ポンピドゥー・センター傑作展

東京都美術館
ポンピドゥー・センターは実は去年行ったのだが、一部改装中で、常設展のうち20世紀前半の方は全く見れなかったのだった。


この展覧会は、すでに広く宣伝されているように「1年1作家1作品」という形式で展示がなされている。
普通の展覧会というと、ジャンル別だったりグループ別だったりに並べられることも多いと思うが、この展覧会は両隣に全然違う作品が並んでいたりする。
それから、1作家1作品というのが効いている。全部で71点あるのだけど、つまり単純に言って71人の作家(2人で1作品のものがあるので+αがあるけど)がいることになるけれど、そうなると知らない作家が相当多い。もともと自分は有名な人しか知らないし。
そうすると、この時代ってキュビスムっぽいのとか抽象画っぽいのとか流行ってたんだなーというのがなんとなくわかった。
もともと有名な2,3人しか知らなかったりするけど。例えば、キュビスムだとピカソとブラックとか。実際には、それ以外にもキュビスムの絵を描いている人はいたりするわけで。ついでにいうと、この展覧会でピカソもブラックもキュビスム以外の作品が出てる。


地下一階、1906年~1934年は斜めの壁
1階、1935年~1959年はジグザグの壁
2階、1960年〜1977年までは円壁(1975〜1977は円壁の外だが)
という配置になっていて、これもまたそれなりに面白かった。
円壁は、複数の作品を一望に会することができるし、この時代の作品はわりと大きめのものが多いので、好みの空間であった。

  • 1911 ロジェ・ド・ラ・フレネー「胸甲騎兵」

なんか、フランツ・マルクっぽい感じかなと思ったけど、今思い返すと、色とかだいぶ違うか。
ジェリコーリスペクトで描かれたらしい

  • 1912 クプカ「垂直の面1」

マレーヴィチっぽい奴

解説によると、芸術家一家に育ったマルセル・デュシャンはこの頃もう絵は描かなくなっていて、自転車の車輪を椅子にのっけただけのこの作品を作ったと。のちに「レディメイド」と呼ばれる。展示されていたのは戦後に作り直されたもの。
でもって、レイモンは、マルセルの次兄で、こちらはどこが馬なのかはよく分からないが、しかしまあ十分に彫刻のていはなしているものである。
ここから先は完全に想像で実際はどうだったか分からんけど、兄が真面目に作品作ってる横で、マルセルは、「あーめんどくせ、これでいいだろw」とかやって、兄から呆れられたりなんだりしていたのではないかという絵図が思い浮かんだw

  • 1917 シャガール「ワイングラスを掲げる二人の肖像」

シャガール本人と妻子の肖像
花嫁姿の妻に、赤いシャツを着たシャガールが肩車している。その赤と白のコントラストが画面を縦に分割している。上下に紫がアクセント的に入っている。
このカラーリングがビビッドで目に止まる。さらに、背景の街に対して人物が明らかに巨大で、川の上に浮かんでいるのも、また何とも楽しい。

  • 1918 マニェッリ「抒情的爆発8番」

未来派の人らしい。
抽象画。赤い細長い三角形が画面真ん中を切り裂くように描かれていて、勢いがあって、好き

  • 1919 プーニー「赤いヴァイオリン」

この作品は、分析的キュビスムっぽいことを、あまりキュビスムっぽくない見た目でやってる作品だと思う。平面的な画面構成にヴァイオリンがぽつんと置かれているというもの。
面白かったのは、作品そのものではなくて、あからさまにこの作品だけ人気がなかったことで。
このフロア、ざっと2週したんだけど、どのタイミングで見ても、全然見てる人がいなかったw

  • 1923 フレシネ「オルリーの飛行船格納庫」

この人は芸術家ではなくて建築家
コンクリート作りの飛行船格納庫で、展示されていたのは、その格納庫を建てているさいちゅうの記録用フィルムだった。
なんか映像作品かなーと思ったら、そういうわけでもなかった。

  • 1924 1925

24年と25年は、モダンな感じのイスが

下から見上げる感じで描かれたエッフェル塔
よかった

  • 1929 ルイ「楽園の樹」

いわゆるアウトサイダーアート
絵画の素養はなく、突然神のお告げを受けて絵を描き始めた人らしい。
そこそこサイズも大きく、南国の樹のようなクジャクの羽のような模様が描かれており、迫力がある。細かいドットが打たれていたり。
これは思わず「なんだこれ」と目がいく。
隣(1928)が、藤田の自画像(サイズ小さめ)だったりするので、いっそう際立つ、というか。
ちなみに、逆の隣(1930)も素朴派の画家。こちらはもろ、アンリ・ルソーっぽい画風。並んでいる人々の顔がちょっと不気味

