サブタイトルは「地球外生命に迫る系外惑星の科学」
筆者は天文学の人で、系外惑星探査についての入門書となっている。
2020年3月刊行で、2019年までの最新データに基づき、様々な探査手法の観点から整理されている。例えば、系外惑星探査には、トランジット法、ドップラー法、マイクロレンズ法などがあることが知られているが、それぞれの方法で何が分かるのか、どういう惑星を発見しやすいのか、どの望遠鏡や衛星が使われているのかということが整理されている。
個人的には「そこらへんのことはまあ一応分かってるし~」というつもりだったが、「そうだったのか」ということが結構あった。
また、この本を手に取った目当てとしては、系外惑星の大気観測の話があって、そちらも主な手法やそれで何が分かるのか、今後どのような計画があるのかということがまとめられていて、とてもよかった。最後に、大気観測などで検知できるバイオマーカーの話もあり、かなり内容の詰まった本だと思う。
三部構成となっており、第1部は系外惑星探査のこれまで、第2部は現在分かっていること、第3部は今後の探査について。
第 I 部 系外惑星探査小史――太陽系の理解から第二の地球の可能性まで
第1章 私たちのふるさと――天の川銀河、太陽系第三惑星、地球
本章については省略
第2章 最初の系外惑星が見つかるまで――挑戦、失敗、常識はずれの惑星
- ピート・ファンデンカンプ(1901〜1995)
写真乾板を使って年周視差と固有運動の研究
1963年 アストロメリ法によりバーナード星に惑星があると発表
以後、10年ほど正しいと思われていたが、1973年からデータに疑問符が
- オットー・シュトルーベ(1897〜1963)
1952年 視線速度法(ドップラー法)などを提案
当時の技術では実現できず
- ゴードン・ウォーカー
シュトルーベの提案した視線速度測定は、1980年代には実現可能になってくる
ウォーカーは、1980年から1992年にかけて観測を行い、系外惑星が発見できなかったという発表をしている
- ミシェル・マイヨールとディディエ・ケロー
1995年の国際会議で、系外惑星発見について報告
2019年にノーベル賞受賞
ウォーカーは12年かけても発見できたのだが、何故彼らは発見できたのか
ウォーカーを含め多くの天文学者は、太陽系の木星と同様、公転周期の長い巨大惑星を探していた
が、マイヨールとケローが発見したのは、短周期の巨大惑星(いわゆるホットジュピター)
なお、シュトルーベの1952年の提案では、まさに短周期の巨大惑星を探すべしということが言われていたらしい。
第3章 ケプラー計画がもたらした革命――画期的なアイデア、試練、膨大な発見
- ウィリアム・ポラッキー(1939~)
トランジット法による探査に取り組む
トランジット法は、高い測定精度とできるだけ多く(1万個以上)の恒星を継続的に観測することが必要
1952年 シュトルーベの論文内でトランジット法は視線速度法とともに提案されていたが、当時技術では不可能
1984年 ポラッキー論文でまだ技術的に実現不可能とされる
以後、ポラッキーによるケプラー計画の歩み
1988年 検出器を試作し、宇宙望遠鏡による観測でトランジットを発見可能だと主張
1992年 NASAのディスカバリー計画に対してFRESIP計画を提案→精度の実現可能性に疑問符がつき不採択
1994年 再提案→コスト高を理由に不採択
1996年 ケプラー計画と名前をかえ再提案→リモート操作と自動データ取得が実証されていないと不採択→のち、実証
1998年 再提案→精度が達成できるか実証されていないため不採択→のち、実証
2000年 ケプラー計画採択
2009年 打ち上げ
ボラッキーは、95年のマイヨールとケローによる系外惑星の発見、99年のシャルボノーによるトランジットによる系外惑星の発見が後押しになったと述べている
- ケプラー望遠鏡の成果
2008年までに発見された系外惑星=視線速度法による約250個、トランジット法による約50個
ケプラー→最初の4ヶ月で1235個の惑星候補を発見。2018年までに2000個以上の惑星候補が本物の惑星と確認
小さい惑星やより周期の長い惑星を発見
第 II 部 系外惑星探査の現在――探し方の進化と見えてきた世界
第4章 系外惑星の探し方――あの星に惑星はあるか?
