2023年まとめ

今年は、去年から引き続きで「海外文学を読むぞ」と言うのを一つのテーマとして本を読み進めることができた。自分としてはかなり小説を読んだ冊数が多い年となった。
小説でいうと、大江健三郎もちょいちょい読んだ。
振り返ってみると、美学・美術関係もそれなりに充実していたかな、と思う。美術展に3つ行っている。
それから特筆すべきこととしては、映画がある。映画館で4本見ている。いや、全然少ないじゃんと思われるかもしれないが、コロナ前も年間に2,3本見る程度で、コロナで2年程行けていなかったので、久しぶりにたくさん見たという感じがある(しかもおよそ1ヶ月の間に集中しているからさらにそう思うのかも)。映像配信サービスでも、今年は何本か見たので、映画をたくさん見た感がある(合計しても10本いかないのだが)。
美術展や映画など、コロナ禍の間(20・21年)には行くのを中断していたものが、この2年間(22・23年)で戻ってきた感じだが、未だ音楽イベントの類は行けていない。もっとも、まるでコロナが原因で行っていなかったかのように書いたが(そういう理由もなくはないが)、行けていない理由は本当はコロナではないので、音楽イベントはまだしばらく行けないと思う。行きたい気持ちはある。
読書の話に戻ると、2022年は自然科学系の本をあまり読まなかったが、今年は自然科学系についてもある程度は読めたかなあと思っている。
一方、哲学・美学関係はほとんどなし。振り返ってみると、分析哲学の本が全くない。いや実は、今年に限らず他の年でも分析哲学の本は大して読んでいなかったりするのだが。来年はもう少し哲学の本を増やしたいですね。
海外文学は読んだけれど、英語の本は一冊も読んでない! 手もつけなかったな……。

月別の流れ

上述の通り、今年は海外文学を中心に小説を読む年だったので、大体毎月小説を読んでいたのだが、おおよそ4月、6月、11月は非小説を読む期間にあてていた。時々やっぱり、小説じゃない本を読みたくなる時期がくる。
4月は雑多、6月は地球科学・古生物学、11月は美学・美術が中心だった。

海外文学





19冊読んでいて、2・3月と8月が特に多い感じがする。
上に、特に面白かったものとして5冊挙げてみた。並べてみると短篇集が多いな。『黒檀』も短編集みたいなものだし。
短編集は、いくつかつまらないものが混ざっていても、面白かった本としてあげられるけど、長編は、つまらなさ成分がある程度混ざってくると挙げにくくなる気がして、不利なのかもしれない
スティーヴ・エリクソン『黒い時計の旅』(柴田元幸・訳) - logical cypher scape2も面白かったけど、ちょうど5冊ときりがいいのと、再読なので外した。次点で甘耀明『鬼殺し』(白水紀子・訳) - logical cypher scape2かなあ。
木原善彦『実験する小説たち』 - logical cypher scape2を読んだので、いくつか実験小説とされる作品も読んだけど、正直、そこまで刺さらなかった。まあまあ面白くはあったけど。
「海外文学読むぞ」については、以下の通りまとめ記事も作っておいた。
海外文学読むぞまとめ - logical cypher scape2
海外文学読むぞまとめ2 - logical cypher scape2

それ以外の小説





今年は、大江健三郎をいくつか読んだのが特筆すべきことだったかなと思う。
2023年に読んだ大江健三郎まとめ - logical cypher scape2
阿部和重を久しぶりに読んだ。あ、あと、オーディオブック初体験とか。
面白かった作品を挙げると上述の通り。
SFは、日本SFを4冊、海外SFを4冊読んだが、それぞれギリシャSFと倉田タカシが群を抜いていた。

映画

8・9月に動画配信サービスで『犬王』 - logical cypher scape2『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』 - logical cypher scape2『DUNE/デューン 砂の惑星』 - logical cypher scape2を立て続けに見た。
で、ブログには書いていなかったが、6月にやはり動画配信サービスで『花束みたいな恋をした』を、10月には『アナと雪の女王』を見ている。アナ雪は以前にも見たことがあったと思うが。
で、11月以降、劇場で立て続けに『ザ・クリエイター/創造者』 - logical cypher scape2『ゴジラ-1.0』 - logical cypher scape2『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』 - logical cypher scape2を見た。さらに、ブログに書いていないが12月に『ウィッシュ』も見た。

恐竜・地球科学

これは6月前後にほぼ集中しているのだけど、さらにもう少し細分化すると以下の3つに分けられて、それぞれ下記の通り。

  • 恐竜・古生物

土屋健『前恐竜時代』 - logical cypher scape2
恐竜博2023 - logical cypher scape2
エルサ・パンチローリ『哺乳類前史』(的場知之・訳) - logical cypher scape2
『科学2023年11月号』(特集:新しい恐竜学) - logical cypher scape2

  • 恐竜表象

「恐竜図鑑―失われた世界の想像/創造」展 - logical cypher scape2
マーティン・J・S・ラドウィック『太古の光景』(菅谷暁・訳) - logical cypher scape2
去年、2022年振り返り - logical cypher scape2を書いたときに「恐竜美学」というのをぶち上げたけど、それの延長で。しかしまあ、展覧会1つ行って、本を1冊読んだだけといえばだけ。

  • 地球科学

『地球・惑星・生命』 - logical cypher scape2
是永淳『絵でわかるプレートテクトニクス』 - logical cypher scape2
横山祐典『地球46億年気候大変動―炭素循環で読み解く、地球気候の過去・現在・未来』 - logical cypher scape2
古生物学やアストロバイオロジーへの関心から、部分的に地球科学への関心はあったけれど、地球科学そのものの本はあまり読んだことがなかった。とりあえず読んでみるかと思った『地球・惑星・生命』が面白かったので、続けてプレートテクトニクスの本と気候変動の本を読んで、6月は予定外に地球科学本月間になった。

