読書

ノエル・キャロル『批評について』(森功次・訳)

批評の哲学の入門書 実はずっと積んでいたのだが、銭清弘『芸術をカテゴライズすることについて』を読むための予習として読むことにした。 ざくっとまとめると 批評とは、理由に基づいた価値付けである 芸術作品には、成功価値と受容価値があるが、批評は前…

渡辺正峰『意識の脳科学 「デジタル不老不死」の扉を開く』

自分の脳と機械の脳を接続することで、意識の謎を解明し、さらに意識のアップロードを可能にしようと考えている神経科学者による、意識の科学入門 以前、同じ作者による渡辺正峰『脳の意識機械の意識』 - logical cypher scape2を読んだことがあり、非常に面…

カール・ダイセロス『「こころ」はどうやって壊れるのか』

サブタイトルは「最新「光遺伝学」と人間の脳の物語」 光遺伝学技術を開発したダイセロスによる精神医学ノンフィクション これ読むまで知らなかったのだが、ダイセロスは基礎研究に従事していると同時に精神科の臨床医であるらしい(宿直もやっていると書い…

佐野貴司『超巨大噴火と生命進化』

大量絶滅のビッグファイブ+αを、巨大噴火という観点から紹介している本。 +αというのは、新生代のPETMやトバ火山噴火なども扱っているから。 著者は国立科学博物館の研究者(地学研究部グループ長。専門は火山)で、現在、科博で開催されている「大絶滅展…

難波優輝『なぜ人は締め切りを守れないのか』

よりよい生を生きるための時間論、とでもいえばいいか。 タイトルがなかなかキャッチーで、ビジネス書風であるが、まあこれはいわゆる「タイトル詐欺」ではあって(個人的に書名のタイトル詐欺は即座に悪いことだとは思っていない。いや、ある程度は悪いかも…

鈴木貴之『人工知能の哲学入門』

タイトル通り、人工知能の哲学についての入門として書かれた本である。 まず、第一次・第二次人工知能ブームまでの、人工知能の概要とそれに対する哲学的批判をまとめたのち、第三次人工知能ブームつまり現在に至るディープラーニングを主軸とした人工知能の…

中川裕『ゴールデンカムイ 絵から学ぶアイヌ文化』(一部)

マンガ『ゴールデンカムイ』でアイヌ語監修を担当した筆者による、アイヌ文化解説の本。 同様の本としては既に『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』があり、それの続編、という位置づけでもある。 何故、続編の方を読んだかというと、こちらの方に…

橋本直子『なぜ難民を受け入れるのか』

サブタイトルは「人道と国益の交差点」。 難民を受け入れ、保護(庇護)することは、人道上の理由によるが、各国の様々な難民受け入れ政策を見ていくと、いかに国益に叶うように受け入れていくかという視点も見えてくる、というような意味が込められている。…

浦出美緒『死ぬのが怖くてたまらない。だから、その正体が知りたかった。』

タナトフォビア(死恐怖症)である著者が、まさにタイトルにある通りの理由から、様々な人に話を聞きいにった対談集 具体的には医者(中山祐次郎)、宗教社会学者(橋爪大三郎)、神経科学者(渡辺正峰)、哲学者(森岡正博)、作家(貴志祐介)の5名である…

越智萌『 だれが戦争の後片付けをするのか』

ウクライナの事例を紹介しながら、「戦争後の法」について概説する本 具体的には、戦争犯罪の裁判や、捕虜や遺体の返還、賠償などについてである。 これらのテーマ自体、あまりよく知られていないことだと思うので、それ自体が面白い。 また、ウクライナの具…

上杉勇司『紛争地の歩き方―現場で考える和解への道』

紛争が終わったあと、和解はどのように行われる/行われた/行われなかったのかが書いてある本。 バーニングさんの書評きっかけで読んだ。 紛争地の歩き方 ――現場で考える和解への道 バーニングさんの感想 - 読書メーター 筆者は、紛争解決学を専門とする研…

都甲幸治ほか『世界の8大文学賞』

文学賞をテーマにした座談会形式によるブックガイド的な本 8つの文学賞を取り上げ、それぞれの賞につき、3作品をあげて座談会をしている。 全ての座談会について都甲がホストで、他に文学研究者、翻訳者、小説家、書評家など2名がメンバーになっている。 対…

安田峰俊『恐竜大陸 中国』(田中康平・監修)

中国で発見された恐竜ないし中国での恐竜発見エピソードについて書かれた本 元は、講談社ブルーバックスのwebでの連載だった。これに大幅に加筆修正を加えたものと書かれている。この連載、当時読んでいたが、これかなり書き下ろしも多いのではないか、とい…

土屋健『地球生命 空の興亡史』

翼竜類、鳥類(絶滅種)、飛ぶ哺乳類(絶滅種)についての本。 シリーズとしては、土屋健『地球生命 水際の興亡史』 - logical cypher scape2、『地球生命 無脊椎の興亡史』に次ぐ3作目。無脊椎のは自分は読んでいない。 ちなみに、あとがきによれば、次は『…

井上弘貴『アメリカの新右翼』

2010年代以降のアメリカの右派・保守主義(本書では「第三のニューライト」と総称される)についての概論 浜由樹子『ネオ・ユーラシア主義』 - logical cypher scape2に引き続き、時事的な政治思想の本 なお、全部で6章からなるが、2章では2010年代の左派の…

