最近、パレオアート(古生物復元画)について少しずつ本を読んだりしており、今回は、パレオアートの歴史について読んだ。
”All Yesterdays: Unique and Speculative Views of Dinosaurs and Other Prehistoric Animals” - logical cypher scape2
Mark P Witton "Patterns in Palaeontology: Palaeoart – fossil fantasies or recreating lost reality?" - logical cypher scape2
本書(The Palaeoartist's Handbook)は、タイトルの通り、パレオアートを描く人のためのハンドブックであるが、第1章がA brief history of palaeoartとなっている。
なお、Paleoart - Wikipediaにもパレオアートの歴史が書かれているが、この本をかなり参考にしているのではないかと思われる。
なお、パレオパートという語だが、1987年にマーク・ハレットの論文でつくられた造語らしい。
あと、スペルについて、アメリカ英語だとpaleontologyで、イギリス英語だとpalaeontologyらしい
パレオアートに関する参考文献
Rudwick(1992) “Scenes from Deep Time”*1
Lescaze(2017) “Paleoart: Visions of the prehistoric Past”
Lanzendorf(2000) “Dinosaur Imagery”
White(2012,2017) “Dinosaur Art” “Dinosaur Art2”
Paleoart before palaeontology
プロトケラトプスがグリフォンに、マンモスがサイクロプスになったという話があるが、これはまあちょっと怪しげな話の部類らしい。
コリント人の壺にも、古生物らしき絵が描かれているとかなんとか
16世紀ヨーロッパで、化石から神話の動物を復元する試み
1590年、オーストリアのLindwurmというドラゴンの彫像があり、これも化石を参照している
アタナシウス・キルヒャー『地下世界』(1678)
18世紀ケサイとマンモスからユニコーン
1800-1890: The foundation of modern palaeoartistry
空飛ぶ哺乳類として描かれている
最も古いパレオアート。出版はされておらず、キュビエに送られた
- 1805年 Boltunovによるマンモスの復元
- 1800年代 キュビエによる哺乳類の復元図
出版したのは骨格図で、筋肉や軟組織も含めた復元図は私的なもの
1820年代になって出版されるが、扱いは小さい。初期の学者のパレオアートに対する羞恥?
初めての総合的な復元画(見た目、行動、古環境)
多くの複製が作られる
”Jura Formation”が、パレオアートのポテンシャルを広める
ベンジャミン・ウォーターハウス・ホーキンズとリチャード・オーウェン(どれくらい協働していたかははっきりしていないが)
ホーキンズのモデルは、化石生物を生きていたサイズで再現する初の試み
水晶宮は、今日につながるパレオアートの商業化
- 19世紀後半 Edourar Riou
1863年に出された、Louis Figuierの”La Terre Avant le Deluge”は、パレオアートのシークエンスで通時的に古生物を描いた初の本で、この本のイラストを手がけたのが、Riou
Riouは、ベルヌ作品への挿絵でも知られる
当時すでに時代遅れの復元もあったが、多くの象徴的な主題(水しぶきをあげるイクチオサウルスや闘う恐竜など)を持っていた。
The Classic Era: 1890-1970
- チャールズ・ナイト
19世紀末、パレオアートを発展させた成果として、本書はアメリカ西部での恐竜化石の大量の発見などと並んで、チャールズ・ナイトの存在を挙げる
ナイトは、アメリカ中の動物園や博物館に作品を作り、1935年からは本も出している。
復元プロセスについて広範に書いた初めてのパレオアーティスト
影響力は非常に大きい。
例えば、1925年の「ロスト・ワールド」や1933年の「キングコング」だけでなく、1960年代のハリーハウゼン作品にも影響を与えている。
ナイトは、動物解剖学への理解があり、復元プロセスについての彼の記述は今日のもとも遜色がない(ただし、爬虫類のものについては奇妙なものもある。これは、専門家によってそうさせられた? 恐竜の絵についてのコメントは残されていない)
- ナイト以外
- ジョセフ・スミット
1890年代のイギリス。地学や先史時代の動物についてのポピュラーサイエンス本
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- ハリー・シーリー
1901年に翼竜についての初のポピュラーサイエンス本
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- Gerhard Heilman
1926年『鳥の起源』で、恐竜を、水平な背中、持ち上げたしっぽ、アクティブなふるまいで描いた
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- Heinrich Harder
1913年にベルリン水族館に巨大なパレオアート壁画
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- Rudolph Zallinger
1947年『爬虫類の時代』
- Zdenek Burian
チェコの画家で、ヨーロッパにおけるナイトのカウンターパート
もともと、フィクション作品への挿絵からキャリアを始める。
1940~60年代の出版されていた本で知られている
解剖学への把握に秀でていて、ある面ではナイトを超えているところもある
ナイトが、博物館のコレクションを通じて制作していたのに対して、ブリアンは、化石へのアクセスに乏しく出版物の記述やイラストに基づていたにも関わらず。
ブリアンも後世への影響が大きいが、その割に知られておらず、コレクションや再出版といった試みが少ない
The Reformation: 1970-2010
- グレゴリー・ポール
バッカーのもとで学んだアーティスト
rigorousアプローチを広める
ポールは、恐竜のような絶滅爬虫類の解剖学を本当に把握した初めての人々の一人
パレオアートのニューウェーブの始まり
1970年代から、多くのアーティストがrigorousアプローチにより制作していた
- 1990年代
ジュラシック・パークの成功により、パレオアートの人気も高まる
国際的な賞も2000年にできる
しかし、一方で、恐竜ルネサンス以前と変わらないような古い絵も多く残っていた
デジタル技術も影響を持った
フォトリアルな復元なども可能になったが、細部への注目が甘くて、最悪なものになることもあった
the modern day, and post-modern palaeoart: 2010-present
インターネットの広がり
文献などへのアクセスが容易になる
- All Yesterdays
rigorousアプローチが実は思われていたほど客観的ではなかったのではないか
現生の動物に適用すると信頼できない
科学的な「合理的な思弁」へ
*1:この本は、他でもよく参考文献にあがっている