アストロメリ法 | 視線速度法 | トランジット法 | マイクロレンズ法 | 直接撮像法 | |
方法 | 主星の位置変化を測定 | ドップラー効果を利用 | トランジット現象の検出 | レンズ天体の明るさの変化を測定 | 補償光学とコロナグラフを利用 |
見つけやすい星 | 主星から遠く公転周期数年程度の重い惑星 太陽系に近い星 |
主星の近くの重い惑星 現在は地球と同程度の質量の惑星や公転周期10年超えの惑星も発見 |
主星の手前を通過する惑星だけ | スノーライン付近の惑星 | 若い恒星の遠くを回る巨大惑星(現時点の技術) |
分かること | 公転周期・軌道・質量など | 公転周期・軌道・質量の下限値 | 半径・正確な公転周期 視線速度法と組み合わせて真の質量 大気の情報・公転の向き |
質量・主星からの距離 | 主星との距離・表面温度・質量・大気の情報 |
欠点 | - | - | 偽検出(連星など)も多い | マイクロレンズ現象が起きる確率が低い・一組の天体で1回しか起きない | - |
初 | - | 1995年初の発見(マイヨールとケロー) | 1999年初発見(シャルボノー) | 2004年初発見(OGLEと日本のMOA) | 2000年代に観測装置登場。現在までに数十個 |
今後 | ガイア衛星(2013年)により技術的に可能に | 2010年代後半から、赤外線による観測装置が世界各国の望遠鏡に | 2020年代にTESSやPLATO | 2025年WFIRST | 2020年代の超大型地上望遠鏡や大型宇宙望遠鏡 |
(欠点の項目がないものについても欠点がないわけではない)
第5章 系外惑星の多様性――事実はSFより奇なり
公転周期によりウォームジュピターだったり、質量によってホットネプチューンだったりがある。ただし、これらは愛称のようなものなので厳密な定義はない。
2018年に発見されたKELT-9bは、4300℃以上の超高温惑星。鉄やチタンが気体になってるらしい
主星が明る過ぎてこれまで探査のターゲットになっていなかった。KELTは望遠鏡の名前
今後、TESSを使うと高温で明るい恒星も惑星探査の対象となりうる
- エキセントリックプラネット
- 逆行惑星
主星の自転の向きとは逆向きに公転している惑星
ロシター・マクロリーン効果という、トランジット中の視線速度の変化を観測することで、惑星の公転軸と主星の自転軸との傾きがわかる
2009年に、筆者のチームが初めて発見。アメリカのチームに独立に検証を依頼し、アメリカでも同じ結果を確認
アクセプトされるまで、arXivでの公表はしないつもりだったが、ヨーロッパのチームが別の逆行惑星を発見したことをアクセプト前にarXivで公開。
観測と論文投稿は日本、論文アクセプトはアメリカ、arXivでの発表はヨーロッパのチームがそれぞれ最初という、発表を巡ってのデットヒートがあったことがコラムで書かれている
- 遠方巨大惑星
京都モデルでは、主星から離れすぎると巨大惑星はできなくなるはずだが、実際にはそのような惑星も発見されている
- 連星系の惑星
- スーパーアース・ミニネプチューン
地球より大きく天王星・海王星より小さな惑星
大きな岩石惑星の場合もあれば、小さなガス惑星の場合もある。当然、どちらかよくわかっていないケースも多い
このサイズの惑星は太陽系には存在しないが、宇宙ではありふれた存在
- ハビタブルプラネット色々
ハビタブルゾーンにあるからといって液体の水があるとは限らない
また、惑星の大気、陸惑星か水惑星か、主星の年齢でハビタブルゾーンの位置は変化する
-
- Kepler-452b
2019年現在、主星の質量、惑星の半径、惑星の公転周期が、太陽と地球のそれと最もよく似ているとされる惑星
1400光年先
-
- Kepler-186f
452b発見まで、最も地球に近い惑星とされた
主星は赤色矮星
-
- TRAPPIST-1星系
赤色矮星の周囲を7つの惑星が回り、全てが地球と近い質量と半径で、うち3つがハビタブル
40光年先
-
- ティーガーデン星b,c
12.5光年先にあり、2044年から2496年にかけてティーガーデン星の側から太陽系を見ると地球をトランジット観測できる
もし向こうに知的生命体がいたら、地球を発見できる可能性がある
第6章 系外惑星が教えてくれたこと――太陽系は特別か? 地球は特別か?
