安岡章太郎『質屋の女房』

安岡章太郎については、以前『群像2016年10月号(創刊70周年記念号)』その1 - logical cypher scape2を読んだ時に面白く感じたので、気になっていた(安岡だけでなく、この『群像』を読んで第三の新人に属する作家が全体的に気になりはじめた)。
去年の12月から今年の1月に、SFじゃなくて文学とかも読もうキャンペーン(?)が自分の中であって、古井由吉『杳子・妻隠』 - logical cypher scape2を読んだりしていたが、実は、その頃に本書も読み始めていた。
読み始めていたのだが、途中でなんとなく読む気が失われてしまって、半年以上放置して、最近また文学とか読もうという気持ちになって、読むのを再開していた。
ただ、改めて読むと「悪い仲間」も以前感じたほど面白くなくて、それで読むのが止まっていたところがある。
全体的に、10代の少年を主人公にした作品が多く、また、母親との関係を巡った作品が多いのだが、おそらくそのことが、今現在の自分にとってはあまりピンと来なくなっているのかもしれないと思った。
逆に、最近読んだ古井由吉『木犀の日 古井由吉自薦短編集』 - logical cypher scape2でも触れたが、10・20代よりも30・40代が主人公になっている作品の方が、今の自分には面白く感じられるようになっているのかもしれない。

ガラスの靴

猟銃店のバイトをしている「僕」は、その用事でいた米軍の軍医の家のメイドと知り合う。その軍医が留守の間にその家で遊ぶ

陰気な愉しみ

役所に傷病年金をもらいにいっている「私」

夢みる女

この作品集の中では毛色の違う作品で、聖書の中のエピソード*1を戯画化して描いた作品
最後の方に人名が出てきて、聖書の話なのかということがわかる(自分はググらないと分からなかったが)

肥った女

母親が肥っていることを気にしていたせいか、肥った女に親しみを覚えていた「僕」が悪友たちと遊郭へ行く

青葉しげれる

落第し浪人を続ける順太郎の話1

相も変らず

落第し浪人を続ける順太郎の話2
いずれも、母親の希望によりそれに従ってしまう自分と、それに反抗しようとする自分の葛藤

質屋の女房

学校をサボりながら、家のものを質入れしたり戻したりしながら、その店の女房とやりとりする話
女房というか、おそらく元は女郎だった女性をここの主人が身請けしたのか何なのか、そういう人だろうと。
でまあ、この主人公も母親に対する反抗と従属を繰り返している。

家族団欒図

これと次の「軍歌」では、既に妻子ある身となった安岡自身と思われる男が主人公の作品
いずれも、母親が亡くなり、父と同居し始めることになった頃の話で、父親と妻との間でどっちずかずの態度をとりつづける話。

軍歌

正月に、出版社から依頼された成田神社への取材に逃げるように出かける
帰ってくると、近くに住んでいる年下の友人が来訪しており、父親と飲んでいる