マンガ・アニメ研究

『ユリイカ2023年11月臨時増刊号 総特集=J・R・R・トールキン』

もうひとつのフィクション性――「妖精物語について」における〈現実〉の位相 / 勝田悠紀 ファンタジーの魅惑――J・R・R・トールキン『妖精物語について』におけるフィクション理論 / 岡田進之介 物語を受け継ぐ方法――「再創造」という創作・読解行為からみ…

小池隆太のマンガ・アニメに関わる物語論関係の論考を読んでのよしなしごと

『マンガ研究13講』『マンガ探求13講』や『アニメ研究入門』『アニメ研究入門(応用編)』という本があり、未読ではあるのだが、いつか読みたいと思っていて目次だけは確認している。 その際、気になった論考がいくつかあるのだが、いずれの本の中にも小池隆…

攻殻機動隊 M.M.A. - Messed Mesh Ambitions_ISSUE #01 特集_東洋的|The East

攻殻機動隊のグローバルサイトなるものが立ち上がり、その中で士郎正宗へのインタビューがあるのが話題となっているが、他にも論考記事が掲載されている。 普段、こういう記事へのリアクションはブクマでしているし、これらの記事についてもブクマでもよかっ…

岩下朋世『キャラがリアルになるとき』

筆者が『ユリイカ』などに書いてきたキャラクター論を集めた論集。2011年〜2016年の間に書かれたもの(と書き下ろし一編)が収録されている。 第1部がマンガ、第2部が仮面ライダー、テニミュ、ラッパーなどを題材にしたもの、となっている。 Ⅰ マンガのなか…

マンガにおける「分離された虚構世界」と「視覚的修辞」

まえがき 分離された虚構的世界と視覚的修辞 - logical cypher scape2 の続き、というか、最後に触れたイノサンの例についてもう少し膨らませて書く。 マンガは、絵を使って、とあるフィクション世界を描く形式である。 なので、絵の内容は、その世界の出来…

平松和久「キャラクターはどこにいるのか――メディア間比較を通じて」(『サブカル・ポップマガジンまぐまPB11』)

以前、松下哲也「ビアズリーの挿絵はマンガの形式に影響をおよぼしたのか?」(『ユリイカ2019年3月臨時増刊号』) - logical cypher scape2で読んだ平松論文で、平松の4空間論というのが気になったので、こちらも読んでみた。 タイトルにある通り、キャラク…

たつざわ「芦田漫画映画製作所の通史的な解明」

(おそらく)2018年5月の文フリで購入し、その直後に読み終わっていたもの 感想メモも、読んだ当時に書いているのだが、何故かブログに載せずに放置されていたので載せる 何故か、というか、おそらく同時期に買った他の同人誌と一緒に感想をあげるつもりだっ…

アニクリvol.7s 特集 作画崩壊/幽霊の住処

アニクリはほんと次から次へと出るので読むのが追っつかない この号は、夏頃に半分くらいまで読んでいたのだが、ブログ記事にするのはもうちょっと読んでからにしよう、とか思ってたら時間が経ってしまった。 アニクリは毎号、特集を組んでいるが、その中で…

みんなのミュシャ展

bunkamuraでやっている「みんなのミュシャ展」行ってきた いつもと違って、メモをとっていなかったので、あまり作品単位のコメントはなしでざっくりとした感想 1.序――ミュシャ様式へのインスピレーション ミュシャが子供の頃に描いていた絵や、キリスト教関…

マーク・スタインバーグ『なぜ日本は〈メディアミックスをする国〉なのか』(中川譲訳、大塚英志監修)

日本におけるメディアミックスについての歴史研究の本。 全6章のうち、前半の3章は『鉄腕アトム』におけるキャラクター玩具の展開に、メディアミックスの起源を、後半の3章では、角川の社史を追う形で、角川が成立させたメディアミックスという手法の展開…

『表象 07』

表象文化論学会の学会誌2013年号 ◆巻頭言◆ 翻訳の人類学、事始め(岡田温司) ◆特集◆アニメーションのマルチ・ユニヴァース イントロダクション(土居伸彰) 対談『アニメ・マシーン』から考える(トマス・ラマール+石岡良治/門林岳史=司会) インタビュ…

『アニメクリティーク』(vol.5、7、4.5)

アニクリがいくつかたまっていたので、まとめ読み まとめ読みなので、雑にしか読んでいないけど、何を読んだか以下にメモ。 tacker10さんが、どの号でもわりと長めの論考を書いており、また、それぞれにつながりがあったりして、結果的にtacker10さんを中心…

土居伸彰『個人的なハーモニー ノルシュテインと現代アニメ論』

最近、土居伸彰『21世紀のアニメーションがわかる本』 - logical cypher scape2を読んだが、同じ筆者による、博士論文をもとにした著作にして第一作。『個人的なハーモニー』が理論編、『21世紀のアニメーションがわかる本』が応用編とのことである。 ロシア…

細馬宏通『ミッキーはなぜ口笛を吹くのか』

サブタイトルは「アニメーションの表現史」で、アメリカの初期アニメーションを取り上げ、当時の技術やアニメ以外の文化との関連から、なぜこのような表現になったのかについて書かれた本。 各章の独立性が高く、比較的どの章からも読めるし、とっつきやすい…

土居伸彰『21世紀のアニメーションがわかる本』

21世紀のアニメーション、すなわち2000年代及び2010年代の(主に)海外アニメーションの動向を論じている本 この本、宣伝において目を引くのは『君の名は。』『この世界の片隅に』『聲の形』なので、この3作品を主要に取り扱った本のようにも見えるのだが、…