惑星形成理論の見直し
惑星の軌道が変化することを軌道進化と呼ぶ
軌道進化を考えるのが、新しい惑星形成理論
以下、3つのモデルについて
- 円盤移動モデル
原始惑星系円盤の中で、微惑星や惑星と周囲の物質が相互作用して移動する
(京都モデルはこの相互作用を考慮していない)
円盤が消滅すると移動も起きない
微惑星や岩石惑星が移動するタイプ1移動と、巨大惑星が移動するタイプ2移動がある。
いずれにせよ、外側から内側へと移動する
多様な公転距離に惑星が分布する
ほぼ円軌道の惑星だけができる
移動速度が早すぎるので、何らかの移動速度を遅くするメカニズムが必要だが、それはまだ解明されていない
- 惑星散乱モデル
巨大惑星が近い場所にあると、その相互作用で軌道が変化(惑星散乱)する
軌道が傾いたり、離心率が大きくなる。惑星系から放り出されることもある
また、惑星散乱ののち、主星に近いと円軌道に進化する。あるいは、後述する古在移動が起きる
様々な軌道の惑星を説明できるが、主星から遠い円軌道の惑星は説明できない
- 古在移動モデル
古在由秀(1928~2018)が提案した古在機構の働きによる軌道進化
古在機構とは、1962年に木星が一部の小惑星が引き起こす現象説明するために提案された
系外惑星発見後、系外惑星にも成立する可能性があり注目されるように。
惑星軌道に対して傾いた位置に伴星や巨大惑星がある場合、その影響で、軌道離心率とその星との傾きが変化する(=古在移動する)
古在移動したあとに、主星と近いと円軌道へ軌道進化する
惑星散乱との組み合わせで生じることも考えられる
円盤移動モデル | 惑星散乱モデル | 古在移動モデル | |
ホットジュピター | 〇 | 〇 | 〇 |
エキセントリックジュピター 逆行惑星 |
× | 〇 | 〇 |
遠方巨大惑星 | × | 〇 | × |
それぞれのモデルで説明できるかどうかを〇×で示した
実際にどのモデルで説明できるかは、さらにその惑星系の全体を確認する必要がある。例えば、外側にどんな星があるのか、など
現在の系外惑星探査では、太陽系にあるような惑星は木星以外探査できていない。
これまで発見された系外惑星と太陽系惑星を質量・軌道長半径でプロットした分布図がのっているが、太陽系の惑星が全然外れている
これは、現在の技術では、主星から近いほど、質量が重いほど発見されやすいから
太陽系は惑星系の標準ではないが、太陽系のような惑星系が宇宙全体でありふれているのか、マイナーなのかはまだよく分からない。
太陽系形成理論についても見直しが行われており、ニースモデルやグランドタックモデルが提案されている
第 III 部 第二の地球、発見前夜――ハビタブルプラネット探査とアストロバイオロジー
第7章 さらなる探査へ――第二の地球は見つかるか?
現在動いている、そして今後動き始める、2020年代の系外惑星探査計画について
太陽系に近いところにある小さめの惑星を探すのが大きな流れ
これまで、太陽系に近いところはあまり探索されていなかった
何故かというと、太陽系に近いところは赤色矮星が多かったから
赤色矮星は、可視光で見るととても暗い、また、活動的なので明るさの変化が大きいために、探査ターゲットとして後回しにされてきた
が、ハビタブルゾーンが主星に近いため、ハビタブルプラネットの公転周期が短く、短期間で発見しやすいという利点がある
- 地上からのトランジット惑星探査
- 視線速度法による系外惑星探査
- 宇宙からの全天トランジット探査
という3つの戦略がある
- マース
地上からのトランジット探査の先駆け
ハーバード大学主導で、シャルボノーが率いる
アリゾナ州の天文台(マースノース)と、チリの天文台(マースサウス)の2ヵ所
- TRAPPIST
地上からのトランジット探査
ベルギーのギヨンらのチーム。チリの天文台に設置
同チームは、SPECULOOSという計画も立ち上げている
- HARPS
視線速度法による探査(可視光)
チリの天文台に設置された観測装置
2003年に稼働し、プロキシマbを発見
- CARMENES
視線速度法による探査(近赤外光)
スペインやドイツのチームにより開発された装置で2016年から探査開始
バーナード星とティーガーデン星に惑星を発見している
- その他の視線速度法による観測装置(近赤外光)
日本チームのすばる望遠鏡用IRD
フランス・カナダなどのチームのSPIRu
アメリカチームのHPFなど
全天トランジットサーベイ
- MusCAT
