『文藝春秋2023年9月号』(市川沙央「ハンチバック」ほか)

実家に帰った際に当該号が置いてあったので読んだ。
むろん「ハンチバック」目当てで読んだのだが(実家にあったのも同じ理由)、それ以外についてもちらっと読んだ。
感想をメモっておいたが、結果的に「ハンチバック」本編へのコメントが一番少なくなってしまった気がする……


芥川賞選評

評価がわりと割れてたんだなーと。
いくつかの作品が競り合っていた中で、×をつけられていなかった「ハンチバック」が競り勝った印象。
乗代作品が賛否分かれていて、「ハンチバック」以上に評価してる人もいる一方、低評価だった人もいて、それで受賞には至らなかったように見える(面白かったのは、技巧が優れているという評と技巧が足らないというような評があったこと)
アイドルと児童ポルノを扱った児玉作品、溶接工について描いた石田作品についてもそれぞれ評価している選考委員がいたが、多数の評価は集められていなかった様子。千葉作品も決して悪くはないようだったが、これまで連続で同じテーマを扱っているようなので、そのあたり、もう少し何か新機軸が欲しいと思われている様子があった。
ところで、芥川賞の選考委員ってこんなに人数多かったっけ? 久しぶりに読んだので。吉田修一が選考委員にいるのに驚いたんだけど、委員になった時期を見るに、自分が前に(何年も前だが)選評読んだ時には既に委員になってたっぽい。平野啓一郎が一番最近に着任したっぽい

ハンチバック

作品そのものについていうと、事前にある程度授賞式でのインタビューとか読んだ上で読んでいるので、ちょっと答え合わせでもしているかのような読み方になってしまった。
ラストは確かにどう捉えればよいか難しいが、あってよかったように思う。作品としての格好がつくというか何というか。


作家インタビュー読むまで、姉も同じ病気というのを知らなかったので、むしろそっちに対する驚きの方が大きかった。

宮﨑駿監督との真剣勝負 本田雄

君たちはどう生きるか作監の人のインタビューも読んだんだけど、天才職人の話としては面白いけど、やっぱジブリは(労働環境として)やべーとこだなという印象

赤ちゃんはAIより天才だ! 今井むつみ

人間とAIの違いとして、記号接地問題とアブダクションをあげて、記号が接地していない・アブダクションができないAIは、まだ全然人間には至らないという話で、まあAIには頼らないようにしましょうとかの話もあり、一般論としては全く正しいと思ったし、『文藝春秋』の読者層がどういう層かちゃんとは知らんけど、まあこの手の雑誌の読者受けはよさそうな論調だなとも思った。
LLMについても、今のところ、この一般的なAIの問題が当てはまるとは思うんだけど、しかし、何らかの突破口が見えてきたのでは、とも思われている雰囲気が、今月の日経サイエンスなどにはあったので、この辺り個人的には判断保留だな、と
ところで、記号接地問題というのは中国語の部屋問題なわけだが、ハルナッド自身、中国語の部屋の話をしているようだということが分かったが、しかし、この今井論文の中ではサールの名前に言及はなかった。