日本文学

2023年に読んだ大江健三郎まとめ

大江健三郎が今年の3月に亡くなったことを受けて、代表作をいくつか読んでみようかなと思って、この1年間、時々読んでいた。 大江は代表作と呼ばれている作品だけでもかなりたくさんあるので、その中でもさらに絞り込んで、ごく一部だけを読んだ形になる。特…

大江健三郎『取り替え子(チェンジリング)』

2000年、大江が65歳の時の長編小説。高校時代の友人であり、義兄である伊丹十三の投身自殺(1997年)について書いた作品である。 また、大江が後期に書いていった長江古義人ものの第一作である。 2000年に刊行された作品なので、刊行当時の記憶がある、とい…

大江健三郎『「雨の木」を聴く女たち』

1982年、大江が47歳の年に刊行された連作短編集 いわゆる私小説的な作品群だが、かなり物語化が施されている。有名だし読んでおくか、くらいのテンションで読むことにしたので、あまり内容も知らない状態だったが、癖の強い登場人物が次々出てきて、これがな…

大江健三郎『同時代ゲーム』

1979年、大江が44歳の時に書かれた書き下ろし長編。 谷間の村の神話=歴史を書き残すという使命を負った「僕」が双子の妹に宛てた手紙という形式で書かれている。 大江健三郎『M/Tと森のフシギの物語』 - logical cypher scape2に続けて読んだ。 『同時代ゲ…

大江健三郎『M/Tと森のフシギの物語』

1986年、大江が51歳の時に書かれた作品。祖母から聞いた谷間の村の神話・歴史が語られる。 本作は、『同時代ゲーム』(1979)をわかりやすく書き直した作品でもある。 『大江健三郎全小説(8)』に『同時代ゲーム』とともに収録されている。 『全小説』は基…

大江健三郎『万延元年のフットボール』

1967年、大江健三郎が32才の時に書かれた長編小説。前作から3年のブランクを経て、大江にとって30代初の長編作品であり、代表作品でもある。 1960年代の愛媛の谷間の村を舞台に、内向する主人公と活動的な弟との対比を描く。 障害者の子が生まれ、友人を自殺…

大江健三郎「セブンティーン」他(『大江健三郎全小説3』より)

コンプレックスを抱え込み、自慰に耽溺してしまうことへ後ろ暗さを持つ17才の少年が、偶然にも右翼団体に参加することになり、天皇主義へと傾倒していく過程を描いた短編。 大江作品については、先日大江健三郎『芽むしり仔撃ち』 - logical cypher scape2を…

大江健三郎『芽むしり仔撃ち』

大江健三郎が1958年、23歳の時に書いた、初の長編作品。 戦争末期、僻村に一時的に閉じ込められた少年たちによるスモールパラダイスの形成と崩壊を描く。 プロットがめちゃくちゃしっかりしているというか明快 以前、読んでいたので再読ということになるが、…

伊坂幸太郎編『小説の惑星 ノーザンブルーベリー篇』

伊坂幸太郎が、自分の好きな小説でドリームチームを組んだという短編アンソロジー 自分は先に伊坂幸太郎編『小説の惑星 オーシャンラズベリー篇』 - logical cypher scape2を読んだが、どちらから先に読めばよいとかいうことはないので、このちょっと不思議…

伊坂幸太郎編『小説の惑星 オーシャンラズベリー篇』

伊坂幸太郎が、自分の好きな小説でドリームチームを組んだという短編アンソロジー 自分は伊坂幸太郎をほとんど読んだことがない(『死神の精度』と阿部和重との共著である『キャプテンサンダーボルト』くらい)が、収録されている作家を見て気になったので読…

最近読んだ文学

以前、文学読もうかという気持ち - logical cypher scape2という記事を書いたが、 2ヶ月ほど経ち、日本戦後文学について、自分の中で一段落ついてきたので、これに該当する奴をリンクしておく。 なお、上記の記事を書いたよりも前のものも含む。 日本文学(…

澁澤龍彦『高丘親王航海記』

澁澤龍彦の遺作にして代表作(唯一の長編らしい)。 高丘親王が天竺を目指す道中を描く作品だが、怪奇・幻想的な風景が、エキゾチックかつユーモラスな文体で綴られている。 元々、特に読もうと思っていたわけではなかったのだが、図書館で島尾敏雄作品を借…

島尾敏雄「離脱」色川武大「路上」古井由吉「白暗淵」(『群像2016年10月号』再読)

島尾敏雄「離脱」 『群像2016年10月号(創刊70周年記念号)』その1 - logical cypher scape2で以前読んだことがあるのだが、この記事を見直してみると 島尾敏雄「離脱」(1960年4月号) 夫婦の話 ずっと勝手してた夫が妻からいろいろ と非常にそっけな…

島尾敏雄『その夏の今は・夢の中での日常』

筆者の、特攻隊経験をもとにして書かれた系列の作品と、夢系列の作品とを収録した短編集 島尾敏雄については[『戦後短篇小説再発見 6 変貌する都市』 - logical cypher scape2」を読んだら「蜃気楼」が面白かったので、続いて島尾敏雄『夢屑』 - logical cyph…

島尾敏雄『夢屑』

1970~1980年代、筆者が50代後半から60代前半の頃に書かれた短編集。 『戦後短篇小説再発見 6 変貌する都市』 - logical cypher scape2で読んだ「摩天楼」が面白かったので、手に取ることにした。 解説によると、島尾作品には、『死の棘』など妻との関係を書…