TESSが発見できるのはあくまでも惑星候補
それをフォローするための観測装置
筆者らのチームによる
トランジットによる減光を光の波長ごとに観測し、惑星によるものか連星によるものかを調べる
2017年からはスペイン・カナリア諸島の望遠鏡に2代目を設置
さらに、アメリカ・マウイ島に3代目設置予定
- PLATO
ESAが計画するトランジットサーベイ衛星
TESSは全天探査するが、その分、一つ一つの視野の観測期間が短いので、公転周期が長くなる太陽型星のハビタブル惑星が見つけにくい。
1つの視野を長く観測する(これはケプラーと同じ)ことで太陽型星のハビタブル惑星を発見する戦略
2026年の打ち上げを目指す
- ESPRESSO
太陽型星をまわるハビタブルプラネットを観測するための、視線速度観測装置の一つ
チリにあるヨーロッパ南天文台に設置
TESS1年目で発見された惑星の質量を調べているほか、PLATOが稼働したらPLATOが発見した惑星の質量を調べることになるとされる
- WFIRST
今後の打ち上げが予定されている汎用の宇宙望遠鏡
近赤外光によるマイクロレンズ法を用いた系外惑星探査が計画されている
第8章 あの惑星はどんな世界なんだろう?――系外惑星大気の調べ方
系外惑星の大気について、その調べ方、これまでに分かっていること、今後の探査計画について述べられている
系外惑星大気の調べ方は3つ
- (1)トランジット分光
トランジット惑星が大気を持つ場合、波長によって減光率が異なる
シャルボノーが、ハッブル宇宙望遠鏡を用いた観測によって発見したのが、初(2002年)
ナトリウム原子を含む大気があることが判明
2019年までに、20個程度の惑星で観測が行われている
- (2)二次食分光
二次食とは、惑星が主星の背後を通ること
円軌道のトランジット惑星の場合、必ず二次食が起きるが、エキセントリックプラネットの場合は二次食が起きるとは限らない。
二次食が起きる前後は、惑星からの反射光があるが、二次食中はそれが観測されなくなるので、その減光分を調べる観測
当然、トランジット分光よりさらに難しい
が、惑星の大気組成だけでなく、惑星の表面温度なども分かる。
2005年に初検出
- (3)直接撮像分光
惑星を直接撮像法で捉えている場合、それをさらに分光観測することができる
直接撮像で発見された惑星に対しては既に行われているが、主星から離れた巨大惑星しかまだない。
今後、近くて小さい惑星、特にハビタブルプラネットの観測が目標となっているが、現在の技術ではまだ無理
系外惑星の大気について分かってきたこと
分からないことの方が多く、分かっているのは多様だということ
そもそもホットジュピター自体が多様
雲に覆われた星もあれば、晴れ間のある星もある
表面温度も1000Kを下回るものから4000K以上のものまで
大気の主成分は水素だが、それに加えて何があるかはまた多様。二酸化炭素、一酸化炭素、メタン、水蒸気などが発見されている
水素以外の分子の存在は、惑星形成過程を調べる手がかりになる
- ホットスーパーアース・ホットネプチューン
厚い雲に覆われている星や、うすくもやのかかっている惑星がある
土星の衛星タイタンには、ソリンと呼ばれるもやがあるが、それと同様の、紫外線が有機化合物に反応してできたもやだと考えられている
- 岩石惑星
ほとんど観測例がないが、数少ない観測例として
TRAPIST-1の惑星について、少なくとも水素を主成分とした大気は持っていないようだ、ということが分かったくらい
また、TESSが発見したとある岩石惑星について、大気観測の期待がされたが、実際に観測して大気がないことがわかった。主星にあまりにも近く、紫外線で散逸したらしい
今後の探査計画について
トランジット分光や二次食分光が可能
ただし、汎用望遠鏡なので、系外惑星ばかりを観測することができるわけではないので、予め有望そうな系外惑星を絞っておく必要がある
二酸化炭素や水蒸気の検出が可能だが、酸素の検出はできない
- ARIEL
ESAによる、トランジット惑星の大気観測に特化した初の宇宙望遠鏡
2018年に採択され、2028年の打ち上げを目指す
ただし、ハビタブルな地球サイズ惑星の酸素や水蒸気を探すことはできない
多数の系外惑星の大気を観測して、その多様性を調べる
- WSO-UV
ロシア(!)が打ち上げを検討している紫外線専用宇宙望遠鏡
水素や酸素の大きく広がった大気を持った惑星があると、紫外線でトランジット観測ができる
酸素の大きく広がった大気を持った惑星の一例が地球
