読書

倉谷滋『進化する形 進化発生学入門』

あ、これ、サブタイトル「入門」だったんだ。入門ではない、おそらく。 新書とは思えない密度で内容が詰まっている本である。 筆者自らあとがきで倉谷滋『形態学 形づくりにみる動物進化のシナリオ』 - logical cypher scape2の続編だと述べている。 この本…

暮沢剛巳・江藤光紀・鯖江秀樹・寺本敬子『幻の万博 紀元二千六百年をめぐる博覧会のポリティクス』

1940年に、東京五輪と同時開催の計画を立てられていた幻の東京万博について、同時代の他の万博や博覧会との比較を通して浮き彫りにすることを試みる。 芸術や文化と政治・戦争の関係を万博を通じて紐解いていく。 むろん、開催されることのなかった万博につ…

セオドア・グレイシック(源河亨・木下頌子訳)『音楽の哲学入門』

タイトルにある通り、音楽の哲学についての入門。ラウトレッジ社のThe Thinking in Actionシリーズの一冊で、原著タイトルはOn Musicであり、同シリーズには、ジジェク『信じるということ』、ドレイファス『インターネットについて』、キャロル『批評につい…

須田桃子『合成生物学の衝撃』

『日経サイエンス』の合成生物学記事 - logical cypher scape2に引き続き、合成生物学の勉強 毎日新聞科学環境部の記者である筆者が、ノースカロライナ州立大学に留学し*1、取材したルポ 合成生物学の研究史・研究内容について書かれているが、生物兵器開発…

瀧澤弘和『現代経済学』(一部)

サブタイトルが「ゲーム理論・行動経済学・制度論」で、様々なサブジャンルに多様化した現代の経済学についての入門書となっている というわけで、個人的には、制度論に興味があったので、制度論の章だけとりあえず読もうかなーと思ったら、結構それ以外も面…

ピーター・D・ウォード『生命と非生命のあいだ』

サブタイトルは「NASAの地球外生命研究」とあり、宇宙生物学の本である。また、原題は「Life As We Do Not Know It」とあり、私たちが知らない生命、つまり現在の地球にいる生命とは違った形の生命としては、どのようなものがありうるか、ということを書いて…

関根康人『土星の衛星タイタンに生命体がいる!』

惑星科学的な観点からのアストロバイオロジー本 太陽系全般から系外惑星まで扱っているが、タイトルにある通り、メインはタイタンである。 タイタンに生命がいる可能性があることは、どのアストロバイオロジー本でもたいてい書いているところだが、最近だと…

デイヴィッド・ミーアマン・スコット,リチャード・ジュレック『月をマーケティングする アポロ計画と史上最大の広報作戦』

アポロ計画の歴史を、広報面、アメリカ社会との関わりからレポートしている本。 アポロ計画について、科学技術や科学政策の点では、まあ通り一遍のことなら知っているが、当時の社会においてどのように受け取られていたか等は全然知らなかったなあということ…

冨田信之『ロシア宇宙開発史』(一部)

サブタイトルに「気球からヴォストークへ」とある通り、宇宙開発前史ともいえる気球の発明から始まって、人類初の有人宇宙飛行を達成する「ヴォストーク」(さらにヴォスホート)までの、ロシア・ソ連の宇宙開発の歴史をまとめた本。 特に、ヴォストーク・ヴ…

稲見昌彦『スーパーヒューマン誕生! 人間はSFを超える』

人間拡張工学・エンターテイメント工学を標榜する筆者が、エンハンスメントやVR、テレイグジスタンス、ロボットなどの技術を紹介しながら、人間の拡張という「スーパーヒューマン」の概略を描きだす本。 筆者は、2003年頃に「光学迷彩」を発明したことで一躍…

真鍋真監修『新版 恐竜の世界(学研の図鑑)』

フルカラー、DVD付きで、内容的にも充実していて、1000円しないという非常にお買い得な一冊 最新の内容まで盛り込みつつ、個人的によかったところは、系統図が要所要所に掲載されていたところ。骨格標本の写真も多め テーマごとに章分けされていて読み物とし…

西村清和『感情の哲学』

美学研究者として著名な筆者による、「感情の哲学」論。サブタイトルに「分析哲学と現象学」とあるが、分析哲学的な感情についての議論の陥りがちな陥穽を指摘している。その陥穽に現象学をパッチしている、ようなところもあるが、現象学よりも分析哲学側の…

小泉宏之『宇宙はどこまで行けるか』

サブタイトルは「ロケットエンジンの実力と未来」で、ロケット推進の専門家である筆者による、ロケット工学入門 ロケット工学については全然何も知らない状態であったが、分かりやすく、活躍については知っている探査機などのことについてよく知ることができ…

ジェレミー・ベイレンソン『VRは脳をどう変えるか? 仮想現実の心理学』

スタンフォード大学でVR研究している筆者が、現在、VRがどのようなことに利用されているのか、またどのような分野での開発が進められているのか、といったことを紹介している本 とかく様々な事例を広く紹介しているので、なるほどそんなとこに使おうしている…

岡田美智男『〈弱いロボット〉の思考 わたし・身体・コミュニケーション』

ロボットを通じたコミュニケーションの研究についての本。ジャンルとしては、認知ロボティクスか。タイトルにある「弱いロボット」は、筆者の研究におけるコンセプトの一つ*1。ここでいう「弱い」というのは、不完結性・不完全さを指す。単体として完結しな…