有名な奴
本物見れてありがたや、という感じ
構図すごいなー

  • 1934 ゴラン「くぼんだ線のある新造形主義的構成32番」

タイトル通り、モンドリアンからの影響を受けている。
板を張りつけていてちょっとだけ立体な

画中画っぽかった。

  • 1939 カルダー「4枚の葉と3枚の花びら」

モービルとスタビルの中間的な作品だとか。
1939年に作ってたのかーという感じ。でもまあ、まだ戦争始まったばかりの頃か。
カルダーの作品は、うまく説明出来ないけど、なんとなく好き

  • 1941 クレパン「寺院」

これまたアウトサイダーアート。
突然神のお告げをうけて300作品作ったとかいう人の151作目。
東南アジアの寺院みたいなものが描かれているのだが、ヤバイのはその上にもやみたいなものがあって、その中に頭部だけが何十個も描かれているところ。
禍々しいというか、そういうヤバさのある絵。

  • 1945

この年は作品はなく、代わりにエディット・ピアフの「バラ色の人生」(作曲が1945年)が流されている。フランス語でいうと「ラヴィアンローズ
そういえば、この展示会は1年1作品で、年表的に配置されているのだった、ということをここで思い出させる。
展示には、もちろん何年って全てに書いてあるし、大雑把に見れば時代が流れているのは分かるのだけど、やはり展示を年表に見立てて観るというのは普段はしていないことなので、意識していないと忘れてしまう。そんな時、遠くからかすかに「バラ色の人生」が聞こえてくる。次第に大きくなっていく。終戦が少しずつ近づいてくる。そして、1945年は特異点的な位置を占めているので、ここで戦争が終わったんだな、という時間感覚・歴史感覚がなんとなく実感される作りになっている。
この1945年だけ変えた、というのはなかなかよかった演出だと思う。
ところで、戦中だから作品も戦争っぽいかとか、戦争が終わると明るくなったりするか、というとそんなことは全然なかったりする。

  • 1947 ヴィルグレ「針金――サン=マロ、ショセ・デ・コルセール」

落ちていた針金を拾って組み合わせた、とかなんとかそういう作品
まるで、人がダンスしているかのように見えるのだが、しかし、よく見てみると、当たり前なのだが、ただの針金であって、人ではない。
いや、針金であっても、折り曲げたり丸めたりして、人の形を模したものにすることは可能だろう。しかし、この作品は決して人を模してはいない。なんだけど、踊ってる人のようにも見えてしまう。
だがどう見てもそれは人ではなくて、踊っている何か、踊っている人ではない何かなのである。


グレー、カーキ、黄土色などで描かれた抽象画。筆致の荒々しさが印象に残った。
解説によると、画家の穏やかな作風の時期の作品だったらしいが。

  • 1950 ビュフェ「室内」

抽象的な作品がばばっと続いたあとに、パッと具象的な作品がくると、やはり目を引く。
ただ、やはり抽象的な作品が多く描かれた時代の中の具象画なのかなという感じもする。
黒ストーブとベンチが並べられた無機質な部屋。窓や壁、床は直線で構成されている。

  • 1957 アンタイ「未来の思い出」

黒いカンバスから絵の具を剥いで描かれた作品
ひっかいたかのような白い十字が描かれている
アクションペインティング的なものらしい
ところで、1950年代はモノクロな作品が多かった印象。モノクロ写真とかジャコメッティの彫刻とか。

映像作品。『12モンキーズ』の着想源にもなった作品らしいが、ちょっと長かったので見るのパスした。

  • 1964 モルナール「イコン」

朱色に塗られたカンバスに金色の直線
朱色と金色という組み合わせが見ているとくらくらさせる
1970年代にはコンピュータによる制作も始めた人らしい

  • 1972 ヌムール「白い騎士」

こちらは、黒いカンバスに赤い直方体が描かれている。
ある意味では、「イコン」とも似ている。けれど、もちろん違う作品で受ける印象は異なるのだけど、この両作品の違いというのはいったい何だろう。もちろん、色や大きさが違うんだけど。

  • 1971 アス「光のトリプティック」

白一色に塗られた三幅対

  • 1973 デュビュッフェ「騒がしい風景」

「アールブリュット」という概念を提唱した人

  • 1973 ユクリュー「墓地6番」

大きめの作品。最初、写真かと思ったのだが絵だった。表面を磨いて、印刷物っぽい質感にしたのだとか。かなり近づかないと絵だとわからない。


70年代はあと、ポップアートやオップアートなどがあった。