東ロボくんから見えてきた、社会と人類の未来 / 新井紀子+小島寛之
東ロボくんの話が半分と、AIの発展による社会(労働)への影響の話が半分くらい
東ロボくんプロジェクトを始めた動機として、始めた時はまだ今のようなAIブーム到来前だったので、一つには、人工知能について政治家や官僚にも分かりやすくその力を訴えることのできるものとして、もう一つとしては、その逆に、AIブームは必ずくると思っていたのでその時に過度に何でもできると思われないために。0か1かに振れやすいけれど、何が出来て何が出来ないのかイメージしやすいように、と。
東ロボくんが今年どんなだったかはnix in desertis:「ロボットは東大に入れるか」成果報告会 in 2015(11/14)レポートに詳しいが、
この対談では、やはり今年の注目である世界史、そして国語と数学、物理について新井さんが説明している。
これに対して小島さんが、「世界史や国語は予備校の受け売りみたいな話しているのに、数学は、新井さんが専門家だからか、力が入っているように思える」というようなことを言っていたw 新井さんは、数学チームに参加しているから、他の科目より内情に詳しいだけ、と言っていたが。
(予備校的といえば、選択問題は2が多いとか、そういう謎のテクニック的な噂も色々と試してみたりはしたらしい)
(世界史は、日本史や政経よりは解きやすいらしい。というのも「常識」を使う範囲が他と違って狭いから。政経とかだと、民主主義的なのはよいもの、というような「常識」を把握しておかなければ解けないとか)
数学は、公式とパターンに当てはめる、と思われがちだが、東ロボくんは全然そういう解き方をしない、とか。むしろ、公式は東ロボくんが解くのには邪魔らしい。
新井さんが注目しているのは物理、らしい。
数学ができれば物理もできると思われがちだが、AIにとっては、数学と物理とでは全然違うらしい。球をテーブルの上に転がす。テーブルの端っこまでいくと落ちる。ここからここまでは落ちない、ここから先に行くと落ちる、みたいなことを判断するのがすごく難しいらしい。
物理が解けるようになると、ロボットのブレイクスルーになるのでは、と。
後半は、AIが労働にもたらす影響。
いわゆる、仕事を奪われる問題。
新井さんはAIによって失業が起きたり格差が広がったりするのではと悲観的。一方、小島さんは失業や格差は需要不足などで起きるのであってAIという技術によって起きるわけではないと、AIの影響については楽観的。
新井さんは、仕事をすべてAIがやってくれるというようなことにはならないが、AIに置き換わる仕事も出てくる。AIにできるのは検索・分類・最適化など。営業の仕事などは検索とかでやれるようになる。で、AIについて理解してより知的な仕事をできる人は、よい仕事につける。一方で、AIの下で働くようになる人間も出てくる。例えば、画像認識(写真と違ってイラストはAIには難しいと)はAIにはできないから、人間が代わりにやらないといけない。AIによって仕事を奪われた人で、より知的な仕事の方にも行けない人たちは、そういう仕事をやるようになるだろう。で、格差が広がる、と。
一方、小島さんは、ケインジアンとして、失業は需要不足によって起きると考えるので、AIによる失業などについては楽観的。タイピストの人たちは、ワープロの出現で職を奪われたけど、だからといって一生失業していたわけではない。駅員は、昔は切符を見たら一瞬で行き先と運賃があってるか確認できる技能を持っていた。それは、自動改札機によって取って代わられた。しかし、それで駅員は仕事を失ったわけではなく、むしろ客の案内などをよりできるようになった、と。
まあ他にもいくつかトピックはあった気がする。
これについては現代思想 2015年12月号 特集=人工知能 -ポスト・シンギュラリティ- - 基本読書も
他の記事については読んでいないが、パラパラとめくって目についたとこだけ
アンドロイドと人間の未来 / 石黒 浩
一番最後のオチが、人間の生きる目的はアンドロイドになることかもしれない、みたいなこと書いてあって面白かったw
米朝ロイドについての説明からの流れで。
米朝本人が老いても死んでも、いわば人々が思い描く米朝の姿がアンドロイドとして保存されている。人間国宝だし、社会的・文化的にもよいこととされるし、だからアンドロイドとして保存もされる。というわけで、上のオチに続く。