『NOVA10』

管浩江「妄想少女

スポーツクラブに通う中年女性である主人公は、その妄想(とスポーツクラブのプログラム)の中では、若くかっこいいエージェントの女である。
噂好きのおばさん達との付き合いに辟易しつつも、その妄想があるから耐えられる。
近未来が舞台で、スポーツクラブに通うのもただの趣味ではなく、そこで電気を発生させて社会貢献になっているという設定がついている。

柴崎友香メルボルンの想い出」

旅行カメラマンの主人公は、取材でメルボルンへと来ていたのだが、帰国する日にホテルで寝過ごしたことで、妙な事態に巻き込まれる。

北野勇作「味噌樽の中のカブト虫」

頭の中にカブト虫がいて、脳を食われてたっていう話

片瀬二郎「ライフ・オブザリビングデッド」

ゾンビもの
ゾンビになってもサラリーマンだった時と全く同じ行動を繰り返す主人公
ゾンビ化した日本には米兵が駐屯しているが、そんなことは意に介さず、会社に向かう。

山野浩一「地獄八景」

その名の通り、地獄巡りの話
死んで地獄に行ってみたら、地獄も結構近代化されててびっくりっていう

山本弘「大正航時機綺譚」

アインシュタイン来日講演を聴いたある詐欺師が、タイムマシン詐欺を考えつく。
未来の新聞を偽造したり、ジオラマを作ったりして、それがエスカレートしてく。
まあ、コメディなので

伴名練「かみ☆ふぁみ!」

これ面白かった。
作者は88年生まれ、2010年に角川ホラー文庫からデビューしているらしいが、同人誌『伊藤計劃トリビュート』にも寄稿していて、実は読んだことのある人だった。
ラノベっぽい男主人公の一人称で、彼が好きな亜衣先輩とその家族について語られる。
亜衣先輩は、その脳内で全宇宙の全歴史をシミュレートする程度の能力を持っていて、そして彼女と同等の能力を持っている人間が、古代ギリシア独立戦争時代のアメリカや800年後の未来にも存在してて、先輩は彼らと「家族」を作っている。
完全なシミュレータを持つことによって、時間を隔てた人と通信ができたり、歴史を改変できたりするというのが面白いのだが、その一方で、それって全部、亜衣先輩の妄想なのではないかということも一応書かれている。
極光、NOVA10含めて、一番よかった気がする

森奈津子「百合君と百合ちゃん」

少子化対策のために、ある年齢を超えると無理矢理結婚させられることになった時代
レズビアンの「あたし」と百合男子の男性が結婚させられる。結婚させられるといっても同居する必要もなく、しかし、代わりに美男美女のアンドロイドの中に、それぞれの卵子精子をいれセックスさせる、というなんだかよく分からない制度になっている。

倉田タカシ「トーキョーを食べて育った」

「砂と灰の人々」的な?
文章アは面白かったけど、どういう話かちゃんと把握できなかった

木本雅彦「ぼくとわらう」

ダウン症の子どもの話
ライフログを書き換える能力をもって、自伝を書く取材と称して、自分と過去に出会った人たちのライフログを書き換える

円城塔「(Atlas)3」

地図作成局と連続僕殺人事件

瀬名秀明「ミシェル」

『虚無回廊』のスピンオフ作品らしいのだが、『虚無回廊』を読んでいないので、どこまでが元作品に出てくる人物やエピソードで、どこからがオリジナルなのかがよく分からなくて、そのせいで全体的にもよくわからないまま読み進めることになってしまった。
「Wonderful World」とは直接話が繋がっている。「希望」とは全く世界が違う話だが、テーマ的には関係している。
コンミュニケーション、一般言語論、音楽と科学、虚と実をつなぐ無……。
ちょっと一読では内容がまとめられないので、また今度。
けっこうど派手な話が展開されて、瀬名秀明ってこんなの書くっけと思ったけど、『BRAIN VALLEY』とか書いてたもんなーと思うとなんか納得した。あれよりもさらにど派手だけど。