キュビスム展にいった際に思わず購入
表紙、出版日からして、キュビスム展にあわせて企画された本なのではないかと思う。キュビスム展の復習になりつつ、キュビスム展には(い)なかった画家やトピックも含まれており、よかった。
キュビスムというとピカソとブラックが圧倒的に有名だが、それ以外の画家についてもずらっと紹介されており、多くの画家による広がりのあった運動であったことが分かる。また、参加者が多いので、一口にキュビスムといってもそれぞれに違いもある。
全ページカラーの本で、作品の図版も多い、ビジュアル重視の本で、パラパラめくっているだけでも楽しいが、しかし、テキストの分量も結構しっかりしていて読み応えがある。個々の画家の作品についてというよりは、むしろ、どういう人的ネットワークが形成されて、どういう影響関係があったのか、ということに注目している感じだった。例えばそれは、画家たちのグループだったり、彼らがどのような美術展を実施したのか、コレクターや画商、そしてキュビスム以降の美術への影響などである。
また、キュビスムというと絵画の印象が強く、まあ、彫刻もあるかなあと思ってしまうが、ファッション、装飾美術、建築にも携わっていた、と。これは、影響を与えたというレベルでなく、実際にキュビストたちの中に、ファッションデザインや建築に関わっていた人たちがいたというレベルで。
面白い本で、メモとっておきたい場所も多いのだが、ブログを書く気力がなんか今ないので、中途半端状態だが、いったんアップすることにする……
第1章 キュビスム誕生
ジョルジュ・ブラック
構成的筆触
パサージュ
コラム 「洗濯船」の画家と詩人たち
マリー・ローランサン
この人もキュビスムの影響を受けている画家かー
ピカソの仲介でアポリネールと出会い恋人に。
あと、シャネルの肖像画も描いているけど、シャネルから受け取りを拒否されたらしい。
コラム キュビスムの初期コレクターたち
詩人のガートルード・スタインや、ファッション・デザイナーなどが初期のコレクター
ロシアの実業家やチェコの美術史家も
第2章 様々な芸術家たち
アルベール・グレーズ/ジュリエット・ローシュ
パリ東部の「クレテイユ僧院」で活動し、キュビストたちのグループを形成
キュビストきっての理論家で、メッツァンジェとともに『キュビスムについて』という理路的著作を書く。黄金分割展でも中心的存在。
反軍国主義者だが、伝統主義、愛国主義者の側面もあった。
画家かつ詩人のローシュは、グレーズと結婚。
ジャン・メッツァンジェ
理論派
秩序への回帰
アンリ・ル・フォーコニエ
「クレテイユ僧院」グループの1人で、ドイツの青騎士グループと交流したり、イタリア旅行したりなどで、フランス以外の画家ともネットワークを形成していた。
サロン・デ・ザンデパンダンで、一室丸ごとキュビスムで埋め尽くした。
教育、執筆など普及活動も。
デュシャン一家
ジャックは生涯にわたりキュビスムによる創作活動を行った。
レイモンは、独学で彫刻を学んだが、第一次大戦に従軍後、病死した。
ジャックもレイモンもサロン・ドートンヌの役員でもあった。
弟のマルセルは、キュビスムとのかかわりは一時的。「階段を降りる裸体No.2」の出展が拒否されて、キュビスムとは距離をとるようになる。
妹のシュザンヌは、マルセルやピカビアの影響をうけて、パリでダダ活動を行った。
パリ西部のキュビストたちの拠点
クレテイユ僧院ではグレーズ、メッツァンジェ、レジェ、ドローネー夫妻などが集まっていたが、彼らと、ピュトーに拠点のあったデユシャン兄弟とが合流してピュトーグループが形成される。
キュビスムの家や黄金分割展を企画した。
コラム キュビスムと伝統
フランス絵画の伝統とのつながりを意識していた。
ピカソは、ダ・ヴィンチのモナリザのパロディなども描いている。
ところで、1911年にモナリザ盗難事件があり、ピカソやアポリネールは容疑者とされた。
フェルナン・レジェ/ナディア・レジェ
レジェは夫婦で画家だったのか。全然知らなかった。
ソニア・ドローネー/ロベール・ドローネー
ドローネー夫妻
本書のあちこちにドローネー夫妻の名前が出てくる。
コラム キュビスムとファッション
オーギュスト・エルバン
アンドレ・ロート
キュビスムの彫刻家たち
マリア・ブランシャール
セルジュ・フェラ/エレーヌ・エッティンゲン
エレーヌ・エッティンゲンが男爵夫人だというのはキュビスム展にもあったが、セルジュ・フェラの方もモスクワの貴族出身らしい。
アポリネールと親しく、また、2人とも裕福だったので時にはパトロン的な存在になっていたようだ。