセンブルク その思想と生涯』

ローザ・ルクセンブルクの評伝 上田早夕里『リラと戦禍の風』 - logical cypher scape2で参考文献としてあがっていて、検索してみたら図書館に置いてあったので。 ほんとはもっと軽めの本を読みたかったので、思いのほか分厚いかつ二段組でひるんでしまった…

青柳いずみこ『パリの音楽サロン――ベルエポックから狂乱の時代まで』

タイトルにあるとおり、19世紀後半のベルエポック期から、狂乱の時代とも呼ばれる1920年代までの、パリのサロンにおける芸術家たちの人間模様について書かれた本。 クラシック音楽にはあまり知識や関心がなかったので、「パリの音楽サロン」についても事前に…

千足伸行『もっと知りたい世紀末ウィーンの美術』

ベル・エポック期から大戦間期の歴史を勉強するぞシリーズとして、この前、福井憲彦『世紀末とベル・エポックの文化』 - logical cypher scape2を読んだので、今度はもう少し具体的な都市に着目した本を読もうと思って、世紀末ウィーンへ。 世紀末ウィーンと…

筒井清忠編『大正史講義』(一部)

本書については、以前も読んだことがある(筒井清忠編『大正史講義』 - logical cypher scape2)。その際、興味のある章を拾い読みしただけだった。木村靖二『第一次世界大戦』 - logical cypher scape2を読んだので、そういえば、『大正史講義』の第一次世…

加治屋健司『絵画の解放 カラーフィールド絵画と20世紀アメリカ文化』

カラーフィールド絵画と同時代に美術批評や文化との関係について論じた博士論文をもとにした本。 カラーフィールド絵画については、自分は「カラーフィールド色の海を泳ぐ」展 - logical cypher scape2によって初めて知ったが、見たら一発で気に入ってしまっ…

木村靖二『第一次世界大戦』

第一次世界大戦全体の流れを新書一冊にまとめた本。 『軍靴のバルツァー』*1や上田早夕里『リラと戦禍の風』 - logical cypher scape2を読んで、第一次世界大戦が気になっていたので。なお、この本は『リラと戦禍の風』の参考文献として挙げられていた。 第…

福井憲彦『世紀末とベル・エポックの文化』

19世紀末から20世紀初頭にかけてのヨーロッパの文化について 山川からでている「世界史リブレット」シリーズの中の1冊で、全部で100ページほどの小冊子である。そのため、内容的にはそこまで深く論じられているわけではないが、学術・文化にかんして概観でき…

伊勢田哲治・神崎宣次・呉羽真編著『宇宙倫理学』

宇宙倫理学についての論文集 京大で宇宙ユニットというのができて、2017年前後に宇宙倫理学が盛り上がっていた時期がある。「盛り上がっていた」と過去形で書いたが、現在も京大の中には宇宙倫理学の教育カリキュラムがある。続々と研究成果が出てくるという…

松井裕美『もっと知りたいキュビスム』

キュビスム展にいった際に思わず購入 表紙、出版日からして、キュビスム展にあわせて企画された本なのではないかと思う。キュビスム展の復習になりつつ、キュビスム展には(い)なかった画家やトピックも含まれており、よかった。 キュビスムというとピカソ…