山本弘『MM9』

以前、これのテレビドラマ版がニコ生でやっていたことがあって(ドラマ「MM9」全13話一挙生放送~DVD発売記念NN9(なまなまナイン)~ - 2010/10/22 20:00開始 - ニコニコ生放送)、それを見たのを機に買った。
以前から人に勧められていたし。


怪獣が、地震や台風と同じような自然災害として存在している世界で、怪獣対策をやっている公務員、気象庁特異生物対策部(気特対)のお話。
タイトルのMMというのは、モンスター・マグニチュードの略。体積によって被害の度合いを予測するのに使う。
気特対は、気象庁の人なので怪獣を直接攻撃したりはしない。直接攻撃するのは自衛隊の仕事。自衛隊に対してどのように攻撃すればよいのかアドバイスしたり、避難警報出したりするのが、気特対のお仕事。
5話収録されている。
以下、ネタバレありであらすじ。
1話
小笠原沖に怪獣現る。
海の中を泳いでいて、はっきりした映像なんかもなかなか出てこない中で、怪獣の正体を推理したりしていくという話。
正体が分からないと、MMも対策も出せないので、これが気特対の主なお仕事でもある。
は虫類型の巨大怪獣かと目されていたが、エビ型の群体怪獣であった。


2話
巨大化した少女が出てくる。
人間の女の子が何らかのアクシデントで巨大化してしまったのか、それとも人間の姿に似た怪獣なのか。
そして、なにやら陰で暗躍する怪しげな男も登場。


3話
飛行怪獣の話。
日本海で目撃された飛行怪獣、経路を調べてみると東京を目指しているらしい。
さらに過去の目撃情報を検索してみると、なんとはるかアフリカからはるばる日本まで一直線に飛んできていたことが分かる。
一方その頃、気特対機動班の灰田涼は非番でデートの真っ最中。とはいえ、怪獣のことが気になってならないのだった。
怪獣が飛んできた謎も呪術道具が日本で展示されいてたというものだったり、またアクションっぽいのも用意されていたり、結構直球で怪獣映画っぽい。


4話
密着24時、というテレビ番組の取材を受ける気特対。
テレビ局スタッフの要求にへとへとになりながらも、普段なかなか理解されにくい自分たちの仕事をアピールしようと思う気特対の面々。
そこに植物型怪獣出現の知らせが。
この話では、今まで名前だけ出てきて詳しい説明がされてこなかった「多重人間原理」の説明がなされる。
怪獣は明らかに物理法則を無視しているがそれは何故か、そのために用いられているのが「多重人間原理」である。
人間の認識によって宇宙のあり方が決まるという「人間原理」を、さらに多重化させたもの。
それによれば、かつてまだ物理学的知識を人間が有していなかったころは、この宇宙には実際に妖精や妖怪、怪獣などといった者たちが存在していた。これを「神的宇宙(ミス・ユニヴァース)」という。
それに対して、人間が物理学を通じて宇宙を認識するようになると、宇宙は物理法則に則ったものになるようになった。これを「ビッグバン宇宙」という。
現在は、この二つの宇宙がせめぎ合っている状態で、怪獣とはその二つの宇宙の重なり合いによって出現しているというもの。


5話
瀬戸内の小島で石化した巨大怪獣が発見される。しかし、目覚めのときが近い。もし目覚めれば前代未聞のMM9は確実。
それは1000年に1度目覚める、多頭竜であることが次第に明らかになる。
そして、その竜といつも戦ってきたのが巨大な女であることも。2話に登場した巨大な少女こそが、まさに多頭竜とセットの存在だったのだ。
資料と格闘する気特対本部に、突然テロリストが襲撃する。
彼らは人間の姿はしているが、その正体は妖怪であるという。もし、「神的宇宙」が完全に「ビッグバン宇宙」にとってかわってしまえば、彼らは非現実の存在と化してしまう。それを防ぐためには、神的宇宙の存在が忘れられなくなるような巨大な怪獣災害が必要だと彼らは考えたのだった。


テレビドラマ版との差異
ドラマでは、毎回怪獣が出てくるわけではない。怪獣そのものの姿が映ったのは確か3回だったと思う。
まあ深夜ドラマなので予算的に仕方ないだろう。ただ、最終回に出てくる怪獣は、デザインが非常にかっこよくて素晴らしかった(もともと神様だった奴で、動物的な部分と植物的な部分が融合したデザインだった)
ギャグ成分多め。特にスピンアウトが毎回10分ほどあるのだが、そちらは完全にコメディ。ニコ生ではむしろ、スピンアウトになると「本編来た」というコメントが流れるほど好評だったw
「多重人間原理」はいっさい出てこない。
怪獣がらみの設定では、SとMの違いというのがドラマオリジナル。
MM1以上がM(モンスター)で、MM1未満はS(スーパーナチュラル)と呼称される。存在のあり方としては特に代わりはないが、Sはサイズが小さいので基本的に人的被害を及ぼすことがないとされる。そのためか何なのか、Sの管轄は気象庁ではなく環境省となっている。
小説版ではなかったこの設定によって、省庁による縄張り争い的な側面が加えられている。
最終回で出てくる怪獣は、その卵を取り返しに来るというのが登場の原因なのだが、卵の方はサイズ的にSであり、その卵を独占的に研究したいと思っているつくばのある科学者と環境省の思惑が一致して、その卵をなかなか気特対に渡してくれないというのがあったりする。
また、戦前は怪獣対策が軍部の管轄だったためなのか何なのか、自衛隊から気特対に出向してくる奴が出てきたりする。


また、小説版がやはり怪獣重視なのに対して、ドラマ版がキャラクター重視だといえる。
ドラマオリジナルキャラクターとして、朏さんがいる*1。ドラマ版は彼女をメインヒロインとしている。
どうも恋人がいるようなのだが、仕事の性質上すれ違いばかり。視聴者的には、灰ディ(灰田涼に藤澤がつけたあだ名、ドラマ版のみ)とくっついちゃえよと思ったりもするのだが、みたいなそういう展開w
小説版の機動班、小出、淡島はドラマ版では出てこない。淡島は北海道に出張中という形で名前だけ出てくる。
小説版では機動班チーフとなっている室町は、ドラマ版では機動班・オペレータ班両方を統括する課長となっている。
気特対でアドバイザー的な位置を占めている案野は、小説版では宇宙物理学者だが、ドラマ版では数学者となっている。また、ドラマ版の彼女はやけにSと接触することが多い。
(ドラマ版では怪獣が出てこない代わりに、Sが出てくる話が多い。タイムスリップする話では、映像も小津っぽい雰囲気になってたりして面白い。あと、密着24時もなんか心霊番組みたくなっている)
久里浜部長は、ドラマ版ではパトレイバー後藤隊長みたいな感じになっている。
最も違うのは、オペレーターの曾我部さんで、小説版では普通の人だが、ドラマ版では気特対の部屋の主みたいになっていて、スーパーハッカー。機材に囲まれて出てこないので、容姿は不明。


小説版とドラマ版はそういうわけで、結構別物になっていたりする。
ドラマ版の方が好きかな。


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*1:北川景子似でかわいかったことをここに付記しておきます!