『ジュラシック・ワールド/炎の王国』

ジュラシック・パーク」シリーズの第5弾、直接的には2015年公開の『ジュラシック・ワールド』の続編(どうも三部作の二作目という位置づけらしい)
スピルバーグがエクゼクティブ・プロデューサーで、前作の監督コリン・トレボロウは脚本及びエクゼクティブ・プロデューサー、本作はスペインのJ.A.バヨナが監督をつとめている。


前作で描かれた事件から3年、イスラ・ヌブラル島は野生化した恐竜たちの住む島となっていたが、急激な火山活動が始まり、恐竜たちが全滅する惧れにさらされていた。
島から恐竜を救い出そう、というのが映画の前半
ところが、後半からは雰囲気が一変
残忍で知能の高いインドラプトル(遺伝子操作で生み出された、実在しない種)に追い回されるのだが、これが洋館を舞台にしたゴシック・ホラー的な演出がなされており、恐ろしさと美しさとがないまぜになった映像の続く作品となっている。
あまり、事前に情報は入れずに行ったのだが、それでも「ホラー映画」のようだ、というような感想は見かけていて、「ジュラシック・ワールドがホラーって一体どういうこと?」と思いながら見に行ったのだが、まさしくホラーであった。
しかし、美しいカットも多々あり、非常に良い作品であったと思う。
ジュラシック・パーク」シリーズについて、特にファンであったりということはしないのだが、エンドクレジットが流れてきた瞬間に、1作目のテーマ曲がかかって、ちょっと感動してしまったw
ちなみに自分は、『ジュラシック・パーク』(1作目)、『ジュラシック・ワールド』(4作目)は視聴しているが、2作目、3作目は未視聴


今回、3D+4DXで鑑賞した
3Dについては、「確かに立体感があるねー」程度なもので、もはやそれほど物珍しさや特別さもないが、逆に違和感もなくて、当然のものになってきたのかなーという気がした
4DXの映画鑑賞が、今回が2度目*1
座席の振動激しめで楽しかったが、何より、雨や風が感じられるのは面白いと思う
あと、今の4DXにそういう機能はないけど、熱くなるとかがあると、火山のシーンの臨場感が増すかもしれないw


作品的にも時期的にも、子ども客が多かった(家族だけでなく、小学校高学年くらいで親なし、数人のグループで来ている感じの子たちもそこそこいた)
本編だけでなく、予告編の『ミッション・インポッシブル』も4DXだったのだけど、予告編って基本的にずっとアクションシーンだったので、4DXずっとフル稼働みたいな状態でw
予告編が終わったあと、わりと劇場全体が「きゃー」って子供たちの興奮した悲鳴めいた声で満ちていたw

