上では、今月最終巻がでた『忘却のクレイドル』を紹介したので、今度は今月第一巻のでた『ぼくらのよあけ』を。
まず、この表紙がいい。でもってカバーそでが実写だし!w
目次をマンガのコマの中に組み込んでいるのもかっこいい。
と、いきなり内容以外のところから褒め始めてしまったけれど、話そのものは雑誌で読んでいて知っていたので、最初に単行本を手に取ったとき、そういうところからテンションがあがったのである。
2038年の夏。少しだけ未来になった日本で、宇宙大好きの小学4年生ゆうまの前に、他の星から訪れた宇宙船のAIが現れる。彼を再び宇宙へと戻すために、彼らのミッションが始まる。
というジュブナイルSFなわけだけれど、近未来ガジェットという点でも小学生の行動や心理という点でも、ディテールの描き込みがすごくて、何度も読めるだろう作品。
小学校が、建物的には今とほとんど変わらないけれど、AR的なデジタル化が進んでいたりしているのだけれど、そうした教室の中で、じゃんけんの前に手をのぞき込むアレをやっているとこがあったりして、とてもよい!
それから1巻だとまだよく分からないところがあるのだけれど、決して小学生だけの話にはなっていない。
2巻かはら、親世代の話が入ってくるようで、2つの世代・年代の視点を絡ませる、というのは実は今井哲也の常套手段であったりする。
今井哲也は、「トラベラー」で2005年冬の四季賞を受賞してデビューしている*1。
この作品は、バンドをやっている高校生が数ヶ月後にタイムスリップしてしまう物語である。青春SFとでもいえばいいかもしれない。
主人公がタイムスリップしてしまった原因は、あるおっさんがやっていた実験のせいで、彼は元の時間に戻るためにそのおっさんと何度か会うようになる。このおっさんは、ベンチャー企業を立ち上げたけれど仲間と上手くいかなくなって失敗してしまった人なのだけれど、タイムスリップ後の主人公もバンド仲間とぎくしゃくしてしまっている。今の状況をどうにか変えたい、別の年代の2人が出会う話でもあるのだ。
そして、初連載は高校のアニメ部を描いた『ハックス!』である。これ、アニメ部だしアフタヌーンだし、「げんしけん」の二番煎じのように思えるかもしれないが*2、これがさにあらず。このマンガは、実は僕は高校時代の友人には結構薦めていたりする。今井自身が大学時代にアニメ部であったらしく、アニメ部のディテールが細かいのはいうまでもなく、高校の生徒会活動がやけにリアルなのである。
で、この作品では、主人公達(高校生)だけではなく、大学生のアニ研とプロのアニメーターがそれぞれ出てくるのだが、そのことによって主人公の物の見方が相対化され、主人公の成長へと繋がっている。それは高校生のアニ研の限界を知るというラストに繋がっているのだけれど、それは決して挫折とかそういうものとは違って、自分のいる位置をクールに捉えることができるようになったということで、青春ものとして読んでいて痺れる。
ちなみに、文学フリマで購入した『コンテンツ文化史研究』第4号には、今井哲也インタビューが掲載されていて、そちらも読んだ。意外なところと納得できるところの両方があって面白かった。
書き忘れてた。
カバー下のネタがアレだったw
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