多宇宙にわたって人類とOTCの戦いが展開される未来において、OTCの落とすスマートマテリアルを拾う任務に従事する朝戸とアラクネ、連続殺人事件の捜査を担当する刑事のクラビトのエピソードが交互に進行しながら、人類の興亡を賭けた戦争が物語についての物語となっていく。
円城塔らしいユーモアや様々な引用*1をちりばめながら、多宇宙にまたがるSFとミステリを展開しつつ、メタフィクショナルな方向へ進みながら、最初と最後はラブストーリーとしてまとめられている。
自分で書いておいて、一体何だそりゃというまとめだが、実際そうなのだから仕方ない。
OTC(オーバーチューリングクリーチャー)という人類の知性とは隔絶した超知性の侵攻にあい、人類は既に現実宇宙から退転している。人類はいわゆる「ソフトウェア化」されて、AIである人格エージェントと形としては区別できない状態で生き残っている。OTCと戦いながら、現実宇宙の奪還を目指している。
ソフトウェア化された人類やエージェントは、宇宙によって自由に姿形を変えられる。そういう世界の中で、複数の宇宙にまたがった連続殺人事件が起こる。その中には、殺人されていない殺人事件や、物語の登場人物の殺人事件や、同一人物が過去から未来にかけて何度も殺される殺人事件など、不可解な殺人事件がいくつも含まれている。
退転、というのは、物理的現実を捨てて、ソフトウェア化することなのだが、次第に、退転とはメディアを乗り移ることだということが分かってくる。コンピュータだけとは限らず、書物だったり石版だったりオールドなメディアへの退転もあったらしい。というわけで、どうもこの作品に出てくる人間は、物理的には書かれた文字であるっぽく、ここらへんでメタフィクション的な色合いが出てくる。
演出としても、文字の順序を変えたりするなどのことがなされたりする。
人類のデータを維持していくためのシステムが、データを管理するために使っているのが「物語」で、その中でもどのような世界でも通用する物語として「ラブストーリー」を選び出す。最終的には、この物語を作るシステムとラブストーリーとのラブストーリーだったということが分かってくる。
ただ、メタフィクショナルな仕掛けがちがちの実験的なばかりの作品かというとそうでもなく、実験的な要素ももちろんありつつ、一方でSF的なシーンがあって美しく描写されている。小説として、本当に多種多様な要素が入っていると思う。
あらすじ
冒頭は、榎室南緒が、その祖母にしてイザナミ・システムの設計者榎室春乃を訪れるところ
朝戸連と、スーパーマテリアルで作られ様々に姿を変える支援ロボット・アラクネは、OTCが落としていくスマート・マテリアルを拾い集めるのを任務とする特化採掘大隊(スカベンジャーズ)に所属している。
任務中、OTCとの戦闘に突入してしまうが、その際に奥歯にある新型のタブレット錠がシステムを圧迫する事態が発生する。朝戸の能力を使ってその場は切り抜けたが、朝戸はタブレットの開発者であり、シチュエーション料理の権威であるアレフッド・x・xには任意の姓を代入、氏を探しに行く。彼は、とにかく名前が次々と変わっていくのだが、軍に研究開発を依頼されたが軍から狙われ、犬に人格を移している。
朝戸とアラクネは、OTCと宇宙奪回艦隊の戦闘から、さらにOTCと人類の戦う最前線へと。
刑事クラビトは、戦技研からの依頼で、2つの宇宙で起こった別々の殺人事件の捜査にあたることになる。この2つの宇宙は、お互いに行き来するのが非常に困難で、この2つの事件も全く無関係と思われるのだが、戦技研はこれを連続殺人事件とみている。
エクジステンスアズアサービス(EaaS)を提供するエクジステンス社をクラビトが訪れると、社長が全宇宙に渡って殺害された。
ASCIIでのみで構成された宇宙で「@」が殺される(その宇宙の住人はみな@だが)
「小説」というソフトウェアの五代目メンテナが、自分の書いた小説の中で殺される。
被害者が殺されなかった殺人事件までもが起きる。
クラビトの妻は、OTCを捕食するインベーダーだということ分かる
他の人の感想
自分の感想やあらすじまとめを書こうとしていたのだけど、ちょっと時間があいてしまったので断念
その代わりというわけではないけれど、自分が読んだ他の人の感想へのリンクを
『エピローグ』円城塔史上、最高傑作 - ゆうれいパジャマβ
円城塔 “エピローグ” - three million cheers.
うちゅうの ほうそくが みだれつづける──『エピローグ』 by 円城塔 - 基本読書
いやしかし、これの次に『プロローグ』が出る(た)んだから、まったく
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