あらすじ&感想

イスラ・ヌブラル島近海で怪しく活動する潜水艇。インドミナス・レックスの骨の一部を回収していが、モササウルスに襲われる、というシーンから始まる
で、彼らの仲間の1人が、T・レックスに追い立てられるのだが、命からがら助かる、と思ったらモササウルスに食われる、とあって。いやー彼、別にそこまで悪いことしたわけじゃないのにかわいそーにって感じのシーンであったw
ジュラシックシリーズは、基本的に、悪い奴らはみんな恐竜に襲われて死ぬんだけど、本作も、大体死んだ
閑話休題
火山活動によって全滅の憂き目にあっているイスラ・ヌブラル島の恐竜たち
アメリカ政府は公聴会を開いて助けるべきかどうかを議論していた。そこに招かれたイアン・マルカム博士の意見がどれだけ影響したのかは分からないが、アメリカ政府は火山に委ねるという決定を下す。
マルカム博士を見るのは、自分は第1作以来で、イケメン数学者がすっかりナイスミドルになられていたけれど、マルカム博士はマルカム博士だ、という感じであった。
前作に出ていたクレアは、今では、恐竜保護団体を作って活動している。
で、ロックウッドというおじいちゃんに呼ばれてきたら、恐竜たちを助けだして別の島(サンクチュアリ)で保護するから協力してくれ、という計画を聞かされる。
(ロックウッドというのは、ジョン・ハモンドの元ビジネス・パートナーだった人らしいのだけど、過去シリーズに出ていた人というわけではないみたい。なんか、いかにも前から出てました的な雰囲気だったんだけども……)
ロックウッドはもう老人なので、ミルズという後見人が実際の計画を取り仕切っている。
で、ブルーを何が何でも助けたいから、ぜひあの男の協力を仰ぎたいのだ、ということで、前作に出ていたオーウェンもここで再登場してくる。
オーウェン、クレア、クレアの団体に所属している獣医ジア、同じく情報担当のフランクリンが島へと向かう。島では既に、傭兵ウィートリー率いる猛獣ハンター部隊が活動中。
かつての「ジュラシック・ワールド」は見るも無残な廃墟と化していたが、そこで彼らは、ブラキオサウルスと遭遇する。
生きた恐竜と出会うのは初めてのジアが、感動を口にする。
ジュラシック・パーク』は、確か第一作でも、まずはブラキオサウルスとの邂逅から始まったはず。「やっぱ、ブラキオサウルスなんだよなー」となるシーンw
クレアとフランクリンは、地下施設でシステムを再起動し、オーウェン、ジア、ウィートリーらは、ブルーを捕獲するためパーク内へ
ブルーを見つけるのだが、ここでウィートリーの裏切りにあう
さらに、いよいよ島の噴火が本格化して、全員大ピンチ
溶岩と恐竜という二大ピンチに襲われ、とにかく逃げろ逃げろ、走れ走れーみたいなシーンへと展開していく。
クレアとフランクリンを襲った恐竜が何か、映画見てた時分からなかったのだけど、パンフレット見たら、バリオニクスと書いてあった。なるほど、バリオニクスー。こいつ、魚食ってる奴じゃなかったけーくらいは思い出せたのだけど、惜しかったw
溶岩に追われて島内の恐竜がとにかくたくさん出てくる。
とにかく、恐竜がいっぱい走っていて、ここらへんが一番「ジュラシック・パーク」っぽい感じの絵になっているあたりだとは思う。
オーウェンたちを置き去りにして出航しようとする、ウィートリーの船へとオーウェンらは潜り込む
船で運び去られた恐竜はごく一部で、ほとんどの恐竜は海に落ちてしまうか溶岩に飲まれてしまう。
去り行く船から島の方を見ると、ちょうど船着き場に一頭のブラキオサウルスがこちらを見つめながら立ち尽くしている。見る間に火山灰がもうもうと立ち込めてきて、ブラキオサウルスの姿はかき消されていく。灰の向こうに影が浮かび上がり、かすんでいく。
という、島を離れていく際のシーンが、何とも言えず抒情的であり、ぐっと心をつかむものがあった。


船内でブルーの輸血をするシーンがあって、獣医のジアが「テタヌラの血ならいいから」って言って、T・レックスから採血してくるのだけど、ほんとに大丈夫なのかw
ヒトに輸血するときに「サルの血ならいいから」って言って、チンパンジーやオランウータンの血を輸血するようなものなのでは?
まあ、ブルーは無事復活するんですけども


さて、前半のメインプロットは、噴火する島から恐竜とともに脱出する話なんだけれども、同時にサブプロットが走っている
ロックウッドの孫娘メイジーの話
メイジーは、ミルズが恐竜たちを保護するのではなくオークションで売りさばこうとしているのを、たまたま電話を聞いて知ってしまう。
おじいちゃんにそのことを知らせるものの、取り合ってもらえず、ミルズが去っていった屋敷の地下施設へと潜入する。
で、メイジーは、インドラプトルと遭遇することになるのだが、ここではまだ、その爪だけ。でもって、この登場シーンが、とてもホラーチック。
メイジーは、ミルズに見つかって部屋に閉じ込められる。おじいちゃんは、ミルズによって殺されてしまう。


後半、ロックウッド邸へ舞台は移る。
恐竜たちが次々と、ロックウッド邸の地下にあるケージへと運び込まれる。
オーウェンとクレアは見つかってしまいケージに監禁される。
そして、世界中から集められたオークションの客たちもまた、次々とロックウッド邸へと。
プロモーターをやっているエヴァーソルを演じている役者、どこかで見たことある人だなあーと思ったら『裏切りのサーカス』に出てた人だった。
この後半が本当に素晴らしかったなあーと


オーウェンが自分たちが閉じ込められてるケージの隣に、パキケファロサウルスがいるのに気づいて、パキケファロサウルスを指笛で誘導し、壁と鍵を破壊させる。
このシーンと、オークションシーンを交互にモンタージュし、次第に、頭突きの音とハンマーの音を重ね合わせていく、というのが、まずよかった。
ちなみに、パキケファロサウルスは、本当に頭突きができたのかどうか、については異論もあったはず。
ところで、パンフレットには、パキケファロサウルスではなくスティギモロク、とある。で、Wikipedia見てみたところ、どうも、スティギモロクについては、パキケファロサウルスの幼体説が出てるらしいので、結局パキケファロサウルスなのではないか、と。


