高山、酉島、倉田の3人が旅先からそれぞれ2人に手紙を出しているという形式で進む、リレー書簡小説。
架空旅行記と書簡小説とリレー小説の面白さがかけあわされている。
奇妙奇天烈な土地を旅しながら、それがユーモラスさを生んでいて、読んでいて時々笑ってしまった。
特に、酉島が最初っからアクセル全開で、最後までその勢いが全く緩まない。
また3人とも絵が描けるので、旅先での出来事を絵にしたり、場合によっては、旅先で買った土産品を撮った写真があったりもする。
この作品、元を遡ると、文学フリマで彼らが出していた作品らしいのだが、その際、手作りでそうした土産品などもつけて売っていたらしい。
暗くて暑い国 高山羽根子
泥の町 酉島伝法
飛行機の街 倉田タカシ
城塞都市 高山羽根子
未だ泥の町 酉島伝法
ほふりの村 倉田タカシ
ショッピングモール 高山羽根子
墜落の町 酉島伝法
着水した飛行機 倉田タカシ
島々の話 高山羽根子
高山地帯の村 酉島伝法
川が分かつ街 倉田タカシ
戦争の島 高山羽根子
サンクトペテルブルク-ペトログラード横断鉄道 酉島伝法
基地の中 高山羽根子
暗闇の村 倉田タカシ
神の仮面の町 酉島伝法
ッポンの町 酉島伝法
雨とカーフューの国 倉田タカシ
書類申請を待つ間 高山羽根子
変な通貨の国 高山羽根子
鳥の村 酉島伝法
「出る」ホテル 倉田タカシ
街角の顔出し 高山羽根子
まちあわせ 倉田タカシ
まちあわせ 酉島伝法
まちあわせ 高山羽根子
高山は、「暗くて暑い国」「城塞都市」「ショッピングモール」では、同じ国の同じ街に泊っていて、その後、とある島国へ移動し、「島々の話」「戦争の島」「基地の中」「書類申請を待つ間」は、その島国での話となっている。
ある意味で、3人の中では一番のんびりした(?)旅行をしている感じ
「ショッピングモール」は、年齢別にフロアがあるとても巨大なショッピングモールの話
「戦争の島」は、まだ世界大戦が続いていると信じている2つの軍隊が昼と夜に分かれて訪れる島の話
酉島は、ひどい目に遭う話が多く、一番最初の「泥の町」からして、いきなり強制労働させられていて、手紙を書く筆記具がないので、カーボン紙に釘でひっかいた手紙となっている。
その後も、呪いを受けたり、歓待されたと思ったら死神と思われていたり、自分は実は王だと思っている人格に乗っ取られたり、時間の流れのおかしいところに迷い込んだり、となかなかとんでもない。
最後の「鳥の村」では、巨大な案山子に縛り付けられてしまっている。
倉田は、割とバリエーションがある感じだが、飛行機ネタが2つあったり、船で広い川を渡る話だったり、タクシーで延々走り回る話だったりと、交通機関話が多かったかもしれない。
光の全くない暗闇の国で、手探りでその国の歴史を物語っていると思われる造形を手探りで鑑賞した話と、
カーフューという一種の外出禁止令みたいなものが行政AIのある種のバグのせいで街中にランダムに発生する街で、ひたすらタクシーに乗り続ける羽目になった話とが、特に印象に残った。
リレー書簡としては
まず、おおよそ3人とも最初は、2人から届いた手紙についての感想から入ることが多く、まあ大体酉島がとんでもない目にあっているので、それの心配をしているわけだが、
そもそも3人ともなんだかよく分からない場所を旅しているので、手紙自体がよく分からない着き方をしていて、そのあたりも面白い。
また、高山が登場させた、頭がカニになっているキャラクターが、酉島や倉田の旅にも登場しきていて、ここらへんがリレー小説っぽい
これまた高山が、シュヴァルの理想宮を話題に出していたと思うのだが、それを酉島が、シュヴァル・ツーリスト商会なるものに仕立てあげる。
彼ら3人の手紙が何故ちゃんと届くのか、世界の郵便というのはすごいなあというような話をしていたりもするのだが、どうもシュヴァル・ツーリスト商会なるところが届けてくれているらしいぞ、とか何とかそんな話だったと思う。
3人が3人、てんでバラバラに旅をしているのだが、一応、旅の終わりというものについて手紙で話していて、いつかどこかで3人が出会うことになるはずで、そこが旅の終わりだろう、と。
一番最後の「まちあわせ」という同じタイトルの手紙は、3人がお互いに出会うためにまちあわせをしようとしている手紙になっているが、まあもちろんそれもただのまちあわせではなく、3人とも全然違う場所にいるようにも思えるのだけれど、しかしまあ、なんだか上手く話としてはまとまっているのである。
ゴーウエスト
最後に、宮内悠介が、2013年、大阪の文学フリマに3人と一緒に参加した際の思い出を書いている
なお、宮内は、酉島のとある話の中にも登場している