浜由樹子『ネオ・ユーラシア主義』

現代ロシアを読み解く際のキーワードとなりつつある「ネオ・ユーラシア主義」について、何人かの論客を通して解説する新書 ただし、本書を読んでわかるのは、ネオ・ユーラシア主義という確固たる思想があるわけではないし、また、プーチンがネオ・ユーラシア…

千葉雅也『センスの哲学』

タイトルにある通り、センスとは何か、という本 ここでいうセンスとは、美的直観とか美的判断とかいってもいいものだと思う(本書では、直観的な(非推論的な)判断力のこと、と言っている)。 また、本書は、芸術作品と日常生活を連続的なものとして捉えて…

オーナ・ハサウェイ、スコット・シャピーロ『逆転の大戦争史』(野中香方子・訳)

1928年のパリ不戦条約(ケロッグ・ブリアン条約)を画期として、国際的な法秩序が転換したとして、戦争にかんする国際法の歴史を描いた本 本書では、戦争を合法であるとするグロティウス的な法思想を「旧世界秩序」、戦争は違法であるとする法思想を「新世界…

岡崎乾二郎『抽象の力』(一部)

抽象絵画についての批評。抽象を、単に視覚的な実験として捉えるのではなく、物質的・運動的な観点で捉える。また、日本での抽象美術の動きがヨーロッパの動向の後追いではなく、同時並行的なものだったことを論じている。 色々なものが次々とリンクしていく…

ジェイムズ・カー=リンゼイ、ミクラス・ファブリー『分離独立と国家創設』(小林綾子・訳)

タイトルが面白そうなので気になっていた奴で、タイトルに「国家創設」とある通り、新しく国家ができるとはどういうことなのかについて、様々な事例を交えて解説している入門書 国家が作られる方法はいくつかあって、「分離独立」*1はそのうちの1つだが、現…

『ロシア極東・シベリアを知るための70章 (エリア・スタディーズ)』(一部)

タイトル通り、ロシア極東・シベリアの地域研究についての本で、自然地理、歴史、民族・文化、政治経済問題、各州・自治共和国の5パートに分かれている どれも気になるといえば気になるが、今回は菊池俊彦『オホーツクの古代史』 - logical cypher scape2に…

菊池俊彦『オホーツクの古代史』

オホーツク文化についての研究史概説本 オホーツクでいつ何があったか、ということを編年で書いているのではなく、研究が進展してきた流れに沿って書かれている(大雑把にいうと、1930年代、こういう仮説があってこういう説が主流になった→戦後、こういう調…

G. Masukawa/ツク之助『恐竜のきほん』

恐竜の骨格図で知られるG.Masukawaと古生物イラストレーターツク之助による恐竜入門書 著者についてはG.Masukawaというより、らえらぷすさんと言った方が分かりやすいような気もするけれど、最近はG.Masukawa名義での著書も多い。 らえらぷすさんのブログを…

恐竜を展示した動物園(溝井裕一『動物園・その歴史と冒険』『動物園の文化史』(一部))

本記事は、溝井裕一『動物園・その歴史と冒険』の(主に)第3章・第4章、溝井裕一『動物園の文化史』の(主に)第6章・第7章についての読書メモである。 これらの本を手に取ったきっかけは本当に偶然で、同じ著者の別の本が図書館の新着にはいっていたと…

日本SF作家クラブ編『SF作家はこう考える』(一部のみ・主に近藤銀河)

本書は、SF作家がどのようにデビューして、どのように書いているかについて語ったりしている本で、「SF小説を書いてみたい人、作家としてデビューしたい人、創作を続けるコツや、ほかの仕事と両立する方法を知りたい人、ビジネスでSFを利用したい人、SFの可…

リチャード・シドル『アイヌ通史 蝦夷から先住民族へ』(マーク・ウィンチェスター訳)

江戸時代から現代に至るまでの、和人側のアイヌ表象やアイヌ政策がアイヌをいかに取り扱ってきたか、そして、それに対してアイヌ側はどのような対応・抵抗をしてきたのか、という本 「滅びゆく民族」から「ネーション」へ、とまとめられるかもしれない。江戸…

佐藤翔『図書館を学問する』

図書館情報学でいったいどのような研究をしているのかを紹介している本 であるが、個人的には、高校・大学時代の友人の初の単著である。 ネット上では、min2-fly(みんつーふらい)というIDを使っているので、そちらの名前の方が分かる人には分かるかもしれ…

千葉聡『ダーウィンの呪い』

進化学と優生学の歴史について書かれた本 著者は『歌うかたつむり』などでも有名であり、一般向け著作がいずれも評判がいいので気になっていた。 生物学者として、進化学と優生学の研究史をまとめているが、前半で出てきた進化生物学者たちが、後半で優生学…

次田瞬『意味がわかるAI入門 ――自然言語処理をめぐる哲学の挑戦』

言語哲学者によって書かれたAI入門 LLMに至るAI研究の歴史をまとめた前半パートと、意味をめぐる2つの理論(真理条件意味説と意味の使用説)からLLMについて検討する後半パートからなる。 筆者は、LLMが意味を理解しているか、という点に懐疑的なスタンスを…

尾上哲治『大量絶滅はなぜ起きるのか』

三畳紀末の大量絶滅についての本 いわゆるビッグファイブの1つに数えられる大量絶滅だが、その原因は必ずしもはっきりしていないらしい(というか、はっきり分かっているのは白亜紀末の奴くらいなのだろう)。 ただ、近年まさに研究が進められているらしく、…