その他自然科学・工学系



いずれも、2020年に刊行された本で、出た当時から気になっていていずれも「読みたい本リスト」に長いこと入りっぱなしになっていた本。まあ、そういう本は枚挙に暇がないが、2冊読めてよかったな、と。
2020年に生命科学系の本をちょいちょい読んでいた(2020年ふりかえり - logical cypher scape2)ので、クォメン本はその際の読み残しかな、とも。



今年も、日経サイエンスとNewtonはちょいちょい読んでいた。2月号、5月号、6月号、8月号、10月号、11月号を読んだみたい。
で、今年の一大トピックといえばやはりChatGPTないしLLMだろう。両誌でも時々記事が出ていたが、特に10月号では特集が組まれていた。これらを読んだら、何となく自分の中でもLLMへの関心が落ち着いたところがある。

  • 意識の科学

『科学2023年6月号』(特集:意識とクオリアの科学は可能か?) - logical cypher scape2
なぜか今年は、岩波の『科学』も2号ほど読んだ。一つは恐竜特集で上述した。もう一つは意識特集だった。意識については去年、生体の科学 Vol.73 No.1 2022年 02月号 特集 意識 - logical cypher scape2土谷尚嗣『クオリアはどこからくるのか?』 - logical cypher scape2を読んだが、その続きといった感じ。意識研究は、完全に哲学から科学へと移行したなという感じがする。

その他人文・社会系


なんか、すごい分量の記事を書いた。
「思想」への興味が燻り始めているが、持て余してもいる。

『物語の外の虚構へ』反応

倉根啓「ゲームプレイはいかにして物語になるのか」 - logical cypher scape2
『物語の外の虚構へ』への反応 - logical cypher scape2
嬉しい話で、書いたものへの反応がちらほらと出てきている。
さらにその後、竹内未生の「めくるめく記号に乗って旅に出ようか―― 「ほろよい」C M(with 「水星」×「今夜はブギー・バック」)の魅力と危うさ」でも、注釈で少し触れていただいた。
これについては、竹内さんからご連絡いただき、抜き刷りpdfをご恵投いただいた。感想書けていなくて申し訳ないが、日本のアニメにおける文法が「ほろよい」CMにどのように応用されたのか、ということが書かれている。アニメにおける文法の分析について、関心に共通する箇所があるかなと思った。
この竹内さんの論文は、『ジリィスタイル』vol.3に掲載されたものが、上述の記事で紹介させてもらったセンケイさんの論文が同誌のvol.2掲載であり、お二人の間で共通の参照項としていただているようで、ありがたい限りです。
また、上述の倉根さんについて、上述の論文をもとにした学会報告を行ったとのことで、「アニメーションに見られる 時間の非整合性について」反省会 - フィクションを哲学するにおいてスライドが公開されていた。

来年に向けて

  • 小説

海外文学関係で、ピックアップしていたけど今年読み損ねたものが残っているので、そのあたりを拾いつつ、一方でSF読む比重を増やそうかなと思う。今年出た作品だったり、逆に古い作品だったりで気になるものが増えてきた。

美学と書いたけど、直近で読みたい本に美学系はなくて、美術系で2冊くらいあって、それ以外だと、表象文化論というかメディア論というかそっち系でちょっと読みたいかなあと思っている本がある。
あとは、恐竜表象・恐竜文化とか科学表象とかもちょっと拾えたらいいかなあとは思っている。
最近英語の本を読んでいなくて、今後もしばらく英語の本を読む気になっていないが、ゴンブリッチの”Art &Illusion”が手元にあるから、読んでみたいよなあと思いつつ、あの本、ごつすぎるからなあ、とも。

  • 哲学・科学哲学

実在論とか科学表象とか科学哲学関係で読みたい本が数冊たまっている。
それ以外だと、ぽろぽろ単発的に読みたい本はあるが、特にこのジャンルを、みたいなのはあんまりないかも。『哲学探究』読みかけで止まっているのどうにかしたいかなあ……。

  • 世界史

軍靴のバルツァー』からの『リラと戦禍の風』、あるいはキュビスム展の流れで、第一次世界大戦前後が気になり始めている。
というか、もともと戦間期の文化史は興味があって、なので大正史も読んでて面白かったなあというのがあって、もう少しちゃんと勉強しようかなと思った。
しかし、そう思って、ググり始めると気になる本が山のように出てきて「ええと、どうすんのよ、これ」とも思っている。
ベル・エポックから1920年代、パリ、ウィーン、ベルリンないしヴァイマル共和国、ニューヨーク、ロンドンあたりの、美術・芸術、大衆文化、社会主義、哲学・思想についての概観をつかむ、というか。
とりあえず、新書・文庫系の本をピックアップしている。

  • 自然科学

進化生物学あたりで読みたい本がぽろぽろあって、集中的に読めたら読みたい
あと、ブルーバックスkindleセールがあったときに買った本がいくつかあって、これはあえて、それぞれ異なるジャンルの本を買っていて、どうにかしておきたい。kindleセールで買った本はそのまま積みがちでよくない(ハヤカワセールで買った奴と講談社セールで買った奴でまだ読めてない奴があるー)。


とりあえず直近で読みたいかなーと思って本をリストアップしているスプレッドシートがあり、そこに72冊載ってるんですが、今年読んだ本、53冊っぽいぞ。どうすんだよ、これ。


来年もまたよろしくお願いいたします。
みなさまよいお年を