キム・ステレルニー『進化の弟子 ヒトは学んでヒトになった』

サブタイトルにあるとおり、ヒトのヒトたる特徴がどのように生まれてきたか、についての本 キーワードの一つは「徒弟学習apprentice learningモデル」である。 徒弟が親方から技術を盗んで覚える、という学習スタイルによって、ヒト族は知識や技術を伝達し、…

橋本陽介『ノーベル文学賞を読む』

ノーベル文学賞というと、日本では「村上春樹が受賞するかどうか」ばかり注目され、あまりにも受賞作が読まれていない、という現状を嘆く筆者による、ノーベル文学賞受賞作家・作品ガイド 下記の目次にある通り、13名のノーベル文学賞受賞作家が取り上げられ…

田口晃『ウィーン 都市の近代』

19世紀から大戦間期にかけてのウィーン市政についての歴史 自由主義市政→キリスト教社会党市政→社会民主党市政という変遷を三部構成で追っている。 ウィーンという都市から見るヨーロッパないし中欧の近代政治史、とも言えるかもしれない。国政ではなく市政…

高井研編著『生命の起源はどこまでわかったか――深海と宇宙から迫る』

高井研の著作だと思っていたのだけど、正確に言うとちょっと違う。 もともと、JAMSTEC広報誌150号記念で企画された特別連載3回分を、単行本化したもの。 JAMSTECの各研究者等に取材して、ライターの鈴木志乃によって執筆されたもの 高井さんとしても、最近…

マーク・スタインバーグ『なぜ日本は〈メディアミックスをする国〉なのか』(中川譲訳、大塚英志監修)

日本におけるメディアミックスについての歴史研究の本。 全6章のうち、前半の3章は『鉄腕アトム』におけるキャラクター玩具の展開に、メディアミックスの起源を、後半の3章では、角川の社史を追う形で、角川が成立させたメディアミックスという手法の展開…

イアン・ハッキング『知の歴史学』(出口康夫、大西琢朗、渡辺一弘 訳)(一部)

ハッキングの1973年から1999年の間に書かれたものを集めた論文集 第一章に「歴史的存在論」という、論文集全体につうじる概要的な論文がおさめられており、論文集全体のタイトルも原題では『歴史的存在論』。『知の歴史学』は日本語版タイトルで、フーコーの…

網谷祐一『理性の起源』

サブタイトルには「賢すぎる、愚かすぎる、それが人間だ」とあり、人間の特徴として挙げられる理性について、一方では科学技術を発展させるなど「賢すぎる」側面がありながら、他方で、近年の行動経済学などで人間はどうもあまり合理的に行動しないようだと…

弥永真生・宍戸常寿編『ロボット・AIと法』

ロボット・AIに関連する法学諸分野の論点を解説している本 編者によれば、ロボット・AIを糸口にした法学入門としても読むことができることが企図されており、実際、法律門外漢の自分にとっては、そのように読むことができた。 法律の専門家たちによって…

クリス・フリス『心をつくる――脳が生み出す心の世界』

人間の様々な心的現象を、脳が予測によって作り上げたモデルによるものとして説明する 近年、急速に、脳と心の理論として台頭しつつある予測コーディング理論だが、2008年(原著)と10年前に書かれた本書は、既にそのような立場からまとめあげられた入門書と…

武村政春『生物はウイルスが進化させた 巨大ウイルスが語る新たな生命像 』

2003年の発表を皮切りに次々と発見されている巨大ウイルス それらの紹介を通してのウイルス学入門と、さらに筆者が支持している、しかしまだマイナーな仮説が展開される。 巨大ウイルスというのは、細菌ほどの大きさがあり、なんと光学顕微鏡でその姿を確認…

ドミニク・ロペス『画像を理解する』

Dominic Lopes "Understanding Pictures" ドミニク・ロペスによる描写の哲学の入門書 同じテーマのものとして過去に読んだものは ジョン・カルヴィッキ『イメージ』(John V. KULVICKI "Images")前半(1〜5章) - logical cypher scape ジョン・カルヴィ…

戸田山和久『恐怖の哲学』

ホラー映画を題材にして、情動の哲学、フィクションの哲学、死の害の形而上学、意識の哲学など、哲学の各分野の議論を紹介しつつ、筆者のホラー映画愛も盛り込まれている本 (入門書だけ読んでおわりがちな)自分にしては珍しく、この本の元ネタのいくつかを…

三中信宏『思考の体系学』

サブタイトルは「分類と系統から見たダイアグラム論」 分類や系統を視覚的に表現するために用いられるダイアグラム、本書では特に系統樹に関して、その数学的な基礎と存在論的な基礎を示していく本 三中信宏『系統樹思考の世界』 - logical cypher scapeや三…

更科功『絶滅の人類史―なぜ「私たち」が生き延びたのか』

人類700万年の進化史について書かれた本 読む前は、ホモ属の話だと思っていたが、サヘラントロプスから始まっていた。まあ、分量的には、ホモ属の話が多いけど。 最近は、人類史関係の新発見も色々とあって、断片的には色々と読んだりしているのだけど、全体…

マイケル・ワイスバーグ『科学とモデル――シミュレーションの哲学入門』(松王政浩 訳)

科学におけるモデルとは何か、ということについての科学哲学の本。 モデルの分類、モデルとは何であるのか、モデリング行為とはどのようなことをしているのか、といったことが主に論じられている。 具体例が豊富で、科学者が実際に何をやっているのかという…