ハッブルは紫外線を観測できたが、JWSTはできないので、ハッブルが退役した場合、その穴を埋められるのがWSO-UV
2020年代半ば以降の、超大型地上望遠鏡
トランジット分光や直接撮像分光を目指す
太陽系に近い赤色矮星のまわりをまわるハビタブル惑星の酸素検出
- LUVOIR(ルーヴァー)とHabex(ハベックス)
NASAの2030年代の宇宙望遠鏡計画
検討中でまだ採択されてはいない
いずれも直接撮像法で太陽型星のまわりを回る火星サイズ以上のハビタブル惑星を探し、直接撮像分光を行うというもの
第9章 系外惑星とアストロバイオロジー――宇宙に生命の兆候を探す
アストロバイオロジーの観点から、生命を探すためには、一体何を探せばいいのか、何が検出されると生命の兆候と考えられるのか解説している
まず、ハビタブルプラネットの環境が多様であるということと、太陽型星の回りをまわるハビタブルプラネット(地球)と赤色矮星の周りをまわるハビタブルプラネットの環境の特徴をそれぞれ比較している。
赤色矮星を回るハビタブルプラネットはそもそも生命が生存可能なのか
まず、化学合成生物は光環境に左右されないので生存可能である、と
次に、非酸素発生型光合成生物について、近赤外光を利用しているので、紫外線や宇宙線を回避できる環境があれば生存可能だろうと、と。
酸素型光合成生物については、可視光を利用しており、赤色矮星は可視光が弱いので、これは難しいかもしれない、と
生命由来の大気成分として可能性があるのが、酸素、オゾン、メタン
また、酸素発生型光合成生物がいる場合、レッドエッジという反射特性がある
ただし、分光観測で反射特性を見つけるのはかなり難しい
もちろん、上の何かが発見されたからといって、即座に生命がいることの証拠にはならない(火星のメタンがなかなか決定打にならないように)
ここでは、2010年代になってわかってきた、酸素の非生命的な発生過程について3つあげられている
(1)水分子の光解離
水分子が紫外線によって分解され酸素が生じる
赤色矮星の場合、若いと活動的で次第に活動が弱まる。活動が弱まるとハビタブルゾーンが内側に移動する。主星が若い時に、この過程で酸素が生じた惑星が、のちにハビタブルゾーンに入ってくる可能性がある
生命由来によるものよりも酸素濃度が濃くなり、O4という分子もできる
さらに内側の惑星でも、同様に濃い酸素の大気ができる
(2)二酸化炭素の光解離
二酸化炭素が紫外線によって酸素が生じる
酸素だけでなく二酸化炭素も豊富、一酸化炭素もある、というのがこの発生過程の特徴
一酸化炭素は生命由来では発生しない
(3)光触媒による液体の水の光分解
酸化チタンに紫外線があたると、液体の水が酸素と水素に分解される
地球と同濃度の酸素が生じるには、7万㎢の酸化チタンがいるので、そのような条件を満たすハビタブルプラネットがどれくらいあるのかは不明
この過程で発生した酸素の場合、生命由来の酸素と区別することが困難
また、どの過程でもメタンは発生しないので、酸素とメタンが両方検出された場合、生命由来の可能性が高くなる
レッドエッジについて
赤色矮星は可視光が弱く近赤外光が強いので、そうした環境下で進化した光合成生物がいたとしたら、レッドエッジも異なるのではないか、というのが2010年代前半まで言われてきた
が、最近では、赤色矮星で光合成生物が進化した場合も、地球の光合成生物と同じ波長を利用するだろうという説が主流になりつつあるという
というのは、光合成生物が生まれるとしたら水中で、水の中では、近赤外光は吸収され可視光だけが届くから
感想
マイヨールとケローはもちろん知っていたが、それ以外の人たちというか系外惑星探査前史みたいなの全然知らなかった。
シュトルーベすげーなというのと、シャルボノーがその後の章でも名前が度々出てくる
マイクロレンズ法のこと間違って覚えていた気がする。スノーライン周辺の惑星が発見されやすいって知らなかったので面白かった
新しい惑星形成理論の話も整理されて分かりやすかった
ニースモデルやグランドタックモデルというのは、あくまで太陽系の話なのだな。
今後の探査計画の話、やはり面白い。知ってるものもあるが、知らないものも多かった。ESA関連の知らないの多い
ロシアの衛星計画について、この時期に読むとつらいな
系外惑星大気の観測方法について、何となく分光観測としか知らなかったので、かなり勉強になった
また、酸素の非生命的な発生過程の話とかも全然知らなかったので勉強になった