『戦後短篇小説再発見18 夢と幻想の世界』

夢や幻想をテーマに、1949年の日影丈吉「かむなぎうた」から、1996年室井光広「どしょまくれ」まで11篇を集めたアンソロジー。 このシリーズは、まず全10巻で刊行されたが、編集委員の中ではこれでは分量が足りないと考えており、第1期10巻が全て重版できた…

『戦後短篇小説再発見10 表現の冒険』

「家族」や「都市」などテーマ別で編まれた同アンソロジーだが、10巻は実験的な表現方法で書かれた作品を集めたものとなる。 『戦後短篇小説再発見4 漂流する家族』 - logical cypher scape2 『戦後短篇小説再発見 6 変貌する都市』 - logical cypher scape…

庄野潤三『プールサイド小景・静物』

第三の新人の一人である庄野潤三により、1950年から1960年にかけて書かれた、デビュー作や芥川賞受賞作を含めた初期の作品7篇を集めた作品集。 『戦後短篇小説再発見4 漂流する家族』 - logical cypher scape2で読んだ「蟹」が面白かったのと、『群像2016…

『戦後短篇小説再発見 6  変貌する都市』

織田作之助「神経」(1946)から村上春樹「レキシントンの幽霊」(1996)まで、都市をテーマに12篇を収録したアンソロジー 『戦後短篇小説再発見4 漂流する家族』 - logical cypher scape2に引き続き、読んでみた。 同シリーズは全18巻だが、さすがに全部読む…

小島信夫『アメリカン・スクール』

「第三の新人」の1人である作家の初期作品を集めた短編集 最近色々文学作品を読んでやるぞ、と思ってる奴の一環である。 小島信夫を手に取ったのは、磯崎憲一郎が好きな作家の一人として名前を挙げていたからなのと、twitterで小島の「馬」について触れてい…

『戦後短篇小説再発見4 漂流する家族』

今年に入ってから急に日本文学を読むブームが自分の中にきているが、それで色々調べていたら見つけたのが、この『戦後短篇小説再発見』シリーズ。 講談社文芸文庫・編(井口時男、川村湊、清水良典、富岡幸一郎が編集委員)で、2001年から2004年にかけて全18…

安岡章太郎『質屋の女房』

安岡章太郎については、以前『群像2016年10月号(創刊70周年記念号)』その1 - logical cypher scape2を読んだ時に面白く感じたので、気になっていた(安岡だけでなく、この『群像』を読んで第三の新人に属する作家が全体的に気になりはじめた)。 去年の12…

古井由吉『木犀の日 古井由吉自薦短編集』

1960年代の作品から始まり、主には1980年代(おおよそ古井の40代頃)に書かれた作品を収録した短編集 古井由吉については、最近古井由吉『杳子・妻隠』 - logical cypher scape2を読んだ。つまらなかったわけではないが、格別面白かったわけでもなく、古井作…

古井由吉『杳子・妻隠』

SFじゃない小説(文学とか)も読もうと思って手に取った本第3弾である。 古井由吉は全然読んだことがなくて、どこから読めばいいのかもとっかかりもなかったのだが、亡くなった時にいくつか紹介記事を読んで、とりあえず「杳子」から読めばいいのかなあと思…

青木淳編『建築文学傑作選』

建築家である青木淳による「建築文学」アンソロジー ここでいう「建築文学」というのは、編者が建築的だと考える文学のことであり、必ずしも建築物が出てくる文学という意味ではない。ただし、候補となる作品があまりにも多くなったので、「日本文学」と「建…

『群像2016年10月号(創刊70周年記念号)』その5

(1997年の笙野頼子「使い魔の日記」から2006年の古井由吉「白暗淵」まで) 笙野頼子「使い魔の日記」(1997年1月号) 小川国夫「星月夜」(1998年1月号) 稲葉真弓「七千日」(1998年2月号) 保坂和志「生きる歓び」(1999年1…

『群像2016年10月号(創刊70周年記念号)』その4

(1977年の林 京子「空罐」から、1995年の多和田葉子「ゴットハルト鉄道」まで) 林 京子「空罐」(1977年3月号) 藤枝静男「悲しいだけ」(1977年10月号) 小島信夫「返信」(1981年10月号) 大江健三郎「無垢の歌、経験の歌」(1982…

『群像2016年10月号(創刊70周年記念号)』その2

瀬戸内晴美「蘭を焼く」(1969年6月号)から林 京子「空罐」(1977年3月号)までの5編 瀬戸内晴美「蘭を焼く」(1969年6月号) 三浦哲郎「拳銃」(1975年1月号) 吉村 昭「メロンと鳩」(1976年2月号) 富岡多恵子「立切れ」(19…

『群像2016年10月号(創刊70周年記念号)』その1

(河野多惠子「骨の肉」まで) 三島由紀夫「岬にての物語」(1946年11月号) 太宰 治「トカトントン」(1947年1月号) 原 民喜「鎮魂歌」(1949年8月号) 大岡昇平「ユー・アー・ヘヴィ」(1953年5月号) 安岡章太郎「悪い仲間」(19…

大江健三郎『万延元年のフットボール』

物語的な意味でも、政治・社会的な意味でも、最近の小説より豊か(?)であることだなあと思った。 おそらく読み取れていない部分も多い気がする。 大食らいの女ってどういう意味だったんだろう、とか。 障害をもった子供が生まれてきて、夫婦仲が微妙になっ…