全10章に分かれて、キーワードごとに解説されているガイドブック。
一つのキーワードあたり、基本的に1見開き2ページで書かれているのだが、内容はその2ページにぎゅっと濃縮されている感じ。
第1章 現代哲学の座標軸(野家啓一・門脇俊介)
第2章 論理(村上祐子)
第3章 知識(戸田山和久)
第4章 言語(清塚邦彦)
第5章 行為(柏端達也)
第6章 心の哲学(信原幸弘)
第7章 科学(松本俊吉)
第8章 時間と形而上学(佐藤透)
第9章 価値と倫理(福間聡)
第10章 人間(小林睦)
まあこんな感じで、書き手のラインナップもすごい。
編者あとがきに書かれているが、企画自体は門脇さんの生前から進められており、生前に書き遺した原稿が使われている。
第1章 現代哲学の座標軸(野家啓一・門脇俊介)
実在論と反実在論、自然主義と反自然主義など、哲学における様々な対立軸が紹介されている。
門脇『現代哲学』なんかとも通じている内容ではないかと。
あと、この本は全体的に分析哲学よりだけど、この章は分析系も大陸系もカバーしている
ポストコロニアリズム、ポストモダン、実証主義論争などの項目もたっているし、1980年代のドイツにおけるヴァイツゼッカーの「過去に目を閉ざす者は〜」から、歴史修正主義の登場などの歴史家論争についても書かれていたりする。
第2章 論理(村上祐子)
伝統的な論理学や数学の哲学から始まり、確定記述や様相論理、指示の因果説まで触れていて
加えて、2つの真理理論の区別についての項目があって、これはあんまり入門書の類では見ない話かなと思った。
真理の担い手に関する真理理論、これは、言語哲学の範疇(対応説とか真理メーカー説とか)
真理述語の性質に関する真理理論、これは、哲学的論理学の範疇(真理の余剰説とか)
第3章 知識(戸田山和久)
この本、著者一覧を見れば誰がどの章を担当しているのか書いてあるのだが、目次や章扉には著者名が書いていないので、特段意識しなければ誰が書いたか意識しないで読むことになる。
しかし、この章だけは見た瞬間に戸田山さんが書いたとすぐに分かったw
暗黙知について、そういうものがあるかどうか疑わしいとしていて、もしあるとするならば、チョムスキーのいう「言語の知識」があげられるかもしれない、と。現状では、暗黙知なる概念が有意味なものかどうかはまだ分からない、と。
あと、アンドロイド認識論なる項目も立てられている
第5章 行為(柏端達也)
傾向性のところで、アフォーダンスを環境の傾向性として説明できるのではと論じていたのが面白かった。
第9章 価値と倫理(福間聡)
存在/当為、事実/価値の区別からリベラリズム/リバタリアニズム/コミュニタリアニズムや討議倫理学など
読書案内
各章ごとに、日本語で読める本が紹介されている。
この読書案内も、筆者ごとの違いがなんとなくある。
- 作者: 野家啓一,門脇俊介
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2016/01/14
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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