デレク・マトラバーズ『フィクションと物語』後半

フィクションと想像を結びつける、ウォルトンやカリーらに代表される、フィクションの哲学の主流派の考え方を批判している。
前半についてはDerek Matravers"Fiction and Narrative"1〜4章 - logical cypher scape
主流派の考えは、想像を指定するものがフィクション、信念を形成するようにするものがノンフィクションというもので、ここでは想像と信念が異なるものであるということが前提されている。
想像と信念の違いとしては、例えば想像にはオフライン性という特徴があることなどがあげられている。
これに対して、心理学的には、想像と信念について、オフライン性の有無による違いは見られないなどとして反論している。
後半では、フィクションもノンフィクションも含めた「物語」について話を進めていき、従来のフィクションの哲学で議論されていたことなどにも触れていく。概ね、フィクションのことと考えられていたことが、ノンフィクションについても言えるよ、というような展開。
作中の矛盾への対処とか想像的抵抗、また映画の話もなされている。

1: Introduction
2: Walton on Fiction
3: Fiction and the Imagination
4: The Real Distinction
5: Understanding Narratives
6: Engaging with Narratives
7: Narrative and Belief
8: The (so-called) Paradox of Fiction
9: Narrators, Impossible Fictions, and the 'Fictionality Puzzle'
10: Coda: Film

5: Understanding Narratives

読者が、物語をどう理解しているか
文章を読ませて、読者が直接書かれていないことも含めて、どうやってちゃんと意味を理解するか
心理学の実験や仮説について紹介
メンタル・モデル
ミニマリスト仮説
構成主義仮説
読者の目的やテキストの複雑性によって違う
ディスコースの構造と物語の構造の食い違い→アンブロー・ビアース「オウル・クローク橋の出来事」→読者が構成したメンタルモデルが変更されるわけではない。ウォルトンの「seeing the unseen」の問題に似ているけど違う
p-反応
オンライン性とオフライン性の連続性

6: Engaging with Narratives

フィクションでもノンフィクションでも、representationなり物語なりの理解の仕方は同じだよね、的な話か?

7: Narrative and Belief

8: The (so-called) Paradox of Fiction

ラドフォードからカリー、ウォルトンと歴史的に、この問題がどういうふうに扱われてきたかをまずは論じる。
ラドフォードは間違ってたけど、ウォルトンはよい的なことを言っていたような。
キャロルによる批判とか
感情が信念を要求するかということと、感情の対象がフィクションかどうかは独立の問題。ノンフィクションでも同様のことは起きるんじゃないか、とか。
志向的対象の問題なのではないか

9: Narrators, Impossible Fictions, and the 'Fictionality Puzzle'

語り手について、不可能なフィクション(矛盾)について、想像的抵抗について


語り手は必ずいるのかどうか問題とか


矛盾した物語に接したとき、読者はどのような戦略をとるか。矛盾しているところを間違っていると考えたり、無視したり、あるいは整合するように考えたり色々な戦略がありうる。
フィクションでもノンフィクションでもありうる。
可能・不可能という対ではなく、現実原理に従うか否か


想像的抵抗
矛盾・不可能な話に似てるけど違う
道徳的に奇妙な主張は物語内で真にならない。
知っていることと把握していることとの違い→道徳的証言の議論。道徳的証言の議論が何かこれ読んだときは分からなかったけど、科学基礎論学会WS「現実とフィクションの相互作用」「意識のハードプロブレムは解決されたか」科学哲学会WS「心の哲学と美学の接続点」 - logical cypher scapeで森さんの発表聞いて少しわかった

10: Coda: Film

基本的に、言語的フィクションをベースにここまで議論されてきたので、映画にも適用するという章
映画についても、フィクションにいえることがノンフィクションにもいえるという話をしているのだけど、面白いのは、映画については、絵画のような二面性の経験はしてないという話をしている。折りたたまれたSeiing-inという概念が出てくる。


Fiction and Narrative

Fiction and Narrative