海部宣男、星元紀、丸山茂徳編著『宇宙生命論』

アストロバイオロジーの教科書的1冊
執筆者として、各分野の代表的研究者が20名以上揃えられている。
第1章・第2章が生物学、第3章・第4章が天文学、第5章は人類学や知的文明探査についてとなっている。
全部内容まとめようと思ったら、ちょっと長すぎるので、

第1章 生命とは何か
 1-1 生命の定義(山岸明彦)
 1-2 生命の潜在的多様性(長沼毅、山岸明彦)
 コラム1 ヒ素細菌(山岸明彦)
 コラム2 酸化鉄還元細菌(伊藤隆
 コラム3 嫌気性生物代謝の進化(山下雅道)
 1-3 生命の連続性と地球型生物の世界(星元紀)
 展望 生命発生研究の将来
第2章 地球史と生物進化
 2-1 生命の起源(大石雅寿、小林憲正、山岸明彦)
 2-2 地球環境と生命の共進化(田近英一)
 2-3 地球生命史から宇宙生物学の体系化へ(磯崎行雄、大森聡一、丸山茂徳
 展望 地球史および生物進化の理解とアストロバイオロジー(田近英一)
第3章 ハビタブル惑星
 3-1 惑星形成論(井田茂)
 3-2 スーパーアース研究の現状(生駒大洋)
 3-3 水の取り込み(玄田英典)
 3-4 ハビタブル惑星の条件(阿部豊
 展望 生命存在可能惑星の理論研究の現在と将来(井田茂)
 コラム4 スノーボールプラネット(田近英一)
第4章 地球外生命の探査
 4-1 太陽系内探査(佐々木晶、木村淳
 コラム5 日本の火星生命探査計画(山岸明彦)
 コラム6 太陽系内生命探査の将来計画(山岸明彦)
 4-2 太陽系外惑星探査(田村元秀、芝井広)
 コラム7 ペイル・ブルー・ドットを超えて(須藤靖)
 展望 はたして地球外生命はみつかるか(芝井広)
第5章 人類・文明と宇宙知的生命探査
 5-1 知能の進化と科学文明にいたる道(長谷川眞理子
 5-2 第4の生物,ヒト(星元紀)
 5-3 宇宙文明とその探査(海部宣男
 展望 宇宙の中で人類文明を考える(海部宣男
 コラム8 UFO事件とフェルミパラドックス

第1章 生命とは何か

RNAワールドの話とか、水がなんで重要なのかとか、酸化還元エネルギーの話とか、元素の話とか
タイタンのような水ではなくメタン・エタンの海における生命の可能性とかケイ素生物の可能性とかについても触れられたりしている。
最後に、合成生物学の話がされている
Magic20のアミノ酸やキラリティは必然なのかどうか

第2章 地球史と生物進化

生命の起源について、自分は高井研『生命はなぜ生まれたのか――地球生物の起源の謎に迫る』 - logical cypher scapeの印象が強くて、どうしても海底熱水圏だと思いがちだけど、実際には色々な説がある。例えば、RNA合成のことを考えると、海中よりも陸上の温泉の方が適しているとか。 
タンパク質が先か核酸が先かという点でも議論があり、さらに、粘土鉱物ワールド仮説とか金属硫化物ワールド仮説とかゴミ袋ワールド仮説とか色々ある。
全生物の共通祖先(コモノート)は実は複数いたんじゃないかという説や、RNAがコモノートで3つのドメインに分かれたあとにDNAを獲得したのではないかという説もあるらしい。コモノートは超好熱菌という説も、この本では賛否両論あるとしている。
2章3節の方では、湖水環境が生命の起源たる条件を満たすという説が展開されている。
また、水と大気と大陸(元素(リンなど)の供給源として)の3つをハビタブル・トリニティと呼び、惑星のサイズと初期海洋質量が生命誕生の条件になっている、とも。

