『SFマガジン2019年4月号』

特集「ベスト・オブ・ベスト2018」ということで、『SFが読みたい!』でベストSF2018に選ばれた作家の書き下ろし等が掲載

SFマガジン 2019年 04 月号

SFマガジン 2019年 04 月号

飛浩隆「サーペント」

『零號琴』のトロムボノクとシェリュバンの出会いを描く新作の冒頭部分
大学や研究機関が多く集まる惑星で起きた事件に、技芸士ギルドが関与しているのではないかという疑惑が高まり、その疑惑を払拭するために派遣されたトロムボノク
多くの研究者が集まりながらも、なぜか研究対象とすることがタブーとされている特殊楽器「サーペント」=楽器人間が、事件を引き起こしていた


*1景芳「戦車の中」

とある部隊の隊長「俺」とロボット雪怪が訪れたとある村で出くわしたのは、陸軍総部の偵察任務についているという機械車
しかし、この機械車は様子がおかしい
囚人のジレンマを使った逆チューリングテストを仕掛けて様子を見る
人間が機械を使っているのか、機械が人間を支配しているのか、みたいな世界らしいということを垣間見せる短編
短すぎて、もうちょっと読ませてくれぇという感じだった。
郝景芳(ハオ・ジンファン)といえば「折りたたみ北京」
今年は、白水社から短編集『北京 折りたたみの都市』、早川から短編集『人之彼岸』が刊行予定とのこと

円城塔「書夢回想」

もはや紙の書籍というものがなくなってしまった時代、解体業の私は、とある書店にやってきて、三次元性を活かしていない三次元のデータ構造(つまり紙の本のこと)がうずたかく積まれた書店に圧倒される。
一方、本の一節の中に紛れ込んだ、書店を探す調査員という文字列

上田早夕里「銀翼とプレアシスタント(抄)」

オーシャン・クロニクルシリーズ!!
このシリーズの中で最も現代に近い時代、まだ日本列島がリ・クリティシャスで沈みながらもまだかろうじて日本列島である時代
海上保安庁パイロットをつとめる主人公が、民間の航空ショーの計画に誘われる話
タイトルに(抄)とあるとおり、作品の冒頭の一部が掲載されているのみで、書き下ろしで刊行予定とのこと
今年は、戦前上海三部作の二部の連載も始まるとのこと

高島雄哉「無重力的新世界」

アートオークションサイトを経営する社長が、各ジャンルの売り上げトップアーティスト11名をつれて宇宙旅行
新しいアート作品を作ってほしい。過去の作品に一度も使われていない要素が一つでもあればよし、そうでなければシャトルを爆破する。宇宙に着くや社長はそう宣言した。
画家、彫刻家、作曲家、小説家、舞踊家、調香師、写真家、ゲームデザイナー、配信者、VRアーティスト、AIアーティスト

草野原々「大進化どうぶつデスゲーム」

これも長篇の冒頭部分
3年A組の女子高生18人が、ヒト宇宙とネコ宇宙、どちらが生き残るかを賭けた大進化どうぶつデスゲームに参加させれることになる
突然、学校がジャングルの中へと移動し、謎の化け物に襲われるという漂流教室っぽい始まりと、視点人物が次々と切り替わっていって、A組の人間関係がそれぞれの視点から描かれていく

石川宗生「野生のエルヴィスを追って」

タイトル通り、野生のエルヴィス・プレスリーについて
絶滅危惧種となってしまったヒト科エルヴィス・プレスリー属を追うルポルタージュ風の作品
オーストラリアの砂漠、フィリピンの海、アメリカの空、それぞれの地域のエルヴィス・ハンターの話

ニール・スティーヴンスン「アトモスフェラ・インコグニタ」

解説曰く「「宇宙開発への斬新なアプローチ」を扱ったSF」
ティーブンスンは、ブルーオリジン社のアドバイザーをやっていたとか
この作品は、超高層タワーを建築する話
高度2万メートルなので、正確には宇宙ではないが
主人公のエマは、不動産業界で働いており、ある時、大富豪となった幼馴染のカールと再会する。カールは、エマに対してこの一大プロジェクトのための用地買収を依頼する。
結局、エマは用地買収だけでなく、タワー建設プロジェクトそのものにかかわっていくようになる
タワー建築にまつわる技術的なあれこれが語られ、建築がすすめられていく。
もちろん建築には長い年月がかかり、カールはエマより先に亡くなってしまう
物語の最後は、カールの遺灰を撒くために上層階へと訪れたエマたちが、下から上へといく巨大な雷に遭遇してしまう話
その場にいたエクストリーム・スポーツやっている男が、点検を終えたあと、パラセイリングのために飛んで行ってしまって、それを主人公が「彼はロケットのない宇宙飛行士なんだ」とたたえる。

草上仁「半身の魚/必殺!/二つ折りの恋文が」

ショートショート三篇

樋口恭介「一〇〇〇億の物語」(20190323追記)

人類はソフトウェア化されて、量子サーバの中の自治区で生活していた
「あなた」は、その中で暮らすS・メアリー797
ある日、恋人の身体が縮小しはじめた
それは、リソース不足を補うために、政府が始めた「縮小化」で、ランダムに選ばれた人々から順にサイズが縮小していった。
もともと物理世界でリソースが足りなくなったために、人類はソフトウェア化の道を選んだのだが、サーバ内でもさらにリソース不足が発生するという話になるのはちょっと面白いなと思った
その後、「あなた」だけ何故か縮小化が始まらず、縮小した恋人、家族、友人、そして世界全体の世話をすることになる
という展開になって、世界が入れ子状になっているようだということが書かれていく。
抒情的な時の円城塔っぽい感じがちょっとあった

柞刈湯葉「たのしい超監視世界」

まだ読めてない
あとで読む

三方行成「折り紙食堂 エッシャーのフランベ」

まだ読めてない
あとで読む

*1:赤へんにおおざと