たつざわ「芦田漫画映画製作所の通史的な解明」

(おそらく)2018年5月の文フリで購入し、その直後に読み終わっていたもの
感想メモも、読んだ当時に書いているのだが、何故かブログに載せずに放置されていたので載せる
何故か、というか、おそらく同時期に買った他の同人誌と一緒に感想をあげるつもりだったのが、そっちの感想を書きそびれているうちに、こちらの感想も載せ損ねていた
以下、2018年5月に書いていた感想


文フリで購入した、たつざわさんの「芦田漫画映画製作所の通史的な解明」が面白い
アニメーション史については疎いので、芦田漫画映画製作所というのが何なのか全く知らなかったし、またこの論文が、アニメーション史研究にとってどういう位置づけになるのかも分からないが、すごかった。

芦田漫画映画製作所というのは、戦前から戦後にかけて活動してたアニメーション制作会社で、1946年に手塚治虫が上京した際に、入社しようとして断られたという逸話を持つ会社らしい。
ただし、あまり実態がよく分からないらしく、たつざわさんが、主に会社登記簿を確認しながら、各種資料にあたって、まさしく会社の通史的解明を試みている。
これまで、関係者の回想などにおいて、芦田漫画映画製作所や当時の他の制作会社について、多少言及されていたようだが、社名自体がはっきりしなかったりしたようだ。それを登記簿を追うことによって、正式な社名や所在地を確認し、ここで言及されているこの会社はこの会社のことだろうと確かめていっている。
また、芦田漫画映画製作所の芦田巌をはじめ、複数の通名を用いている人などがいて、登記簿などから生年月日を確認するなどして、同一人物かを判断している。この名前が本名で、この名前が通名で、この名前は何年から何年まで使っていた、などを調べたりしている。
歴史的事実を記していっているだけの論文ではあるが、文章自体読みやすく、面白く読めるものになっている。
事実を記すといっても、不明な点や推測に頼らざるをえない点などが多く、それを詳らかにしつつも、要点が明確だからだろう。
また、本論文は、「東映動画史の相対化」を目的としているとある(「東映動画史観の相対化」かと思う)。アニメーション史に疎い自分にとって、そもそも東映動画史とは、という感じだったのだが、戦前や戦後すぐの1940年代に、個人会社としてのアニメーション制作会社が複数あって、アニメーション制作が行われていた、ということ自体、全然知らなかったので、面白かった。