第3章 ハビタブル惑星

惑星形成理論は、1960年代のサフロノフ・モデルと1980年代の林忠四郎らによる京都モデルがあわせて「標準モデル」となっている
系外惑星の発見で、惑星軌道移動の問題がでてきている
スーパーアースは、岩石型惑星だけでなく氷惑星も多く含む
地球の水の量は実は少ない
水をどこから取り込んだのか3つの説がある
(1)微惑星にすでに含まれていた(2)隕石や彗星から(3)原始太陽系円盤ガスの捕獲
(1)だと水が多くなりすぎる
(2)はもともとコアの元素組成を説明するための説だったが、もっとも有力
(3)は地球の軌道を説明するのには都合がよいが、水素と重水素の比という点からは否定的
ハビタブルゾーンの検討
水がある、だけならともかく、他にも色々な条件を検討しなければならなさそう。環境の安定性とか考えると、惑星サイズとか陸の存在とか。
食の観測ができると、大気組成の情報が得られる
2010年代後半打ち上げ予定のTESSケプラーのKモード観測、2020年代稼働予定のTMTやE-ELTによる観測に期待
液体の水を持っている惑星よりもスノーボールプラネットの方が確率的には多い。しかし、内部海がある可能性がある。

第4章 地球外生命の探査

火星の探査
最近あったメタンガス発見の報。メタンガスは、メタン生成菌による放出もあるが、非生物的な機構による放出もあるし、メタン生成菌がいるとしたら地下深くで発見できない。一方、メタンをエネルギー源とするメタン酸化菌は表面近くにいるはずなので、発見できる可能性があり、日本の探査計画がある。
エウロパ
地形や磁場の乱れから、内部海があることが強く示唆される
系外惑星
探査法法として、(1)ドップラー法、(2)アストロメトリ法、(3)トランジット法、(4)重力マイクロレンズ法、(5)直接観測法
(1)約80%の系外惑星が発見されている方法。重い星が見つかりやすい。木星サイズなら発見できるが、地球サイズの星は発見しにくい。
(2)この手法で発見された系外惑星はない
(3)偽陽性があるのでクロスチェックが必要。逆行惑星や第2の惑星が発見される。
(5)外側の惑星の情報が得やすい
今後の計画
ケプラーのK2ミッション(今行われている9
テスミッション(2017年打上予定・NASA
プラトーミッション(2024年打上予定・ESA
日本の重力マイクロレンズ法による観測
韓国のKMTNet計画
WFIRST-AFTA計画(2024年打上予定・NASA
ハッブル宇宙望遠鏡すばる望遠鏡による直接撮像
大電波干渉計アルマによる円盤観測
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(2020年代頃打上予定・NASA)→水蒸気量の測定が可能に
TMT、GMT、E-ELT
赤外線宇宙望遠鏡SPICA(2027〜28年打上予定・JAXA
New World Observer(2030年代中頃・NASA

第5章 人類・文明と宇宙知的生命探査

前半は人類史
ホミノイドが類人猿、ホミニドは類人猿の中のヒト科
生物の質量で比べると、ヒトや家畜が上位を占めるらしい
あと、絶滅速度は、ペルム紀の絶滅の2倍だとか
そう考えると、人類のインパクトは結構あるなあ


後半は知的生命探査
CETIって、くじら座τ星タウ・セティとの語呂合わせらしい
元々、CETIで「交信Communication」だったのが、次第にSETIで「Search探査」に変わっていったらしい
ドレイク方程式や銀河系ハビタブルゾーンの話
銀河系にも、ガス密度とか超新星爆発放射線を食らうかどうかで、ハビタブルゾーンがあるだろ、と
ドレイク方程式は、地球と交信可能な文明の数を推定するというおの
1961年に開催されたセミナで、ドレイク、モリソン、セーガンら10名ほどで検討された。その時、推定された値は10
現在、筆者が改めて推定しなおした値は90
ただ、銀河ハビタブルゾーン内にある数で、現在計画されているSKAの探査能力の範囲だと、あるかどうか微妙なところ。文明の持続期間をどれくらい見積もるかによって変わってくる。


宇宙生命論

宇宙生命論