オーウィン・クレア組とメイジーが合流
オークションの方では、いよいよ、インドラプトルが登場する。
『パーク』にも登場した遺伝学者ウー博士が、生物兵器として作り上げた人工恐竜で、レーザーサイトを使ってコントロールできるという代物
試作品であり、売る予定はなかったが、客から次々と声があがる。
その様子を陰から盗み見ていたオーウェンは、これを妨害するべく、さっきのパキケファロサウルスを利用する。
でまあ、パニックが起きて、色々あって、いよいよインドラプトルがケージから解き放たれることとなる
そのきっかけとなった傭兵隊長が襲われるシーンで、インドラプトルが明らかに、にたりと笑っていて、もはや恐竜というよりは、完全にホラー作品におけるモンスター的位置づけになっている
どこのシーンだったか忘れたが、インドラプトルが横たわっているところを真下からの光源で、真上から撮っているシーンがあって、インドラプトルというとてつもなく怖ろし気な恐竜の全身がくまなくスクリーンに映し出される、印象的なシーンもあった


オーウェン、クレア、メイジーの3人がインドラプトルに追いかけられるのだが、オーウェンとクレアが動けない状態になり、メイジーだけを一人逃がす
しかし、恐怖に凝り固まったメイジーは、屋敷の最上階にある自分の部屋へと逃げ込み、あろうことかベッドの中に潜り込んでしまう
インドラプトルは、屋敷の外壁を登っていく。
雲間から覗いた月光の元、巨大な洋館の屋根の上に君臨するように立つインドラプトル
ゴシックな雰囲気と人工恐竜とがあわさった稀有なショット
そして、メイジーの部屋へと侵入する。その長い爪で器用に窓の留め金を開ける、というちょっとありえないような頭のよさを見せつける。
窓が開いたときに雨が吹き込んできて、4DXも水しぶきの演出があって
さらに、部屋に入った時に、部屋に影が伸び、その影と馬のおもちゃの姿が重なるという演出の、不気味さと美しさ。
ベッドに潜り込み震えるメイジーに、じわじわとにじり寄っていく。


で、この後再び、オーウェンとメイジーとで逃げ出す
屋根の上の攻防があって、最終的に、インドラプトルがトリケラトプスの頭骨の上に落ちていって、あの三本の角に串刺しになって死ぬのだけど、あのシーンも、何とも言えぬある種の美しさがあった
少し前に、「あ、あれに落ちて刺さるんだろうな」ってのは分かるのだけど、それでも、きれいにぶっささる様に、カタルシスというか、収まるところに収まったなという感じというか、を覚えるのである。


最後、クレアたちは、屋敷の中に閉じ込められている恐竜を殺すか、逃がすか、という選択を迫られることになる。
クレアは、直情的に個々のケージを解放していくが、屋敷の扉を開けるボタンを押すことができない。
しかし、メイジーはそのボタンを押すのだった。
これについては、実はメイジーは、ロックウッドの孫ではなく娘のクローンだったということが明かされていて、「同じクローンで、同じように生きてるんだ」とメイジーが自分と恐竜とを重ね合わせたから、という流れになっている。
ただ、もう一つ思い出すのは、最初の方で、クレアが恐竜保護について議員に訴えている際に、幼い子どもたちは既に生まれたときから恐竜がいる世代になっているんですよ、と述べているところだ。
クレアたち大人にとっては、恐竜とは人間が勝手に作り上げたもので、それは本来、あってはならないものだ。クレアは、恐竜の保護活動をしていたけれど、それでもそれを人類の世界に解放することまではできなかった。
しかし、子どもたちからすれば、すでにいて当然の存在なのだ。


ところで、後半からは、オーウェンとクレアとメイジーが3人セットで行動するようになるけど、あ、またスピルバーグ的な疑似家族の物語になってるなーって思った
ところでところで、情報担当の彼はあんまり活躍しているシーンがなかったなーという印象。コメディ担当っぽかった。


オークションで買われていった恐竜がトラックで運ばれ、また、屋敷から解放された恐竜が人類社会に入り込んでいく
動物園のライオンに咆哮するT・レックス、湾岸道路が走る海岸沿いを飛ぶ翼竜、ラスベガスの街を走る小型獣脚類たち……
マルコム博士の「ようこそ、ジュラシック・ワールドへ」のセリフ
世界が一晩で変容してしまったことを見せつけるヴィジュアルに、SFを感じた。
そして、流れてくるのは、第1作目のテーマ曲……

日本語吹き替え

吹き替え版で見た。
クレアのこと、仲間由紀恵だと思っていたので*2、開幕早々「仲間由紀恵じゃない?!」となったw
獣医のジアのこと、「あれ、たかみなか?」と思いながらずっと見てたんだけど、最後のクレジットを確認したら、石川由依だった。言われてみれば、わかる。
ロックウッドは、「あれ、速水奨かな?」と思いながらずっと見てたんだけど、最後のクレジットを確認したら、中田譲治だった。言われてみれば