津堅信之『新版アニメーション学入門』

タイトル通り、アニメーション学・アニメーション研究の概説 新書サイズでコンパクトにまとまっており、もちろんその分、深くまで踏み込んだところはないが、広範にわたるアニメーション研究を見渡すことができる アニメファンではあるが、アニメーション学…

ひらりん・大塚英志『まんがでわかるまんがの歴史』

タイトル通り、まんがでわかるまんがの歴史 いわゆる学習マンガ形式で書かれた日本マンガ史のテキスト あくまで日本史で、海外のまんがについての歴史は触れられていない(海外への言及がないわけではないが) 冒頭において、「日本のまんが史というと、最初…

鈴木雅雄+中田健太郎編『マンガ視覚文化論 見る、聞く、語る』

鈴木雅雄編著『マンガを「見る」という体験』 - logical cypher scape2の続編 前著が、シュールリアリスムとマンガとの比較という観点があったのに対して、こちらはよりマンガ中心である。 タイトルが示す通り、視覚文化論とのかかわりから論じられるものが…

『ユリイカ2016年9月臨時増刊号』

総特集=アイドルアニメ 既に告知した通り、自分も寄稿させていただいた本誌だが、普通に一読者として、二次元アイドルファンとして楽しめた1冊だった。 冒頭が菱田・西・依田座談会で、背表紙もオバレで、事実上のキンプリ特集的な面もあるけれど、取り上げ…

『ナラティヴ・メディア研究』第5号

2015年11月に行われたマンガ研究フォーラム「マンガのナラトロジー ―マンガ研究における〈物語論(ナラトロジー)〉の意義と可能性」での発表論文が収録されたもの。 森本浩一が発表を行い、野田謙介、中田健太郎、三浦知志、三輪健太朗がコメンテーターとし…

『アートオブコミックス:哲学的アプローチ』序文(文フリ東京ボツネタ)

5月1日に東京流通センターで行われる文学フリマ東京にて、 シノハラユウキ『フィクションは重なり合う――分析美学からアニメ評論へ』を発行します。 詳細は→5/1文学フリマ東京にて『フィクションは重なり合う』発行 - logical cypher scape2 *1 『フィクショ…

最近読んだマンガ論の本まとめ

9月は、自分の中でマンガ論月間と銘打って、マンガ論の本をいくつか読んでいた 結果的に、10月までかかったけど なんで、マンガ論月間やろうかと思ったかというと、きっかけは高田敦史「分離された内容」と伊藤剛「マンガのおばけ」 - Togetter [トゥギャ…

佐々木果『まんが史の基礎問題――ホガース、テプフェールから手塚治虫へ』

そのタイトルどおり、まんが史の本。いわゆるコマ割りマンガの起源として、ホガースとテプフェールを取り上げ、その両者の差異を見ていく。 内在的な特徴だけでなく、印刷技術や「単行本書き下ろし」といった外在的な面についても注目している キャラクター…

岩下朋世『少女マンガの表現機構――ひらかれたマンガ表現史と「手塚治虫」 』

これまであまり論じられてこなかった手塚治虫*1の少女マンガを題材に、何故論じられなかったという点でマンガ言説史を論じると共に、どのように論じるかという点で「キャラ」から「キャラクター」がどのように描かれるかということを論じる。 後者については…

三輪健太朗『マンガと映画』

マンガと映画についての美学的メディア比較論であり、これまでの議論・言説を丁寧に再検討しながら、「映画的」であるとはどういうことなのかを論じ、それが「近代」を前提しにした視覚文化であることを示していく本。「映画的」っていうのが単に技法的な話…

鈴木雅雄編著『マンガを「見る」という体験』

サブタイトルは、「フレーム、キャラクター、モダン・アート」 去年の6月から12月にかけて開催された三回連続のWS「マンガ的視覚体験をめぐって――フレーム、フィギュール、シュルレアリスム――」をもとにした論集。 参考:伊藤剛・鈴木雅雄「マンガ的時間、シ…

ティエリ・グルンステン『線が顔になるとき』

フランスのマンガ、バンドデシネを中心に、顔がどのように描かれてきたかを見ていく本 肖像画やカリカチュアといった、マンガではない絵画や、アメリカのコミックス、日本の「マンガ」など、バンドデシネ以外のマンガについても触れられている。 なお、翻訳…

『背景から考える――聖地・郊外・ミクスドリアリティ』

『アニメルカ』に何回かにわけて掲載されてきた、みよじ・はるを・よしたか、tricken、反=アニメ批評による座談会を一冊にまとめたもの。 さらに、『マイマイ新子と千年の魔法』の監督と、『けいおん』の高校のモデルとなった豊郷小学校がある豊郷町産業振…

京都国際マンガミュージアム

行ってきたので、印象に残ったことをいくつか まず、館内を回っていて一番印象に残ったのは、老若男女人種問わず、館内のそこら中でみんなマンガを読んでいるということ。外に広がる芝生に面したテラスでも、思い思いにみんなマンガを広げている。その風景が…

ティエリ・グルンステン『マンガのシステム コマはなぜ物語になるのか』

フランスのマンガ研究書。サブタイトルにあるとおり、コマについての話で、物語論や記号論なども踏まえつつ、マンガの原理を明らかにしようとする本。 マンガ批評、ではなく、マンガ研究であり、基礎的な概念を明らかにして名前を付けていくというような作業…