『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』

ジュラシック・ワールド』三部作の完結編という位置づけの本作
事前に評判は多少聞いていたので、まあ確かに物語としてはあまりよくなかったが、個別のシーンではよいシーンが結構あって、結構楽しめた。
やっぱり『ジュラシック・ワールド/炎の王国』 - logical cypher scape2がよすぎたな、と思う。

あらすじとか

前作『炎の王国』のラストで、恐竜が世界中に広まってしまった後から始まる。
先に言ってしまうと、本作の最大の問題は、この恐竜が世界中に広まってしまった問題に何も向き合っていないこと。
前半は、まだしも各地での恐竜シーンが見られるのだが、後半は、バイオシン社が管理する「サンクチュアリ」が舞台に移り、結局、パーク的なところのカタストロフィが描かれて終わる展開となる。
さて本作では、『ジュラシック・ワールド』三部作でずっと主人公であったオーウェンとクレアに加えて、『ジュラシック・パーク』のアラン・グラント、エリー・サトラー、イアン・マルコムの3博士が出てくる。
マルコムは『炎の王国』にも出てきたが、グラントとサトラーは久しぶりの再登場のはず。正直自分は『ジュラシック・パーク』の熱狂的ファンというわけではないが(映画は2回くらいしか見ていない気がする)、しかし、やはりこの2人の登場にはテンションがあがった。
ジュラシック・パーク』組としては、ルイス・ドジスンも登場する。
名前に聞き覚えあるなと思ってググって「ああ、やっぱりJPに出てた奴だな」と確認したのだが、元々インジェン社のライバル企業に勤めていて、JPのネドリーが胚サンプルを渡すはずの相手だった奴で、なんと本作ではバイオシン社のCEOまで出世している。
さて、あらすじとしては
オーウェンとクレアは、『炎の王国』で出会ったメイジーを匿って山の中で3人で暮らしている。メイジーはクローンであり、オーウェンとクレアとは血のつながりがない。彼女を守るためとはいえ、自由を制限される生活に、メイジーは時々隠れて町へおりている。しかし、あるとき、ブルーの子であるベータともども、誘拐されてしまう。
オーウェンとクレアは、ワールド時代の同僚のつてを辿って、恐竜の闇マーケットへ潜入し、そして、メイジーとベータが連れて行かれたバイオシン社のサンクチュアリへと向かう。
一方、サトラーは、大規模な蝗害をもたらしたイナゴがバイオシン社で遺伝子改造された種ではないかと疑う。折しも、マルコムから、バイオシン社のサンクチュアリへの招待を受けることになる。もう長らく会っていなかったグラントを誘って、サンクチュアリへと赴く。
グラントとサトラーは、イナゴのDNAサンプルを採取しにプラントへと忍び込むくだりで、逃げてきたメイジーと出会う。
さらに、サンクチュアリ自体が大規模な山火事に見舞われ、まあなんやかんやで、オーウェン・クレア組とグラント・サトラー組が合流して、大脱出、と。
毎度おなじみ、悪役は恐竜に襲われて死亡、というのも、メイジーを誘拐した実行犯の男とドジスンであって、特にドジスンの死に様はJPからの因果があって納得の結末なのだが、今回、登場人物のほとんどが味方なので、それくらいしかなかったなあ、とも。
ヘンリー・ウーって立ち位置がいまいちよく分からん人よな。
メイジーがクローンで遺伝子操作されてて、そこから医療応用がーみたいな話が、さっぱり具体性をもたず、マクガフィンだとしても話の中で浮いている印象……。

個別のシーンや恐竜など

  • 冒頭モササウルス

ベーリング海トロール船をモササウルスが襲うシーンは、怪獣映画の冒頭感があってよかった。その後、ニュース映像で恐竜が世界各地にいる様子が映し出されたりして、怪獣ディザスターものっぽい雰囲気が醸し出されていた。結局、そのあたりについては肩透かしに終わるわけだが……。

恐竜が復活して野生化していった様子が映し出される前半戦は、絵としては印象的なものがいくつか出てくる。
雪の降る中をゆっくりと歩くアパトサウルスとそれを静かに見守る人々、というのは絵としてよかった。雪に適応できるの、という疑問はあるが。
オーウェンがカウボーイよろしくパラサウロロフスを追い立てるシーンとかも見応えある。

  • マルタの闇マーケットでのカルノタウルスなど

マルタでの恐竜闇マーケットは、とにかく色々な恐竜がたくさん出てくるが、カルノタウスルが二頭出てきたりしたのが印象に残った。

遺伝子改造されて生物兵器となったアトロキラプトルと、オーウェン・クレアのチェイスシーン
クレアは建物から建物を飛び移り、オーウェンはバイクで狭い街路を逃げる。
アトロキラプトルを操るサントスという女性、何故かクレアたちを助けてくれることになったヘリのパイロットのケイラが加わり、クレアとオーウェンがケイラのヘリに乗り込みマルタを脱出するまでの一連のシークエンスは、ミッション・インポッシブル的なスパイアクション映画のようなチェイスシーンとなっている。
追っかけてるのが恐竜じゃなくても成り立つシーンではあるが、しかしまあ、やっぱり純粋に見てて楽しいシーンだった。
本作で一番面白い部分はここだったのでは、と思う。

サンクチュアリ上空でケイラのヘリに襲いかかるケツァルコアトルス
ケツァルコアトルスってそもそもあんなに飛べたのかとかもあると思うけど、まあしかし、ケツァルコアトルスのような巨大翼竜が襲いかかってくるのは、絶望感ある
そんなただ中に1人脱出させられるクレアよ

  • 凍ったダム湖(?)と羽毛ラプトル

ケイラとオーウェンは、凍り付いたダム湖のようなところに不時着する。
そこに襲いかかってくる羽毛恐竜
水面下に潜って襲ってくる

  • テリジノサウルス

一方、森に不時着したクレアの近くにはテリジノサウルスが!
植物食恐竜ではあるが、まあデカいし、あの爪だしで、かなり怖く描かれている
クレアが音を立てないように移動し、さらに水の中に潜ってテリジノサウルスをなんとかやり過ごすシークエンスは、まさにスリラー映画的な感じ

  • ディロフォサウルス

新キャラのテリジノのあとは、古株のディロフォが登場してきて、これまたJPファンが喜ぶ展開になっている。
クレアに襲い掛からんと、あのフリルを広げるが、これはオーウェンが撃退
一方、さらに後のシーンで、サンクチュアリから1人脱出しようとするドジスンは、ディラフォに取り囲まれて、ネジスンと全く同じ末路を辿ることになる。
ちなみに、実際はこんな恐竜ではない。
『日経サイエンス2021年10月号』 - logical cypher scape2

グラント、サトラー、メイジーが脱出する際、炭鉱跡でディメトロドンに遭遇する。
ディメトロドン特に怖くないだろと思ったが、とはいえ、肉食獣だし、あのシチュエーションで囲まれたらまあ怖いかも

  • ギカノトサウルス

全員が合流した後、ギカノトサウルスに襲われる
ハシゴ登ってるところで喰われそうになるシーンはまあ怖い
マルコムが松明投げるという、らしからぬ(?)活躍を見せるのが面白い

  • T・レックスとギガノトサウルスとテリジノサウルス

ラストバトルは、T・レックスvsギガノトサウルス
二大肉食恐竜がガオガオやってる脇を人間たちがコソコソ逃げ回ってる図はなんかシュールでもある。
最後、テリジノまで現れる。
ギガノトがテリジノの爪に串刺しにされてKOするのだが、これは炎の王国でインドラプトルが串刺しになったクライマックスを想起させる点はよかったが、迫力は炎の王国の方が断然優っていたなあという感想